再会の港街はバフォメットと共に?
現在地-ザンガール-酒場
センだ。
現在、俺たちは非常に困っている。
それは…
「金が無い」
そう、金が無いのだ。
「え?でも私の渡した闘技場の優勝賞金は…?」
「この人数で風呂のある良い宿に泊まったらそんな金無くなるわ」
そう、既に俺達のパーティは俺、アノン、ポム、パノ、キャノ、ウト、ティピ、アーリア、ヴェロニカ、クー、シャム、ミンと10人以上。
人数が多すぎると移動や泊まるのも難しくなる。
「と言うわけで、此処にセン一行緊急会議を行う」
「「わーわー、やんややんや」」
酒場でも水しか頼んでいない…そんな状態で会議開始だ。
「で、まず金の事だが…お前達金になりそうなもの持ってないか?」
全員首を横に振った。
「…クー、お前の首飾りは?」
そう、あの遺跡にあった首飾りだ。
あれはあの後クーが大切に持っているはずだ。
「これは絶対に駄目だ」
首飾りを見せるが、ギュッと握って渡さない。
「結局それは何なんだい?」
アーリアの問いに、クーは少し考える素振りをするが何かを決めたように俺を見た。
「この首飾りは、主の証だ」
「主の証〜?」
ポムが首を横に傾けて聞き返す。ちょっと可愛い。
「ああ、あの遺跡の中心部には壁画があっただろう?あれはあらゆる魔物を率いた男の絵なんだ。あの遺跡はその男が魔物達と暮らしたもので…私はその魔物の子孫の1人なんだ」
「もしかして…その首飾りはその男の遺産って事かしら?」
「その通りだ」
成る程ねぇ……結構年代物なんだな。
「この首飾りには呪いがかかっていて、相応しくない者が身に付けるとその者の首を絞めるのだそうだ。教団があの遺跡に来た時も何人か絞め殺されたようだ」
「そう言うことニャ、迂闊に身に付けると呪いが襲い掛かるニャよ〜?」
ふぅん、面白そうだな。
「借してみ」
クーから首飾りを借りると、まじまじと見つめる。
「兄貴、絶対に付けちゃ駄目だぞ!もし兄貴が死んだら…」
「そうだよセン、そういう胡散臭い物は付けないに限る」
「センさん…」
「…おりゃ」
付けてみた。
「「「「「あぁああああああああああああああああ!?」」」」」
何人か大声で叫んで、周りから注目された。
「……何にも起こらないケド」
そう、首飾りは何の反応も無い。
「って言う事は、センが後継者ニャ?」
「ん…多分…」
「………」
ミンとシャムは落ち着いているが、クーはあんぐりと口を開けていた。
「はいはーい!後継者って何?」
ティピの質問に、シャムがニヤッと笑う。
「後継者とは、さっきの魔物を率いていた男が、何れ自分の意思を継ぐ男が現れると予言を残したのニャ…で、私やクーの一族はその継承者に従う事になってるのニャ」
「………け、継承者様!遺跡での数々の暴言、真に申し訳ありませんでしたぁ!」
テーブルにガツンとどたまをぶつけながら謝るクー。
何だか急に態度変わったな。
今までは普通に仲間だったのに急に家臣みたいになっちまった。
「いや、別に気にしてねーし…違和感あるから止めれ」
「し、しかし…!」
「そうだニャ、クーは少し堅くなりすぎニャ」
「シャムはもう少し掟を守れ!」
「てゆーか最初の議題は何処へ…?」
「何処へー!?」
ウトは冷静だな…キャノは相変わらずだけど。
「そんな事より現状をどうにかしないとね」
「そんな事とはなんだっ!」
スパンッと何処からか出したハリセンでアーリアの頭を叩くクー。
コイツは突っ込みの才能があるな。
「で、まあクー達の件は後回しだ。今は金の無い現状を打破するためにだな…」
「「あぁー!」」
言葉を区切ると、後ろから2つの同時に声が聞こえたので振り返った。
「ん?」
「「え?」」
そこに居たのは何時ぞやのドラゴンとワーウルフだった。
現在地-アルトリア砂漠-ザンガール付近上空
sideイオ
「流石ドラゴン、飛ぶ速度もとても早いですね」
「しかし数日飛び続けて流石に疲れたな…街に着いたら文字通り羽を休めたい…」
背にミスティを乗せて砂漠を飛び続ける。
「良いんですか?愛しの彼を早く見つけないと誰かに盗られちゃいますよ?」
「はっ!?や、やはり街に着いても彼を探すのが先決だな」
「クフフ…イオさん可愛いですね」
「ぐ…!」
何だか複雑な心境だ…。
ふと下を見ると、少しばかり軽装だが私達と同じく南へ向かって歩いているワーウルフを見つけた。
何だか少しフラフラしてるが大丈夫か?
