深緑の射手はケンタウロス
現在地-草原と森の狭間-街道
馬が手に入ってから格段に移動速度が上がっている。
だが流石に全員乗ったら馬も引けないので時々体力のある奴が交代で降りて歩いている。
「この調子なら3日かかる予定だったけど1日早く着けそうだな」
街に到着したらとりあえず仕事探すか。
俺は今荷車に乗っていて、地図を見ている。
胡坐をかいて座っていて、足の上にはウトが俺に背を預けて座っている。
「ん〜…センさんいい臭い…」
嗅ぐなよ。
「ぐぅ〜!ウト!じゃんけんで勝ったからって兄貴の臭いまで嗅いでいいなんて言ってねーぞ!」
「駄目だなんて言われて無いもん!」
「ウトちゃんいいな〜」
そう、ちびっ子組でさっきじゃんけんをし、勝った奴が俺の上に座れるという勝負をしていたのだ。
因みに俺の意見は無視された。
「くっ…今日ほど自分の体格が恨めしい日は無い…!」
「羨ましいニャ…ネコマタのように本物の猫にニャれたニャら…」
アーリアやシャムもなんだかブツブツ言ってるし。
あ、因みに今歩いてるのはヴェロニカとイオとポウだ。
「あ〜あ…私もセンの膝の上に乗りたいけど…この下半身じゃ無理ね」
「ぐぅ…ウト!そこを退け!」
「ご主人様は私の物ご主人様は私の物ご主人様は私の物ご主人様は私の物ご主人様は私の物ご主人様は私の物…いやむしろ私の全てはご主人様の物」
約1名黒いオーラを発しながらヤンデってる奴がいるがこの際気にしない方向でいこう。
「セン、この先の森の手前で一休みしないかい?」
「ん、そうだな…じゃあ少し休もう」
アノンの提案に、俺もガタゴト揺られて尻が痛くなっていたので森に入る前に休憩を取ることにした。
そして目の前に森が見えてくると、馬車の馬を止めて休ませ、俺たちも草原に転がったり座り込んだりして各自休んでいる。
俺はウトを退かすと草原に座って休む。
「俺は武器の手入れでもすっかな」
足から白地と黒空を外して刃毀れが無いかチェックする。
「ま、無いんだけどさ」
そう、今までも何度か武器のチェックは行ってきた2つの足刀には何の問題も無かった。
「これどんな素材で出来てるんだろうな?」
唯の鉄でないことは確かで、恐らく白地は斬る事に、黒空は破壊する事に特化している。
白地は重量は普通の鉄くらいだが、その刃の鋭さはかなりの物だ。
なにせ鉄だけではなくドラゴンの鱗をも引き裂くのだから。
黒空は普通の鉄よりも重いが、硬度は白地より圧倒的に高く、武器とぶつけ合って破壊する事もできる。
まあ黒空でも鉄斬れるけどさ。
「ねえセン、何をしてるの?」
俺が1人でブツブツ言ってるのが気になったのか、ティピが俺の方へ歩いてきてさっきのウトのように膝の上に座った。
チョロチョロ動く尻尾が頬に当たってくすぐったい。
「武器のチェックだよ。刃毀れしてないかとか」
「そっか…ねえセン、私どうしたらいいかな…?」
「は?」
急に顔を伏せて暗い雰囲気になるティピに戸惑う俺。
「だって私、戦える力なんてないから…傭兵団を作っても私なんて役にたてないよ…」
そう言えばラージマウスは大勢の群れで襲い掛かる事で戦いに勝つんだったな…単体の力はかなり低いらしい。
「別に傭兵団だからって戦う事ばっか考えなくてもいいんだぞ?」
「でも…」
「戦ってる奴の為に飯を作ったり、馬車の掃除をするとか、戦い以外にも色々やる事はある…お前に出来る事をしろよ。出来ない事を無理にしなくていい」
人には向き不向きがあるからな。
「…うん、ありがとうセン!」
「自分の女を励ますのは当然だよ」
ニパっと笑顔になると俺も嬉しくなり笑顔になる。
「あ〜、ティピちゃんズルい〜」
後ろからのんびりとした声が聞こえ、首の後ろにもにゅんと柔らかい感触を感じる。
「おいポム…」
