連載小説
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サハギンの池と笑えない貴族
現在地-草原-街道

俺たちは東を目指して馬車を引きながら歩いている。

ボロい馬車には荷物とポム、ティピ、アーリアの3人が乗り、後の皆は歩いている。

現在馬車を引っ張っているのはパノとアノンだ。

「なあ兄貴、まだ次の町にはつかねーの?」

流石、怪力自慢な2人だけあって馬車を軽々と引いていく。

「ああ、まだ暫くは着かない。だがこの先に村があるから今日はそこで休もう」

この先には大きくも無いが、小さくも無い村があり、自然に囲まれていてほのぼのしていそうだ。

そこからまた3日ほど歩いた所に街がある。

「う〜…暇なのじゃー!疲れたのじゃー!もう歩けないのじゃー!」

とぼとぼと後ろの方で歩いていたバフォメットのコロナが急に騒ぎ出したので、皆1度足を止める。

「コロナ様、皆我慢して歩いてるんですから…」

「魔法で飛べばすぐなのじゃ!それが駄目なら馬車に乗せるのじゃ!」

暫く一緒にいて分かった事がある。

コロナは結構我侭で、子供だ。

「駄目だ。馬車に乗る奴は馬車を引いてからだ」

そう、馬車に乗るには条件があり、一定距離馬車を引いた奴しか乗れないのだ。

「う〜!」

我侭が通らなかったのが嫌なのか涙目でこっちを睨んでくる。

「…しょうがねーな」

腰を落としてコロナに背を向ける。

「…なんじゃ?」

「おぶってやるから早く背に乗れ」

俺がそう言うと顔をパアァと笑顔にして背中に飛びついてきた。

「ありがとうなのじゃ!」

「どーいたしまして」

そして前に進んでいくが突然ポウとクーが立ち塞がった。

「どうした?」

「ご主人様の手を煩わせるわけにはいきません!なによりそんな羨ましい事をするなんて許せません!私が背負います!」

「継承者様にそんな事をする必要はありません。わらわがそいつを背負います」

何だか似たような事言いやがったよ。

「嫌なのじゃ!ワシはセンに背負われたいのじゃ!」

「「それが駄目だといっている(の)!」」

俺の背中目掛けてギャーギャー言い争うがその内面倒になったので無視して先に進む事にした。

「あっ!ご主人様!」

「け、継承者様!」

「面倒くさいからいいよ…さっさと先に進まないと日が暮れる」

その後、2人は不貞腐れ、コロナは上機嫌だったのは言うまでも無いだろう。



現在地-とある村フィオーレ村-入り口門

日が暮れだした頃にやっと村に到着した。

村の門を潜ると、村人は此方をギョッとした目で見てきた。

それもそうだろう。

いくらこの辺りが親魔物領だからと言ってこんな大所帯の魔物一行はそうそう見ないだろう。

それに高位魔物のドラゴン、バフォメットもいるし。

すると此方に中年のおっさんが駆けつけた。

「あ、あの…貴方たちはいったい…?」

「ああ、俺たちは傭兵団だよ。まだ結成したばかりだけど…今夜村の一角を貸してくれないか?迷惑はかけない」