「うっ…」
街まであと僅かだが、バタリと倒れてしまった。
「…ミスティ、少し降りるぞ」
「え?はい」
高度を落としてワーウルフの彼女の傍に降りる。
「大丈夫か?」
「あ、う…」
私達に気がつくと、僅かに呻き声を出して手を伸ばした。
「脱水症状ですね。随分無茶な砂漠の渡り方をしたんでしょうか?」
ミスティは水筒を取り出すとワーウルフに差し出した。
それをひったくる様に受け取り、水筒を逆さまにするように飲んでいる。
「ゴクゴクゴク…!プハッ!助かった…ありがとう、助けてくれて」
水を飲み、立ち上がると頭を下げる。
「別にいいですよ、魔物同士助け合わなくちゃ。私は魔女のミスティです」
「ああ、ミスティの言うとおりだ。私はイオ、見ての通りドラゴンだ」
「私はワーウルフのポウ。本当にありがとう、これでザンガールへ行ける…」
「ザンガールを目指してるんですか?」
ポツリと漏らした彼女の目的地は、私達と同じだった。
「うん、そこに私の探してる人がいるんだ」
「何故そんな事が分かるんだい?」
「臭いが強くなってきてるから、多分次の街で追いつけるんだ」
「それは奇遇だ。日数から私の探す人も恐らくザンガールにいる…途中まで一緒に行かないか?」
「いいの?じゃあ行こうか」
こうして私とミスティに加えてワーウルフのポウが加わり私達はザンガール到着した。
「此処か…」
砂が少し舞い散り、港も見える。
「じゃあ、私はここから臭いを追いかけるから…本当にありがとう」
ポウは街に着くと念を押すように礼を言うと鼻をヒクヒクさせて街中へ入っていった。
「では、私達もそれぞれ探しましょう。私はコロナ様、イオさんは愛しの彼をね♪」
「あまりからかうと私も怒るぞ」
私がそう言って少しだけ凄むとミスティは慌てて逃げていった。
「全く、ミスティは真面目な割りに茶目っ気があるな…」
まあいい、先ずは酒場で情報収集だな。
そうして私は酒場に向かい入り口を通ろうとすると、誰かと肩がぶつかった。
「あ、すまない」
「いえ、こちらこそ…」
そのぶつかった相手は、さっき分かれたばかりのポウだった。
「ポウ、どうしたんだ?」
「いや…臭いはこの先で一番強くなってるんだ。イオは?」
「此処で情報集めだ。情報は酒場に集まるからな」
そうして2人で酒場に入っていった。
「で、君の探す人は何処だい?」
「ちょっと待って…酒の臭いが強くて…あっちだ!」
ポウが指差した方には黒い髪、黒いジパング風の服の後姿…何だかどこかで見た人物だ。
「そんな事より現状をどうにかしないとね」
「そんな事とはなんだっ!」
彼の傍に座っているアヌビスが紙で出来た物でリザードマンの頭を叩いた。
「で、まあクー達の件は後回しだ。今は金の無い現状を打破するためにだな…」
その声には聞き覚えがある…間違いない!
「「あぁー!」」
だがポウと声が重なる。
「ん?」
「「え?」」
どういう…事だ?
現在地-ザンガール-酒場
sideセン
えーっと、これはどういう状況だ?
