「問おう、お前があたいの夫かにゃ？」「違うわい」
――暑い。
街を出る際に満タンに入れてきた水筒の中身が3分の2以下になったことを意識しながら考えるのは、暑いという事だけだった。
体中ににじむ汗がより不快感を増長させ、ダンジョン攻略用の道具をしまい込んだリュックがただの重荷にしか感じられない。
松明の本数減らすべきだったとか食欲湧かないのに非常用の食料なんて入れなきゃよかった等とうだうだ考えつつも足を運ぶ。
地図とコンパスとにらめっこしつつようやく目的地である遺跡への到着の目途が立つ頃には頭の中は100以上の後悔で溢れていた。
「ようやく、か……遠かったぜコンチクショォ……」
目の前に構えるのはところどころ風化したピラミッドだった。
ここのピラミッドには昔の王様の秘宝が眠っており、それを数多くの罠や魔物が守護している……らしい。
情報屋から高い金ふんだくられて買った情報だが、もしかしたらただのガセかもしれない。
「これで金目のもんなかったらあの情報屋のおっさん怨むぜおい……」
いや情報は正しいはずだと自分に言い聞かせピラミッドの入り口を探そうとまた足を動かし始める。
周辺を半周も歩き回ったであろうか、目の前に突如魔物が現れた。
赤みがかった茶髪に生えるふさふさとした耳、肉球のついたもふもふの手足、そしてゆらゆら揺れる尻尾。
――スフィンクスか、厄介な相手だ――護身用のナイフに手をのばそうとする俺に対し、その魔物はこう言い放った。
「にゃにゃん！ あたいはスフィンクスのミミちゃんだにゃん！ いきなりだけど婿になってもらうにゃん♪」
……いつからだったかね、魔物が人間の男を性的な意味で欲しがるようになったのは。
魔王が代替わりした影響らしいが、昔の凶暴な姿も知っている自分にはどうにもこの変化についていけない。
代替わり前後問わず冒険者稼業も長いことやってるが未だに慣れそうにもないな、この感覚は。
ナイフを抜き構えるとその魔物 ―ミミっつったか― は笑顔を絶やさずこう言った。
「キミには呪いをかけさせてもらったにゃん♪ 今からの質問に素直に答えないとどうなっても知らないにゃ！」
「の、呪いだと！？ 手前なんの予備動作もなかっただろぉ！？」
「高度な魔物は簡単な魅了など朝飯前だにゃん！」
「……っ マジかよおい……」
「ちなみにホントに朝御飯まだなんだにゃん……もうお昼なのに……お腹すいたにゃー……」
「んなこと俺に言われても知らねえよ！」
気が抜けやがる……昔の魔物はグギャァァとかゴシャァァみてぇなことしか言わなかったのに今の魔物は変に愛嬌があるから困る。
見た目も麗しければ声も綺麗で本当に困る、昔はザ・化物って感じだったのにどうしてこうなった。
「それじゃ最初の質問だにゃん。お名前教えてほしいにゃぁ」
「……それ聞いてどうするんだよ」
「将来の旦那様の名前くらい聞いてもおかしくないにゃん？」
「結婚する気満々かよ、こちとらどうにかお前を出し抜こうとしてるんだがね」
「こっちは出し抜かれないように虎視眈眈としてるにゃん、いや猫視にゃんにゃんだにゃん」
「つまんねぇぞソレ」
何が猫視にゃんにゃんだ馬鹿らしい。
こっちは感覚を研ぎ澄ましてどうやってこの局面を突破しようか考えてるって言うのに。
「し、知ったこっちゃないにゃん！ サッサと答えにゃいと後が怖いにゃん！」
「はいはい分かった分かりましたよ。俺はギンジだ」
「ふっふ、ギンジだにゃ。その名きちんと覚えたにゃん」
「たった3文字だからな、覚えてもらわなきゃ反応に困る」
「それじゃ次の質問にゃ！ ずばり聞くにゃ！ 女性経験はもちろんないよにゃ？」