「傭兵団…?それなら構いませんが…少し待っていて下さい」

おっさんは俺たちを見ている村人を集めると話し合いをし始めた。

「何を話しているんだ?」

イオは不思議そうに彼らを見るが向こうは少しビビってるな。

「これだけ大勢の魔物がいきなり来たらビックリしますよ。泊めるかどうか相談しているんじゃないんですか?」

ミスティの言葉に納得した顔になるイオ。

もう暫く待つと、さっきのおっさんがこっちに駆けつけた。

「あの…私はこの村の村長なのですが、この村に泊まるのなら少しお願いがあるのです」

「お願い?」

「はい…実は…」

村長のおっさんの話を纏めるとこんな感じだ。

此処から結構離れた街の貴族がこの村の場所に別荘を建てるらしい。

その為にこの村に住む人たちに立ち退くように言っているらしいが、此処を出て行くと行く宛てが無いので立ち退きを断固拒否しているらしい。

だが最近実力行使に出ると警告してきたらしい。

報酬は払うので、どうにか撃退して欲しいとの事だ。

皆の方を見ると、全員頷いていたので俺に任せるという事らしい。

「報酬は何を?」

「…何分あまりお金は無いもので…物や動物や食料ほどしかありませんが…」

「それなら、馬と丈夫な馬車と食料を少しもらえるか?」

「それ位なら幾らでもどうぞ」

「よし、その依頼、確かに受けたぜ」

こうして俺たちはこの村を守る事になったのだった。

「因みに奴等は何時くらいに来るか分かるか?」

「以前此処に来た時期からして…恐らく3日以内には来るかと」

「なら俺たちは何時でも戦える準備をしておくぞ」

皆は頷き、まずは体を休めるために村で寝る事にした。



現在地-フィオーレ村-村離れの池

翌日、ずっと気を張っていても仕方が無いので俺は村人に釣り道具を借りて村の近くにあった少し多きめの池に来た。

「大物釣れるかね…」

さっき土を掘り返してゲットしたミミズのような虫を釣り針に付けて池に投げ入れた。

「……………」

シーンと何の音も出ずに、この空間を楽しむ為に目を閉じた。

無音の空気

誰もいない空間

僅かに水の動く音…

誰かの視線を感じる

「誰だ?」

目を開けて視線を感じる方へ鋭い目を向ける。

「っ!?」

その方向は池の中心…何故か池から顔半分を出した少女だった。

鋭い目で見たので少し怯えているようだが俺を見続けている。

「「…………………」」

ジーッと俺を見続けている少女に、若干気まずくなる。

「…なんか用か?」

「…誰?」

俺から目を逸らさずに無表情なその瞳で見続けながら質問を投げかけてくる。

「俺はセン・アシノ…昨日村で雇われた傭兵だ。お前は?」

「…シャナ」

そこからまた辺りを沈黙が支配した。

「…なあ、水の中に入ってるって事は魔物なのか?」

「うん…シャナはサハギン…」

サハギン?…確か半魚人みたいなもんか?

「んで、なんか用か?」

「(フルフル)」

首を横に振ると、また俺をジーッと見続けている。

「貴方…良い人……」

「は?」

「………(ジー)」

何で俺を見続けるんだろうか?

