黒くて粘ついた嫁がしつこい
今日は俺の待ちに待った憩いの休日、すなわち日曜日である。
あ、自己紹介しておくと俺は「茜原直樹」って者で、歳は29の立派な三十路。
ちなみに仕事はマンホールとか水道管の点検、いわゆる某赤い帽子にヒゲをたくわえたジャンプしてキノコを踏み潰すおじさん的な配管工だ。
ちなみに既婚だ。
まあ嫁とは最近ピリピリしてるし、その話はいいだろう。
さて、目を覚まして寝返りをうって二度寝しよう。
そう思って俺は目を開ける。
暗闇を抜けると、そこはマンションの廊下であった。
「おはよう、いい朝。」
こんなイタズラをするのは一人しかいない。
「サラ、怒らないから部屋に戻ってお話しよう。家から出たばかりなら人に見られないから!まだ間に合うから!」
「え?今ちょうどゴミ出ししてきた帰りだけど。」
「遅かったッ!」
俺は今現在、おんぶのような体勢で嫁である茜原サラの背中に縛り付けられているのである。
茜原サラーー婚前の名前はサラ・フラッテリア。
魔物娘に博学な諸君ならお気付きのことだろうと思うが、あえて言うとナイトゴーントである。
彼女と出会ったのは6年前か。
あるビルの地下の配管を点検しようと思い、一人でパイプ室に潜ったところ、いきなり後ろから粘ったものに捕まって、2日後に救助されるまでぶっ続けで逆レイプされたのだ。
救助され、サラがめちゃくちゃ魔物娘の警察に怒られているのを尻目に逃げ出した、その数日後、俺の身体に異変が生じ始めた。
具体的に言えば指先、腋などの汗腺から謎の粘液が出るようになった。
サラの粘液がいつのまにか身体に付着していることがあった。
通勤中、仕事中、帰り道、何かの視線を感じるような気がした。
とまぁそんなわけで、俺はサラのナイトゴーントとしての能力…つがいと認めた者を異形に変える粘液によって、サラの伴侶にされてしまったわけだ。
まあ可愛いし料理もうまいしセックスも極上の腕だから結構いいんだけど……。
ごめん、話が逸れた。
本題である。
俺は最近サラからある圧力を受けている。
彼女が言うには「ナイトゴーントの伴侶は普通、嫁であるナイトゴーントの背中に張り付いて一生を交尾しながら過ごすのであり、ナオキは一刻も早く辞職して私の背中に張り付くべき。財産は一生を保証してあげるから、ナオキは腰だけ振って私と過ごしてくれたらいい。というか今からセックスするから早くチン(ry。」とのことだ。
はっきり言って俺にそのつもりはない。
仕事は辞めたくないし、ヒモになりたくもないし、何よりサラの背中に一生張り付いたままなどごめんである。
とまぁ、それを巡って我が家はピリピリしているのである。
そして間もなく我が家に着いた。
寝起きでは分泌できなかったが、家に着いてから背中の粘液が剥がれる液体を出して拘束から抜け出した。
「サラ、ご近所さんに見られなかっただろうな。」
「2人に会った。ベルゼブブの蠅村さんとその旦那さん。ゴミ捨て場でエッチしてた。」
「あぁ…蠅村さん生ゴミの匂いとかすると興奮するんだろうな…。…じゃなくて!いくら魔物娘と人間の家族限定マンションだからって、パジャマ姿で嫁におんぶされて寝ぼけてる亭主の格好なんか、めちゃくちゃはしたないじゃねぇか!」
「可愛いよ。寝顔。」
「そういう話じゃn」
「可愛かった。それだけ。」
嫁は無表情のまま威圧的にそう言って、キッチンに行ってしまった。
今日もきちんと話し合いができなかった。
椅子に腰掛けると、テーブルの上に目新しいハガキが置いてあるのが見えた。
「なんだこりゃ」
手に取るとそこには「結婚しました!」と書いてあり、サラの親戚であろうナイトゴーントと、その背中で夢中で身体を貪る夫の写真が貼ってあった。
「……人間、こうはなりたくないもんだな。」
「見てしまいましたね……。」
低い声に後ろを振り返ると、そこには粘液MAXのサラが。
「…わざとここに置いておいたな?」
「それはもちろん。」
「なんと言われても俺はこんなことしないぞ。分かってるだろ?」
「なんで?それが普通なのに。」