以前俺が倒したドラゴンとワーウルフは俺の隣に座っていた。
「セン、これは一体どういうことなんだい?」
アノンの妙に威圧感のある声に思わず怯むが此処はしっかり説明しないとな。
「えっとな、このドラゴンは前に山奥の廃墟で戦って…こっちのワーウルフは以前教団に襲われている所を助けたんだ」
「ふぅん……」
こ、怖いぞ皆。
「で、結局お前達は何しに此処へ?」
ともかくこっちにも事情を聞いてみよう。
「私は自分の夫に相応しき男を追いかけてきたのだ」
「私はご主人様に身も心も捧げる為に…」
…うん、すっげえ気まずい。
「と、とにかく自己紹介から…俺はセン・アシノ」
「イオだ」
「ポウです、ご主人様」
ご主人様止めれ。
「アノンだよ…」
「私はポムです〜」
「あたいはパノ…兄貴に手ぇ出すなよ?」
「キャノー!」
「う、ウトです…」
「ティピ…見ての通りラージマウス…」
「アーリアだ…センには恩があって同行させて貰っている」
「ヴェロニカよ、よろしくね?」
「…クーだ」
「シャムだニャ」
「……………ミン」
一通り自己紹介が終わると、イオが皆を睨んだ。
「所で、君達はセンの何なんだ?」
「そうね、クーとシャムとミン以外は犯し、犯された関係と言った所かしら?」
その言葉に、ビクッと大きく震えるイオ。
「そ、そうか…まさか本当になるとは…!」
「ご主人様!私も犯して下さい!」
「ポウも何を言っている!私も交わるつもりだぞ!」
…もうなにこの状況?
「様はあんた達も兄貴に惚れてるってことか?」
「「当然!」」
あー、段々と面倒になってきたな。
「ご主人様は皆をを抱いたんですか?」
「まあね、因みにアタシももう2回もヤったよ?」
「くぅ…!私とした事が一生の不覚…我が夫を先に犯されてしまうとは…!」
「これは間違いない…センが継承者だ…」
「じゃあ私達は掟に従ってこのままセンに着いて行くのニャ?」
……皆ガヤガヤ騒いでるし、今なら逃げてもばれないよな?
「そういう事になる…それでは継承者様、これから私達の操を…」
「受け取ってくれニャ♪」
「ん…」
「「「…あれ?」」」
「あ、兄貴がいない!」
「アイツ逃げたんだね」
「探し出そう、恩人に何かあったら事だ」
「アーリアさん心配なら素直にそう言ったらどうですか〜?」
「か〜?」
「なっ!?わ、私は別に…」
「あら?気づいてないのはセンくらいよ?恩人って言って誤魔化さないでも皆知ってるわ」
「そそそそ、そんな…」
「それより早く探しにいかないのかい?」
こんな感じのガールズトークが10分続いていたらしい。
現在地-ザンガール-噴水広場
いやー、この街は海に面してるって言っても砂漠地帯の端っこだからあっついな…アイス食いたい…。
「だが金が無い…」
足を進めている内にこの街の中心地である噴水広場に辿り着いた。
ふらふらしてても仕方がないのでその辺にあったベンチに座ってみた。
「…なんか仕事もしないでこうしてるとリストラされたサラリーマンみてーだな」
それにしてもこの金欠状態どうすっかね。
ギャンブルとかで稼ぐか?
いや、このまま旅を続けていくんだから一時凌ぎの案じゃ駄目だな。
旅をしながら稼げる事って何かないか?
俺の特技は脚刀流だけだからな…戦う事だ。
「あ、ピンと来た」
そうだ、このまま傭兵団でも作ってみるか。
幸い仲間の魔物達は戦う力を持ってる奴も多いし。
「これで行こう。駄目だったら別の案を考えればいいし」
それじゃ、あいつ等の所へ戻ろうとするか。
ベンチから立つと、なんだか向こうが騒がしくなる。
「そ、そいつを捕まえてくれー!泥棒だー!」
とある青年が黒いローブを纏った男を追いかけている。
「ククク…残念だな、俺を捕まえるには100年早いぜ」
中々素早いな…あれじゃ素人は捕まえられないし、足運びは何か武道をやってたっぽいな。
「待てい!」
お、男の前にちっこい女の子が立ちはだかったぞ。
でもあの子魔物だな。
山羊みたいな角にモフモフの手足。