「いやあるけど」
「ＮＯＯＯＯＯＯＯＯＯＯＯＯＯＯＯＯ！？ え、あるのにゃ、あるのかにゃ！？！？」
騒がしいヤツだなこいつ、何年も渡り歩けば娼婦の世話になることもあるっての。
まぁ知り合いの冒険者が娼婦だと思った相手がレッサーサキュバスだったらしくそのまま結婚したって話を聞いて以来は行ってないが。
ちなみにソイツはそれなりに幸せな家庭を築いてるらしい。
「なんで！？ 魔物に手をつけられた匂いはしないにゃ！？ でも嘘ついてないっぽいにゃ！？！？」
「人間相手だよ、つか魔物って匂いで魔物に襲われたかとか分かるのか」
「そりゃわかるにゃ。 ギンジは魔物に食べられた匂いしにゃいから……ってなんでお前があたいに質問してるにゃ！」
「知った事かよ。んで俺が経験ありだって分かったところで解放してくれたりは」
「いや構わないにゃん！ 過去は笑って流してやるのも良妻の務めだにゃん！」
「結婚したおぼえなんぞないしするつもりもないっての、つかお前顔思い切りしかめてるぞ」
ちょっと思い込み激しいし騒がしいが面白いヤツだなこいつ。
漫才やってるみてぇでちょっと楽しくなってきたと不覚にも今の状況を面白がっている自分に気付く。
「次の質問にゃ！ ギンジは巨乳と貧乳どっちが好きだにゃ？」
「そんなこと聞いてどうするんだよ」
「あたいの自慢の巨乳「言うほど大きくないだろ、よくてＣカップだな」あぁうるさいにゃん！ さっさと質問に答えるにゃ！」
「うーん……しいて言えばお前のは、えーと、ちょっと……まぁそのなんだ、牛乳味の飴玉いるか？」
「そんな施しはいらないにゃん！ 絶対このおっぱいの虜にしてやるにゃん！！」
涙目になるくらいなら聞かなけりゃ良いのにと思いつつも思考を巡らせる。
周りは砂漠、ちょっと逃げたくらいじゃ隠れる場所もないしすぐに追いつかれる。
かといって相手はそれなりに強そうな魔物だ、護身用のナイフ一本で追い払えそうにない。
目くらまし用の煙幕でも張るか、いや匂いが分かると言っていたからおそらくそれも無駄だろう。
「む？ 何考え込んでるにゃ？ まだ質問したりないにゃ！」
「はいはいどうぞ気が済むまで質問してとっとと帰ってくれ」
「遠慮なく質問するけど帰るつもりはないにゃ！ では次の質問にゃ！ 好きなプレイを教えるにゃん！」
「好きなプレイだぁ？ シモ方向の質問ばっかだなこのエロ魔物め」
「エロは褒め言葉だにゃん。それで、どんなのが好きにゃ？ 上から覆いかぶさって激しく？ それともバックで奥まで突く？」
「……答えても、いいのか？」
「？ 答えないと呪いが聞くだけだにゃ、答えないと損だと思うにゃ」
「んじゃ正直に。パイズ「チクショォォォォォ！」最後まで言わせろよお前から聞いてきたんだろうが」
なんかコイツからかってるの楽しくなってきたな。
砂漠の熱気にやられて頭の中が湯だっているのか、それとも魅了の呪いが聞いているのか。
気がつけばこの状況をさらに楽しんでいる俺がいる。
「ギンジお前意地悪だにゃん！ そんな性格じゃ誰も好きになってくれないにゃん！！」
「ほう、誰も好きにならないねぇ。それじゃお前も俺のこと解放して」
「ギンジ最高にかっこいいにゃん！ あたいはギンジが大好きだにゃん！」
「手の平返すの早いなお前」
耐えきれずに声を出して笑う、こんなに笑ったのは久しぶりだ。
思えば冒険者ってのは同じ依頼をこなすとき以外は基本的に単独行動だ。
財宝の取り合いや裏切りなんかもなかったわけじゃないし、腹を割って話せるヤツなど多くない。
そんな日々に摩耗した精神にとって、この掛け合いはとても新鮮で素晴らしいものに思えた。
