離婚 ― あの愛をもう一度 ―
「Barペイパームーン」
サキュバスの「グランマ」が営むショットバーで、この街にいつできたのかは誰も知らない。
「いつの間にか常連客となっていた。何を言っているのか、わからねーと思うがおれもわからなかった」
とやたらと濃い顔立ちのフランス人が教えてくれるように、常連客は多いが彼らに聞いてみてもいつ開店したのかはついぞわからなった。
ここに集う客は単純にグランマが作るカクテルを楽しみに訪れる客もいれば、興味本位で「魔物娘」と呼ばれる異界の存在と知り合い、あわよくば恋人になりたいという少々邪な理由を持つ客もいる。
また、客の中にはグランマが時折話してくれる虚実交じりの話を楽しみに訪れる者もいる。
人魔が混じり楽しい時間を共有できる場所。それが此処、「Barペイパームーン」だ。
しかし、今夜は珍しく閑散としていた。
「フランシス・アルバート!ダブルで!!」
― フランシス・アルバート ―
歌手のフランク・シナトラに捧げられたカクテルで、彼が終生愛したワイルドターキー・バーボンとタンカレー・ジンを半々。それをミキシンググラスでステアして、オールドファッションドグラスに注いだカクテルだ。
このワイルドターキーはバーボンらしい甘さと強さを味わえる半面、ボトルインボンド規格でアルコール度が50以上もある。そこに更に47度以上のドライジン、タンカレー・ジンを半分加えるわけだ。しかも、氷を大量に使うシェイカーではなく、まろやかさよりも鋭さを感じるステアで調合する。
はっきり言って並みの酒飲みなら一杯さえも飲み干すことはできないだろう。因みにフランシス・アルバートとはフランク・シナトラの本名である。
それを目の前の客は先ほどから何杯も注文している。それもダブルで。
当然のことながら、「客」は人間ではない。
新緑の若葉を思わせる鮮やかな髪をした魔物娘「エルフ」だ。
「どうしたの・・・・?」
「は、はい!今お持ちします!!」
ペイパームーンの従業員である、ウィルオー・ウィスプの「夏樹伽耶」がその女性に頭を下げるとカウンターに向かう。
「グランマ・・・どうします?」
「どうするもこうするもないわ。あの娘は客よ?」
「でも・・・・」
夏樹がチラリと見る。カランと、ドアに取り付けられた真鍮製の古いカウベルが来客を告げるのだが・・・・。
ドアを開いた瞬間、店内に立ち込めるどろりとした負のオーラが押し寄せ客はそのままドアを閉めて行ってしまう。
「確かに問題ね。お酒は楽しむためのものであくまで逃避するためのものではないわ」
この時伽耶はグランマが対応してくれると期待していた。しかしながら・・・
「じゃあ、伽耶ちゃん。ヘルラちゃんと話をつけてきて」
「へ?」
― 往々にして希望とは別の結果になるのが人生というものである ―
「えっ?あのお客、ヘルラって言うの?」
― ・・・疑問はそこじゃないだろっ ―
「あの娘、落ち込むと決まって深酒するのよ。酒癖が悪いなら追い出すこともできるけど・・・・・」
グランマがヘルラを見る。あれだけ深酒しても酔っ払いのような行動は見られない。つまりは節度を守って酔っぱらっている。
とはいえ、彼女の内に秘めた鬱憤が漏れ出し、それは普段は明るいペイパームーンの店内をドス黒く染めているかのようだった。
「あれじゃ追い出せないよね・・」
「だから伽耶ちゃん。暫くの間ヘルラちゃんの話し相手になってあげて。魔物娘専門のカウンセラーを目指しているのでしょ?」
「そ、そうだけど・・・」
いきなりの事態に伽耶がたじろぐ。
「そもそもカウンセリングの技術は教科書なんかじゃ身に付かないわ。大丈夫よ、彼女と話せばいいだけだから」
ウィルオー・ウィスプの「夏樹伽耶」。
彼女は幼馴染が伴侶と幸せに暮らしているのを見て、発作的に自殺しウィルオー・ウィスプへと転化した存在だ。
「学園」でカウンセリングを受け、魔物としての自分を受け入れたことにより彼女は彼女としての生を謳歌している。
彼女が「学園」で感じたこと。それは自分と同じ悩みや苦しみを感じる元人間の魔物が多くいること。
だからこそ、彼女は学園の教育課程を修了しても自発的に「学園」に残り、まだまだ数の少ない魔物娘専門のカウンセラーを目指しているのだ。
ゴト・・・・。
伽耶の目の前に暗緑色の瓶が置かれる。
「これを渡してあげるわ。酒飲み、それも魔物ならこの価値はわかるはずよ」
「グランマ、これって・・・・!」
― シャル・ドラゴニアン ―
竜皇国ドラゴニアでは魔物夫婦たちが庭園でワインを自作している。あのドラゴニア竜騎士団のアルトイーリスも自分自身でワインを作っており、噂では女王であるデオノーラも自前の農園を持っているとされている。
現地では水のように飲まれているモノでも、日本では中々お目にかからないレアモノであることはよくある。
このシャル・ドラゴニアンもドラゴニア以外では中々手に入らない逸品だ。
「若葉さんのお土産よ。確かに珍しいものだけど、酒というモノは飾っておくものじゃないわ。それに楽しく飲んでもらうことが酒にとっての喜びよ」
伽耶は瓶と飾りっ気のないリーデルのワイングラスを二脚持つとヘルラの元に向かった。