露出の激しい服装?にマントを羽織っている。
「あ!?退けやガキィ!」
「フン、誰がガキじゃ…お主よりは遥か昔に生まれておるわ!」
その魔物は、ブツブツと呪文を唱えると腕に炎を纏わせた。
「なっ…!魔術か!?」
「喰らうがいいわ!」
腕の炎を放とうと勢いを出すために踏み出したが、1歩目で何故かバナナの皮を踏んだ。
そして派手に転び、炎の魔術は暴発して爆発を巻き起こした。
「うにゃああああああああああ!?」
「ぎゃああああああああああああ!?」
その爆発はその魔物と泥棒の男を巻き込んだ。
「…………えぇ〜?」
思わずそう漏らした。
爆発の煙が晴れると、服はボロボロ、髪の毛がアフロになった男と、ただでさえ露出の激しい服が破れて丸見えになっている魔物が目をグルグル回して気絶していた。
周りのギャラリーも唖然としている。
まあ、放っておく訳にもいかんので俺は2人に近づき、男は駆けつけ自警団のような奴等に突き出した。
そして上半身の着物だけ脱いで魔物の子にかけると、背中におぶってその場を離れた。
…皆の所に戻るか。
俺はとりあえず酒場に戻ることにしようと思ったのだが…
「ご主人様見つけたー!」
「ようやく見つけました!」
「ましたー!」
先に見つかった。
「ようお前等。ほいじゃ取り合えず宿に戻るか」
「あ、センさんその背中の子は…?」
「ま、ちょっとな…宿に行ってから説明するわ」
こんな感じで俺たちは宿に戻ってきたのだが…金が無いのでこの宿からも今夜出て行かなければならない。
まあとにかくこの子をソファに寝かせて皆それぞれ椅子に座る。
「で、そこ子は誰なんだい?」
アーリアは何故か少し気まずそうに此方に質問してくる。
「ん、さっき広場でだな…」
俺はさっきあった事件を説明すると何人か笑いを堪えている奴がいた。
「笑うでないわっ!」
「うおっ!?起きてたのか!?」
「お主が事件の説明をしている間にの…バフォメットの体力を舐めるでないわ」
小さい体にでっかいガッツってとこか?
て言うか今起きたせいで俺がかけておいた上着がとれてまた丸見えだ。
「お前、名前は?」
「ワシはバフォメットのコロナじゃ!北の国の首都にあるサバトのガーランド支部の支部長じゃ!」
「ガーランドのサバト支部長?」
イオが何かに気づいたように声を漏らす。
「どうしたイオ?」
「いや、私はそのガーランドから此処へ来たのだが…その時にサバトからバフォメットが逃げ出して…それを追ってきた魔女と此処に来たのだが…」
「そ、それは真か…?だ、誰が来た!?」
「ミスティという魔女だが…」
イオがそこまで言った所で、部屋の扉が爆発して吹き飛んだ。
「な、何だい!?」
アノンは思わず斧を構えて戦闘態勢に入るが、その向こうにいたのは小さな女の子だった。
「「ミスティ!」」
イオとコロナが同時に叫ぶ。
この子が今話してたミスティって魔女か。
「コロナ様…漸く見つけましたよ…兄様探しはガーランドでやって下さい!戻ってきて下さい!」
「嫌じゃ!あの街には碌な男がおらん!だからワシは自分に相応しい兄様を見つけるんじゃ!」
「我侭言うんじゃありませーん!」
魔女は先端に骨の付いた杖を構える。
「意地でも戻らんのじゃー!」
コロナは、突如空中に鎌を出現させてそれを構える。
「「吹き飛べー!」」
「ちょ、お前等場所考え…」
その後、とある宿屋の一室が2つの魔法で吹き飛んだのは言うまでも無い。
現在地-荒野と草原の間-街道
カラカラと車輪が回る音が辺りに響く。
あの後、宿屋がぶっ壊れた修理代はサバトから払われる事になった…良かった俺達が払えって言われなくて。
そしてその後、俺が傭兵団を作ると言ったら賛成されたので、積荷用の馬車を買った。
ま、ボロボロだけど。
しかし馬まで買う金は無かった…そして…
「お、重い…!」
俺が馬車を引いていた。
「セン、遅いよ」
「だったらお前がやれアノン!」
くっそー…何時か馬を買ってやる…!
