ファング・フェンリル 前編
私が主からその男の情報を聞いたとき、どのような化け物があの黒龍に傷を負わせたのか興味が沸いて仕方がなった。
魔王軍元帥・・・。
実質、魔物達の中で最強の称号を与えられた私ですら、“龍神・ニーズヘッグ”に傷を与えることは容易ではない。
以前、私は愚かにも、あの主に戦いを挑み、完膚なきまでに叩きのめされた。
戦いの後、主は私の強さを認め、自分の配下になることを条件に、私は命を救われた。
昔ながらのしきたりで、あの浅はかな魔王が制している魔王軍に所属してはいるが、真の主はあの黒龍、ニーズヘッグだ。
彼女は裏の世界、最強の実力者といっても過言ではない。
その気になれば、教会だろうが、魔王軍だろうが、滅ぼそうとすれば簡単に滅ぼせるだろう。
しかし、彼女がそれをしないのは、自分の永遠の命から与えられる、退屈とう時間を紛らわしたいからだ。
つまり、彼女にとって、この空蝉は、人や、魔物が起こす争いは・・・只の“暇つぶし”に過ぎないのだ。
そんな膨大な力を持つ彼女が“恋”をしたのだ。
あの、何ものにも縛られない彼女が・・・まるでうら若き乙女のように・・・。
それも・・・たった、一人の人間に・・・。
流石の私も目を疑った。
だが、それを納得させる事態が最近になって判明した。
主からの情報を経て、探し出したその人物・・・字無(あざな)は・・・。
過去に私が自分の物にしたいと思った唯一の人間。
“ファング・フェンリル”だったからだ・・・。
嗚呼・・・七年前の記憶が鮮明に脳裏に蘇る。
あのときの私は、まだ主と出会っていない、只の魔王軍大将だった頃の時代だ。
現在よりも、教会と魔王軍の戦争が、各国で頻繁に起こっていた時・・・。
字無し・・・ファングに出会ったのは、教会から雇われた、傭兵達が、大軍で魔王城に攻めてきた時だ・・・。
私は、すぐさま傭兵達との戦闘に駆り出され、“飢えた黒狼”と呼ばれる異名のとおり、雑魚共を蹴散らし、前線で活躍していた。
剣一つで何人、何十人もの傭兵を薙ぎ払い、ものの数分で十個団体を消滅させ、手応えのなさに失望していた。
以前の私は、力に溺れ、自惚れていた。
「この程度か・・・所詮は雇われ兵士・・・つまらないな」
傭兵達をほぼ壊滅させ、勝利を確信した私は、呆れながらそう呟く。
しかし、命からがら撤退していく傭兵達の中に、一人だけ、逃げずに此方を睨み付けている人物がいた。
魔物達が次々と、男に襲い掛かるが、彼は鬼神の如き、力で、手に持った得物・・・。
確か、東方で“刀”と呼ばれる武器だ。
それを、瞬時に振り払い、襲い来る敵の群れを次々と切り裂いていく。
そして、周りの魔物達がその姿に怖気づき、男から距離を取ると、彼は遠くまで聞こえる大声でこう叫んだ。
「大将を出せ!!一騎打ちだ!!」
私はこの言葉を聞いて笑わずには居られなかった。
傭兵達が逃げ出し、一人になったというのに、大将との一騎打ちを要求するとは、罵言にもほどがある。
しかし、私はその男の勇気と身の程を知らない若気の至りに拍手を送ると一言こう言葉を返す。
「大将は私だ!お前が望む通り、魔王軍大将、このアギト・フェンリルが相手になってやる!!」
そう言って、私は周りの魔物達に、一騎打ちの邪魔をしない様に釘を打つと、男のもとへと駆け寄り、剣を抜いた。
「大した度胸だよ。仲間は皆居なくなったのに、まだ一人で戦い続けるなんてね・・・」
「仲間ではない。只の同業者だ・・・。腰抜けのな・・・」
鋭い眼光を此方に浴びせて男が言う。
強い意志を持っている目だ。
「言うね・・・。君の名前は?」
「名など無い・・・。とうに捨てた!」
瞬時、刃と刃がぶつかり合う。
これを合図に、二人の死合いが始まった。
東洋の男が繰り出す斬撃は、その軽やかな動きとは裏腹に、激しい重みを帯びていた。
一撃一撃が、風の様に素早く、鉄槌のように重い・・・。