「私、ワインなんか頼んでないわよ?」
ヘルラが伽耶を怪訝な顔で見る。伽耶は先ほどまでの動揺をおくびにも出さず、彼女に話しかけた。
「いや〜、グランマにオーダーしに行ったんだけど、あいにくとカクテルに使うワイルドターキーが底ついてしまって・・・・。折角、楽しんでいるところに水を差すのはということで・・・」
伽耶がワインをテーブルに置く。
「これはグランマからの詫びってことで」
ラベルを見た途端、ヘルラの目の色が変わる。
「こ、これは・・・・!貴方、この価値が分かるの?」
「一応、ね。これは詫びの品だから追加チャージはないよ」
「折角のワインだし、頂かせてもらうわ。そうだ貴方も付き合いなさいよ」
「良いんですか?」
「本当はグランマに相手になってもらいたかったけど、貴方は口が堅くて誠実そうだし・・・」
「ありがとうございます」
そう言うと、ヘルラの対面に座り慣れた手つきでコルクを抜きゆっくりと二つのワイングラスに注いだ。
「「乾杯!」」
二人はグラスを軽く当て口に運ぶ。
〜 あれ?これってワインじゃない? 〜
ワインは樽由来の風味があるが、目の前のシャル・ドラゴニアンにはそれがなかった。アルコールの臭みもなく、まるで丁寧に果実をすりつぶした上等なジュースのようだ。
それでいて、仄かに顔が色づくほどの酒精は含まれている。
「私が里に居た時に飲んでいたワインなんか目じゃないよ!ありがとうね!!」
「礼ならグランマに言ってくれよ。心配していたよ?」
「そっかぁ・・・・心配、かけちゃったね」
ヘルラが目を伏せる。
「話なら聞くよ」
「私・・・・夫と別れて来たの」
絞り出すようにヘルラがそう呟いた。彼女の細い指に嵌められた銀の指輪が切なげに光る。
「?!」
〜 り、離婚って! 〜
想定外の事態に伽耶が思わずグランマを見るが・・・・。
ぐっ!
グランマはスマホを片手にサムズアップしていた。どうやらグランマにとっては「想定内」の事態のようだ。
〜 実践あるのみか・・・! 〜
「里ってことは、外地出身?」
「そうよ。ボローヴェの近くのトスカってところ。パンくらいしか美味いものの無い退屈な場所よ」
「旦那さんもそこで?」
ヘルラは静かに頷いた。
「ミナくんはジェットセッターという雑誌のライターをやっていて、私の里に取材に来て・・・・」
魔物娘は性的にオープンな種族と思われているが、当然のことながらそうではない種族も存在している。特にエルフはやや社交性に欠ける種族だ。旧魔王時代では里に入ろうとする部外者にコンド―ムよう、もとい問答無用で矢を射かけたという逸話が残るくらいだ。
「一か月の滞在で私はミナくんの話す世界に夢中になって・・・。滞在最終日に告白したの」
伽耶が身を乗り出す。女性はコイバナに弱い、これは世界の真理である。
「僕は君に何も強制しない、ただ受け入れるだけさって言ってくれて。あの時ほど嬉しいことはなかったな・・・・」
そう言うとヘルラはグラスに残ったワインを飲み干した。
「ミナくんは優しかったなぁ・・・・。でも、私重かったのね、知らず知らずにミナくんを追い詰めていった」
ゴクリ
その言葉の先。そこにあるのは破滅。
伽耶は聞きたくなかった。だが、彼女のカウンセリングを行うにはその原因を理解しなければならない。
沈黙の時が訪れる。
「・・・・・。最初は些細な事だった。帰宅が遅れたり、小食になったり・・・。私って馬鹿。信じていればよかったのよ・・・調べようとしなきゃよかったのよ・・」
トクトクトク・・・
空になったグラスにワインを注ぐと、ヘルラは一気にそれを飲み干した。
「ミナくんが・・・ミナくんが肉欲に溺れる姿なんて見ずに済んだのよ!!!!」
〜 言っちゃった!言っちゃったよこの人! 〜
「今日、私は森エルフとして培ったスキルでミナくんを尾行したわ。そして・・・・見てしまったのよ!!ミナくんがミナくんが・・!」
ヘルラの端正な顔が歪む。
「ミナくんが焼肉牛一頭フルコースを食べていたのよ!!!!」
〜 は? 〜
「え?え?」
「何が受け入れるだけよ!!毎日のサラダ生活も健康的で美味しいとかウソついて!!!」
伽耶が恐る恐る声をかけた。
「あの〜〜もしかしてヘルラって菜食主義者?」
「何?それがどうしたの?」
「あ・・・・それね」
働き盛りの男性に菜食オンリーの食卓は辛いだろう。特に森の中で生活しているエルフは血を流す行為を嫌うことも多く、菜食主義であることが多い。
「私は離婚届にサインをして家を出たわ」
〜 どうしたもんかな・・・・ 〜
少々やり過ぎとは思うが、人間の場合でも離婚原因の一つに性格の不一致というものがある。
宗教や支持政党、そして食事。
エルフはプライドが高く人間をやや格下に見る傾向がある。故に嘘をつかれたことが彼女のプライドを傷つけたのだ。
こういう場合はお互いに話し合い、妥協点を探るのがベターではあるが、しかし骨が折れるだろう。
彼が謝罪した場合彼女はソレを受け入れるだろうが、根本の問題が解決せず結果としてまた同じことを繰り返しては意味がない。
伽耶が思案している時だ。
バン!