「これが普通なら真っ平御免だね。こんな格好じゃ行きたい所にもろくに行けないじゃないか。」
「私に言ったらいい。」
「トイレは?」
「私に言ったらいい。」
「風呂は?」
「私に言ったらいい。」
「セックスは?」
「常時。……………情事だけに。」
「もうええわ。」
コントのようになってしまったが、とにかくおいしい朝飯を食べた。
食器を片し終えてゴロゴロとしているとサラがちょいちょい、とつついてきた。
「今日はお買い物デート。」
「へ?初耳だぞ。」
「言ってなかったもん。」
「何買うんだ?」
「抱っこ紐。」
「……………。」
「ナオキはインキュバス化は早かったのに、なぜか普通の人間ほど異形にならなかった。だから抱きつく力が発達してくるまでは抱っこ紐で固定しておくべき。」
「やらないって言ってるだろ?そういうとこ強情だよな。」
「妹もお姉ちゃんもお母さんもおばあちゃんもいとこもはとこもまたいとこも、みーんな背中に背負ってる。」
「と・に・か・く、俺はやらない!分かったな。」
「………。」
すると俺よりも大きな身体をどすん、と椅子の上の俺の膝に下ろしてきた。
「はいはい、ナデナデしてやるから機嫌直せよ。」
「……セックスして。」
「日曜日は休む日だろ?だからセックスも…。」
「セックス!セックス!セックスセックス!」
ジタバタと膝の上で暴れ出した。
無表情ながらも潤んだ瞳で、こちらをチラチラと見ながら暴れている。
すると。
『うるせーッ!リア充マジでうぜぇ!オナって寝ろ!私はもう1時間もセックスしてねぇんだよーッ!』
と、隣の部屋から壁パンとともに声が飛んできた。
大家さん(自称ピチピチとっても美しい鰻女郎さん)はいつもは、あらあらうふふ、といったようなタイプなのだが……旦那さんがいない、かつムラムラしていると非常に気が立って危険である。
「……ックス。」
「声小さくしてもダメだ。」
「………。」
と、少し冷たく拒絶しすぎたか、しょんぼりとした風になってふて寝した。
夜、日も落ちてご飯も済ませ、一週間に1日だけのセックス無しの夜である。
ふかふかの布団でウトウトしていると、風呂上がりのサラがやって来た。
またうるさく言われてはたまらない。
寝たふりを敢行することにした。
「ナオキ。」
「……zzz…」
「…寝てる……。」
と、隣に腰かけたサラがぽつり、と口を開いた。
「私、ナオキの自由を奪いたくはない。」
「けれど、やっぱり私だって魔物なの。ナオキがいないと苦しいし、セックスしないとイライラする。」
「……。」
「あのね、ナオキが嫌がるのだってわかる気がする。結婚しましたハガキにハメ撮りを貼る神経もどうかしてるし、人前であれをやるのも嫌かもしれない。」
「それも分かってお願いしてるの。嫌なら嫌でもいい。けど……背中に居ることも嫌って言うのは………ちょっとだけ悲しい。」
「少しずつ、少しずつだけでいい。慣らしていけたらなって……そう思うから…私の背中に居ること、そんなに嫌わないでほしい。」
「ナオキ、愛してる。重いかもしれないし、性欲も強いし、ナイトゴーントはあんまりいない種だし、他の人よりも口下手だし、笑顔もできないし、わがままだし、ナオキにも迷惑かけてるとも思ってる。」
「それでもね、誰よりナオキを愛してるから。」
「それだけ。」
そう言ってサラは俺に背を向け、耳を赤くして俺の隣に潜り込んだ。
そっと手を触れ、握る。
「ごめん。俺、サラの気持ち何にも分かってなかった。」
「………!起きてたの?」
「全部聞いた。それでその………相談なんだけど。」
「?」
「……寝るときは、繋がったままで背中に居たい…。そこから俺も、ちょっとずつ慣らしていくから。」
そう言った瞬間、ビュパッ!と粘液が展開して俺を背中に埋めた。
暖かな感触に包まれ、捕食されるのを感じながら俺はまぶたを閉じ、告げた。
「俺も誰より愛してるぞ、サラ。」
深夜3時
???「ククク……計画通り!ボイスレコーダーに言質取ったから。」
黒い粘液を泡立てながら、背中の夫の名前の付いた辞表を書くナイトゴーントが一人いましたとさ。