全身の筋肉をくまなく使い、躍動し、跳飛する。
まるで獣のような剣捌きに、私は驚きを隠せずにはいられなかった。
しかし、こちらは“フェンリル”の名を冠した人狼の希少種。
私が負けじと繰り出す斬撃に、名無しの男の表情に、僅かに焦りが浮かぶ。
男が繰り出す全ての技を防いだ私は、反撃に出ることにした。
野生の獣の様に駆け出し、重く大きな大剣を振り回し、男と同じ・・・否、それ以上の斬撃を繰り出す。
たまらず男は私の大剣を払い、後ろに跳躍し距離を取った。
「どうしたんだ?さっき私がしたように、君も私の剣を受けきってはくれないのか?」
「馬鹿を言え・・・。そんな得物を受けきったら、俺の太刀が持たぬ」
男はそう言いながら、私の二メートルはあろう大剣を指差した。
「受けきる自信が無かっただけじゃないのかい?」
「ほざけっ!!」
私の挑発に、男は声を荒げ、再び片刃の剣を繰り出す。
私は上段からの斬り払いを剣の腹で止める。
瞬時、男は身体を捻り、今度は剣を斜に構えたままの私の懐に刃を滑り込ませてきた。
驚いた・・・。ここまで切り返しの速い動きが出来る人間がいたとは・・・。
今度は私が後ろに大剣を構えたまま跳躍する。
魔物の身体だから出来る芸当だ。
もし、同じ身体能力で彼と戦っていたら、私の胴体は今の一撃で分離されていただろう。
素晴らしい・・・。人間程度が良くぞここまで・・・。同族にもここまで強い男はいなかった。
彼は、自分の活かせるすべての技、力を駆使して私に喰らいつく。
その様子はまるで研ぎ澄まされた牙・・・。
嗚呼・・・この男・・・否・・・この雄が欲しい・・・。
「危ないところだったよ・・・並みの魔物なら今の一撃で死んでいた・・・」
「・・・っ!」
流石に、今の一撃を決めることが出来なかったことに衝撃を受けているのだろう。
男はますます厳しい表情を浮かべる。
「素晴らしい剣筋だ・・・。戦闘時の判断力も良い・・・。なあ・・・私の部下にならないか?魔王様も、君になら喜んで将校の座を与えてくれると思うな」
男に興味を持った私は、こう言葉を投げかけた。なるべく怪我はさせたくない。
「死んでも御免だ・・・」
どうやら、意志は堅いようだ・・・なら仕方ない・・・。
「なら、力ずくで君を奪うことにするよ・・・。仲間として向かえるのではなく、私の性奴としてね!」
私はそう言い放つと、緋色の目を更に紅く滾らせ、男に向かって剣を振るった。
私は笑う。生涯に一人しかいない憧れた雄の存在に・・・。
身全霊を賭け、大剣を振るう。
何度も刃はぶつかり合い、火花を散らし、金切り音を鳴らす。
戦いの結末はそれから数時間程で訪れた。
私の前にいるのは、立っていられるのがやっとというほどに、満身創痍に溢れた男の姿だった。
此方も無傷では済まなかったが、男が私から受けた傷に比べれば遥かに可愛いものだ。
彼は、ボロボロになった片刃の剣を杖代わりについて、尚も此方を睨み付けている。
「・・・殺せ・・・」
そして、一言、血に塗れた口から敗北の言葉を投げつけた。
「フフ・・・ここまで意志が強い人間は初めてだ・・・。ますます物にしたくなった」
私は男の得物を大剣で弾くと、自分も得物を捨て、男の眼前へと歩み寄る。
「んっ・・・」
「!?」
そして、その傷だらけの身体を強く抱きしめると男の唇を奪った。
「ぐっ!・・・ん・・・!」
男はいきなりの私の抱擁と接吻から逃れようとするが、一度人間が、人狼の巨躯に捕まってしまえば逃れることは不可能だ。
私は、暴れる男を諌めるように、更に力強く抱擁する。
ぎりぎりと、その身体を締め上げ、私の口吸いでわざと呼吸困難に陥れる。
やがて、男は私の腕の中で、意識を失った。
じゅぱっと、私はわざとらしく水音を立てて、男の口から唇を離すと、力無く腕の中で気を失っている彼を抱えて、戦場を後にした。
ここは・・・?