……なんだ、俺はこいつに惚れちまったのか、簡単な男だな。
「あははははっ！」
「そ、そんなに笑うことないにゃん！ ホント意地悪だにゃん！」
「わりぃな、自分の馬鹿さ加減にちょっとな。おいミミ」
「なんだにゃん、まだあたいをいじめるのかにゃん！」
「お前の婿になってやるよ」
ぽかーん、という擬音がぴったりの表情を浮かべたミミ。
目を何度も瞬かせ、首をかしげ、口を間抜けに開けて、数十秒ほどたっただろうか。
褐色の頬に赤色が混じり、急にモジモジとし始めた。
「え、その……なんでだにゃん？」
「なんでだろうな、まぁなんつうかな。探検続けるよりはお前と一緒にいた方が幸せになれっかなって思ってな」
「……嘘じゃないみたいだにゃ、嘘ついたら呪いで動けなくなるはずだにゃん」
抜いたナイフを戻した俺にそう言ってほほ笑むミミ。
その顔はとても嬉しそうで、見ているこちらまで嬉しくなってくる表情だった。
「ギンジ、あたいのこと好きにゃん？」
「ん、まぁそうだな、好きってことで良いな」
「あたいの性格、好きかにゃ？」
「そうだな、ちょっとしか話してないが底抜けに明るいお前に惚れたな」
「あたいの顔、好きかにゃ？」
「見目麗しいな、コロコロ変わる表情は見てて楽しいな、好きだぞ」
「あたいのおっぱい、好きかにゃ？」
「…………お、おぉ、好き、だぞ？」
「なんでちょっと悩むにゃ！ そして語尾が疑問符だにゃ！ しかも視線そらしたにゃ！！」
嘘つくと身体が動かなくなるらしいからな、正直に言っただけだぞ、うん。
俺は悪くない、男ならでっかいおっぱいが好きなのはしょうがないと思うんだ。
「やっぱりギンジ意地悪にゃ！」
「嘘吐かない俺、素敵じゃね？」
「優しい嘘ってのもあると思うのにゃ！」
「そうかそうか、じゃあお前のおっぱい大好きだ！」
「息するように嘘吐きやがったにゃ！ でもやっと嘘吐いたにゃぁ！」
「ん？ やっとって……って、身体動かねぇぞおい」
「嘘吐きにはお仕置きだにゃ！ 今すぐに犯してやるにゃ！」
「お前が誘導したんだろ！ おい呪いをとけミミ！」
「知ったこっちゃないにゃん♪」
硬直しきった俺の身体をそのまま引きずりこむミミ。
その足取りはピラミッドの方向に……ってピラミッドに入りやがった、それ入り口だったのかよ。
「なぁミミさんや、ピラミッドの中にすんなり入ってますがここって住み家かい？」
「そうだにゃ、たまに旅人がお宝のある遺跡と間違えて入ってくるけどそれはもうチョイ先の別のピラミッドだにゃん」
「マジかよ……あの情報屋地図間違えやがったな……」
いやまぁ済んだことだし良いか、とりあえずもうこいつの婿になるって決めたのは俺だし。
そう自分に言い聞かせているうちにどうやらミミの部屋らしいところへ着いた。
「さて、これからギンジを犯しつくすにゃん、いいかにゃ？」
「拒否権ないよな、身体動かないし」
「あるわけないにゃん、事実確認だにゃ。ちなみに経験人数は何人かにゃ？」
「人数？ えー……っと……」
「経験人数分搾りとってやるにゃん♪」
「……んーと……」
「どうしたにゃん？ 早く答えないと今度は呪いで喋ることもできないようにしてやるにゃ！」
喋れなくなるわけにもいかねぇし正直に言うか。
まぁ怒らないだろ……多分。
過去のことは笑って流してくれるっつったし大丈夫だよ……な……？
「いやぁ……何人か覚えてないんだよな、それが」
「はぁ！？ どんだけだにゃギンジ！？」
「いやな、転々といろんなとこ旅するうちに数えるのも億劫になっちまってな」
「……」