「お兄さ〜ん…ティピちゃんだけじゃなくて私達も構ってくださ〜い」
ポムは俺の背中にしがみ付いてその豊満な胸を俺の首に押し付けていた。
あ、ティピが自分の胸とポムの胸を見比べた後一気に暗くなった…。
「どうせ私は胸がないよ…おっぱいのちっちゃいラージマウスですよーだ…」
めっちゃんこいじけてるな…。
「ふえ?ティピちゃんどうしたの〜?」
覗き見るようにティピを見るがその際に胸が揺れてティピは更に暗くなる。
「ポム、それ以上止めさしてやるなよ…」
「…?」
結局ポムは何のことか分からなかったみたいだ。
現在地-森-街道
荷車と馬車はガタガタと揺れながら先に進んでいく。
「どんどん暗くなってきましたね…」
「暗いの嫌い…」
ミンは俺の右側に擦り寄ってくると、腕を組んできた。
「むっ…ミン、退け…私が抱きつく」
「嫌」
イオがそれを見て目を鋭くするがミンはあっさりと断る。
「むぅ…ならば私は反対側に…」
「ゴロニャ〜、センは温かくて気持ち良いニャ〜♪」
だが左側は既にシャムが抱きついていた。
「………な、ならさっきのウトやティピのように膝の上に…」
「此処は埋まってるよ」
俺の膝の上にはパノが座っていた。
「そもそもイオは尻尾とかあって膝の上に座るのは難しいぞ…」
「………うがー!貴様等退けぇ!」
我慢の限界を超えたのか、イオは両手を振って怒りを表現する。
「やだね!あたいは兄貴にくっついてたいんだ」
「ん、ミンも」
「勿論私もだニャ〜」
3人ともあっかんべーと言わんばかりに挑発する。
「ほ、ほう…いい度胸だな…!」
「おいイオ!荷車の上では暴れるなよ」
怒りに怒り、プルプル震えるイオが行動を起こす前に忠告する。
「ぬぅ!?し、しかし…」
「荷車が吹っ飛んだらまた移動速度が遅くなる…お前の相手は次の街に着いたらしてやるから」
反論しようとするが、シュンとしてしまったのでフォローを入れると途端に笑顔になる。
「フフフ、そうかそうか…私の相手は次の街か…良し!早く次の街に行くぞ!」
急に元気になったな。
「単純…」
俺の傍でボソリとミンが呟いた言葉は、高笑いしてるイオには聞こえていないようだ。
こうして少しほのぼのした雰囲気だったのにも関わらず、ヒュンと空を切る音が聞こえた。
「っ!?」
僅かに顔を横に傾けると、俺の右頬を掠り後ろにあった馬車の壁にある物が突き刺さった。
飛んできて俺に掠った物…それは矢だった。
俺の頬からは赤い血が垂れており、俺に抱きついていたミンとシャムは目を見開いて驚いていた。
「て、敵襲だニャ!?」
「主…怪我した…!」
「敵襲!?一体何処から…!?」
矢が飛んできて驚いたのか、馬達は鳴き声を上げて暴れている。
「チッ…アノンとアーリアは馬を落ち着かせろ!他の皆は戦闘準備!」
皆は自分の武器を構えると辺りを警戒する。
シャナでさえ銛を持って壷から出てきた。
「矢の飛んできた方向からして正面にいるな…」
だが正面に見えるのは街道と森林だけ。
こうも緑が多いと視界が悪い…森に住む魔物だと隠れるのには慣れてそうだしな。
だが俺たちの馬が落ち着くとすぐに何かが聞こえてきた。
これは馬の足音…?
次の瞬間俺に向けて再び高速で矢が飛んでくる。
「シッ!」
俺はその矢を見切り、手で掴む。
「そこですねっ!」
ミスティが気づいたのか、無詠唱で風の魔法を放ち、それは葉や木を切り裂いて奥へと進んでいった。
「くっ…!」
慌てた敵は、こちらの方へと姿を現した。
馬の下半身に凛とした顔立ち、長い茶髪をポニーテール(馬だけに?)にした魔物だった。
その手には勿論大型の弓が握られていた。
「貴様…わらわのご主人様に弓引くよは何事だ!目的は何だ!?」
「…退け、お前達は騙されている」
なにやら事情でもあるのか?
