前編
「おーい後輩よ、コン迷(コンガラ・ガッタの迷宮)やらせてくれ。」
「えぇー、またッスか?部長。」
「アレは携帯ゲームにしては歯ごたえがあるからな。」
「シュマホあるんだし、部長もアカウント取ればいいのに…」
「パズルは好きだが、お前のように際限もなく金を払う気は無い。」
「ケチめ。」
「いいじゃないか。俺は難しいパズルを楽しめる。
お前は詰まった面を解消して先に進める。まさにWin-Winじゃないか。」
「まあそうですけど…」
俺は昔から、古今東西の様々なパズルが大好きだ。
ジグソーパズルに始まり、箱入り娘などのスライドパズル、ロジック、ナンプレ、
知恵の輪にルービックキューブ…どれも数え切れないほど解いてきた。
また、3次元の物だけでなく、パズルゲームも大好きだ。
倉庫番に落ちモノ、某英国紳士のゲームに至っては派生作品まで全制覇してしまう程に。
それら幾多のパズルを見つけては、知恵を絞り、頭を捻り、時には挫折しかけながら、
どうにか自らの力で解き明かしていく…それがたまらなく楽しいのだ。
「…なんだ、今回は3つだけか。」
「俺だって日々成長してるんですよ。」
「このままじゃ満足できないな…。クリア済みのもやらせてくれ。」
「えー、ちょっと待ってくださいよ、そろそろあの子からメールが…」
「メールか他の誰かが来たら返してやるから、そこの白ジグソーでもやってろ。」
趣味が高じ、大学に入ってからはパズル同好会など作ってしまった。
パズルを買い漁って解いたり、時には自ら作り出したりするのが主な活動だ。
…まあ、たった五人の零細サークルだが。
「あ、他のみんなだったら今日は来ませんよ。」
「何故?」
「えーとそれぞれ、歯医者、バイト、恋人が放してくれない…だそうです。」
「なんだ最後の…爆発しろ。お前もろとも。」
「俺も!?」
「…あ、メールだ…仕方ない、返す。」
「どもッス。どれどれ…おお、やったッ!すぐ返信しないと…」
その後も後輩は、暗くなるまで嬉々としてメールのやり取りを続けていた。
…結局活動は諦め、ゲームも大して出来ないままお開きとなり、帰宅した。
「ただいま…っと。」
カバンを無造作に置き、ノートパソコンを起動する。
どうにも消化不良なので、お気に入りのパズル投稿サイトを漁るためだ。
…だが、それも今日に限って不作だった。
「…うー、全くスッキリしない…。パズルがしたい…
…無いものは無いか。さっさと食べて寝よう…。」
気が乗らないので、残り物を適当に暖めたり、作り変えたりして食卓に置く。
「…そういや今日はあのクイズの日か。一応見ておこう。」
クイズ番組はパズルがあってもあまり好きではないのだが、
その日は何としてでもパズルにありつきたくて、テレビを点けた。
『モンスターズ・ミラクル・マーケット!!』
「ん?…番組前にこんな通販やってたか?」
気にはなったが、別に変えることもないので、そのまま見続ける事にした。
まず目に飛び込んできた司会二人があまりに美人なので驚いたが、それもつかの間。
紹介された商品に、俺の心は一気に引き込まれた。
あまりにも空気を呼んだような商品が現れたからだ。
『今回ご紹介するのは、最新技術をふんだんに使った新世代のパズル!
『超絶立体パズル THE☆しあわせの箱』ですッ!!』
「パズル!」
出てきたのは、銀色の立方体。蓋があり、側面に一対の白い手形が描いてある。
高さと幅は共に約50cmらしい。これがパズル…?
『このパズルの特徴は、ズバリ『自分専用』!
ユーザー登録と簡単な頭脳のテストを行うだけで、
世界に一つだけ、貴方だけのパズルが作成されるという画期的なパズルです!