名無しの男は、見知らぬ部屋のベッドの上で目を覚ます。
身体を起こそうとするが、手足は鎖で繫がれていて、身体を起こすことは出来なかった。
あれほど満身創痍だった身体は、傷一つ無く回復している。
どうやら、治癒魔法を施されたようだ。
「そうか・・・俺は捕まったのか・・・」
人間がどう足掻いても外すことが出来ない太い鎖を見ながら、男は今の状況を悟った。
首だけを動かし、部屋の中を見渡すが、ここは牢獄ではないようだ。
天井は高く、シャンデリアが吊り下げられ、甲冑や、絵画などが壁に飾られている。
まるで、どこぞの貴族の部屋みたいだ・・・。
衣服は、黒いローブに着せ替えられていた。
立派な一室に幽閉されているところをみると悪い様にしようとしている訳ではないようだ。
しばらくすると、足音が扉の外から聞こえてくる。
そして、足音の主がその扉を開いた。
「やあ・・・。ようやくお目覚めか・・・どうだい?調子の方は・・・」
「最悪だ」
足音の主はアギト・フェンリル本人であった。
漆黒の鎧を身に纏い、長い黒髪を掻き揚げ、紅い瞳を向けて、男に話しかける。
しかし、男はその目を見ようともせずに、問われた質問に、ぶっきらぼうに一言返した。
「手足を縛っているのはあくまで君が私の捕虜だからだ。不自由だろうが、しばらく我慢して欲しい・・・」
男の返答に、機嫌が悪いのかと思った彼女は、申し訳なさそうに言葉を紡いだ。
「そういう意味で言ったのではない。俺はあの時死を望んでいた。侍として潔く散ろうとな・・・。それを、無理矢理手当てまで施し、挙句の果てには鎖につないで飼おうとするとは・・・どれほどまでに俺に生き恥をさらさせる気だ?」
「何も君を飼おうだなんて思っていないよ。どうしても欲しくなってしまったんだ。君が・・・」
「欲しくなっただと?」
その答えに訳が分からないと男は言うが、彼の素振りに構わずアギトは話を続けた。
「ああ・・・。戦っている君の姿を見て、どうしても私の物にしたくなった。世界広しといえど、この私に一対一でここまで戦える者はいない・・・。初めて私が脅威と感じた相手・・・。それも獣人や魔物ではなく、純粋な人間という身体的ハンデを背負っての結果だ。同じ種族であったなら私に勝ち目は無かっただろうな」
そう喋り終わると、アギトはベッドまで近寄り、その整った顔立ちを男の眼前へと寄せた。
「まるで、気高き狼だ・・・。強さに焦がれ、誰も寄せ付けない孤高の狼・・・」
「・・・」
彼女は男の頬を鋭い爪を供えた指でなぞる。
「そういえば、君には名前が無いんだったな?ならば、私が付けてやる。特別にワーウルフ最高位“フェンリル”の名を使うことを許そう・・・そうだ」
そして、閃いたという表情を浮かべて、アギトは高らかに声を上げる。
「君の名前は“ファング・フェンリル”大神の牙ファング・フェンリルだ!」
アギトの言葉に、男はしばらく黙っていたが、やがて重い口を開いた。
「俺に名前など意味が無い・・・好きに呼べ」
「素直じゃないね・・・。でも、そんなところも可愛いよ・・・んっ」
そして、アギトは、男の口に自身の唇を押し付けた。
男・・・ファングは、黙って彼女の行動になされるがままになる。
敗者に権限は無い、彼は最早、この状況に逆らう気力すらなくしていた。
「んじゅっ!ちゅぱっ・・・ん・・・」
次第に、アギトはファングの口内に舌を差し入れ唾液を啜り上げる。
その行動はどんどんエスカレートしていった。
「んじゅっ!じゅぱっ!んぶっ!んちゅっ!」
彼女は両手でファングの頭をしっかりと掴み、ひたすら口内を蹂躙する。