「生でしたことは流石にないけどよ、手や口だけとかパイズリとかも含めると……おいミミ？」
「……いいにゃ、分かったにゃ。気絶するまで犯しつくしてやるにゃ」
「……お手柔らかに、お願いします？」
「少なくとも他の女に目がいかない程度にはやりつくすにゃん♪」
ベッドに俺の身体を放り投げるとともに悪魔のような笑みを浮かべるミミ。
服を脱がされていく感覚を感じながら、神様に女遊びを懺悔しつつ俺の体が壊れないように神頼みをした。
「にゃぁギンジ♪ 今出たの何回目か分かるかにゃ？」
「今ので5回目だろ……よく俺のギンギンなまま萎えずに済んでるな……」
「それが魔物の膣内だにゃん♪ 気持ちいいかにゃ？」
「もう5回も出てるんだ、言わなくても分かるだろ……っ」
目に映るのは俺にまたがり上下に動くミミの姿。
とろんと蕩けた目によだれが出そうなほどしまりのない唇、その表情だけでも十分にエロい。
視線をほんの少し下げれば、先ほど馬鹿にしたがとても美しい乳房が視野に入る。
身体を上下に動かすたびにたゆんと動き回る胸、褐色の肌に伝わる汗、ぴんと立った乳首。
揉みしだきたい欲求に駆られるも、呪いのせいで動かない体ではそれも叶わない。
俺の視線に気付いているのだろう、ミミはいやらしい笑みを浮かべるものの俺の呪いは解いてくれない。
「なぁミミ……頼みがあるんだが……」
「どうしたにゃ？ ギンジの大好きにゃ巨乳じゃないからミミにはなんでギンジの視線がおっぱいに釘付けか分かんないにゃ♪」
「からかったりしたの謝るからよ、触らせては」
「駄目だにゃ、ギンジはあたいの気が済むまであたいの好きなように犯しつくしてやるにゃん♪」
「ら、らじゃっす……触れないってのがこんなにきついとは……ってミミ、動きはげし……出るっ」
「にゃにゃん♪ 6回目だにゃん。しょうがないから10回出したら呪い解いてやるにゃん」
「あ、ありがたいな……」
そう言ったミミの表情が、俺をベッドに放り込んだ時と同じく悪い笑みだったのに気付かなかった。
軽い呻き声とともに射精をし、合計10回分もの精液をミミの中へと注いだ俺。
これで呪いが解いてもらえる、とミミの顔をのぞき見ると、彼女はこう問いかけてきた。
「それではギンジに質問だにゃん。これであれから何回目かにゃん？」
「え、し始めてから10回目だろ？ 早いとこ呪い解いてくれよ、頼むからさ」
「はずれだにゃん、これで4回だにゃん♪」
「は、はぁ？ 10回目だろ！？ 4回なわけねぇだろ！？」
「あたいは6回目の射精が終わってからの質問をしてるんだにゃん♪」
その時の俺の顔はおそらくものすごい間抜けだっただろう。
はぁ！？ と声を出すべきか んなぁ！？ と文句を言うべきか えぇ！？ と泣けば良いのか分からなかったのだ。
「あたいは6回目の射精が終わった時『10回出したら呪いを解いてやる』って言ったにゃん」
「お、おぉそうだな、そうだったな」
「ギンジがどう解釈したかは知らにゃいけど、あたいは後10回出したらのつもりだったのにゃ！」
「……お前も意地悪だわ、俺以上に意地悪だよお前」
「ちょっとした仕返しだにゃん。ギンジは間違えたから罰として後15回出すまで呪いは解いてやらないにゃん」
「じゅ、15だぁ！？ そんなやれるかよもう解いてくれよぉ！」
「10回イケたんだからやればできるにゃん♪ それ以上文句言うにゃら倍にするにゃん♪」
「うぅ……ちくしょう……口答えしてすいませんでした！」
「よろしいにゃん、花丸だにゃん。じゃあ今からも頑張るにゃん♪」
再度上下運動を始めたミミに、俺は早く通算25回目の時が来ないものかと呪いを解いてもらう瞬間に思いを馳せたのだった。