お子様からお年寄りまで、誰でも自分の力だけで出来、
なおかつ最大限に頭を使えば必ず解ける、絶妙な難易度のパズルを提供してくれます!』
「…それが本当なら、死ぬほど欲しいぞ。」
俺はむやみに難しい物よりも、そういう絶妙な難易度のパズルの方が好きだ。
まだ少し怪しさは残るが、あまりにもツボを突いてくる特徴に、期待はどんどん高まる。
『本当にそんな事が出来るのか?と思われた皆様の為に、実演いたしましょう。
私とこちらのリューナさん、それに10歳、20歳、35歳の一般の方三人で、
実際にユーザー登録と頭脳テストを行い、パズルを作成してみます!』
その声と共に現れたのは、10歳の少女、20歳の女性、35歳の男の三人。
男はともかく、10歳と20歳の二人は、司会二人に負けず劣らず綺麗な顔立ちだった。
『それでは皆さん、まずはユーザー登録です。
箱の横についてる手形に、一分間両手を合わせて下さい。』
言われたとおり、全員が箱に手を当てるのを確認すると、
『一分後…』とテロップが出て場面がカットされた。
『さあ、そろそろ登録第一段階の完了です…』
言い終わってすぐ、ポロピッ♪と軽快な電子音が全員の箱から鳴り、
横の手形が消えて、箱の上に画面とペンが現れた。
『タッチスクリーンとなっておりますので、まずここに個人情報を書き込んでいきます。
ネットワークでどこかへ送信される事は無く、しっかり保護されますので、
安心して正直にお書き下さい♪』
そしてまた、入力完了のところまでカットされる。
『はい。これでこのパズルは、貴方だけの物になりました。
では続いて頭脳テストですが、何とこのテスト、問題に答えていく形式ではなく、
全く新しい方法であなたの知能を調べてくれるんです。』
今度は箱の底に、ひとりでに大きめの穴が開く。まさか…
『さあ皆さん、箱をかぶって3分間お待ち下さい。
安全性は開発会社と一般の方々によって実証されておりますので、怖がらずに♪』
10歳の子は少し怖がってもたついていたが、全員箱を頭全体にすっぽりとかぶる。
ん?クールそうな方の司会、かぶった時に一瞬首が変な方向にずれたような…気のせいか。
そしてまたまた三分後、電子音が鳴るまでカットが入った。
『これで終わりです、箱を外してください。いよいよパズルが作られますよ…』
すると、信じられないような事が起こった。
床に置かれた全員の箱が突如輝きだし、ひとりでに浮き上がる。
そして色々な方向に激しく回転しながら、箱表面がどんどん組み変わっていった。
「う…うおおおおおおおッ!!」
あまりの展開に、思わず大声を上げてしまう。
日本はここまで技術が進んでいたのか…?いや、日本製なのかは分からないが。
暫く腰を抜かしていると、どうやらパズルの生成が終わったらしく、箱が降りてきた。
『どうですか?これが、貴方達だけのパズルです。』
確かに、箱に現れた彼女達のパズルはそれぞれ違う形式をしていた。
大人は複雑な物に、子供には解きやすそうな物に。
『見事パズルが解けた時、箱の蓋が開きます。
果たして、その中に何が待っているのか…それは、自分の目でお確かめ下さい♪』
「こ、これは…パズル抜きにしても、普通に生で見たいぞ。
…でも、高いんだろうな…?」
『お値段は通常4000円の所を、何と3000円でのご奉仕です!
送料・手数料はこちらで負担、追加料金を取られる事もございません!』
「やぁっす…!ゲーム一本より安いってどういう事だ!?」
だが、腹はもう決まっていた。たとえ後で何が起きようとも、絶対に買う。
もはや俺は、先程見た物への興味と、この目で実際に確かめたいという気持ち、
そしてパズルへの期待で胸が一杯になり、居ても経ってもいられなかった。
後でいくらつぎ込むことになっても悔いは無い…そんな思いすらあった。
「…最近何だかそわそわしてるけど、どうしたんスか?…あ!もしや、部長もついに…!」
「いいや、残念だろうが、恋人じゃなくてパズルだ。通販で面白そうなのがあってな。」
「なんだ。しかしホント好きですよね…部長。そんなにニヤけるなんて。」
「ニ…ニヤけてるか?」
「かなーり。危険人物っぽいレベルで。」
少々恥ずかしかったが、そりゃニヤけもする。
何故なら今朝、ようやく念願のアレが届いたのだから。
正直、何度も何度もサボろうと誘う悪魔と戦わされたくらいに楽しみだった。
サークルも早めに上がり、全速力で、しかし何事も無いよう注意を払って家へ。
「さあ、帰って来たぞ!いよいよ対面の時だ…」
もうダンボールをそのまま破らんばかりの勢いで開封し、
中から説明書とパズル本体を取り出す。
「…対象年齢18以上?10歳の子にもやらせてたような…まあいいか。
手順は…大体あの番組の通りだな。」
適当に流し読みし、早速ユーザー登録を行うことにした。
「よし…行くぞ!」
手順どおりに、箱に手を当てて待つ。
「…そろそろ一分…」
ポロピッ♪
「終わったか。…おおお!!出てきた!」
子供のようにはしゃぎながら、必要事項を記入していく。
そして最後の手順、頭脳テストを行うため、箱を一気にかぶった。
「………。」
箱の中は、不気味なほど暗く静か…ではなかった。
テスト中の人間を安心させるためか、視界一面に映像が映し出されたのだ。
映像は、一面の花畑と、所々に雲が浮かぶ青い空だった。
(すごくリアルだな…)
風で花同士が擦れ合いざわめく音が聞こえる。風そのものまで感じられるようだ。
しばし、その美しい景色に心を休めていると…
「?」
遠くの方に、大きな赤いリボンをつけた、一人の少女を見つけた。
ピンク色の、スカートが短く、フリフリの飾りがついている…所謂ロリータ服を着ている。
後ろを向いており顔は分からなかったが、リボンと共に風になびく長い髪は、
なんと、瑞々しい植物のような明るい青緑色をしていた。
無論、そんな髪色、現実には有り得ない。染めているのか?