「ご主人様、手伝います」
ポウが俺の横で馬車を引くのを手伝ってくれる…健気だ…。
「て言うか、全員は乗れないからこうして何人か歩かなきゃならないんだよね」
ティピもそう呟き少し不満そうだ。
「ったく、金が入ったら馬車も買い換えないとな…」
当面の目的は…
「とにかく稼ぐか」
パーティは更に増えるし……そう、新しいメンバーが加わったのだ。
イオとポウは言うまでも無く…
「あの…手伝いましょうか?」
「次は何処へ行くのじゃ?」
そう、魔女のミスティとバフォメットのコロナが加わった。
コロナは結局恋人探しの旅を続けるらしく、ミスティはその見張り役だそうだ。
そして何故か俺についてくると言い始めたのだ。
「…どうしてこうなった」
そう言わずにはいられなかった。
センだ。
現在、俺たちは非常に困っている。
それは…
「金が無い」
そう、金が無いのだ。
「え?でも私の渡した闘技場の優勝賞金は…?」
「この人数で風呂のある良い宿に泊まったらそんな金無くなるわ」
そう、既に俺達のパーティは俺、アノン、ポム、パノ、キャノ、ウト、ティピ、アーリア、ヴェロニカ、クー、シャム、ミンと10人以上。
人数が多すぎると移動や泊まるのも難しくなる。
「と言うわけで、此処にセン一行緊急会議を行う」
「「わーわー、やんややんや」」
酒場でも水しか頼んでいない…そんな状態で会議開始だ。
「で、まず金の事だが…お前達金になりそうなもの持ってないか?」
全員首を横に振った。
「…クー、お前の首飾りは?」
そう、あの遺跡にあった首飾りだ。
あれはあの後クーが大切に持っているはずだ。
「これは絶対に駄目だ」
首飾りを見せるが、ギュッと握って渡さない。
「結局それは何なんだい?」
アーリアの問いに、クーは少し考える素振りをするが何かを決めたように俺を見た。
「この首飾りは、主の証だ」
「主の証〜?」
ポムが首を横に傾けて聞き返す。ちょっと可愛い。
「ああ、あの遺跡の中心部には壁画があっただろう?あれはあらゆる魔物を率いた男の絵なんだ。あの遺跡はその男が魔物達と暮らしたもので…私はその魔物の子孫の1人なんだ」
「もしかして…その首飾りはその男の遺産って事かしら?」
「その通りだ」
成る程ねぇ……結構年代物なんだな。
「この首飾りには呪いがかかっていて、相応しくない者が身に付けるとその者の首を絞めるのだそうだ。教団があの遺跡に来た時も何人か絞め殺されたようだ」
「そう言うことニャ、迂闊に身に付けると呪いが襲い掛かるニャよ〜?」
ふぅん、面白そうだな。
「借してみ」
クーから首飾りを借りると、まじまじと見つめる。
「兄貴、絶対に付けちゃ駄目だぞ!もし兄貴が死んだら…」
「そうだよセン、そういう胡散臭い物は付けないに限る」
「センさん…」
「…おりゃ」
付けてみた。
「「「「「あぁああああああああああああああああ!?」」」」」
何人か大声で叫んで、周りから注目された。
「……何にも起こらないケド」
そう、首飾りは何の反応も無い。
「って言う事は、センが後継者ニャ?」
「ん…多分…」
「………」
ミンとシャムは落ち着いているが、クーはあんぐりと口を開けていた。
「はいはーい!後継者って何?」
ティピの質問に、シャムがニヤッと笑う。
「後継者とは、さっきの魔物を率いていた男が、何れ自分の意思を継ぐ男が現れると予言を残したのニャ…で、私やクーの一族はその継承者に従う事になってるのニャ」
「………け、継承者様!遺跡での数々の暴言、真に申し訳ありませんでしたぁ!」
テーブルにガツンとどたまをぶつけながら謝るクー。
何だか急に態度変わったな。
今までは普通に仲間だったのに急に家臣みたいになっちまった。
「いや、別に気にしてねーし…違和感あるから止めれ」
「し、しかし…!」
「そうだニャ、クーは少し堅くなりすぎニャ」
「シャムはもう少し掟を守れ!」
「てゆーか最初の議題は何処へ…?」
「何処へー!?」
ウトは冷静だな…キャノは相変わらずだけど。
「そんな事より現状をどうにかしないとね」
「そんな事とはなんだっ!」
スパンッと何処からか出したハリセンでアーリアの頭を叩くクー。
コイツは突っ込みの才能があるな。
「で、まあクー達の件は後回しだ。今は金の無い現状を打破するためにだな…」
「「あぁー!」」
言葉を区切ると、後ろから2つの同時に声が聞こえたので振り返った。
「ん?」
「「え?」」
そこに居たのは何時ぞやのドラゴンとワーウルフだった。
現在地-アルトリア砂漠-ザンガール付近上空
sideイオ
「流石ドラゴン、飛ぶ速度もとても早いですね」
「しかし数日飛び続けて流石に疲れたな…街に着いたら文字通り羽を休めたい…」
背にミスティを乗せて砂漠を飛び続ける。
「良いんですか?愛しの彼を早く見つけないと誰かに盗られちゃいますよ?」
「はっ!?や、やはり街に着いても彼を探すのが先決だな」
「クフフ…イオさん可愛いですね」
「ぐ…!」
何だか複雑な心境だ…。
ふと下を見ると、少しばかり軽装だが私達と同じく南へ向かって歩いているワーウルフを見つけた。
何だか少しフラフラしてるが大丈夫か?