「ま、いっか」

俺はそのまま釣りを続ける事にした。

てか釣れねーな。



現在地-フィオーレ村-村中心部

「はあっ!」

「わうっ!」

現在、村ではアーリアとポウの模擬戦が行われていた。

他の皆は村をウロウロしたりして暇を潰している。

「がうっ!」

ポウは鋭い爪でアーリアを引っ掻こうとするが、アーリアは素早く動いて回避し、避けきれない攻撃は剣で防ぐ。

「甘いっ!」

アーリアは突きを放つが、ポウは体を左に倒すと同時に左足で手首に蹴りを放った。

「なっ!?」

「甘いのはアーリアの方っ!」

手首を蹴られた事により剣がアーリアの手の中から弾き飛んでいき、ポウは右手を地面に着いて体制を立て直す。

「くっ…だが!」

アーリアは拳を構え、ポウはそのアーリアに向かって突っ込んでいく。

「はぁあああああああああああっ!」

「ふんっ!」

勝負を決めようとしたのか、一直線に突っ込むポウにアーリアは尻尾で足払いをして転ばせる。

「キャウンッ!?」

「止めだ!」

アーリアの拳がポウの眼前で寸止めされ、ポウは目をパチクリさせた。

「ま、まいった…」

「うん、私の勝ちだな」

ポウから退くと、アーリアは良い笑顔になり、逆にポウはorzポーズになった。

「良し、ではセンにあ〜んをするのは私の役目だな」

そう、今のは村から出された昼食で、どちらが俺にあ〜んをするか決めていたのだ。

「ではセン…恩人の君にあ〜んを……」

アーリアが俺に向き直るが、俺の隣には昨日のサハギンのシャナが昼食のシチューを差し出していた。

「あ〜ん………」

「…お前何時の間に?」

何時の間にか俺の隣に座り模擬戦を観戦し、終わったら終わったで俺にシチューを食わせようとするし。

「せ、セン…彼女は誰なんだい…?」

心なしかアーリアのこめかみに血管が浮き出て見える…。

「ご主人様〜、負けちゃいました〜!」

べそかきながら俺にしがみついて来るポウ。

「こ、こらポウ!離れろ!」

「ん、あ〜ん…」

「お前は一体何なんだー!?」

なにこのカオス。



暫くアーリアとポウとシャナの言い争いが続いたがなんとか治まった。

「ハァハァ…で、セン、この子は一体何なんだ!?」

「いや分からん…昨日釣りに行ったときに池で会ったサハギンのシャナだ」

改めてシャナを見ると、腕と足は青い鱗で包まれており、服装はどう見てもスクール水着だ。

青みのかかった長い髪は少し湿っている。

「てかお前水から出ていいのか?」

「少しなら…」

それから、どうもサハギンという種族はあまり喋りたがらないらしい。

シャナは俺の隣にチョコンと座っている。

「シャナ…だったな?私はこれからセンにあ〜んをしなければならないのだが…」

「私があーんする………」

いかんな…火花が見える気がする。

「セン、どうかしたのか?」

「センさーん、僕の鍛錬に…」

「ってアレ?」

「ニャニャ?」

はい全員集合。

更にややこしい事になりそうだ。

「セン、そいつはなんなんだい?」

「アノン顔が近い…こいつはサハギンのシャナ。昨日釣りの時に会ってな…何故か此処に居る」

「ん」

シャナはふとミンと目が合い、互いに瞳を眺め続ける。

「「………………ん」」

なんだかこの2人息が合いそうだな。

「継承者様!また新たな仲間を加えるとは…お見事です!」

「いや、仲間って訳でもないんだが」

結局シャナも交えて皆で昼食を食べていると、村人が1人近寄ってきた。

「あ、シャナちゃん来てたんだね」

「知り合いですか〜?」

「うん、シャナちゃんの池はすぐ傍にあるから村人とは友人のような関係だよ」

ま、村から歩いて2分で到着する池だから知り合いくらいいるか。

「でも今度来る貴族はあの池も埋め立てようとしててシャナちゃんも立ち退きさせるつもりらしいから…気をつけてね」

「(コク)」

その貴族、笑えねえな。

自分の為に他者を省みない…俺の一番嫌いなタイプだ。

あのカルマと同じ様にな。

「しかしその貴族というのは何処の家の者なのじゃ?」

「北の国のセクトル卿だよ。爵位は伯爵らしいよ」

伯爵か…公爵レベルじゃなくて良かったな。

流石にそこまで行くと面倒な問題が発生しそうだからな。

「ま、死なない程度に頑張るか」

「そうですね」

俺の呟き声にミスティが返してくれるが、こそっと呟いたつもりだったので苦笑する。