「何だ?あの子…」
思わずそう呟くと、まるでこちらの声に気付いたかのように、その少女が振り返った。
「おお…?」
しかしその瞬間に、テスト終了の電子音が鳴り響き、視界がどんどん白くぼやけ始めた。
結局顔をよく見られないまま、完全に真っ白になってしまい、
黒文字で『テストが終了しました。箱を外して下さい』の文字が浮かび上がったので、
渋々ながら箱を外した。すると、穴はすぐに塞がってしまった。
「…さて…どうなる!?」
気を取り直し、箱を固唾を呑んでじっくり見守っていると、箱が光りだした。
そして…風も無く、ふわりと宙に浮き上がる。
「おおおおお!!本当だ、本当だったあああッ!!!」
嬉しさのあまり飛び跳ねそうになりながら、組み変わっていく箱を見守る。
この調子なら、パズルの出来も期待できそうだ。
こうして待っている時間さえ惜しいほどワクワクしながら、完成まで見届けた。
そして床に下りた時、箱は水色に変わっており、表面には迷路らしき物が浮かんでいた。
「ふぅ……さて、解くぞ!」
はしゃぎすぎて息が切れたが、呼吸を整えている暇さえ惜しい。
箱にかぶりつくように手をかけ、迷路のスタートを探した。
「これか?」
『スタート』と書かれた四角の中に、赤く小さな四角い板がついていた。
指で動かしてみると、壁に当たるまで勝手にまっすぐ進む。
恐らく、これを動かしてゴールまで持っていく、ゲームでよくある氷迷路だろう。
箱の色も、それに気付かせるためか。
「ふむ…こう、こう、で………こう…ん?先に進めない…」
ある所まで進んだと思ったら、そこから先に進む道が何処にも無い。
しかしよく見ると、一番奥にある壁と同じ高さ一周に、
何かの境目のような筋がついていた。
しかも、その筋は別の高さにもある。全体を何段かに分けているようだ。
そこで試しに、その段に横向きに力をかけると…
「あ、回るのか!」
どうやら段を回転させて、道を変えつつ進んでいく迷路のようだ。
謎が解けたので、引き続き軽快に進む。
…しかし、それも序盤だけの事。中盤辺りから、一気に難易度が上がった。
板の行き先を慎重に計算し、道を繋げ、時にはわざと進めないように回転させる等
一筋縄ではいかないようになっており、俺の頭脳は大いに刺激された。
「あぁ〜…久々の手強いパズル、最高だ!」
その後も試行錯誤しながら、少しずつ少しずつ進んで行き、
夜更けに差し掛かった頃、とうとうゴールへと到達した。
「よーぅし、解けたッ!!」
カチッ、という何かが外れたような音がした。恐らく蓋のロックだろう。
少し頭と首が痛くなったが、心の中は心地よい達成感に満ちていた。
…だが、しかし。
「…そういえば、こんなに早く解いてしまったら…」
パズルを楽しめるのは、一問につき一度だけなのだ。
いくら自分だけのパズルとは言え、この箱も例外ではないだろう。
勿体無い事をしたかもしれない…というか、これだけで3000円って、やっぱり…?
「まあ、解いてしまったものは仕方ないか…」
気を取り直して、箱の中身を確認する事にした。
「…ん?何だ?真っ暗だな…」
中身がよく見えなかったので、箱をよく覗き込んでみる。
「クリア、おめでとーッ!!」
「!!?」
闇の中からいきなり何者かが飛び出してきて、俺の腕を掴み、箱に引きずり込んだ。
…
「…う……?」
「あ、気が付いた?お兄さん気絶しちゃってたから、心配したよ〜。」
「え…?」
一人の、小中学生くらいの少女が、俺の顔を覗き込んでいる。
…何だ?誰だ?ここは何処だ?何なんだ?
「…俺、どうなったんだ?」
「う〜ん、それがね?