「んんんんん!じゅぽっ!」
そして、彼が窒息しそうになるくらい接吻をかわすと思い切り音をたてて、その瑞々しい唇を離した。
「はあっ・・・はあっ・・・はあっ・・・」
「う・・・ぐはっ・・・」
互いに荒い息を吐き、整える。
「なあ・・・いいだろう?もう我慢できないんだ・・・君が欲しい」
アギトが目をギラギラとさせて、そう答える。
どうやら発情した模様だ。
すぐさま、漆黒の鎧を脱ぎ捨てて、獣人特有の美しくも、野性的な肢体を晒す。
長い黒髪を腰までなびかせ、ぶりゅんっ!と母性に溢れた大きな胸を惜しげもなく晒し、毛並みのよい獣毛に覆われている腕と足を見せつけ一言。
「君の全てをもらうよ・・・ファング」
「好きにしろ・・・」
男がそう答えた瞬間、愛欲に飢えた狼が、間髪いれずに襲い掛かった。
彼女はすぐさま乱暴に、男の衣服を剥ぎ取る。
「ああ、まずはここを最大まで大きくしないとね」
アギトの裸体を見て、半立ちになっているファングの一物に彼女は容赦なく口撃をくわえ始めた。
「あーん、んじゅっ!んちゅっ!んむ・・・ちゅちゅちゅちゅ・・・」
その麗しい唇を竿に付けて、雁首を舐めて、キスの雨を降らせる。
「ぐっ・・・う・・・お」
色に縁の無かったファングは、初めて、与えられた大きな快楽にうめき声を上げた。
「んぶじゅっ!じゅじゅじゅじゅちゅっ!」
アギトはその様子を愉しみながら、一気に亀頭を飲み込み奥まで吸い上げた。
「がっああああああああ!」
たまらず、ファングは声を上げるが、構わず、アギトは責めを続ける。
「んぶじゅっ!れるれるえるっ!ぶぼっ!んぱじゅっ!」
流れ落ちる唾液をまるで見せ付けるかのように、瞳に笑みを浮かべて彼女は男の一物を口内で嬲る。
「んぶじゅっ!ちゅぶっ!んぼっ!んぶっ、じゅぽっ、じゅぱっ!んん・・・じゅぱあっ!」
やがて、下品で卑猥な音をわざとらしく立てて、大きくなった肉棒を唇の檻から開放した。
[はあああぁ・・・さて、準備は出来たな」
アギトは滴り落ちた唾液を拭うと、完璧に勃起した男の一物を、既にだらだらに愛液で塗れた秘部に押し当てた。
「う・・・あ」
「いただきます」
ぶじゅんっ!
大きな音をたてて、彼女は腰を落とす。
「あはあああああああああぁ!」
「ぐああああああああああ!」
瞬時、互いに嬌声を上げて絶頂した。
アギトの膣からは、処女の証である赤い液体が、白色液とともに僅かに零れ落ちる。
「ああ・・・気持ち良いぞ・・・初めてなのに・・・ここまで感じるとは・・・でも、まだ全然足りない・・・」
「う・・・ぐ・・・」
ぐり・・・ぐりいっ!
ばちゅん!ばちゅん!ばちゅん!ばちゅん!ばちゅん!ばちゅん!ばちゅん!ばちゅん!ばちゅん!
男のことなどお構い無しに、彼女は快楽に身を任せ、本格的に腰を降り始める。
「や・・・め・・・うむっ!」
ファングは射精したばかりで、敏感になっている一物に無理矢理与えられ始めた快楽に抗議しようとするが、そうはさせないと、巨大な胸が、彼の顔を包み込む。
むりゅ、むりゅ、むりゅ・・・。
「ん・・・むううううううう!?」
その谷間から出ようとするが、細くも屈強なアギトの腕が彼の頭を抱え込みそれを拒絶する。
「ああっ!ああっ!いいっ!いいぞっ!もっと・・・もっとだ!」
ぱじゅんっ!ぶじゅんっ!ごじゅんっ!ぶじゅんっ!ぐりゅんっ!ぎちゅんっ!
ひたすらに、腰を打ち付ける卑猥音が部屋中に木霊し、男の一物をきつい膣肉が、涎をたらしながらひたすら貪り続ける。
「んんっ!ああああああああっ!」
ぎちゅん!ぐじゅっ!ぐじゅぐじゅぎゅじゅうぅぅぅっ!