「うっ…」
街まであと僅かだが、バタリと倒れてしまった。
「…ミスティ、少し降りるぞ」
「え?はい」
高度を落としてワーウルフの彼女の傍に降りる。
「大丈夫か?」
「あ、う…」
私達に気がつくと、僅かに呻き声を出して手を伸ばした。
「脱水症状ですね。随分無茶な砂漠の渡り方をしたんでしょうか?」
ミスティは水筒を取り出すとワーウルフに差し出した。
それをひったくる様に受け取り、水筒を逆さまにするように飲んでいる。
「ゴクゴクゴク…!プハッ!助かった…ありがとう、助けてくれて」
水を飲み、立ち上がると頭を下げる。
「別にいいですよ、魔物同士助け合わなくちゃ。私は魔女のミスティです」
「ああ、ミスティの言うとおりだ。私はイオ、見ての通りドラゴンだ」
「私はワーウルフのポウ。本当にありがとう、これでザンガールへ行ける…」
「ザンガールを目指してるんですか?」
ポツリと漏らした彼女の目的地は、私達と同じだった。
「うん、そこに私の探してる人がいるんだ」
「何故そんな事が分かるんだい?」
「臭いが強くなってきてるから、多分次の街で追いつけるんだ」
「それは奇遇だ。日数から私の探す人も恐らくザンガールにいる…途中まで一緒に行かないか?」
「いいの?じゃあ行こうか」
こうして私とミスティに加えてワーウルフのポウが加わり私達はザンガール到着した。
「此処か…」
砂が少し舞い散り、港も見える。
「じゃあ、私はここから臭いを追いかけるから…本当にありがとう」
ポウは街に着くと念を押すように礼を言うと鼻をヒクヒクさせて街中へ入っていった。
「では、私達もそれぞれ探しましょう。私はコロナ様、イオさんは愛しの彼をね♪」
「あまりからかうと私も怒るぞ」
私がそう言って少しだけ凄むとミスティは慌てて逃げていった。
「全く、ミスティは真面目な割りに茶目っ気があるな…」
まあいい、先ずは酒場で情報収集だな。
そうして私は酒場に向かい入り口を通ろうとすると、誰かと肩がぶつかった。
「あ、すまない」
「いえ、こちらこそ…」
そのぶつかった相手は、さっき分かれたばかりのポウだった。
「ポウ、どうしたんだ?」
「いや…臭いはこの先で一番強くなってるんだ。イオは?」
「此処で情報集めだ。情報は酒場に集まるからな」
そうして2人で酒場に入っていった。
「で、君の探す人は何処だい?」
「ちょっと待って…酒の臭いが強くて…あっちだ!」
ポウが指差した方には黒い髪、黒いジパング風の服の後姿…何だかどこかで見た人物だ。
「そんな事より現状をどうにかしないとね」
「そんな事とはなんだっ!」
彼の傍に座っているアヌビスが紙で出来た物でリザードマンの頭を叩いた。
「で、まあクー達の件は後回しだ。今は金の無い現状を打破するためにだな…」
その声には聞き覚えがある…間違いない!
「「あぁー!」」
だがポウと声が重なる。
「ん?」
「「え?」」
どういう…事だ?
現在地-ザンガール-酒場
sideセン
えーっと、これはどういう状況だ?