パズルを解いたお兄さんを、お祝いしてあげようとして引っ張り込んだの。
でもお兄さん、その時に気絶しちゃって…
ビックリし過ぎたのかな?そうだったらごめんね。」
「え?ご褒美?というか、ここは何処なんだ?」
「ここ?私の部屋。あの小さな箱の中は、こーんな空間に繋がっていたのです!」
「何いぃ!!?」
何なんだ…あの箱?どれだけ凄い技術を使ってるんだ!?
というかそもそも、これだけ凄い技術で何故こんなおもちゃなんかを!?
「どう、いい所でしょ?」
「う、うーむ…」
俺がいるのは、そこそこ広い、立方体の形をした部屋だった。
部屋全体が明るいのに、明かりの類は見当たらない。
周囲をよく見回せば、白とピンクの家具や、フリルのついた可愛いクッション、
ティーセット、リボンで彩られたぬいぐるみ等々、乙女チックな物が置いてある。
そして壁全体が紙の鎖や花などで飾り付けられており、まるでパーティのような様相だ。
(男としては、居心地が悪いかもな…。)
「改めて、クリアおめでとう!半日もかからないなんて…お兄さん、すごいよ!
私、気に入っちゃったな〜♪」
「あ、ありがとう…。いや待て、それで君は誰…」
言いかけたところで、ハッと思い出した。
「いや待てよ…君はもしかして、テスト中に出てきた子か!?」
あの時見えたのは後姿だけだったが、忘れもしないリボンと髪色、そしてフリフリの服。
「そうだよー♪」
満面の明るい笑顔を浮かべる彼女に、思わずドキッとしてしまった。
そういえば彼女はよく見ると、思いのほか…いや、ものすごく可愛らしい顔をしている。
くりくりと大きな目に、整った鼻、とても柔らかそうな頬、瑞々しさを湛えた唇…
しかし同時に、人間では有り得ない髪色と、正面から見て気付いたが、尖った耳も目立つ。
何だろう。特殊メイク?それとも…?
「や、やっぱりそうか…。
…で、君は何者なんだ?どうしてあの映像に…そして、どうしてこの箱の中に?」
「ん〜…ちょっと長くなるから、後で教えたげる。
今はとにかく、ご褒美受け取って!」
「ご褒美…何かくれるのか?」
「うん♪
まずは、ズボン脱いで。パンツも。」
「……は?」
「ぬ・い・で♪」
「…何故だ!?」
「だって、脱がないとあげられないじゃなーい。」
「俺の息子に何を渡す気だ!?」
「ご褒美。」
「どういう!?」
「そりゃあ、手で…ね?本番はまだダメだけど。」
悪戯っぽくそんな事を言いつつ、右手で擦るジェスチャーを…
「…って、えぇぇ!?まさか、マジで?マジでか!?」
「ご想像の通りでーす♪」
「いいいいやマズイだろ!
どういうご褒美だ!?こんな事やっていいのか!?
ドッキリとかじゃないよな!?というか君はどう見ても子供…」
「だいじょぶだいじょぶ。変に考えなくていいんだよ?」
「考えるわッ!!
何だアレ、大人のおもちゃか何かだったのか!?それとも風俗的な何か!?
にしては10歳の女の子もやれるみたいだったが…」
「ああ、アレ?実はアレ、仕込みなんだよね。本当は、基本男の人にしか売らないの。」
「そうなのか?…でも俺が見たのはゴールデンだぞ!?それに…」
「もー、深く考えなくていいの。今大切なのはぁ…」
そこまで言うと突然、頬を抑えられ、思い切り唇を奪われた。
(俺のファースト…!?)
驚きで動けず、暫くされるがままにされてしまった。
彼女はひとしきり吸った後、顔を離し、またこちらに笑いかけてきた。
「パズルを解いた貴方への、ごほうび、だよ?」
その笑顔は、それまでのとは違い、明るさの中に、不思議な妖艶さが混ざっていた。
「な、何を…ぅ……!?」
…何だろう。目の前の少女が、とてつもなく魅力的に思えてきた。
確かに『可愛らしいな』とは思っていたものの、
別にそれ以上の思いなど全然持っていなかった…はずなのに、
突然むらむらと彼女への性的な欲望が芽生えてきて、頭の中がその欲望に支配されていく。
…いや待て何故だ。いくら可愛くても、俺はどちらかと言うと年上派のはずだ…でも…
「それじゃ、ズボン脱いで♪」
「……」
「やっぱりダメなの…?」
妖艶さが消え、それまでの笑顔に戻ったばかりだった彼女の顔が、シュンと沈む。
…そんな顔をされると、断りづらい。
「はぁ…脱げば、いいんだろ?」
「…うんっ!」
すぐに笑顔が戻った。やっぱり彼女の顔には、笑顔がよく似合う。
「仕方ないな…」
彼女はどうあっても、『ご褒美』を渡すつもりらしい。
ならいっそ、素直に受け入れてしまった方がいい…ハズだ。
心の中で言い訳しつつ、下を脱いでいく。
「…ほら、脱いだぞ。」
「ワオ♪お兄さん、おっきいねー。」
いつの間にか、モノは最大級に強く立ち上がっていた。
…本気で、興奮しているのか?こんな、傷つける事が許されないような少女に。
だが……やっぱり、この彼女の反応って…?