どくっ、どくっ、どく・・・。
野性的な激しい締め付けと、ピストン運動に、ファングは耐え切れることなく二回目の射精を迎え、アギトもまた絶頂した。
彼はようやく開放されると思ったが、彼女は、まだ彼の一物を解放しない、それどころか、胸に縛り付けた頭も緩めることなく谷間に固定されたままだ。
「もっと・・・もっとだ!」
「・・・っ!?」
彼女の求めのきっかけに、またもや、アギトの膣内が律動を始める。
ファングの肉棒は、萎えることを許されず、強制的に、三度勃起まで追いやられた。
「さあ・・・まだまだ愉しもう・・・ファング」
窒息しそうになりながら、犯され続ける彼は、抗うも虚しく、繫がれた鎖がジャラジャラと音を立てるのみであった。
この日、男・・・ファング・フェンリルは、意識を手放しつつもアギト・フェンリルに犯され続け、行為から開放されたのは、それから二日以上たってからのことだった。
魔王軍元帥・・・。
実質、魔物達の中で最強の称号を与えられた私ですら、“龍神・ニーズヘッグ”に傷を与えることは容易ではない。
以前、私は愚かにも、あの主に戦いを挑み、完膚なきまでに叩きのめされた。
戦いの後、主は私の強さを認め、自分の配下になることを条件に、私は命を救われた。
昔ながらのしきたりで、あの浅はかな魔王が制している魔王軍に所属してはいるが、真の主はあの黒龍、ニーズヘッグだ。
彼女は裏の世界、最強の実力者といっても過言ではない。
その気になれば、教会だろうが、魔王軍だろうが、滅ぼそうとすれば簡単に滅ぼせるだろう。
しかし、彼女がそれをしないのは、自分の永遠の命から与えられる、退屈とう時間を紛らわしたいからだ。
つまり、彼女にとって、この空蝉は、人や、魔物が起こす争いは・・・只の“暇つぶし”に過ぎないのだ。
そんな膨大な力を持つ彼女が“恋”をしたのだ。
あの、何ものにも縛られない彼女が・・・まるでうら若き乙女のように・・・。
それも・・・たった、一人の人間に・・・。
流石の私も目を疑った。
だが、それを納得させる事態が最近になって判明した。
主からの情報を経て、探し出したその人物・・・字無(あざな)は・・・。
過去に私が自分の物にしたいと思った唯一の人間。
“ファング・フェンリル”だったからだ・・・。
嗚呼・・・七年前の記憶が鮮明に脳裏に蘇る。
あのときの私は、まだ主と出会っていない、只の魔王軍大将だった頃の時代だ。
現在よりも、教会と魔王軍の戦争が、各国で頻繁に起こっていた時・・・。
字無し・・・ファングに出会ったのは、教会から雇われた、傭兵達が、大軍で魔王城に攻めてきた時だ・・・。
私は、すぐさま傭兵達との戦闘に駆り出され、“飢えた黒狼”と呼ばれる異名のとおり、雑魚共を蹴散らし、前線で活躍していた。
剣一つで何人、何十人もの傭兵を薙ぎ払い、ものの数分で十個団体を消滅させ、手応えのなさに失望していた。
以前の私は、力に溺れ、自惚れていた。
「この程度か・・・所詮は雇われ兵士・・・つまらないな」
傭兵達をほぼ壊滅させ、勝利を確信した私は、呆れながらそう呟く。
しかし、命からがら撤退していく傭兵達の中に、一人だけ、逃げずに此方を睨み付けている人物がいた。
魔物達が次々と、男に襲い掛かるが、彼は鬼神の如き、力で、手に持った得物・・・。
確か、東方で“刀”と呼ばれる武器だ。
それを、瞬時に振り払い、襲い来る敵の群れを次々と切り裂いていく。
そして、周りの魔物達がその姿に怖気づき、男から距離を取ると、彼は遠くまで聞こえる大声でこう叫んだ。
「大将を出せ!!一騎打ちだ!!」
私はこの言葉を聞いて笑わずには居られなかった。
傭兵達が逃げ出し、一人になったというのに、大将との一騎打ちを要求するとは、罵言にもほどがある。
しかし、私はその男の勇気と身の程を知らない若気の至りに拍手を送ると一言こう言葉を返す。
「大将は私だ!お前が望む通り、魔王軍大将、このアギト・フェンリルが相手になってやる!!」
そう言って、私は周りの魔物達に、一騎打ちの邪魔をしない様に釘を打つと、男のもとへと駆け寄り、剣を抜いた。
「大した度胸だよ。仲間は皆居なくなったのに、まだ一人で戦い続けるなんてね・・・」
「仲間ではない。只の同業者だ・・・。腰抜けのな・・・」