あ、自己紹介しておくと俺は「茜原直樹」って者で、歳は29の立派な三十路。
ちなみに仕事はマンホールとか水道管の点検、いわゆる某赤い帽子にヒゲをたくわえたジャンプしてキノコを踏み潰すおじさん的な配管工だ。
ちなみに既婚だ。
まあ嫁とは最近ピリピリしてるし、その話はいいだろう。
さて、目を覚まして寝返りをうって二度寝しよう。
そう思って俺は目を開ける。
暗闇を抜けると、そこはマンションの廊下であった。
「おはよう、いい朝。」
こんなイタズラをするのは一人しかいない。
「サラ、怒らないから部屋に戻ってお話しよう。家から出たばかりなら人に見られないから!まだ間に合うから!」
「え?今ちょうどゴミ出ししてきた帰りだけど。」
「遅かったッ!」
俺は今現在、おんぶのような体勢で嫁である茜原サラの背中に縛り付けられているのである。
茜原サラーー婚前の名前はサラ・フラッテリア。
魔物娘に博学な諸君ならお気付きのことだろうと思うが、あえて言うとナイトゴーントである。
彼女と出会ったのは6年前か。
あるビルの地下の配管を点検しようと思い、一人でパイプ室に潜ったところ、いきなり後ろから粘ったものに捕まって、2日後に救助されるまでぶっ続けで逆レイプされたのだ。
救助され、サラがめちゃくちゃ魔物娘の警察に怒られているのを尻目に逃げ出した、その数日後、俺の身体に異変が生じ始めた。
具体的に言えば指先、腋などの汗腺から謎の粘液が出るようになった。
サラの粘液がいつのまにか身体に付着していることがあった。
通勤中、仕事中、帰り道、何かの視線を感じるような気がした。
とまぁそんなわけで、俺はサラのナイトゴーントとしての能力…つがいと認めた者を異形に変える粘液によって、サラの伴侶にされてしまったわけだ。
まあ可愛いし料理もうまいしセックスも極上の腕だから結構いいんだけど……。
ごめん、話が逸れた。
本題である。
俺は最近サラからある圧力を受けている。
彼女が言うには「ナイトゴーントの伴侶は普通、嫁であるナイトゴーントの背中に張り付いて一生を交尾しながら過ごすのであり、ナオキは一刻も早く辞職して私の背中に張り付くべき。財産は一生を保証してあげるから、ナオキは腰だけ振って私と過ごしてくれたらいい。というか今からセックスするから早くチン(ry。」とのことだ。
はっきり言って俺にそのつもりはない。
仕事は辞めたくないし、ヒモになりたくもないし、何よりサラの背中に一生張り付いたままなどごめんである。
とまぁ、それを巡って我が家はピリピリしているのである。
そして間もなく我が家に着いた。
寝起きでは分泌できなかったが、家に着いてから背中の粘液が剥がれる液体を出して拘束から抜け出した。
「サラ、ご近所さんに見られなかっただろうな。」
「2人に会った。ベルゼブブの蠅村さんとその旦那さん。ゴミ捨て場でエッチしてた。」
「あぁ…蠅村さん生ゴミの匂いとかすると興奮するんだろうな…。…じゃなくて!いくら魔物娘と人間の家族限定マンションだからって、パジャマ姿で嫁におんぶされて寝ぼけてる亭主の格好なんか、めちゃくちゃはしたないじゃねぇか!」
「可愛いよ。寝顔。」
「そういう話じゃn」
「可愛かった。それだけ。」
嫁は無表情のまま威圧的にそう言って、キッチンに行ってしまった。
今日もきちんと話し合いができなかった。
椅子に腰掛けると、テーブルの上に目新しいハガキが置いてあるのが見えた。
「なんだこりゃ」
手に取るとそこには「結婚しました!」と書いてあり、サラの親戚であろうナイトゴーントと、その背中で夢中で身体を貪る夫の写真が貼ってあった。
「……人間、こうはなりたくないもんだな。」
「見てしまいましたね……。」
低い声に後ろを振り返ると、そこには粘液MAXのサラが。
「…わざとここに置いておいたな?」
「それはもちろん。」
「なんと言われても俺はこんなことしないぞ。分かってるだろ?」
「なんで?それが普通なのに。」
「これが普通なら真っ平御免だね。こんな格好じゃ行きたい所にもろくに行けないじゃないか。」