「ヘルラ!ごめん!!」
ペイパームーンのドアを開いて何者かが入り込んだ。その瞬間、その人物は飛んだ。
「すみませんでした!」
そして、着地。同時に見事に土下座をしていた。禁断の大技「ジャンピング土下座」である。
「つい魔が差してしまったんだ!!この通り!!この通りだ!だから帰ってきてくれ!!!!」
「何よ今更!!もう遅いのよ!!!」
ヘルラの目の前で額から煙を出すかのようにぐりぐりと床に擦り付ける大男。彼がヘルラの言う「ミナくん」なのだろう。
・・・・どう見てもそんな愛称が似合うとは思えないが。
〜 なんだよこれ・・・ 〜
夏樹伽耶は頭を抱えていた。
離婚、― 本人曰く「離婚届にサインして置いてきた」とのことだが ― の理由がこっそり焼肉に行ってきたことであることもさることながら、二人のやり取りを見るにつれだんだんとコントにも見えてくる。
「夫婦喧嘩は犬も食わない」なんて昔の人は言っていたが、いざ実際に目にするとよくわかる。
とはいえ、そろそろ二人には仲直りしてほしい。
ではどういった仲直りがベターなのか?
ヘルラの話ではミナくんとやらが菜食主義であることを受け入れて結婚したらしい。
無理やり食べさせられた訳でもあるまいし、たまに焼肉くらい食べに行ってもバチは当たらないと思う。しかしながらエルフは頑固で決して自分の主義主張は決して曲げない。
だからこそ、離婚届にサインするまでしたのだ。
見ると、旦那のミナは誠心誠意謝罪している。許してやっても・・・・、と伽耶は思うが、こればかりはヘルラ次第だ。こうなった以上、納得いくまで話し合うしかないだろう。
伽耶は独自に妥協点を幾つかリストアップしてみた。
一 基本菜食で時折肉食を許可
・・・・・無理だろう。
焼肉を食べに行っただけでこの剣幕だ。ヘルラが許すはずがない。
二 ヘルラに肉食の良さを知ってもらう。
却下。
三 今まで通り菜食主義
これしかないのか・・・・。
伽耶が何とか丸く収める方法を考えている時だ。
カラン!