「聞こえてたか?」

「結構聞こえますよ?」

マジか。



そしてその夜…。

その時は来た。

草原の向こう側から、剣や槍、鎧で武装した兵士が25人ほど、杖を持ちローブを纏った魔導士が9人、此方に向かって歩いてきた。

俺たちの布陣は前線に俺とアノン、ポム、ウト、シャム。

中距離にコロナとミスティ、クー、遊撃兵としてアーリアとポウとヴェロニカ。

上空にはイオ。

後衛及び村人護衛はパノ、キャノ、ティピ、ミンという布陣になった。

「全員、怪我のないようにな!」

まずは俺が敵の中心地に飛び込んでかく乱する手はずだ。

脚力全開で兵士達の懐に飛び込む。

「な、なんだ!?」

「貴様、何者だ!」

闇夜からいきなり現れた俺に驚き、戸惑いを隠せない兵士達。

取り合えず、近場の男の兜の顔面部分を蹴り飛ばした。

「がっ!?」

「貴様!」

槍を持った兵士が、俺に向けて槍を振り下ろしてくるが、横に逸れて避け、股間の部分に蹴りを入れる。

「キンッ!?」

「うわ痛そ」

そして宙に跳び上がって黒空で兵士の鎧を切り裂き、胴体を斬った。

「離脱!」

すぐにその場から離れるとコロナの放った雨のような炎と、ミスティの魔法である地面を砕く魔法が通り過ぎる。

向こうが混乱した所で前線部隊が突撃する。

「え〜い〜!」

「やぁあああああっ!」

巨大棍棒で兵士を吹き飛ばしていくパノとウト。

「ニャニャニャニャ!」

「おりゃあああああああああっ!」

それに続いてシャムの猫パンチとアノンの斧が繰り出される。

「喰らえ!マミーの呪い!」

「う、うおおおおおおおおおおおおっ!?」

クーの呪いにより兵士の1人が感度が極度に上がり、立つこともままならなくなる。

「ふんっ!であっ!」

「ぐぅっ!?」

「て、手強い…!」

アーリアも兵士2人と打ち合っている。

「グルルルゥ…!」

「くっ…なんだコイツ等…強い…」

ポウや他の皆も兵士を圧倒している。

向こうの魔導士も呪文を唱えて反撃に転じようとしようとしているが、上空からイオが接近し、口から炎のブレスを吐き出す。

「「「ぎゃああああああああああ!?」」」

「こりゃ圧倒的だな」

俺は皆の状況を確認すると目の前に迫ってきた兵士の剣を白地で受け止めて押し返し、体制が崩れた所で黒空で鎧の隙間を狙って斬った。

だが兵士がピィーと笛を吹くと、草原の向こうから十数人の援軍が来た。

「あらら…だがこの程度の数なら余裕だな」

しかし俺の視界の端に数人の兵士が何かの道具を持って別の方へ走っていった。

「何処へ行く気だ…?」

兵士に応戦しながら考えると、昼間の村人との会話を思い出す。

でも今度来る貴族はあの池も埋め立てようとしててシャナちゃんも立ち退きさせるつもりらしいから…気をつけてね…。

「アノン!此処の指揮はお前に任せる!」

「はぁ!?どうかしたのかい!?」

「シャナの池に行く…俺の予想が正しければシャナが危ない」

「…ったく仕方が無いね」

「スマンな」

俺は今戦っている兵士の顎を蹴り抜くと、池に向かって走り出した。



現在地-フィオーレ村-村離れの池

sideシャナ

今夜は外が騒がしい…。

昨日知り合った彼…センが関係している事は昼間の会話から分かってる。

以前来た貴族の遣いがこの池から出て行けと言っていたあの事が関係してるのも知ってる。

此処から出て行こうと思えば出て行けるけど、あの村も気になるからあまり出て行きたくはなかった。

でもこの間、貴族の遣いの人は、今度は力づくでいくと言っていた。

念の為に私の武器の銛を持っておく。

そして池の外の様子を見ようと顔を水面に出したその時だった。

「今だ!」

「!?」

私に投げかけられた物は、すぐには理解できず、何か分かった時には私は逃げられなかった。

「…網!」

銛で網を斬ろうとするけれど、何故か斬れない。

「無駄だ!お前が武器を持っているのは分かっていたからな…鉄紐を合わせて作った網だ…並みの武器では通用せんぞ!」

網を持っている3人の内の1人が私に声をかける。

「…っ!」

武器が効かない事を理解した私は、今度はジタバタと暴れてみる。

「それこそ無駄だ…セクトル卿は貴様に興味を抱いている…是非夜の相手にしたいそうだ!」

「!?」

…嫌

「諦めろ魔物風情が!」

この人達は嫌!