以前俺が倒したドラゴンとワーウルフは俺の隣に座っていた。
「セン、これは一体どういうことなんだい?」
アノンの妙に威圧感のある声に思わず怯むが此処はしっかり説明しないとな。
「えっとな、このドラゴンは前に山奥の廃墟で戦って…こっちのワーウルフは以前教団に襲われている所を助けたんだ」
「ふぅん……」
こ、怖いぞ皆。
「で、結局お前達は何しに此処へ?」
ともかくこっちにも事情を聞いてみよう。
「私は自分の夫に相応しき男を追いかけてきたのだ」
「私はご主人様に身も心も捧げる為に…」
…うん、すっげえ気まずい。
「と、とにかく自己紹介から…俺はセン・アシノ」
「イオだ」
「ポウです、ご主人様」
ご主人様止めれ。
「アノンだよ…」
「私はポムです〜」
「あたいはパノ…兄貴に手ぇ出すなよ?」
「キャノー!」
「う、ウトです…」
「ティピ…見ての通りラージマウス…」
「アーリアだ…センには恩があって同行させて貰っている」
「ヴェロニカよ、よろしくね?」
「…クーだ」
「シャムだニャ」
「……………ミン」
一通り自己紹介が終わると、イオが皆を睨んだ。
「所で、君達はセンの何なんだ?」
「そうね、クーとシャムとミン以外は犯し、犯された関係と言った所かしら?」
その言葉に、ビクッと大きく震えるイオ。
「そ、そうか…まさか本当になるとは…!」
「ご主人様!私も犯して下さい!」
「ポウも何を言っている!私も交わるつもりだぞ!」
…もうなにこの状況?
「様はあんた達も兄貴に惚れてるってことか?」
「「当然!」」
あー、段々と面倒になってきたな。
「ご主人様は皆をを抱いたんですか?」
「まあね、因みにアタシももう2回もヤったよ?」
「くぅ…!私とした事が一生の不覚…我が夫を先に犯されてしまうとは…!」
「これは間違いない…センが継承者だ…」
「じゃあ私達は掟に従ってこのままセンに着いて行くのニャ?」
……皆ガヤガヤ騒いでるし、今なら逃げてもばれないよな?
「そういう事になる…それでは継承者様、これから私達の操を…」
「受け取ってくれニャ♪」
「ん…」
「「「…あれ?」」」
「あ、兄貴がいない!」
「アイツ逃げたんだね」
「探し出そう、恩人に何かあったら事だ」
「アーリアさん心配なら素直にそう言ったらどうですか〜?」
「か〜?」
「なっ!?わ、私は別に…」
「あら?気づいてないのはセンくらいよ?恩人って言って誤魔化さないでも皆知ってるわ」
「そそそそ、そんな…」
「それより早く探しにいかないのかい?」
こんな感じのガールズトークが10分続いていたらしい。
現在地-ザンガール-噴水広場
いやー、この街は海に面してるって言っても砂漠地帯の端っこだからあっついな…アイス食いたい…。
「だが金が無い…」
足を進めている内にこの街の中心地である噴水広場に辿り着いた。
ふらふらしてても仕方がないのでその辺にあったベンチに座ってみた。
「…なんか仕事もしないでこうしてるとリストラされたサラリーマンみてーだな」
それにしてもこの金欠状態どうすっかね。
ギャンブルとかで稼ぐか?
いや、このまま旅を続けていくんだから一時凌ぎの案じゃ駄目だな。
旅をしながら稼げる事って何かないか?
俺の特技は脚刀流だけだからな…戦う事だ。
「あ、ピンと来た」
そうだ、このまま傭兵団でも作ってみるか。
幸い仲間の魔物達は戦う力を持ってる奴も多いし。
「これで行こう。駄目だったら別の案を考えればいいし」
それじゃ、あいつ等の所へ戻ろうとするか。
ベンチから立つと、なんだか向こうが騒がしくなる。
「そ、そいつを捕まえてくれー!泥棒だー!」
とある青年が黒いローブを纏った男を追いかけている。
「ククク…残念だな、俺を捕まえるには100年早いぜ」
中々素早いな…あれじゃ素人は捕まえられないし、足運びは何か武道をやってたっぽいな。
「待てい!」
お、男の前にちっこい女の子が立ちはだかったぞ。
でもあの子魔物だな。
山羊みたいな角にモフモフの手足。
露出の激しい服装?にマントを羽織っている。
「あ!?退けやガキィ!」
「フン、誰がガキじゃ…お主よりは遥か昔に生まれておるわ!」
その魔物は、ブツブツと呪文を唱えると腕に炎を纏わせた。
「なっ…!魔術か!?」
「喰らうがいいわ!」
腕の炎を放とうと勢いを出すために踏み出したが、1歩目で何故かバナナの皮を踏んだ。
そして派手に転び、炎の魔術は暴発して爆発を巻き起こした。
「うにゃああああああああああ!?」