「騙されてる…?貴方私達のセンに文句あるの?」
ヴェロニカも短剣を構えて鋭い目で魔物を睨む。
「ともかく、その男は危険だ。此処で私が始末する!」
素早く矢を取り出して弓を引く。
「なんだか知らぬがこれは戦闘でよいのか!?」
「ま、俺も殺されるつもりはないし…やるか」
魔物の矢が放たれる時に全員動き出す。
相変わらず魔物は俺を狙っているようで、矢は俺に向けて放たれるが横に跳んで避ける。
「フッ…!」
シャナが飛び出して銛で連続突きを放つ。
「チッ!」
魔物は腰に挿していた剣を抜いてシャナの攻撃を防ぐと、馬の下半身で走り出して俺に接近しながら再び矢を構えた。
「させやしないよ!」
アノンが斧を振り下ろすと、咄嗟に横に跳んで避けたが、矢の照準がずれる。
「くっ…邪魔をするな!私はその男を討たなければならない!」
剣を構えるが、接近した俺とヴェロニカで同時攻撃を仕掛け、足刀と短剣の斬撃の嵐が魔物に襲い掛かる。
「うぐっ!」
「止めなのじゃ!」
隙が出来た所で俺とヴェロニカは身を引き、コロナの炎魔法が放たれて、魔物い直撃する直前で爆発した。
魔物は、怪我こそ無さそうだが大きく吹き飛び、地面に倒れた。
しかし魔物はまだ戦う気があるようで、吹き飛んだ時に落とした剣と弓の、弓を取ろうと身を引きずって手を伸ばす。
「させん」
「ぐあっ!?」
だがその腕をアーリアが足で踏み潰し、剣を首に押し付けた。
更に、抵抗できないように、ポウが左手を抑え、馬の下半身はパノ、キャノ、ウトの3人がかりで抑えていた。
「チェックメイトだ…何故センを襲ったのか吐いて貰うぞ」
アーリアは剣を更に首に押し付ける。
「…お前達は騙されている…!」
「お前!まだ兄貴の悪口言うのか!?そんなこと言ったらあたいが許さないよ!」
「私も…許さない」
魔物がそう言うと、パノよシャナが鋭い目つきで魔物を睨んだ。
「さ、最近…北の土地で足に刃を付けた男が罪の無い魔物を捕らえているぞうだ……足に刃を付けているのは貴様だろう?」
地面に這いずりながら俺を見る魔物だが、全く身に覚えが無い。
「それ何時くらいの噂なんだ?つかなんでそんな噂知ってるんだ?」
「3日ほど前に此処を通った旅人から聞いたのだ……ごくごく最近の話で、今も続けているらしいではないか…!」
そういやこの森の手前で北に向かう分かれ道があったなそういや…。
3日前か…ザンガールに入ったくらいだなそれ。
「それ多分俺じゃないぞ?」
「何…シラを切る気か!」
「いや…3日前って俺たち砂漠越えしたばっかりだったし」
俺の言葉に、イオとポウとコロナとミスティとシャナ以外はうんうんと頷いていた。
「な…なら西からやってきたのか!?」
「ああ、俺たちこの先にある村で傭兵団の仕事してたんだ…なんならその村で聞いてくればいい」
「し、しかし…」
「いい加減にしろイズマ!」
未だ反論しようとする魔物だが、第三者が現れた。
この魔物と同じ魔物だ。
だが4、5人いるな。
「旅の方…我が一族の者が申し訳ない事をした…」
代表格のような、赤い髪を短く切りそろえた魔物が前へ出て頭を下げる。
「なっ…族長!?」
「イズマ、貴様は黙っていろ。確かに旅人から聞いた特徴はある程度一致しているが…教団の一味の1人だという事を忘れているぞ…この方は教団の人間ではない」
俺たちには散々反論した魔物が、シュンとして全く喋らなくなった。
「あの…あんた達は?」
俺が聞くと、コホンと咳払いして頭を上げた。
「我等はケンタウロスの一族で、私は族長のカームです…貴方達とあ奴の一戦は見させて頂きましたが…お見事でした」
「いや、それはいいから…あんた達は襲ってこないのか?」
「はい…貴方の西の砂漠から来たという証言…そしてその首飾りが何よりの証拠です」
「この首飾りが?」
俺の首に付けている首飾りを指差され、俺も見る。
確かこれを付けてたのはあらゆる魔物を引き連れた男だったな。
「私たちはその首飾りを持っていた者の僕だった者の末裔…」
マジで?