「稼ぎ時に無理言って悪いわね、カーシャ」
ヘルラとその夫が繰り広げるベタベタな痴話喧嘩を横目にグランマがその人物を向かい入れた。
「いいって。私が軽急便の免許を取れるよう色々と手を回してくれたんですから」
カーシャと呼ばれたケンタウロスの女性がアタッシュケースを手渡した。
「学園長からは何か?」
「よろしく言っておいてって」
「ジルらしいわね。何か飲んでいく?アルコールの無いウィスキーシロップを使ったアイリッシュコーヒーなら仕事中でも問題ないでしょ?」
「また今度お願いします。その時はアルコール入りのアイリッシュコーヒーで」
「ええ。待っているわ」
そう言うとグランマは微笑んだ。
「アナタはいつもそうよ!アタシも魔物よ!!オナホ―ルみたいに乱暴にシてもらいたいこともあるのに!!」
「そ、それは・・・!」
「いつもみたいにアタシに負担を掛けたくないって言うつもりでしょ!女は愛を知ったら夢見る少女じゃいられないのよ!!」
「そうだよ!ボクにとっては君は可憐な女性だ!!それはこれからも変わらない!!」
「そこがダメッ!魔物、いや女は優しいだけじゃダメなのよ!」
二人の夫婦喧嘩は食生活から夫婦生活全般まで波及してしまっている。
もはや、この二人の着地点は伽耶とて考えもつかなかった。
〜 どうしたもんかな・・・・ 〜
伽耶がその頭脳をフル回転させていた時だ。
「お二人さん、喧嘩はそこまでで少し休憩してはどう?」
グランマが二人に声を掛けた。その手にあるのは綺麗に切り分けられた「ステーキ」だった。
「グランマなんで・・・うグッ!」
目にも止まらぬスピードでグランマがヘルラの口に「ステーキ」を放り込んだ。ヘルラは目を白黒させながらその「肉」を咀嚼する。
「これ・・・・肉じゃない?」
「そうよ。学園が宇宙開発用に作成した代用肉よ」
「代用肉?」
聞きなれない単語にヘルラがオウム返しに聞く。
「近い将来、人類はこの地球を出て火星にその居を移すことになる。テラフォーミングよ」
「テラフォーミングって、SFみたいな・・・」
「あら伽耶ちゃん。魔物と番った人間はその耐久性や能力が向上するし、伴侶と交わっていれば餓えることもない。過酷な宇宙開拓においてうってつけの人材よ」
「でもグランマ。それと代用肉がどう関係するんですか?」
「良い質問ね。いくら餓えなくても精神的な餓えは癒されない。人間はたとえ魔物に変わっても人間らしい食生活を望むものよ。でも飼育にコストのかかる牛や豚を宇宙へは持っていけない。そこで生み出されたのが植物由来の代用肉よ」
「さてミナさんも食べてみて」
ミナくんこと、「押川美名」はグランマが差し出した「代用肉」を恐る恐る口に運ぶ。
「美味しい!これ本当に植物から作られているんですか!」
「肉のうまみ成分は既に分析されているわ。それを植物性物質で合成することも可能よ。つまり、味に関しては肉そのものと言っていいのわ」
そこまで言うと代用肉をパクつくヘルラに向かい合った。
「これならお互い歩み寄る事もできるんじゃないかしら?ヘルラちゃん?」
「確かに・・・・」
「それに今学園はこの代用肉のモニターを探しているから、一度引き受けてみてはどうかしら?二人共」
「・・・・」
ヘルラがミナを見る。
「今回だけ!今回だけ許してあげるわ!!だからシャキッとしなさいよ!!」
「ヘルラ〜〜〜!」
まるで旧魔王時代の種付けオークそのものようなミナが華奢なヘルラを抱きしめる。華奢であってもそこは魔物娘。彼の全力の抱擁にその顔はエルフらしい凛としたものからサキュバスのような淫らな欲を秘めたものへと変わる。
「仲直りできたようね」
「「はい」」
「決まりね。学園には私から連絡しておくから今夜は二人でよく話し合ってね」
そう言うとグランマは二人にウィンクした。
「はぁ〜〜〜〜」
「どうしたの伽耶ちゃん?」
ヘルラ達を見送った後、伽耶は一人カウンターに突っ伏してため息をついていた。
伽耶がワイン片手にヘルラのテーブルに向かった時には既にグランマは「学園」に連絡をつけ、「代用肉」をカーシャに取りに行ってもらっていたのだ。
「なんというか・・正直、自分の実力を思い知ったというか・・・・」
「確かに焼肉を食べに行っただけで別れ話なんて普通は思いつかないわね」
「今回はグランマに助けられたけど、もし話がこじれてしまったらと思うと・・・」
「あら?私は伽耶ちゃんの実力を信じていたけど?」
グランマの一言に伽耶がきょとんとした顔をする。
「そう、それよそれ!伽耶ちゃんは自然体なのがいいのよ」
「自然体?」
「新人のカウンセラーがよくする間違いよ。カウンセラーはあくまでカウンセラー。医者じゃないわ。できる事と言えば話を聞いてあげるだけ。それが基本であり全てよ。それに・・・」
「それに?」
「伽耶ちゃん気付いた?彼女、別れてきたと言っているわりにちゃんと指輪をしていたわ。あの娘、なんだかんだ言って彼に迎えに来て欲しかったってことよ」
伽耶はハッとした。状況に対応することのみで対象の観察が疎かになっていたことに気付いたのだ。
「やっぱりグランマには頭が上がらないや・・・」
「経験は一朝一夕で得られるものじゃない。無論、足りない経験をネットや本で補完するのは場合によっては悪くはないわ。でも、血肉を持たない言葉に意味は果たしてあるのかしら?」