「…やっぱり、見た事あるのか?」
「ううん。ちっちゃな頃に、お風呂でパパの見ただけだけど…
なんとなく、大きいなって思って。
…今更だけど、実は私、こういう事って初めてなんだよね。
だから…正直、緊張してるんだ。」
「…しかし、初めてにしてはノリノリじゃないか?本当だろうな?」
「ほんとにほんとだよ。緊張してガチガチになってる所見せるの恥ずかしいし…
テンション上げてかないと、ちょっと、ね。」
「…まあ、信じる。」
「ありがと。んじゃ、そこのベッドの縁に座って、足開いて♪」
「あ、ああ。」
言われたとおりにすると、彼女が手をわきわき動かしながら、俺の足の間に座り込んだ。
「多分大丈夫だと思うけど…痛かったりしたら言ってね。」
赤く上気しつつも、緊張のせいか少し強ばった、
しかしどこかわくわくしているような微笑で俺のモノを眺めつつ、
小さな左手から生えた、細く綺麗な指を俺のモノに添え、そっと握り包む。
「…!!」
「大丈夫…?」
「…いや…驚いただけだ。」
い、いくらなんでも、握られただけでここまで気持ちいいとは思わなかった…
これで擦られたら…耐えられるか?俺。一分と持たない気がする…
「それじゃ行くよー。」
「待……!」
そこから先は、声を出す事すら出来なかった。
「…ありゃー。もしかして、溜まってた?」
「…童貞だったし、注文してから数日、このパズルの事ばかり気になってて…」
……出す間も無く、出してしまったからだ。
うわ、彼女の手がベトベトに…しかも頬まで飛び散ってる…
「そういう事なら、もっかいしない?」
「…いいのか?」
「もちろん。
もっと楽しんでもらいたいし、私もいっぱい味わえるし、断る理由はないよ。」
「…じゃあ、お願いします。」
「よーし!張り切っちゃうゾ♪」
「……俺も、頑張ろう。」
そして、二回戦。
「ほぉら、にゅるにゅるー。」
「…っぐくぅぅ…!」
俺が出した液体で滑りがよくなり、先ほどよりも手の動きがスムーズだ。
…そのため、受ける快感も先程とは段違い。
つるつるぷにぷにとした手の柔らかさと温かさ、そしてその中の細かい凹凸は、
経験した事はないが、女性の膣内を連想させる。
手でこれなら、実際の、それも彼女の中は…
…ダメだ!そんな事を考えていたら、余計耐えられなくなる。
「なかなか我慢するね。いつ出しちゃってもいいんだよ?」
「ぬあぁぁ……」
自己満足なのかもしれないが、せめてもう少し長引かせ、汚名返上しなければ…
しかし彼女は、そんな俺のむなしい努力を挫くかのように、
裏筋、雁首、尿道、その他あらゆる気持ちのいい部位を柔らかな指の腹で愛撫し、
時に指先で回すようになぞったり、至近距離で息を吹きかけたりと変化をつけてくる。
本当に初めてなんだろうな!?熟達の技じゃないのかこれは…?
「お、ビクビクしてきた。イきそうなんだよね?」
「…!!」
耐えすぎて、もはや声も出せない。
これまで自分の手しか経験していなかった俺の分身は、
彼女のもたらす快感の前に、これ以上耐え切れそうになかった。
「じゃあ…とどめッ!」
手よりも熱く柔らかく、そして綺麗な桃色の唇が、ぱくりと先端を咥える。
それが最後だった。
「ぁあああッ!!!」
「んぷっ!んっ、んくっ、ふぅん…」
耐えに耐えた分、押さえつけてきた強烈な快感が一気に俺の脳に押し寄せてきた。
かつてない量の精液が放たれ、彼女の口内をどんどん満たしていく。
彼女はそれを口で全て受けきると、頬張った精液を少しずつ飲み込んでいった。
「……ぁー、すっごい美味しい…♪お兄さんの味がするよ…」
精液を飲み終え、(外見)年齢に似合わぬ恍惚とした顔で息を吐く彼女。
一呼吸おいた後、手と腕についたものや、力尽きた分身にまとわりつく液も指で拭い、
全て舐め取っていった。
「………」
その頃俺は、強い絶頂から来た放心状態から覚め、我に返り、頭を抱えていた。
やってしまった…
「ああ…まさか初対面の子に…」
「まあまあ落ち着いて。こっちが誘ったんだから。」
とんでもなく気持ちよかった事は否定しないが、
こういう事は、恋人と、もう少しロマンチックに行きたかった…
そもそも俺はどちらかと言うと年上派なのに…。
少々ショックだったが…その時、俺は一つの疑問を持った。
彼女の言葉をそのまま信じるとしたら…
(…普通、初対面の男にいきなりこんな事をするだろうか?しかも初めてで。)
実は初めて云々はやっぱり嘘で、
彼女の正体は風俗嬢的な何か…だとしても、買った男は俺以外にも全国に沢山いる筈だ。
これだけの技巧を持つ女性を多数揃え、これ程手の込んだ事を客一人一人にしていたら、
後で客からいくら搾り取ろうと、とてもじゃないが儲からないだろう。
そもそも俺など、別に金持ちな訳ではない、本当に単なる大学生なのだし。
(それに、彼女の格好…)
普通の人間ではありえない髪の色や尖った耳。
しかも間近で見て、どうやら特殊メイク等でもなさそうだ。
(…もしや、彼女は人間では…いや、現実の存在でもなく、
このパズルの一部、ロボットか何かなのではないだろうか?)