「そうなのかクー?」
「確かに以前の主の死後、主を失った魔物達の殆どはあの遺跡を出て行ったそうです。だから首飾りの意味を知っていればその通りかと…」
成る程、なら本当の事かもな。
「貴方が多くの魔物を引きつれ、その首飾りをしているならば、態々捕まえなくても自然と魔物が寄って来るので…」
「成る程ね……じゃあもう行っていいか?」
「はい…しかし継承者様、我等も出会ってしまった以上お連れして欲しいのですが…」
「…人数は?」
「我等の一族の掟では1人継承者様にお選びして頂くことになっております」
あー、そうなんだ。
でも誰にするかなぁ…傭兵団だしできるだけ強い奴が欲しいな。
「一番強い奴はどいつなんだ?」
「私ですが…才能込みでの将来性の強さなら先ほど貴方に襲い掛かったイズマが一番かと」
未だに抑えられているケンタウロスのイズマを見ると、まだ俺をキッと睨んでくる。
「じゃあ、アイツを連れてきたいな」
「なっ!?族長!私は…」
「分かりました…この掟に従えば我が一族の掟を守る義務は無い…イズマ、お前自身の目で世界を見て回ってくるのも一興だろう。行け」
「ぐっ…わ、分かりました」
観念したのか、少し大人しくなるイズマというケンタウロス。
「では継承者様、お気をつけて」
そう言うと、ケンタウロス達はさっさと行ってしまった。
「…じゃあ離していいぞ皆」
俺がそう言うと皆イズマから離れて起き上がらせる。
「大丈夫だったか?」
「…フン、私はまだ貴様を認めてはいない…気安く声をかけるな」
まだ打ち解けるには時間がかかりそうだな。
1人で先に進むイズマを追いかけるために、俺たちは荷物を置いて馬を走らせた。
馬が手に入ってから格段に移動速度が上がっている。
だが流石に全員乗ったら馬も引けないので時々体力のある奴が交代で降りて歩いている。
「この調子なら3日かかる予定だったけど1日早く着けそうだな」
街に到着したらとりあえず仕事探すか。
俺は今荷車に乗っていて、地図を見ている。
胡坐をかいて座っていて、足の上にはウトが俺に背を預けて座っている。
「ん〜…センさんいい臭い…」
嗅ぐなよ。
「ぐぅ〜!ウト!じゃんけんで勝ったからって兄貴の臭いまで嗅いでいいなんて言ってねーぞ!」
「駄目だなんて言われて無いもん!」
「ウトちゃんいいな〜」
そう、ちびっ子組でさっきじゃんけんをし、勝った奴が俺の上に座れるという勝負をしていたのだ。
因みに俺の意見は無視された。
「くっ…今日ほど自分の体格が恨めしい日は無い…!」
「羨ましいニャ…ネコマタのように本物の猫にニャれたニャら…」
アーリアやシャムもなんだかブツブツ言ってるし。
あ、因みに今歩いてるのはヴェロニカとイオとポウだ。
「あ〜あ…私もセンの膝の上に乗りたいけど…この下半身じゃ無理ね」
「ぐぅ…ウト!そこを退け!」
「ご主人様は私の物ご主人様は私の物ご主人様は私の物ご主人様は私の物ご主人様は私の物ご主人様は私の物…いやむしろ私の全てはご主人様の物」
約1名黒いオーラを発しながらヤンデってる奴がいるがこの際気にしない方向でいこう。
「セン、この先の森の手前で一休みしないかい?」
「ん、そうだな…じゃあ少し休もう」
アノンの提案に、俺もガタゴト揺られて尻が痛くなっていたので森に入る前に休憩を取ることにした。
そして目の前に森が見えてくると、馬車の馬を止めて休ませ、俺たちも草原に転がったり座り込んだりして各自休んでいる。
俺はウトを退かすと草原に座って休む。
「俺は武器の手入れでもすっかな」
足から白地と黒空を外して刃毀れが無いかチェックする。
「ま、無いんだけどさ」
そう、今までも何度か武器のチェックは行ってきた2つの足刀には何の問題も無かった。
「これどんな素材で出来てるんだろうな?」