「・・・・・・」
「伽耶ちゃん、今夜アナタは貴重な経験を得たわ。これを糧に精進しなさい」
「はい!」
伽耶の元気な声を聞くとグランマは微笑む。
その笑顔はまるで我が子に微笑みかける慈母のように、暖かく心安らぐものだった。
サキュバスの「グランマ」が営むショットバーで、この街にいつできたのかは誰も知らない。
「いつの間にか常連客となっていた。何を言っているのか、わからねーと思うがおれもわからなかった」
とやたらと濃い顔立ちのフランス人が教えてくれるように、常連客は多いが彼らに聞いてみてもいつ開店したのかはついぞわからなった。
ここに集う客は単純にグランマが作るカクテルを楽しみに訪れる客もいれば、興味本位で「魔物娘」と呼ばれる異界の存在と知り合い、あわよくば恋人になりたいという少々邪な理由を持つ客もいる。
また、客の中にはグランマが時折話してくれる虚実交じりの話を楽しみに訪れる者もいる。
人魔が混じり楽しい時間を共有できる場所。それが此処、「Barペイパームーン」だ。
しかし、今夜は珍しく閑散としていた。
「フランシス・アルバート!ダブルで!!」
― フランシス・アルバート ―
歌手のフランク・シナトラに捧げられたカクテルで、彼が終生愛したワイルドターキー・バーボンとタンカレー・ジンを半々。それをミキシンググラスでステアして、オールドファッションドグラスに注いだカクテルだ。
このワイルドターキーはバーボンらしい甘さと強さを味わえる半面、ボトルインボンド規格でアルコール度が50以上もある。そこに更に47度以上のドライジン、タンカレー・ジンを半分加えるわけだ。しかも、氷を大量に使うシェイカーではなく、まろやかさよりも鋭さを感じるステアで調合する。
はっきり言って並みの酒飲みなら一杯さえも飲み干すことはできないだろう。因みにフランシス・アルバートとはフランク・シナトラの本名である。
それを目の前の客は先ほどから何杯も注文している。それもダブルで。
当然のことながら、「客」は人間ではない。
新緑の若葉を思わせる鮮やかな髪をした魔物娘「エルフ」だ。
「どうしたの・・・・?」
「は、はい!今お持ちします!!」
ペイパームーンの従業員である、ウィルオー・ウィスプの「夏樹伽耶」がその女性に頭を下げるとカウンターに向かう。
「グランマ・・・どうします?」
「どうするもこうするもないわ。あの娘は客よ?」
「でも・・・・」
夏樹がチラリと見る。カランと、ドアに取り付けられた真鍮製の古いカウベルが来客を告げるのだが・・・・。
ドアを開いた瞬間、店内に立ち込めるどろりとした負のオーラが押し寄せ客はそのままドアを閉めて行ってしまう。
「確かに問題ね。お酒は楽しむためのものであくまで逃避するためのものではないわ」
この時伽耶はグランマが対応してくれると期待していた。しかしながら・・・
「じゃあ、伽耶ちゃん。ヘルラちゃんと話をつけてきて」
「へ?」
― 往々にして希望とは別の結果になるのが人生というものである ―
「えっ?あのお客、ヘルラって言うの?」
― ・・・疑問はそこじゃないだろっ ―
「あの娘、落ち込むと決まって深酒するのよ。酒癖が悪いなら追い出すこともできるけど・・・・・」
グランマがヘルラを見る。あれだけ深酒しても酔っ払いのような行動は見られない。つまりは節度を守って酔っぱらっている。
とはいえ、彼女の内に秘めた鬱憤が漏れ出し、それは普段は明るいペイパームーンの店内をドス黒く染めているかのようだった。
「あれじゃ追い出せないよね・・」
「だから伽耶ちゃん。暫くの間ヘルラちゃんの話し相手になってあげて。魔物娘専門のカウンセラーを目指しているのでしょ?」
「そ、そうだけど・・・」
いきなりの事態に伽耶がたじろぐ。
「そもそもカウンセリングの技術は教科書なんかじゃ身に付かないわ。大丈夫よ、彼女と話せばいいだけだから」
ウィルオー・ウィスプの「夏樹伽耶」。
彼女は幼馴染が伴侶と幸せに暮らしているのを見て、発作的に自殺しウィルオー・ウィスプへと転化した存在だ。
「学園」でカウンセリングを受け、魔物としての自分を受け入れたことにより彼女は彼女としての生を謳歌している。
彼女が「学園」で感じたこと。それは自分と同じ悩みや苦しみを感じる元人間の魔物が多くいること。
だからこそ、彼女は学園の教育課程を修了しても自発的に「学園」に残り、まだまだ数の少ない魔物娘専門のカウンセラーを目指しているのだ。
ゴト・・・・。
伽耶の目の前に暗緑色の瓶が置かれる。
「これを渡してあげるわ。酒飲み、それも魔物ならこの価値はわかるはずよ」
「グランマ、これって・・・・!」
― シャル・ドラゴニアン ―
竜皇国ドラゴニアでは魔物夫婦たちが庭園でワインを自作している。あのドラゴニア竜騎士団のアルトイーリスも自分自身でワインを作っており、噂では女王であるデオノーラも自前の農園を持っているとされている。
現地では水のように飲まれているモノでも、日本では中々お目にかからないレアモノであることはよくある。
このシャル・ドラゴニアンもドラゴニア以外では中々手に入らない逸品だ。
「若葉さんのお土産よ。確かに珍しいものだけど、酒というモノは飾っておくものじゃないわ。それに楽しく飲んでもらうことが酒にとっての喜びよ」