必死にもがいている内に、網は縮まり、がんじがらめにされてしまった。

「ククク、これで私達も昇進できるな」

助けて…

「助けてセン!」

「あいよ!」

次の瞬間、私の体は宙に浮いていた。

「悪いな、こんな鉄網じゃ俺の足刀は防げないぜ」

そして温もり。

私は、彼に抱えられていた。



現在地-フィオーレ村-村離れの池

sideセン

俺の予想通り、シャナの池には3人の兵士がおり、池に網を投げ込んでいた。

その網にはシャナが入っており、銛があるのに斬って脱出しなかったので鉄網だと予想。

「助けてセン!」

あんなに無口で無表情のシャナが涙目で叫んでいる。

これは応えてやらなきゃな。

「あいよ!」

鉄網が重なっているので並の剣では斬る事は出来ない。

だがイオの鱗すら切り裂く俺の足刀に、鉄網などバター同然。

すぐさま鉄網を斬ってシャナを網から出すと、抱え上げた。

「悪いな、こんな鉄網じゃ俺の足刀は防げないぜ」

3人の兵士は、少し驚いた表情だったがすぐに俺を睨んで剣を抜いた。

「貴様…!セクトル卿に歯向かう気か!」

「当たり前だ。俺は遠くのお偉いさんより近くの仲間を大切にする性質でね…そのセクトル卿には悪いが邪魔させてもらうぜ」

すると俺の肩をツンツンとつついてくるシャナ。

「どうした?」

「降ろして……私も…戦える」

シャナを降ろすと、シャナは銛を構えて俺と背中合わせになった。

「死ね!」

兵士が剣を振り下ろしてくるが俺は左足で受け止める。

弾いて押し返す。

後ろでは、シャナと兵士で鍔競り合いをしていた。

再び突っ込んでくる兵士に、サマーソルトで斬り上げると同時に地面を強く蹴り、空中に飛び上がると同時にシャナを飛び越えてシャナと鍔競り合っている兵士に白地を叩き付けた。

「ぐああっ!」

「がぁああああああ!?」

その一撃で2人の兵士は戦闘不能だ。

「ば、馬鹿な…ぐはっ!?」

残りの1人も一撃で2人を倒されたことでショックを受けていたのか、唖然としてる所にシャナの銛の一撃が叩き込まれて倒れた。

「やるじゃないかシャナ」

シャナは頷くと、此方にトテトテ歩いてきて俺の腰辺りにしがみ付いた。

「どうした?」

「…怖かった」

え?

「…もう、駄目かと思った」

顔を俺の体にうずめているのでどんな表情なのかは分からないが…もしかして泣いてる?