唯の鉄でないことは確かで、恐らく白地は斬る事に、黒空は破壊する事に特化している。
白地は重量は普通の鉄くらいだが、その刃の鋭さはかなりの物だ。
なにせ鉄だけではなくドラゴンの鱗をも引き裂くのだから。
黒空は普通の鉄よりも重いが、硬度は白地より圧倒的に高く、武器とぶつけ合って破壊する事もできる。
まあ黒空でも鉄斬れるけどさ。
「ねえセン、何をしてるの?」
俺が1人でブツブツ言ってるのが気になったのか、ティピが俺の方へ歩いてきてさっきのウトのように膝の上に座った。
チョロチョロ動く尻尾が頬に当たってくすぐったい。
「武器のチェックだよ。刃毀れしてないかとか」
「そっか…ねえセン、私どうしたらいいかな…?」
「は?」
急に顔を伏せて暗い雰囲気になるティピに戸惑う俺。
「だって私、戦える力なんてないから…傭兵団を作っても私なんて役にたてないよ…」
そう言えばラージマウスは大勢の群れで襲い掛かる事で戦いに勝つんだったな…単体の力はかなり低いらしい。
「別に傭兵団だからって戦う事ばっか考えなくてもいいんだぞ?」
「でも…」
「戦ってる奴の為に飯を作ったり、馬車の掃除をするとか、戦い以外にも色々やる事はある…お前に出来る事をしろよ。出来ない事を無理にしなくていい」
人には向き不向きがあるからな。
「…うん、ありがとうセン!」
「自分の女を励ますのは当然だよ」
ニパっと笑顔になると俺も嬉しくなり笑顔になる。
「あ〜、ティピちゃんズルい〜」
後ろからのんびりとした声が聞こえ、首の後ろにもにゅんと柔らかい感触を感じる。
「おいポム…」
「お兄さ〜ん…ティピちゃんだけじゃなくて私達も構ってくださ〜い」
ポムは俺の背中にしがみ付いてその豊満な胸を俺の首に押し付けていた。
あ、ティピが自分の胸とポムの胸を見比べた後一気に暗くなった…。
「どうせ私は胸がないよ…おっぱいのちっちゃいラージマウスですよーだ…」
めっちゃんこいじけてるな…。
「ふえ?ティピちゃんどうしたの〜?」
覗き見るようにティピを見るがその際に胸が揺れてティピは更に暗くなる。
「ポム、それ以上止めさしてやるなよ…」
「…?」
結局ポムは何のことか分からなかったみたいだ。
現在地-森-街道
荷車と馬車はガタガタと揺れながら先に進んでいく。
「どんどん暗くなってきましたね…」
「暗いの嫌い…」
ミンは俺の右側に擦り寄ってくると、腕を組んできた。
「むっ…ミン、退け…私が抱きつく」
「嫌」
イオがそれを見て目を鋭くするがミンはあっさりと断る。
「むぅ…ならば私は反対側に…」
「ゴロニャ〜、センは温かくて気持ち良いニャ〜♪」
だが左側は既にシャムが抱きついていた。
「………な、ならさっきのウトやティピのように膝の上に…」
「此処は埋まってるよ」
俺の膝の上にはパノが座っていた。
「そもそもイオは尻尾とかあって膝の上に座るのは難しいぞ…」
「………うがー!貴様等退けぇ!」
我慢の限界を超えたのか、イオは両手を振って怒りを表現する。
「やだね!あたいは兄貴にくっついてたいんだ」
「ん、ミンも」
「勿論私もだニャ〜」
3人ともあっかんべーと言わんばかりに挑発する。
「ほ、ほう…いい度胸だな…!」
「おいイオ!荷車の上では暴れるなよ」
怒りに怒り、プルプル震えるイオが行動を起こす前に忠告する。
「ぬぅ!?し、しかし…」
「荷車が吹っ飛んだらまた移動速度が遅くなる…お前の相手は次の街に着いたらしてやるから」
反論しようとするが、シュンとしてしまったのでフォローを入れると途端に笑顔になる。
「フフフ、そうかそうか…私の相手は次の街か…良し!早く次の街に行くぞ!」
急に元気になったな。
「単純…」
俺の傍でボソリとミンが呟いた言葉は、高笑いしてるイオには聞こえていないようだ。