ゲームで、プレイヤーに惚れるようにできているNPCのように、
パズルを解いた人間に、性的なご褒美を与える事を目的として作られた存在…
あの箱に使われていた高度な技術から考えると、そうであってもおかしくはない。
「…機械ならノーカンか?」
「……え、機械!?私のこと!?ひどい!私、機械なんかじゃないよ!
ちゃんと生き物だよ!肉100パーセントだよ!…あ、骨とか忘れてた。」
「機械じゃないのか!?」
「そうだよ!しっかり触ってみてよ!」
差し出された腕を触ってみると、人の肌と同じ柔らかさで、不自然な何かの感触も無い。
体温も、脈拍も感じる事ができる。確かに生き物っぽいが…
「…でも、その髪色は何なんだ?染めてるとか?あと耳。」
「これは生まれつきですッ!」
「いや、そんなの人間じゃ有り得ないだろ!」
「…う〜ん……もうちょっと仲良くなってからって思ってたんだけど、
こうも疑われてるんだったら、サービスで、ちょっとだけ教えとくね。
確かに、私は人間じゃないけど…本当に機械でもないよ。生き物だよ。
ご飯も食べるし、もし怪我したら血も出るし、赤ちゃんだって産めるよ。」
「…人間でも、機械でもない?じゃあ何なんだ?」
「別の世界から来た…って言ったら、信じる?」
「何…?」
「…あんまり一度にべらべら喋ると余計信じてくれないと思うから、
私の正体も含めて、次に会う時のお楽しみね。」
「…ところで、次とか今度って何だ?次もあるのか?」
「出てみれば分かるよ。それじゃ、またね〜♪」
「えっ、うわっ、おわぁわあああ……!!?」
部屋の天井が開く。その外には、何だかよく分からない空間が広がっている。
その直後、俺の体が浮き上がり、部屋を飛び出し、その空間に放り出された。
部屋と、その中で笑顔で手を振る彼女が、どんどん小さくなっていき…
…気が付いたら、押し出されるように箱から出されていた。
「……何だったんだ…今のは…?いや、さっきの事全部…何だったんだ?」
しばらく唖然としていたが、箱の蓋が自動的に閉まった音で我に返った。
箱を見ると、いつの間にかあの迷路は消え、新しい問題に変わっていた。
今度は線の書かれたパネルを回転させ、全ての線をつなぐパズルらしい。
しかも、箱全体にわたってパネルがある。これも難しそうだ…
「…けど、今日はもう寝るか。」
何か今日は…色々あって疲れた。それに、もう夜も遅い。続きは明日だな。
布団をかぶり、さっきあった事について考え…ようとしながら、眠りに落ちた。
「ふふ…今日もまた開けてくれたんだ。クリア、おめでと♪」
「…開けた。」
あんな怪しい代物、引き続き解こうかどうかかなり迷ったが、
結局パズル欲には勝てず、パズルを解いて箱を開けてしまった。
…解いても、蓋を開けなければよかったんじゃないか?と一瞬、今更思ったが、もう遅い。
まあ、昨日この子が言ってた事も気になるしな。
「今回のご褒美、どうしようかなぁ…♪」
「それよりも。昨日言ってた事なんだが…」
「どうしても気になる?」
「気になる。」
「信じる?」
「…努力はする。」
「じゃあ、色々話してもいいけど…
広めるのはまだダメってえらい人に言われたから、他言無用ね?」
「…わかった。」
…
中世ファンタジーそのものな世界、世界を繋ぐゲート、そして、美女だけになった魔物…
確かに彼女が言った事は、にわかには信じがたい内容であり、
念を押されていても、懐疑的な目で見ずにはいられなかった。しかし…
「これでも信じない?」
「し、信じる…」
証拠として、本物の『魔法』を目の前で披露されては、信じざるを得なかった。
具体的には、俺のサークルの部室にあった、しかも今日置いたばかりの段ボール箱と
彼女の部屋を一時的に繋げ、俺を部屋からそこに送ってみせたのだ。
流石にここまで来るともう、最新技術云々では片付けられない。
…最初の方からそうだった気もするが。
逆に、パズルと箱内に使われていた不思議な技術も、魔法によるものだと考えれば、
説明はつかないが合点がいく。
彼女の話は、どうやら全て本当のようだ。
「それにしても…何故この世界に来たんだ?しかも、何故こんなパズルとして?