「でも、貴方が来てくれた……ありがとう」

顔を上げると同時に花咲くような笑顔を浮かべ、思わずドキリとした。

「おう、どういたしまして」

何時までもイチャついてないで俺は皆の方へ顔を向けると、既に兵士達は逃げ出し始めており、皆無事なようだ。

おっと、これだけで終わるわけにはいかないな。

「悪いなシャナ、少し行ってくる」

シャナを離すと、俺は地面を強く蹴って逃げていく奴等にある程度近づく。

「よく聞けお前等!俺の名はセン・アシノ!傭兵団のリーダーだ!金輪際この村に手を出すな!もし少しでもそんな噂を聞いたら、お前等全員皆殺しだ!覚えておけ!」

何人かはビクッとしてこっちを見たので届いただろう。

こうしておけば俺たちが此処から離れても牽制になるしな。

俺は振り返り、村の方へ戻る。

村は、守りきれた事でどんちゃん騒ぎだった。

どうやら今夜は軽く祭りになるそうで、俺はこの世界では何歳でも酒を飲んでいいのを知り、飲んでみた。

最初は美味いと感じたが、イオやクー、シャムにポウにミン、シャナに勧められてどんどん飲んでいくと、次第に意識が朦朧としてきた…。

俺が意識を失う前に見えたあのイオのニヤリとした笑みは何だったのだろうか…。



現在地-フィオーレ村-小屋

朝日を感じ、身を起こす。

昨日は酒を飲みすぎたか?頭がズキズキするし…。

ふと、下半身がいやにスースーすると思いそちらを見ると、俺、全裸だった。

少し背筋が寒くなりゆっくりと左右を見る。

右側には、生まれたままの姿のイオ、ポウ、ミン。

左側には、同じく逸し纏わぬ姿で寝るクー、シャム、シャナ。

「お、俺…またやっちまったのか…」

動かぬ証拠に、ベッドのシーツには赤と白の染みがこびり付いている。

するとドアが開いて、ヴェロニカが中へ入ってきた。

「あら、昨日はお楽しみだった?」

「ヴェ、ヴェロニカ…」

「フフ、大丈夫よ…私や他の皆も了承済みの事…私たち決めたのよ」

「決めたって…何を?」

俺が聞くと、楽しそうに笑いながら、ヴェロニカはこう言った。

「皆でセンを愛すってね♪」

じゃあねと言ってまた小屋から出て行くヴェロニカ…。

「ったく、俺は幸せ者だな…」

本当に、皆にこんなに愛されて。

俺がベッドから起き上がり、下だけでもはいておくと、皆起きだしてきた。

「ん…おぉ、セン…流石は我が夫…昨日は激しかったぞ」

「け、継承者様…これでわらわ達は貴方の物です…」

「そう言うことニャ♪やっと抱いてもらえたニャ!」

「ん…凄く良かった」

「ご主人様…私の身も心も、これで捧げられました…」

「…(ポッ)」

誰が誰かは分かるか?

上からイオ、クー、シャム、ミン、ポウ、シャナだよ。

「ま、そうだな…皆も知ってる通り俺はアノンやパノとも関係を持ってるし…この責任はキッチリ取る…だからお前等は俺の女だ。絶対に他人には抱かせん」

俺がそう言うと、ストレートすぎたのか全員顔を真っ赤に染めていた。

「あ、それから継承者様ってのは禁止な。性に合わん」

「し、しかしそれでは…」

「じゃあ私みたいにご主人様って呼ぶといいよ!」

抗議しようとしたクーに、ポウが助け舟を出す。

「おいおい、俺はご主人様ってのもあんまし…」

「だ、駄目ですか?」

クーとポウは、同じように耳と尻尾を垂れさせて目を伏せる。

「ぐ……じゃあそれで…」

「「分かりましたご主人様!」」

「…よろしく、ご主人」

「ニャニャ…私は何時も通りでいくニャ」

クーとミンの俺の呼称が変わり、シャムは呑気に欠伸をしていると、またクーに怒られていた。

腕をクイクイ引っ張られると、そこにはシャナが。

「どうした?」

「お願いがある…」

その願いは、俺にしてもまたとない願いだった。



現在地-草原-街道

現在馬車を引いているのは1頭の馬。

俺とコロナとミスティは馬車に乗っていた。

フィオーレ村で報酬として貰ったのは、新品同然の馬車と荷車、そして馬だった。

馬は馬車と荷台が引けるように合計3匹貰い、馬車に1頭、荷車に2頭繋いでいる。

荷車にも数人乗り、馬に運んでもらっているらしい。

そして、馬車には変化が。

大の男1人が入れそうな大きな壷が置いてあり、その中には…

「シャナ」

俺が呼ぶと、壷の中からシャナが出てきた。

そう、この中は水が入っており、シャナの寝床だ。

シャナの願いというのは、自分も連れてって欲しいというものだった。

まあ、どうせ勧誘してみるつもりだったけど。

つか嫌と言っても連れてくけどな。

「何?」

「…いーや、呼んだだけだ」

「……?」

不思議そうに首を傾けるシャナが、また可愛いと思ったのは、秘密だ。

尚、同じく馬車に乗っていたミスティとコロナが異常に塩を欲しがっていた。

11/06/21 17:56更新 / ハーレム好きな奴
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■作者メッセージ
はいサハギン追加。

皆様アンケートありがとうございました。

移動できない魔物等はこうして馬車で運んでいく予定です。

次はケンタウロスです。

尚感想でこの小説が応援されている事を知り、感激いたしました…これからも精進しますのでどうぞお付き合い下さい。

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