こうして少しほのぼのした雰囲気だったのにも関わらず、ヒュンと空を切る音が聞こえた。
「っ!?」
僅かに顔を横に傾けると、俺の右頬を掠り後ろにあった馬車の壁にある物が突き刺さった。
飛んできて俺に掠った物…それは矢だった。
俺の頬からは赤い血が垂れており、俺に抱きついていたミンとシャムは目を見開いて驚いていた。
「て、敵襲だニャ!?」
「主…怪我した…!」
「敵襲!?一体何処から…!?」
矢が飛んできて驚いたのか、馬達は鳴き声を上げて暴れている。
「チッ…アノンとアーリアは馬を落ち着かせろ!他の皆は戦闘準備!」
皆は自分の武器を構えると辺りを警戒する。
シャナでさえ銛を持って壷から出てきた。
「矢の飛んできた方向からして正面にいるな…」
だが正面に見えるのは街道と森林だけ。
こうも緑が多いと視界が悪い…森に住む魔物だと隠れるのには慣れてそうだしな。
だが俺たちの馬が落ち着くとすぐに何かが聞こえてきた。
これは馬の足音…?
次の瞬間俺に向けて再び高速で矢が飛んでくる。
「シッ!」
俺はその矢を見切り、手で掴む。
「そこですねっ!」
ミスティが気づいたのか、無詠唱で風の魔法を放ち、それは葉や木を切り裂いて奥へと進んでいった。
「くっ…!」
慌てた敵は、こちらの方へと姿を現した。
馬の下半身に凛とした顔立ち、長い茶髪をポニーテール(馬だけに?)にした魔物だった。
その手には勿論大型の弓が握られていた。
「貴様…わらわのご主人様に弓引くよは何事だ!目的は何だ!?」
「…退け、お前達は騙されている」
なにやら事情でもあるのか?
「騙されてる…?貴方私達のセンに文句あるの?」
ヴェロニカも短剣を構えて鋭い目で魔物を睨む。
「ともかく、その男は危険だ。此処で私が始末する!」
素早く矢を取り出して弓を引く。
「なんだか知らぬがこれは戦闘でよいのか!?」
「ま、俺も殺されるつもりはないし…やるか」
魔物の矢が放たれる時に全員動き出す。
相変わらず魔物は俺を狙っているようで、矢は俺に向けて放たれるが横に跳んで避ける。
「フッ…!」
シャナが飛び出して銛で連続突きを放つ。
「チッ!」
魔物は腰に挿していた剣を抜いてシャナの攻撃を防ぐと、馬の下半身で走り出して俺に接近しながら再び矢を構えた。
「させやしないよ!」
アノンが斧を振り下ろすと、咄嗟に横に跳んで避けたが、矢の照準がずれる。
「くっ…邪魔をするな!私はその男を討たなければならない!」
剣を構えるが、接近した俺とヴェロニカで同時攻撃を仕掛け、足刀と短剣の斬撃の嵐が魔物に襲い掛かる。
「うぐっ!」
「止めなのじゃ!」
隙が出来た所で俺とヴェロニカは身を引き、コロナの炎魔法が放たれて、魔物い直撃する直前で爆発した。
魔物は、怪我こそ無さそうだが大きく吹き飛び、地面に倒れた。
しかし魔物はまだ戦う気があるようで、吹き飛んだ時に落とした剣と弓の、弓を取ろうと身を引きずって手を伸ばす。
「させん」
「ぐあっ!?」
だがその腕をアーリアが足で踏み潰し、剣を首に押し付けた。
更に、抵抗できないように、ポウが左手を抑え、馬の下半身はパノ、キャノ、ウトの3人がかりで抑えていた。
「チェックメイトだ…何故センを襲ったのか吐いて貰うぞ」
アーリアは剣を更に首に押し付ける。
「…お前達は騙されている…!」
「お前!まだ兄貴の悪口言うのか!?そんなこと言ったらあたいが許さないよ!」
「私も…許さない」
魔物がそう言うと、パノよシャナが鋭い目つきで魔物を睨んだ。
「さ、最近…北の土地で足に刃を付けた男が罪の無い魔物を捕らえているぞうだ……足に刃を付けているのは貴様だろう?」
地面に這いずりながら俺を見る魔物だが、全く身に覚えが無い。