そして…どうして初対面の男にあんな事ができるんだ?」
「んん〜…それはまだ秘密。また今度ね。」
「まだパズルがあるのか。そりゃ嬉しい……んだろうか…?」
「私は嬉しいよ?お兄さんに会うきっかけにもなるし。」
「何?」
「それじゃあ今日は…どうしようかなぁ…」
「って…まさか、今日もやるのか?その、ご褒美。」
「もっちろん!そのために解いたんでしょ?」
「違う。パズルのためだ。」
「またまたぁ〜。ちょっとぐらい期待してない?」
「…してない。パズルと、さっきの話が気になったから来ただけだ。」
「ふぅん…でも、私はご褒美あげたいから、勝手にあげちゃうよ♪」
「俺の意思は無視か!?」
「気持ちいいんだからいいじゃない。ささ、下脱いで。」
「嫌だ。」
「ぬぅー…昨日も言ったけど、深く考えなくていいんだよ?
責任取れとか、そういう事言わないから。」
「それでもだ。」
「もう、強情だなぁ…」
前回はつい流されてしまったが、互いの為にも、あれ以上の事は避けねばならない。
…彼女の笑顔を曇らせたくはないが。
しかし彼女は引き下がらず、俺の肩に手を置き、ぶつかりそうな程こちらに顔を近づけ、
俺と目を合わせて、また妖艶な顔で笑った。
「お兄さんはただ、受け入れてくれればいいの。
これはただの、ごほうびなんだから…♪」
「!?また…!」
またもや、目に映る彼女の笑顔が、そしてその身体がどんどん魅力的に見え、
今度は絶対に拒否しなければという理性が、急激に挫けていく。
一体何故なんだ。どうしてこんな唐突に…
「!…まさか、魔法か!?」
「どうでしょー?」
「魔法かよ…」
そんなものに対抗する手段など、俺にあるわけがない。恐らく今後も無いだろう。
彼女に魔法という切り札が存在する以上、
『ご褒美』を拒否する事など、最初から出来なかったのだ。
(…そうだ。魔法なんだから仕方ない。抵抗できないんだから仕方ないな。)
魔法のかかり始めの時は自分を制そうとしていた頭の中も、諦めがよぎった途端に、
魔法を言い訳にしてしまえと、都合のいい方へ思考が流れていく。
これも魔法の力…なのか?
「ささ、来て?今日は、本格的に口でしてあげるから。」
「…これっきりだからな。」
「はいはい♪」
彼女に促されるまま、ズボンを下ろし、ベッドの縁に座る。
そして彼女は、昨日のように俺の足の間に静かに座り、
花の香りを間近で嗅ぐかのように、目を閉じ、上気した顔をそっと近づけてきた。
「すぅー……んふー。お兄さんの精のニオイがいっぱい…♪」
大きくニオイを吸い込むと、彼女の表情が今度はうっとりとした物になった。
一応、ちゃんと洗ってはいるんだが。もちろん今朝も…
「ふっ♪」
「ッ!!」
昨日のように硬く張りつめ、敏感になったモノに、間近で熱い息を吹きかけられた。
それだけでも、相当気持ちいい。
「ちろちろちろ…」
「おぁぁ…!」
続いて舌先で、裏筋を素早く、くすぐるように舐められる。
だ、ダメだ、このままじゃまた…!
「や、やるんなら、一思いにやってくれ…!」
「えー、可愛くて面白いのに…。
まあいいや。それじゃ、いただきまーす。」
何とも気軽な感じで亀頭に吸い付いたかと思うと、
俺の一物は、そのまま一気に根元まで、彼女の口内に吸い込まれていった。
「ん〜♪はぷ、くちゅ…」
最初に、唇ではむはむと何度も咥え直しながら、小刻みに上下動をしてきた。
どうやら滑りをよくする為に、動くと同時に唾液を溜めているらしく、
始めは水分が足りず、口の中の粘膜が強く吸い付いていたのが、次第に汁気を帯びていき、
口から聞こえる、唾液等と空気がかき混ぜられる淫らな水音も増す。
「〜〜〜…!!」
相変わらず、こちらは全く余裕がない。
昨日のご褒美で、溜まってた分は消化したと思うのだが。
何故こんなに気持ちいいんだ?もしこれ以上の事をされたら、俺は一体どうなるのだろう?