街を出る際に満タンに入れてきた水筒の中身が3分の2以下になったことを意識しながら考えるのは、暑いという事だけだった。
体中ににじむ汗がより不快感を増長させ、ダンジョン攻略用の道具をしまい込んだリュックがただの重荷にしか感じられない。
松明の本数減らすべきだったとか食欲湧かないのに非常用の食料なんて入れなきゃよかった等とうだうだ考えつつも足を運ぶ。
地図とコンパスとにらめっこしつつようやく目的地である遺跡への到着の目途が立つ頃には頭の中は100以上の後悔で溢れていた。
「ようやく、か……遠かったぜコンチクショォ……」
目の前に構えるのはところどころ風化したピラミッドだった。
ここのピラミッドには昔の王様の秘宝が眠っており、それを数多くの罠や魔物が守護している……らしい。
情報屋から高い金ふんだくられて買った情報だが、もしかしたらただのガセかもしれない。
「これで金目のもんなかったらあの情報屋のおっさん怨むぜおい……」
いや情報は正しいはずだと自分に言い聞かせピラミッドの入り口を探そうとまた足を動かし始める。
周辺を半周も歩き回ったであろうか、目の前に突如魔物が現れた。
赤みがかった茶髪に生えるふさふさとした耳、肉球のついたもふもふの手足、そしてゆらゆら揺れる尻尾。
――スフィンクスか、厄介な相手だ――護身用のナイフに手をのばそうとする俺に対し、その魔物はこう言い放った。
「にゃにゃん！ あたいはスフィンクスのミミちゃんだにゃん！ いきなりだけど婿になってもらうにゃん♪」
……いつからだったかね、魔物が人間の男を性的な意味で欲しがるようになったのは。
魔王が代替わりした影響らしいが、昔の凶暴な姿も知っている自分にはどうにもこの変化についていけない。
代替わり前後問わず冒険者稼業も長いことやってるが未だに慣れそうにもないな、この感覚は。
ナイフを抜き構えるとその魔物 ―ミミっつったか― は笑顔を絶やさずこう言った。
「キミには呪いをかけさせてもらったにゃん♪ 今からの質問に素直に答えないとどうなっても知らないにゃ！」
「の、呪いだと！？ 手前なんの予備動作もなかっただろぉ！？」
「高度な魔物は簡単な魅了など朝飯前だにゃん！」
「……っ マジかよおい……」
「ちなみにホントに朝御飯まだなんだにゃん……もうお昼なのに……お腹すいたにゃー……」
「んなこと俺に言われても知らねえよ！」
気が抜けやがる……昔の魔物はグギャァァとかゴシャァァみてぇなことしか言わなかったのに今の魔物は変に愛嬌があるから困る。
見た目も麗しければ声も綺麗で本当に困る、昔はザ・化物って感じだったのにどうしてこうなった。
「それじゃ最初の質問だにゃん。お名前教えてほしいにゃぁ」
「……それ聞いてどうするんだよ」
「将来の旦那様の名前くらい聞いてもおかしくないにゃん？」
「結婚する気満々かよ、こちとらどうにかお前を出し抜こうとしてるんだがね」
「こっちは出し抜かれないように虎視眈眈としてるにゃん、いや猫視にゃんにゃんだにゃん」
「つまんねぇぞソレ」
何が猫視にゃんにゃんだ馬鹿らしい。
こっちは感覚を研ぎ澄ましてどうやってこの局面を突破しようか考えてるって言うのに。
「し、知ったこっちゃないにゃん！ サッサと答えにゃいと後が怖いにゃん！」
「はいはい分かった分かりましたよ。俺はギンジだ」
「ふっふ、ギンジだにゃ。その名きちんと覚えたにゃん」
「たった3文字だからな、覚えてもらわなきゃ反応に困る」
「それじゃ次の質問にゃ！ ずばり聞くにゃ！ 女性経験はもちろんないよにゃ？」
「いやあるけど」