伽耶は瓶と飾りっ気のないリーデルのワイングラスを二脚持つとヘルラの元に向かった。
「私、ワインなんか頼んでないわよ?」
ヘルラが伽耶を怪訝な顔で見る。伽耶は先ほどまでの動揺をおくびにも出さず、彼女に話しかけた。
「いや〜、グランマにオーダーしに行ったんだけど、あいにくとカクテルに使うワイルドターキーが底ついてしまって・・・・。折角、楽しんでいるところに水を差すのはということで・・・」
伽耶がワインをテーブルに置く。
「これはグランマからの詫びってことで」
ラベルを見た途端、ヘルラの目の色が変わる。
「こ、これは・・・・!貴方、この価値が分かるの?」
「一応、ね。これは詫びの品だから追加チャージはないよ」
「折角のワインだし、頂かせてもらうわ。そうだ貴方も付き合いなさいよ」
「良いんですか?」
「本当はグランマに相手になってもらいたかったけど、貴方は口が堅くて誠実そうだし・・・」
「ありがとうございます」
そう言うと、ヘルラの対面に座り慣れた手つきでコルクを抜きゆっくりと二つのワイングラスに注いだ。
「「乾杯!」」
二人はグラスを軽く当て口に運ぶ。
〜 あれ?これってワインじゃない? 〜
ワインは樽由来の風味があるが、目の前のシャル・ドラゴニアンにはそれがなかった。アルコールの臭みもなく、まるで丁寧に果実をすりつぶした上等なジュースのようだ。
それでいて、仄かに顔が色づくほどの酒精は含まれている。
「私が里に居た時に飲んでいたワインなんか目じゃないよ!ありがとうね!!」
「礼ならグランマに言ってくれよ。心配していたよ?」
「そっかぁ・・・・心配、かけちゃったね」
ヘルラが目を伏せる。
「話なら聞くよ」
「私・・・・夫と別れて来たの」
絞り出すようにヘルラがそう呟いた。彼女の細い指に嵌められた銀の指輪が切なげに光る。
「?!」
〜 り、離婚って! 〜
想定外の事態に伽耶が思わずグランマを見るが・・・・。
ぐっ!
グランマはスマホを片手にサムズアップしていた。どうやらグランマにとっては「想定内」の事態のようだ。
〜 実践あるのみか・・・! 〜
「里ってことは、外地出身?」
「そうよ。ボローヴェの近くのトスカってところ。パンくらいしか美味いものの無い退屈な場所よ」
「旦那さんもそこで?」
ヘルラは静かに頷いた。
「ミナくんはジェットセッターという雑誌のライターをやっていて、私の里に取材に来て・・・・」
魔物娘は性的にオープンな種族と思われているが、当然のことながらそうではない種族も存在している。特にエルフはやや社交性に欠ける種族だ。旧魔王時代では里に入ろうとする部外者にコンド―ムよう、もとい問答無用で矢を射かけたという逸話が残るくらいだ。
「一か月の滞在で私はミナくんの話す世界に夢中になって・・・。滞在最終日に告白したの」
伽耶が身を乗り出す。女性はコイバナに弱い、これは世界の真理である。
「僕は君に何も強制しない、ただ受け入れるだけさって言ってくれて。あの時ほど嬉しいことはなかったな・・・・」
そう言うとヘルラはグラスに残ったワインを飲み干した。
「ミナくんは優しかったなぁ・・・・。でも、私重かったのね、知らず知らずにミナくんを追い詰めていった」
ゴクリ
その言葉の先。そこにあるのは破滅。
伽耶は聞きたくなかった。だが、彼女のカウンセリングを行うにはその原因を理解しなければならない。
沈黙の時が訪れる。
「・・・・・。最初は些細な事だった。帰宅が遅れたり、小食になったり・・・。私って馬鹿。信じていればよかったのよ・・・調べようとしなきゃよかったのよ・・」
トクトクトク・・・
空になったグラスにワインを注ぐと、ヘルラは一気にそれを飲み干した。
「ミナくんが・・・ミナくんが肉欲に溺れる姿なんて見ずに済んだのよ!!!!」
〜 言っちゃった!言っちゃったよこの人! 〜
「今日、私は森エルフとして培ったスキルでミナくんを尾行したわ。そして・・・・見てしまったのよ!!ミナくんがミナくんが・・!」
ヘルラの端正な顔が歪む。
「ミナくんが焼肉牛一頭フルコースを食べていたのよ!!!!」
〜 は? 〜
「え?え?」
「何が受け入れるだけよ!!毎日のサラダ生活も健康的で美味しいとかウソついて!!!」
伽耶が恐る恐る声をかけた。
「あの〜〜もしかしてヘルラって菜食主義者?」
「何?それがどうしたの?」
「あ・・・・それね」
働き盛りの男性に菜食オンリーの食卓は辛いだろう。特に森の中で生活しているエルフは血を流す行為を嫌うことも多く、菜食主義であることが多い。
「私は離婚届にサインをして家を出たわ」
〜 どうしたもんかな・・・・ 〜
少々やり過ぎとは思うが、人間の場合でも離婚原因の一つに性格の不一致というものがある。
宗教や支持政党、そして食事。
エルフはプライドが高く人間をやや格下に見る傾向がある。故に嘘をつかれたことが彼女のプライドを傷つけたのだ。
こういう場合はお互いに話し合い、妥協点を探るのがベターではあるが、しかし骨が折れるだろう。
彼が謝罪した場合彼女はソレを受け入れるだろうが、根本の問題が解決せず結果としてまた同じことを繰り返しては意味がない。
伽耶が思案している時だ。
バン!