…ってこの思考、昨日と同じパターンじゃないか!落ち着け、頭の中のナンプレを…
「じゅぷ、んっぢゅ、ぷぁ、じゅるっ!!」
だが彼女は、依然としてこちらの我慢を汲んでくれない。
どころか、不意打ちのように突如動きを変えてきた。
頭を横に倒してモノを横向きに咥え、上下動しながらも、器用にひねる動きを与えてくる。
それでいて歯は一切ぶつからないのだから、凄すぎるとしか言いようがない…
「く、もぉ、もう駄目だ…!」
そしてまた、我慢の限界が訪れようとしていた。
彼女は俺の宣言を聞いた途端、時折涎が漏れていた唇をきつく締め、
舌で全体をねっとりと舐め上げながら、その中身を吸い出すかのように、
俺の精液が待ちきれないとでも言うように、強力に吸い上げた。
「くぁぁぁぁ…!!」
「ん!んむぅ〜…♪」
感覚で何となく、昨日のように、大量に出してしまった事はわかる。
それを彼女は、嬉しそうに全部受け止めてくれた。
紅潮した頬がぷっくり膨らんで可愛らしい。…その頬の中身を考えなければ、だが。
射精が収まると彼女は頭を戻し、モノに纏う液を落とすためか、
唇の締め付けはそのままに、吸い上げながらゆっくりと引き抜いた。
「もぷぁっ♪」
「おいコラ見せるな!」
満面の笑みで、『こんなに出したんだよ♪』とばかりに口を開けてきた。
出した事で少し冷えた頭に、恥ずかしさと、拭いきれない罪悪感が襲ってくる…
俺に怒られても笑顔を崩さないまま、彼女は口を閉じ、
昨日のように、液をゆっくり味わうように咀嚼し、勿体無そうに飲み込んでいった。
「やっぱり美味しいなぁ、お兄さんの精。
甘くて、熱くて、ほろ苦くて、匂いも濃くて、とろっとしてて…
飲み込んでおなかの中に入ったら、すーんごい幸せな気分になるもん♪」
「…そうかい。」
嬉しそうに感想をつらつらと言わないでくれ。
何だこの辱めは。俺が何をしたって言うんだ……いや、ナニはしたが。
「でも…ちょっと、足りないかな?」
「なんだと?」
「だってー、昨日は二回出してもらったしさ?今日は魔法も使ったしさ?
これ一回だけじゃ、ちょーっと収まりがつかないって言うか…」
「ちょっと待て。これっきりって言っただろ!?
それにそれじゃ、余計疲れないか!?」
「いいじゃーん。ご褒美なんだし。一回出すのも二回出すのも、そう変わらないって。」
「俺のためのご褒美なら、俺の任意のタイミングでやめてもいいはずだ!」
「えー…欲しくないの?」
「欲しくない。」
「でもぉ…」
いきなり顔を下げ、熱の失せてきた股間に軽くキスをする。
「ふっふっふ。ここは正直なようですな?」
それだけで、俺の愚息は再び調子に乗り始めた。
しかも、それに追い討ちをかける様に、睾丸を揉んだり、熱い吐息をかけたりしてくる。
その刺激が、気持ちよくも、それだけでは満足いかず、絶妙にもどかしい。
「はっ、ぁ、やめ、ろ…!」
「やだよー♪」
実力行使に出てしまえればいいのだが、人として、そんな事が出来るわけがない。
しかし、彼女はそんな俺の状況などお構い無しに、こちらを焦らしてくる。
最後にどちらが負けるかは…もはや明らかだった。
「…俺の、負けだ。だから早く、楽にしてくれ…!」
「オーイエス!それが聞きたかったッ!」
敗北宣言を聞いた途端、彼女は勢いよくしゃぶりついてきた。
(やれやれ…結局…)
結局のところ、魔法でなくとも、俺が彼女に抵抗する事は出来ないのだ。
全くもって卑怯だと思う。さすが魔物。
…けど、こんな状況に陥れられても、彼女の事は、やはり嫌いにはなれなかった。
(それにしても、どうして彼女はこんな事を…
俺、これからどうなるんだろうか…)
浮かんだ疑問は、すぐさま、二度目の絶頂で白く染まる思考に押し流されていった。
13/02/24 02:03更新 / K助
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