「ＮＯＯＯＯＯＯＯＯＯＯＯＯＯＯＯＯ！？ え、あるのにゃ、あるのかにゃ！？！？」
騒がしいヤツだなこいつ、何年も渡り歩けば娼婦の世話になることもあるっての。
まぁ知り合いの冒険者が娼婦だと思った相手がレッサーサキュバスだったらしくそのまま結婚したって話を聞いて以来は行ってないが。
ちなみにソイツはそれなりに幸せな家庭を築いてるらしい。
「なんで！？ 魔物に手をつけられた匂いはしないにゃ！？ でも嘘ついてないっぽいにゃ！？！？」
「人間相手だよ、つか魔物って匂いで魔物に襲われたかとか分かるのか」
「そりゃわかるにゃ。 ギンジは魔物に食べられた匂いしにゃいから……ってなんでお前があたいに質問してるにゃ！」
「知った事かよ。んで俺が経験ありだって分かったところで解放してくれたりは」
「いや構わないにゃん！ 過去は笑って流してやるのも良妻の務めだにゃん！」
「結婚したおぼえなんぞないしするつもりもないっての、つかお前顔思い切りしかめてるぞ」
ちょっと思い込み激しいし騒がしいが面白いヤツだなこいつ。
漫才やってるみてぇでちょっと楽しくなってきたと不覚にも今の状況を面白がっている自分に気付く。
「次の質問にゃ！ ギンジは巨乳と貧乳どっちが好きだにゃ？」
「そんなこと聞いてどうするんだよ」
「あたいの自慢の巨乳「言うほど大きくないだろ、よくてＣカップだな」あぁうるさいにゃん！ さっさと質問に答えるにゃ！」
「うーん……しいて言えばお前のは、えーと、ちょっと……まぁそのなんだ、牛乳味の飴玉いるか？」
「そんな施しはいらないにゃん！ 絶対このおっぱいの虜にしてやるにゃん！！」
涙目になるくらいなら聞かなけりゃ良いのにと思いつつも思考を巡らせる。
周りは砂漠、ちょっと逃げたくらいじゃ隠れる場所もないしすぐに追いつかれる。
かといって相手はそれなりに強そうな魔物だ、護身用のナイフ一本で追い払えそうにない。
目くらまし用の煙幕でも張るか、いや匂いが分かると言っていたからおそらくそれも無駄だろう。
「む？ 何考え込んでるにゃ？ まだ質問したりないにゃ！」
「はいはいどうぞ気が済むまで質問してとっとと帰ってくれ」
「遠慮なく質問するけど帰るつもりはないにゃ！ では次の質問にゃ！ 好きなプレイを教えるにゃん！」
「好きなプレイだぁ？ シモ方向の質問ばっかだなこのエロ魔物め」
「エロは褒め言葉だにゃん。それで、どんなのが好きにゃ？ 上から覆いかぶさって激しく？ それともバックで奥まで突く？」
「……答えても、いいのか？」
「？ 答えないと呪いが聞くだけだにゃ、答えないと損だと思うにゃ」
「んじゃ正直に。パイズ「チクショォォォォォ！」最後まで言わせろよお前から聞いてきたんだろうが」
なんかコイツからかってるの楽しくなってきたな。
砂漠の熱気にやられて頭の中が湯だっているのか、それとも魅了の呪いが聞いているのか。
気がつけばこの状況をさらに楽しんでいる俺がいる。
「ギンジお前意地悪だにゃん！ そんな性格じゃ誰も好きになってくれないにゃん！！」
「ほう、誰も好きにならないねぇ。それじゃお前も俺のこと解放して」
「ギンジ最高にかっこいいにゃん！ あたいはギンジが大好きだにゃん！」
「手の平返すの早いなお前」
耐えきれずに声を出して笑う、こんなに笑ったのは久しぶりだ。
思えば冒険者ってのは同じ依頼をこなすとき以外は基本的に単独行動だ。
財宝の取り合いや裏切りなんかもなかったわけじゃないし、腹を割って話せるヤツなど多くない。
そんな日々に摩耗した精神にとって、この掛け合いはとても新鮮で素晴らしいものに思えた。
……なんだ、俺はこいつに惚れちまったのか、簡単な男だな。