「ヘルラ!ごめん!!」
ペイパームーンのドアを開いて何者かが入り込んだ。その瞬間、その人物は飛んだ。
「すみませんでした!」
そして、着地。同時に見事に土下座をしていた。禁断の大技「ジャンピング土下座」である。
「つい魔が差してしまったんだ!!この通り!!この通りだ!だから帰ってきてくれ!!!!」
「何よ今更!!もう遅いのよ!!!」
ヘルラの目の前で額から煙を出すかのようにぐりぐりと床に擦り付ける大男。彼がヘルラの言う「ミナくん」なのだろう。
・・・・どう見てもそんな愛称が似合うとは思えないが。
〜 なんだよこれ・・・ 〜
夏樹伽耶は頭を抱えていた。
離婚、― 本人曰く「離婚届にサインして置いてきた」とのことだが ― の理由がこっそり焼肉に行ってきたことであることもさることながら、二人のやり取りを見るにつれだんだんとコントにも見えてくる。
「夫婦喧嘩は犬も食わない」なんて昔の人は言っていたが、いざ実際に目にするとよくわかる。
とはいえ、そろそろ二人には仲直りしてほしい。
ではどういった仲直りがベターなのか?
ヘルラの話ではミナくんとやらが菜食主義であることを受け入れて結婚したらしい。
無理やり食べさせられた訳でもあるまいし、たまに焼肉くらい食べに行ってもバチは当たらないと思う。しかしながらエルフは頑固で決して自分の主義主張は決して曲げない。
だからこそ、離婚届にサインするまでしたのだ。
見ると、旦那のミナは誠心誠意謝罪している。許してやっても・・・・、と伽耶は思うが、こればかりはヘルラ次第だ。こうなった以上、納得いくまで話し合うしかないだろう。
伽耶は独自に妥協点を幾つかリストアップしてみた。
一 基本菜食で時折肉食を許可
・・・・・無理だろう。
焼肉を食べに行っただけでこの剣幕だ。ヘルラが許すはずがない。
二 ヘルラに肉食の良さを知ってもらう。
却下。
三 今まで通り菜食主義
これしかないのか・・・・。
伽耶が何とか丸く収める方法を考えている時だ。
カラン!