鋭い眼光を此方に浴びせて男が言う。
強い意志を持っている目だ。
「言うね・・・。君の名前は?」
「名など無い・・・。とうに捨てた!」
瞬時、刃と刃がぶつかり合う。
これを合図に、二人の死合いが始まった。
東洋の男が繰り出す斬撃は、その軽やかな動きとは裏腹に、激しい重みを帯びていた。
一撃一撃が、風の様に素早く、鉄槌のように重い・・・。
全身の筋肉をくまなく使い、躍動し、跳飛する。
まるで獣のような剣捌きに、私は驚きを隠せずにはいられなかった。
しかし、こちらは“フェンリル”の名を冠した人狼の希少種。
私が負けじと繰り出す斬撃に、名無しの男の表情に、僅かに焦りが浮かぶ。
男が繰り出す全ての技を防いだ私は、反撃に出ることにした。
野生の獣の様に駆け出し、重く大きな大剣を振り回し、男と同じ・・・否、それ以上の斬撃を繰り出す。
たまらず男は私の大剣を払い、後ろに跳躍し距離を取った。
「どうしたんだ?さっき私がしたように、君も私の剣を受けきってはくれないのか?」
「馬鹿を言え・・・。そんな得物を受けきったら、俺の太刀が持たぬ」
男はそう言いながら、私の二メートルはあろう大剣を指差した。
「受けきる自信が無かっただけじゃないのかい?」
「ほざけっ!!」
私の挑発に、男は声を荒げ、再び片刃の剣を繰り出す。
私は上段からの斬り払いを剣の腹で止める。
瞬時、男は身体を捻り、今度は剣を斜に構えたままの私の懐に刃を滑り込ませてきた。
驚いた・・・。ここまで切り返しの速い動きが出来る人間がいたとは・・・。
今度は私が後ろに大剣を構えたまま跳躍する。
魔物の身体だから出来る芸当だ。
もし、同じ身体能力で彼と戦っていたら、私の胴体は今の一撃で分離されていただろう。
素晴らしい・・・。人間程度が良くぞここまで・・・。同族にもここまで強い男はいなかった。
彼は、自分の活かせるすべての技、力を駆使して私に喰らいつく。
その様子はまるで研ぎ澄まされた牙・・・。
嗚呼・・・この男・・・否・・・この雄が欲しい・・・。
「危ないところだったよ・・・並みの魔物なら今の一撃で死んでいた・・・」
「・・・っ!」
流石に、今の一撃を決めることが出来なかったことに衝撃を受けているのだろう。
男はますます厳しい表情を浮かべる。
「素晴らしい剣筋だ・・・。戦闘時の判断力も良い・・・。なあ・・・私の部下にならないか?魔王様も、君になら喜んで将校の座を与えてくれると思うな」
男に興味を持った私は、こう言葉を投げかけた。なるべく怪我はさせたくない。
「死んでも御免だ・・・」
どうやら、意志は堅いようだ・・・なら仕方ない・・・。
「なら、力ずくで君を奪うことにするよ・・・。仲間として向かえるのではなく、私の性奴としてね!」
私はそう言い放つと、緋色の目を更に紅く滾らせ、男に向かって剣を振るった。
私は笑う。生涯に一人しかいない憧れた雄の存在に・・・。
身全霊を賭け、大剣を振るう。
何度も刃はぶつかり合い、火花を散らし、金切り音を鳴らす。
戦いの結末はそれから数時間程で訪れた。
私の前にいるのは、立っていられるのがやっとというほどに、満身創痍に溢れた男の姿だった。
此方も無傷では済まなかったが、男が私から受けた傷に比べれば遥かに可愛いものだ。
彼は、ボロボロになった片刃の剣を杖代わりについて、尚も此方を睨み付けている。
「・・・殺せ・・・」
そして、一言、血に塗れた口から敗北の言葉を投げつけた。
「フフ・・・ここまで意志が強い人間は初めてだ・・・。ますます物にしたくなった」
私は男の得物を大剣で弾くと、自分も得物を捨て、男の眼前へと歩み寄る。
「んっ・・・」
「!?」
そして、その傷だらけの身体を強く抱きしめると男の唇を奪った。
「ぐっ!・・・ん・・・!」
男はいきなりの私の抱擁と接吻から逃れようとするが、一度人間が、人狼の巨躯に捕まってしまえば逃れることは不可能だ。
私は、暴れる男を諌めるように、更に力強く抱擁する。
ぎりぎりと、その身体を締め上げ、私の口吸いでわざと呼吸困難に陥れる。
やがて、男は私の腕の中で、意識を失った。
じゅぱっと、私はわざとらしく水音を立てて、男の口から唇を離すと、力無く腕の中で気を失っている彼を抱えて、戦場を後にした。
ここは・・・?