「あははははっ！」
「そ、そんなに笑うことないにゃん！ ホント意地悪だにゃん！」
「わりぃな、自分の馬鹿さ加減にちょっとな。おいミミ」
「なんだにゃん、まだあたいをいじめるのかにゃん！」
「お前の婿になってやるよ」
ぽかーん、という擬音がぴったりの表情を浮かべたミミ。
目を何度も瞬かせ、首をかしげ、口を間抜けに開けて、数十秒ほどたっただろうか。
褐色の頬に赤色が混じり、急にモジモジとし始めた。
「え、その……なんでだにゃん？」
「なんでだろうな、まぁなんつうかな。探検続けるよりはお前と一緒にいた方が幸せになれっかなって思ってな」
「……嘘じゃないみたいだにゃ、嘘ついたら呪いで動けなくなるはずだにゃん」
抜いたナイフを戻した俺にそう言ってほほ笑むミミ。
その顔はとても嬉しそうで、見ているこちらまで嬉しくなってくる表情だった。
「ギンジ、あたいのこと好きにゃん？」
「ん、まぁそうだな、好きってことで良いな」
「あたいの性格、好きかにゃ？」
「そうだな、ちょっとしか話してないが底抜けに明るいお前に惚れたな」
「あたいの顔、好きかにゃ？」
「見目麗しいな、コロコロ変わる表情は見てて楽しいな、好きだぞ」
「あたいのおっぱい、好きかにゃ？」
「…………お、おぉ、好き、だぞ？」
「なんでちょっと悩むにゃ！ そして語尾が疑問符だにゃ！ しかも視線そらしたにゃ！！」
嘘つくと身体が動かなくなるらしいからな、正直に言っただけだぞ、うん。
俺は悪くない、男ならでっかいおっぱいが好きなのはしょうがないと思うんだ。
「やっぱりギンジ意地悪にゃ！」
「嘘吐かない俺、素敵じゃね？」
「優しい嘘ってのもあると思うのにゃ！」
「そうかそうか、じゃあお前のおっぱい大好きだ！」
「息するように嘘吐きやがったにゃ！ でもやっと嘘吐いたにゃぁ！」
「ん？ やっとって……って、身体動かねぇぞおい」
「嘘吐きにはお仕置きだにゃ！ 今すぐに犯してやるにゃ！」
「お前が誘導したんだろ！ おい呪いをとけミミ！」
「知ったこっちゃないにゃん♪」
硬直しきった俺の身体をそのまま引きずりこむミミ。
その足取りはピラミッドの方向に……ってピラミッドに入りやがった、それ入り口だったのかよ。
「なぁミミさんや、ピラミッドの中にすんなり入ってますがここって住み家かい？」
「そうだにゃ、たまに旅人がお宝のある遺跡と間違えて入ってくるけどそれはもうチョイ先の別のピラミッドだにゃん」
「マジかよ……あの情報屋地図間違えやがったな……」
いやまぁ済んだことだし良いか、とりあえずもうこいつの婿になるって決めたのは俺だし。
そう自分に言い聞かせているうちにどうやらミミの部屋らしいところへ着いた。
「さて、これからギンジを犯しつくすにゃん、いいかにゃ？」
「拒否権ないよな、身体動かないし」
「あるわけないにゃん、事実確認だにゃ。ちなみに経験人数は何人かにゃ？」
「人数？ えー……っと……」
「経験人数分搾りとってやるにゃん♪」
「……んーと……」
「どうしたにゃん？ 早く答えないと今度は呪いで喋ることもできないようにしてやるにゃ！」
喋れなくなるわけにもいかねぇし正直に言うか。
まぁ怒らないだろ……多分。
過去のことは笑って流してくれるっつったし大丈夫だよ……な……？
「いやぁ……何人か覚えてないんだよな、それが」
「はぁ！？ どんだけだにゃギンジ！？」
「いやな、転々といろんなとこ旅するうちに数えるのも億劫になっちまってな」
「……」
「生でしたことは流石にないけどよ、手や口だけとかパイズリとかも含めると……おいミミ？」