「私に言ったらいい。」
「トイレは?」
「私に言ったらいい。」
「風呂は?」
「私に言ったらいい。」
「セックスは?」
「常時。……………情事だけに。」
「もうええわ。」
コントのようになってしまったが、とにかくおいしい朝飯を食べた。
食器を片し終えてゴロゴロとしているとサラがちょいちょい、とつついてきた。
「今日はお買い物デート。」
「へ?初耳だぞ。」
「言ってなかったもん。」
「何買うんだ?」
「抱っこ紐。」
「……………。」
「ナオキはインキュバス化は早かったのに、なぜか普通の人間ほど異形にならなかった。だから抱きつく力が発達してくるまでは抱っこ紐で固定しておくべき。」
「やらないって言ってるだろ?そういうとこ強情だよな。」
「妹もお姉ちゃんもお母さんもおばあちゃんもいとこもはとこもまたいとこも、みーんな背中に背負ってる。」
「と・に・か・く、俺はやらない!分かったな。」
「………。」
すると俺よりも大きな身体をどすん、と椅子の上の俺の膝に下ろしてきた。
「はいはい、ナデナデしてやるから機嫌直せよ。」
「……セックスして。」
「日曜日は休む日だろ?だからセックスも…。」
「セックス!セックス!セックスセックス!」
ジタバタと膝の上で暴れ出した。
無表情ながらも潤んだ瞳で、こちらをチラチラと見ながら暴れている。
すると。
『うるせーッ!リア充マジでうぜぇ!オナって寝ろ!私はもう1時間もセックスしてねぇんだよーッ!』
と、隣の部屋から壁パンとともに声が飛んできた。
大家さん(自称ピチピチとっても美しい鰻女郎さん)はいつもは、あらあらうふふ、といったようなタイプなのだが……旦那さんがいない、かつムラムラしていると非常に気が立って危険である。
「……ックス。」
「声小さくしてもダメだ。」
「………。」
と、少し冷たく拒絶しすぎたか、しょんぼりとした風になってふて寝した。
夜、日も落ちてご飯も済ませ、一週間に1日だけのセックス無しの夜である。
ふかふかの布団でウトウトしていると、風呂上がりのサラがやって来た。
またうるさく言われてはたまらない。
寝たふりを敢行することにした。
「ナオキ。」
「……zzz…」
「…寝てる……。」
と、隣に腰かけたサラがぽつり、と口を開いた。
「私、ナオキの自由を奪いたくはない。」
「けれど、やっぱり私だって魔物なの。ナオキがいないと苦しいし、セックスしないとイライラする。」
「……。」
「あのね、ナオキが嫌がるのだってわかる気がする。結婚しましたハガキにハメ撮りを貼る神経もどうかしてるし、人前であれをやるのも嫌かもしれない。」
「それも分かってお願いしてるの。嫌なら嫌でもいい。けど……背中に居ることも嫌って言うのは………ちょっとだけ悲しい。」
「少しずつ、少しずつだけでいい。慣らしていけたらなって……そう思うから…私の背中に居ること、そんなに嫌わないでほしい。」
「ナオキ、愛してる。重いかもしれないし、性欲も強いし、ナイトゴーントはあんまりいない種だし、他の人よりも口下手だし、笑顔もできないし、わがままだし、ナオキにも迷惑かけてるとも思ってる。」
「それでもね、誰よりナオキを愛してるから。」
「それだけ。」
そう言ってサラは俺に背を向け、耳を赤くして俺の隣に潜り込んだ。
そっと手を触れ、握る。
「ごめん。俺、サラの気持ち何にも分かってなかった。」
「………!起きてたの?」
「全部聞いた。それでその………相談なんだけど。」
「?」
「……寝るときは、繋がったままで背中に居たい…。そこから俺も、ちょっとずつ慣らしていくから。」
そう言った瞬間、ビュパッ!と粘液が展開して俺を背中に埋めた。
暖かな感触に包まれ、捕食されるのを感じながら俺はまぶたを閉じ、告げた。
「俺も誰より愛してるぞ、サラ。」
深夜3時
???「ククク……計画通り!ボイスレコーダーに言質取ったから。」
黒い粘液を泡立てながら、背中の夫の名前の付いた辞表を書くナイトゴーントが一人いましたとさ。
19/09/07 20:26更新 / あさやけ