名無しの男は、見知らぬ部屋のベッドの上で目を覚ます。
身体を起こそうとするが、手足は鎖で繫がれていて、身体を起こすことは出来なかった。
あれほど満身創痍だった身体は、傷一つ無く回復している。
どうやら、治癒魔法を施されたようだ。
「そうか・・・俺は捕まったのか・・・」
人間がどう足掻いても外すことが出来ない太い鎖を見ながら、男は今の状況を悟った。
首だけを動かし、部屋の中を見渡すが、ここは牢獄ではないようだ。
天井は高く、シャンデリアが吊り下げられ、甲冑や、絵画などが壁に飾られている。
まるで、どこぞの貴族の部屋みたいだ・・・。
衣服は、黒いローブに着せ替えられていた。
立派な一室に幽閉されているところをみると悪い様にしようとしている訳ではないようだ。
しばらくすると、足音が扉の外から聞こえてくる。
そして、足音の主がその扉を開いた。
「やあ・・・。ようやくお目覚めか・・・どうだい?調子の方は・・・」
「最悪だ」
足音の主はアギト・フェンリル本人であった。
漆黒の鎧を身に纏い、長い黒髪を掻き揚げ、紅い瞳を向けて、男に話しかける。
しかし、男はその目を見ようともせずに、問われた質問に、ぶっきらぼうに一言返した。
「手足を縛っているのはあくまで君が私の捕虜だからだ。不自由だろうが、しばらく我慢して欲しい・・・」
男の返答に、機嫌が悪いのかと思った彼女は、申し訳なさそうに言葉を紡いだ。
「そういう意味で言ったのではない。俺はあの時死を望んでいた。侍として潔く散ろうとな・・・。それを、無理矢理手当てまで施し、挙句の果てには鎖につないで飼おうとするとは・・・どれほどまでに俺に生き恥をさらさせる気だ?」
「何も君を飼おうだなんて思っていないよ。どうしても欲しくなってしまったんだ。君が・・・」
「欲しくなっただと?」
その答えに訳が分からないと男は言うが、彼の素振りに構わずアギトは話を続けた。
「ああ・・・。戦っている君の姿を見て、どうしても私の物にしたくなった。世界広しといえど、この私に一対一でここまで戦える者はいない・・・。初めて私が脅威と感じた相手・・・。それも獣人や魔物ではなく、純粋な人間という身体的ハンデを背負っての結果だ。同じ種族であったなら私に勝ち目は無かっただろうな」
そう喋り終わると、アギトはベッドまで近寄り、その整った顔立ちを男の眼前へと寄せた。
「まるで、気高き狼だ・・・。強さに焦がれ、誰も寄せ付けない孤高の狼・・・」
「・・・」
彼女は男の頬を鋭い爪を供えた指でなぞる。
「そういえば、君には名前が無いんだったな?ならば、私が付けてやる。特別にワーウルフ最高位“フェンリル”の名を使うことを許そう・・・そうだ」
そして、閃いたという表情を浮かべて、アギトは高らかに声を上げる。
「君の名前は“ファング・フェンリル”大神の牙ファング・フェンリルだ!」
アギトの言葉に、男はしばらく黙っていたが、やがて重い口を開いた。
「俺に名前など意味が無い・・・好きに呼べ」
「素直じゃないね・・・。でも、そんなところも可愛いよ・・・んっ」
そして、アギトは、男の口に自身の唇を押し付けた。
男・・・ファングは、黙って彼女の行動になされるがままになる。
敗者に権限は無い、彼は最早、この状況に逆らう気力すらなくしていた。
「んじゅっ!ちゅぱっ・・・ん・・・」
次第に、アギトはファングの口内に舌を差し入れ唾液を啜り上げる。
その行動はどんどんエスカレートしていった。
「んじゅっ!じゅぱっ!んぶっ!んちゅっ!」
彼女は両手でファングの頭をしっかりと掴み、ひたすら口内を蹂躙する。
「んんんんん!じゅぽっ!」
そして、彼が窒息しそうになるくらい接吻をかわすと思い切り音をたてて、その瑞々しい唇を離した。
「はあっ・・・はあっ・・・はあっ・・・」
「う・・・ぐはっ・・・」
互いに荒い息を吐き、整える。
「なあ・・・いいだろう?もう我慢できないんだ・・・君が欲しい」
アギトが目をギラギラとさせて、そう答える。
どうやら発情した模様だ。
すぐさま、漆黒の鎧を脱ぎ捨てて、獣人特有の美しくも、野性的な肢体を晒す。