「それ何時くらいの噂なんだ?つかなんでそんな噂知ってるんだ?」
「3日ほど前に此処を通った旅人から聞いたのだ……ごくごく最近の話で、今も続けているらしいではないか…!」
そういやこの森の手前で北に向かう分かれ道があったなそういや…。
3日前か…ザンガールに入ったくらいだなそれ。
「それ多分俺じゃないぞ?」
「何…シラを切る気か!」
「いや…3日前って俺たち砂漠越えしたばっかりだったし」
俺の言葉に、イオとポウとコロナとミスティとシャナ以外はうんうんと頷いていた。
「な…なら西からやってきたのか!?」
「ああ、俺たちこの先にある村で傭兵団の仕事してたんだ…なんならその村で聞いてくればいい」
「し、しかし…」
「いい加減にしろイズマ!」
未だ反論しようとする魔物だが、第三者が現れた。
この魔物と同じ魔物だ。
だが4、5人いるな。
「旅の方…我が一族の者が申し訳ない事をした…」
代表格のような、赤い髪を短く切りそろえた魔物が前へ出て頭を下げる。
「なっ…族長!?」
「イズマ、貴様は黙っていろ。確かに旅人から聞いた特徴はある程度一致しているが…教団の一味の1人だという事を忘れているぞ…この方は教団の人間ではない」
俺たちには散々反論した魔物が、シュンとして全く喋らなくなった。
「あの…あんた達は?」
俺が聞くと、コホンと咳払いして頭を上げた。
「我等はケンタウロスの一族で、私は族長のカームです…貴方達とあ奴の一戦は見させて頂きましたが…お見事でした」
「いや、それはいいから…あんた達は襲ってこないのか?」
「はい…貴方の西の砂漠から来たという証言…そしてその首飾りが何よりの証拠です」
「この首飾りが?」
俺の首に付けている首飾りを指差され、俺も見る。
確かこれを付けてたのはあらゆる魔物を引き連れた男だったな。
「私たちはその首飾りを持っていた者の僕だった者の末裔…」
マジで?
「そうなのかクー?」
「確かに以前の主の死後、主を失った魔物達の殆どはあの遺跡を出て行ったそうです。だから首飾りの意味を知っていればその通りかと…」
成る程、なら本当の事かもな。
「貴方が多くの魔物を引きつれ、その首飾りをしているならば、態々捕まえなくても自然と魔物が寄って来るので…」
「成る程ね……じゃあもう行っていいか?」
「はい…しかし継承者様、我等も出会ってしまった以上お連れして欲しいのですが…」
「…人数は?」
「我等の一族の掟では1人継承者様にお選びして頂くことになっております」
あー、そうなんだ。
でも誰にするかなぁ…傭兵団だしできるだけ強い奴が欲しいな。
「一番強い奴はどいつなんだ?」
「私ですが…才能込みでの将来性の強さなら先ほど貴方に襲い掛かったイズマが一番かと」
未だに抑えられているケンタウロスのイズマを見ると、まだ俺をキッと睨んでくる。
「じゃあ、アイツを連れてきたいな」
「なっ!?族長!私は…」
「分かりました…この掟に従えば我が一族の掟を守る義務は無い…イズマ、お前自身の目で世界を見て回ってくるのも一興だろう。行け」
「ぐっ…わ、分かりました」
観念したのか、少し大人しくなるイズマというケンタウロス。
「では継承者様、お気をつけて」
そう言うと、ケンタウロス達はさっさと行ってしまった。
「…じゃあ離していいぞ皆」
俺がそう言うと皆イズマから離れて起き上がらせる。
「大丈夫だったか?」
「…フン、私はまだ貴様を認めてはいない…気安く声をかけるな」
まだ打ち解けるには時間がかかりそうだな。
1人で先に進むイズマを追いかけるために、俺たちは荷物を置いて馬を走らせた。
11/06/23 20:14更新 / ハーレム好きな奴
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