「ぎゃああああああああああああ!?」
その爆発はその魔物と泥棒の男を巻き込んだ。
「…………えぇ〜?」
思わずそう漏らした。
爆発の煙が晴れると、服はボロボロ、髪の毛がアフロになった男と、ただでさえ露出の激しい服が破れて丸見えになっている魔物が目をグルグル回して気絶していた。
周りのギャラリーも唖然としている。
まあ、放っておく訳にもいかんので俺は2人に近づき、男は駆けつけ自警団のような奴等に突き出した。
そして上半身の着物だけ脱いで魔物の子にかけると、背中におぶってその場を離れた。
…皆の所に戻るか。
俺はとりあえず酒場に戻ることにしようと思ったのだが…
「ご主人様見つけたー!」
「ようやく見つけました!」
「ましたー!」
先に見つかった。
「ようお前等。ほいじゃ取り合えず宿に戻るか」
「あ、センさんその背中の子は…?」
「ま、ちょっとな…宿に行ってから説明するわ」
こんな感じで俺たちは宿に戻ってきたのだが…金が無いのでこの宿からも今夜出て行かなければならない。
まあとにかくこの子をソファに寝かせて皆それぞれ椅子に座る。
「で、そこ子は誰なんだい?」
アーリアは何故か少し気まずそうに此方に質問してくる。
「ん、さっき広場でだな…」
俺はさっきあった事件を説明すると何人か笑いを堪えている奴がいた。
「笑うでないわっ!」
「うおっ!?起きてたのか!?」
「お主が事件の説明をしている間にの…バフォメットの体力を舐めるでないわ」
小さい体にでっかいガッツってとこか?
て言うか今起きたせいで俺がかけておいた上着がとれてまた丸見えだ。
「お前、名前は?」
「ワシはバフォメットのコロナじゃ!北の国の首都にあるサバトのガーランド支部の支部長じゃ!」
「ガーランドのサバト支部長?」
イオが何かに気づいたように声を漏らす。
「どうしたイオ?」
「いや、私はそのガーランドから此処へ来たのだが…その時にサバトからバフォメットが逃げ出して…それを追ってきた魔女と此処に来たのだが…」
「そ、それは真か…?だ、誰が来た!?」
「ミスティという魔女だが…」
イオがそこまで言った所で、部屋の扉が爆発して吹き飛んだ。
「な、何だい!?」
アノンは思わず斧を構えて戦闘態勢に入るが、その向こうにいたのは小さな女の子だった。
「「ミスティ!」」
イオとコロナが同時に叫ぶ。
この子が今話してたミスティって魔女か。
「コロナ様…漸く見つけましたよ…兄様探しはガーランドでやって下さい!戻ってきて下さい!」
「嫌じゃ!あの街には碌な男がおらん!だからワシは自分に相応しい兄様を見つけるんじゃ!」
「我侭言うんじゃありませーん!」
魔女は先端に骨の付いた杖を構える。
「意地でも戻らんのじゃー!」
コロナは、突如空中に鎌を出現させてそれを構える。
「「吹き飛べー!」」
「ちょ、お前等場所考え…」
その後、とある宿屋の一室が2つの魔法で吹き飛んだのは言うまでも無い。
現在地-荒野と草原の間-街道
カラカラと車輪が回る音が辺りに響く。
あの後、宿屋がぶっ壊れた修理代はサバトから払われる事になった…良かった俺達が払えって言われなくて。
そしてその後、俺が傭兵団を作ると言ったら賛成されたので、積荷用の馬車を買った。
ま、ボロボロだけど。
しかし馬まで買う金は無かった…そして…
「お、重い…!」
俺が馬車を引いていた。
「セン、遅いよ」
「だったらお前がやれアノン!」
くっそー…何時か馬を買ってやる…!
「ご主人様、手伝います」
ポウが俺の横で馬車を引くのを手伝ってくれる…健気だ…。
「て言うか、全員は乗れないからこうして何人か歩かなきゃならないんだよね」
ティピもそう呟き少し不満そうだ。
「ったく、金が入ったら馬車も買い換えないとな…」
当面の目的は…
「とにかく稼ぐか」
パーティは更に増えるし……そう、新しいメンバーが加わったのだ。
イオとポウは言うまでも無く…
「あの…手伝いましょうか?」
「次は何処へ行くのじゃ?」
そう、魔女のミスティとバフォメットのコロナが加わった。
コロナは結局恋人探しの旅を続けるらしく、ミスティはその見張り役だそうだ。
そして何故か俺についてくると言い始めたのだ。
「…どうしてこうなった」
そう言わずにはいられなかった。
11/06/19 15:18更新 / ハーレム好きな奴
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