長い黒髪を腰までなびかせ、ぶりゅんっ!と母性に溢れた大きな胸を惜しげもなく晒し、毛並みのよい獣毛に覆われている腕と足を見せつけ一言。
「君の全てをもらうよ・・・ファング」
「好きにしろ・・・」
男がそう答えた瞬間、愛欲に飢えた狼が、間髪いれずに襲い掛かった。
彼女はすぐさま乱暴に、男の衣服を剥ぎ取る。
「ああ、まずはここを最大まで大きくしないとね」
アギトの裸体を見て、半立ちになっているファングの一物に彼女は容赦なく口撃をくわえ始めた。
「あーん、んじゅっ!んちゅっ!んむ・・・ちゅちゅちゅちゅ・・・」
その麗しい唇を竿に付けて、雁首を舐めて、キスの雨を降らせる。
「ぐっ・・・う・・・お」
色に縁の無かったファングは、初めて、与えられた大きな快楽にうめき声を上げた。
「んぶじゅっ!じゅじゅじゅじゅちゅっ!」
アギトはその様子を愉しみながら、一気に亀頭を飲み込み奥まで吸い上げた。
「がっああああああああ!」
たまらず、ファングは声を上げるが、構わず、アギトは責めを続ける。
「んぶじゅっ!れるれるえるっ!ぶぼっ!んぱじゅっ!」
流れ落ちる唾液をまるで見せ付けるかのように、瞳に笑みを浮かべて彼女は男の一物を口内で嬲る。
「んぶじゅっ!ちゅぶっ!んぼっ!んぶっ、じゅぽっ、じゅぱっ!んん・・・じゅぱあっ!」
やがて、下品で卑猥な音をわざとらしく立てて、大きくなった肉棒を唇の檻から開放した。
[はあああぁ・・・さて、準備は出来たな」
アギトは滴り落ちた唾液を拭うと、完璧に勃起した男の一物を、既にだらだらに愛液で塗れた秘部に押し当てた。
「う・・・あ」
「いただきます」
ぶじゅんっ!
大きな音をたてて、彼女は腰を落とす。
「あはあああああああああぁ!」
「ぐああああああああああ!」
瞬時、互いに嬌声を上げて絶頂した。
アギトの膣からは、処女の証である赤い液体が、白色液とともに僅かに零れ落ちる。
「ああ・・・気持ち良いぞ・・・初めてなのに・・・ここまで感じるとは・・・でも、まだ全然足りない・・・」
「う・・・ぐ・・・」
ぐり・・・ぐりいっ!
ばちゅん!ばちゅん!ばちゅん!ばちゅん!ばちゅん!ばちゅん!ばちゅん!ばちゅん!ばちゅん!
男のことなどお構い無しに、彼女は快楽に身を任せ、本格的に腰を降り始める。
「や・・・め・・・うむっ!」
ファングは射精したばかりで、敏感になっている一物に無理矢理与えられ始めた快楽に抗議しようとするが、そうはさせないと、巨大な胸が、彼の顔を包み込む。
むりゅ、むりゅ、むりゅ・・・。
「ん・・・むううううううう!?」
その谷間から出ようとするが、細くも屈強なアギトの腕が彼の頭を抱え込みそれを拒絶する。
「ああっ!ああっ!いいっ!いいぞっ!もっと・・・もっとだ!」
ぱじゅんっ!ぶじゅんっ!ごじゅんっ!ぶじゅんっ!ぐりゅんっ!ぎちゅんっ!
ひたすらに、腰を打ち付ける卑猥音が部屋中に木霊し、男の一物をきつい膣肉が、涎をたらしながらひたすら貪り続ける。
「んんっ!ああああああああっ!」
ぎちゅん!ぐじゅっ!ぐじゅぐじゅぎゅじゅうぅぅぅっ!
どくっ、どくっ、どく・・・。
野性的な激しい締め付けと、ピストン運動に、ファングは耐え切れることなく二回目の射精を迎え、アギトもまた絶頂した。
彼はようやく開放されると思ったが、彼女は、まだ彼の一物を解放しない、それどころか、胸に縛り付けた頭も緩めることなく谷間に固定されたままだ。
「もっと・・・もっとだ!」
「・・・っ!?」
彼女の求めのきっかけに、またもや、アギトの膣内が律動を始める。
ファングの肉棒は、萎えることを許されず、強制的に、三度勃起まで追いやられた。
「さあ・・・まだまだ愉しもう・・・ファング」
窒息しそうになりながら、犯され続ける彼は、抗うも虚しく、繫がれた鎖がジャラジャラと音を立てるのみであった。
この日、男・・・ファング・フェンリルは、意識を手放しつつもアギト・フェンリルに犯され続け、行為から開放されたのは、それから二日以上たってからのことだった。
12/01/31 21:49更新 / ポン太
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