「稼ぎ時に無理言って悪いわね、カーシャ」
ヘルラとその夫が繰り広げるベタベタな痴話喧嘩を横目にグランマがその人物を向かい入れた。
「いいって。私が軽急便の免許を取れるよう色々と手を回してくれたんですから」
カーシャと呼ばれたケンタウロスの女性がアタッシュケースを手渡した。
「学園長からは何か?」
「よろしく言っておいてって」
「ジルらしいわね。何か飲んでいく?アルコールの無いウィスキーシロップを使ったアイリッシュコーヒーなら仕事中でも問題ないでしょ?」
「また今度お願いします。その時はアルコール入りのアイリッシュコーヒーで」
「ええ。待っているわ」
そう言うとグランマは微笑んだ。
「アナタはいつもそうよ!アタシも魔物よ!!オナホ―ルみたいに乱暴にシてもらいたいこともあるのに!!」
「そ、それは・・・!」
「いつもみたいにアタシに負担を掛けたくないって言うつもりでしょ!女は愛を知ったら夢見る少女じゃいられないのよ!!」
「そうだよ!ボクにとっては君は可憐な女性だ!!それはこれからも変わらない!!」
「そこがダメッ!魔物、いや女は優しいだけじゃダメなのよ!」
二人の夫婦喧嘩は食生活から夫婦生活全般まで波及してしまっている。
もはや、この二人の着地点は伽耶とて考えもつかなかった。
〜 どうしたもんかな・・・・ 〜
伽耶がその頭脳をフル回転させていた時だ。
「お二人さん、喧嘩はそこまでで少し休憩してはどう?」
グランマが二人に声を掛けた。その手にあるのは綺麗に切り分けられた「ステーキ」だった。
「グランマなんで・・・うグッ!」
目にも止まらぬスピードでグランマがヘルラの口に「ステーキ」を放り込んだ。ヘルラは目を白黒させながらその「肉」を咀嚼する。
「これ・・・・肉じゃない?」
「そうよ。学園が宇宙開発用に作成した代用肉よ」
「代用肉?」
聞きなれない単語にヘルラがオウム返しに聞く。
「近い将来、人類はこの地球を出て火星にその居を移すことになる。テラフォーミングよ」
「テラフォーミングって、SFみたいな・・・」
「あら伽耶ちゃん。魔物と番った人間はその耐久性や能力が向上するし、伴侶と交わっていれば餓えることもない。過酷な宇宙開拓においてうってつけの人材よ」
「でもグランマ。それと代用肉がどう関係するんですか?」
「良い質問ね。いくら餓えなくても精神的な餓えは癒されない。人間はたとえ魔物に変わっても人間らしい食生活を望むものよ。でも飼育にコストのかかる牛や豚を宇宙へは持っていけない。そこで生み出されたのが植物由来の代用肉よ」
「さてミナさんも食べてみて」
ミナくんこと、「押川美名」はグランマが差し出した「代用肉」を恐る恐る口に運ぶ。
「美味しい!これ本当に植物から作られているんですか!」
「肉のうまみ成分は既に分析されているわ。それを植物性物質で合成することも可能よ。つまり、味に関しては肉そのものと言っていいのわ」
そこまで言うと代用肉をパクつくヘルラに向かい合った。
「これならお互い歩み寄る事もできるんじゃないかしら?ヘルラちゃん?」
「確かに・・・・」
「それに今学園はこの代用肉のモニターを探しているから、一度引き受けてみてはどうかしら?二人共」
「・・・・」
ヘルラがミナを見る。
「今回だけ!今回だけ許してあげるわ!!だからシャキッとしなさいよ!!」
「ヘルラ〜〜〜!」
まるで旧魔王時代の種付けオークそのものようなミナが華奢なヘルラを抱きしめる。華奢であってもそこは魔物娘。彼の全力の抱擁にその顔はエルフらしい凛としたものからサキュバスのような淫らな欲を秘めたものへと変わる。
「仲直りできたようね」
「「はい」」
「決まりね。学園には私から連絡しておくから今夜は二人でよく話し合ってね」
そう言うとグランマは二人にウィンクした。
「はぁ〜〜〜〜」
「どうしたの伽耶ちゃん?」
ヘルラ達を見送った後、伽耶は一人カウンターに突っ伏してため息をついていた。
伽耶がワイン片手にヘルラのテーブルに向かった時には既にグランマは「学園」に連絡をつけ、「代用肉」をカーシャに取りに行ってもらっていたのだ。
「なんというか・・正直、自分の実力を思い知ったというか・・・・」
「確かに焼肉を食べに行っただけで別れ話なんて普通は思いつかないわね」
「今回はグランマに助けられたけど、もし話がこじれてしまったらと思うと・・・」
「あら?私は伽耶ちゃんの実力を信じていたけど?」
グランマの一言に伽耶がきょとんとした顔をする。
「そう、それよそれ!伽耶ちゃんは自然体なのがいいのよ」
「自然体?」
「新人のカウンセラーがよくする間違いよ。カウンセラーはあくまでカウンセラー。医者じゃないわ。できる事と言えば話を聞いてあげるだけ。それが基本であり全てよ。それに・・・」
「それに?」
「伽耶ちゃん気付いた?彼女、別れてきたと言っているわりにちゃんと指輪をしていたわ。あの娘、なんだかんだ言って彼に迎えに来て欲しかったってことよ」
伽耶はハッとした。状況に対応することのみで対象の観察が疎かになっていたことに気付いたのだ。
「やっぱりグランマには頭が上がらないや・・・」
「経験は一朝一夕で得られるものじゃない。無論、足りない経験をネットや本で補完するのは場合によっては悪くはないわ。でも、血肉を持たない言葉に意味は果たしてあるのかしら?」
「・・・・・・」
「伽耶ちゃん、今夜アナタは貴重な経験を得たわ。これを糧に精進しなさい」
「はい!」
伽耶の元気な声を聞くとグランマは微笑む。
その笑顔はまるで我が子に微笑みかける慈母のように、暖かく心安らぐものだった。
19/11/28 19:09更新 / 法螺男
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