「……いいにゃ、分かったにゃ。気絶するまで犯しつくしてやるにゃ」
「……お手柔らかに、お願いします？」
「少なくとも他の女に目がいかない程度にはやりつくすにゃん♪」
ベッドに俺の身体を放り投げるとともに悪魔のような笑みを浮かべるミミ。
服を脱がされていく感覚を感じながら、神様に女遊びを懺悔しつつ俺の体が壊れないように神頼みをした。
「にゃぁギンジ♪ 今出たの何回目か分かるかにゃ？」
「今ので5回目だろ……よく俺のギンギンなまま萎えずに済んでるな……」
「それが魔物の膣内だにゃん♪ 気持ちいいかにゃ？」
「もう5回も出てるんだ、言わなくても分かるだろ……っ」
目に映るのは俺にまたがり上下に動くミミの姿。
とろんと蕩けた目によだれが出そうなほどしまりのない唇、その表情だけでも十分にエロい。
視線をほんの少し下げれば、先ほど馬鹿にしたがとても美しい乳房が視野に入る。
身体を上下に動かすたびにたゆんと動き回る胸、褐色の肌に伝わる汗、ぴんと立った乳首。
揉みしだきたい欲求に駆られるも、呪いのせいで動かない体ではそれも叶わない。
俺の視線に気付いているのだろう、ミミはいやらしい笑みを浮かべるものの俺の呪いは解いてくれない。
「なぁミミ……頼みがあるんだが……」
「どうしたにゃ？ ギンジの大好きにゃ巨乳じゃないからミミにはなんでギンジの視線がおっぱいに釘付けか分かんないにゃ♪」
「からかったりしたの謝るからよ、触らせては」
「駄目だにゃ、ギンジはあたいの気が済むまであたいの好きなように犯しつくしてやるにゃん♪」
「ら、らじゃっす……触れないってのがこんなにきついとは……ってミミ、動きはげし……出るっ」
「にゃにゃん♪ 6回目だにゃん。しょうがないから10回出したら呪い解いてやるにゃん」
「あ、ありがたいな……」
そう言ったミミの表情が、俺をベッドに放り込んだ時と同じく悪い笑みだったのに気付かなかった。
軽い呻き声とともに射精をし、合計10回分もの精液をミミの中へと注いだ俺。
これで呪いが解いてもらえる、とミミの顔をのぞき見ると、彼女はこう問いかけてきた。
「それではギンジに質問だにゃん。これであれから何回目かにゃん？」
「え、し始めてから10回目だろ？ 早いとこ呪い解いてくれよ、頼むからさ」
「はずれだにゃん、これで4回だにゃん♪」
「は、はぁ？ 10回目だろ！？ 4回なわけねぇだろ！？」
「あたいは6回目の射精が終わってからの質問をしてるんだにゃん♪」
その時の俺の顔はおそらくものすごい間抜けだっただろう。
はぁ！？ と声を出すべきか んなぁ！？ と文句を言うべきか えぇ！？ と泣けば良いのか分からなかったのだ。
「あたいは6回目の射精が終わった時『10回出したら呪いを解いてやる』って言ったにゃん」
「お、おぉそうだな、そうだったな」
「ギンジがどう解釈したかは知らにゃいけど、あたいは後10回出したらのつもりだったのにゃ！」
「……お前も意地悪だわ、俺以上に意地悪だよお前」
「ちょっとした仕返しだにゃん。ギンジは間違えたから罰として後15回出すまで呪いは解いてやらないにゃん」
「じゅ、15だぁ！？ そんなやれるかよもう解いてくれよぉ！」
「10回イケたんだからやればできるにゃん♪ それ以上文句言うにゃら倍にするにゃん♪」
「うぅ……ちくしょう……口答えしてすいませんでした！」
「よろしいにゃん、花丸だにゃん。じゃあ今からも頑張るにゃん♪」
再度上下運動を始めたミミに、俺は早く通算25回目の時が来ないものかと呪いを解いてもらう瞬間に思いを馳せたのだった。
11/08/20 22:30更新 / G7B