懐柔のバラード ― 特盛黒豚ポークカレー ―
― クリスマス ―
そもそもは神の子がこの地に生まれたことを祝う宗教行事である「降誕祭」であったが、現在においてはそれを厳密に守っていることは稀だ。
大概、宗教的な祝日というものは長い時間でその有り様を変える。現在、「クリスマス」というのは家族や恋人と一緒に過ごす日へと変わった。
日本においては「聖夜」が「性夜」とまで言われるように、いささか邪であるが「恋人」と過ごす日としての意味合いが強い。
しかしながら、この季節に絶望の淵に叩き落される人々もいる。
そう
一緒にクリスマスを過ごす「家族」も「恋人」もいない、「クリぽっち」呼ばれる人々だ。
明かりの落とされた部屋。
独身男性の部屋としては掃除が行き届き、部屋の調度品も高級な品物ではないが、大切に扱われているのだろう、まるで新品のように輝いていた。
部屋の主の性格が表れた部屋と言える。
しかしながら・・・。
「・・・・・・」
ベッドで毛布に包まる男性は生気のない死んだような瞳でスマートフォンをスワイプする。
クリスマスだと言うのに共に過ごすべき家族は地方で、今の彼にわざわざ帰省するほどの気力はない。
その画面に映るのは生きる喜びを謳歌する、気力に満ち溢れた男と豊満でやや肉感的な女性だ。
「愛菜・・・・・・」
男、「塩山功」と「愛菜」は恋人ではない。「客」と「娼婦」、所謂「泡姫」の関係だ。
彼女と塩山の関係は三年ほど前に遡る。その豊満な体はともすれば下品にも見えるがしかし、それを補って余るほどの濃厚なサービス。
ただのセールストークとは思うが彼女は三十過ぎのうだつの上がらない功にも優しく語り掛け、日々の仕事で心にぽっかりと穴の空いた彼を満たしてくれた。
彼も愛菜を愛し、やがて二人はルール違反ではあるが店外でもデートするようになり、店では許されないはずの「中出し」もするようになった。
しかし、楽しい時はいずれ去り行く。万物不変の真理である。
半年前のことだ。
いつものように功が愛菜と店外デートを楽しんでいた時だ。
「私、店を辞めるんだ」
「急だな。何かあったの？」
「うん」
愛菜は静かに頷いた。思えば、愛菜も三十路を過ぎつつある。店としてもこれ以上の集客は見込めないだろう。客はテクや愛嬌よりも常に若い女性を望むからだ。
「功ちゃん心配しなくてもいいよ！蓄えも十分だし、それに私外地に行って魔物になるつもりだし」
「え？！」
この国においては「魔物化」は不慮の事故や治療目的以外ではハードルが高い。先進国の中でいち早く魔物達を受け入れ、法的な立場と庇護を与えたこの国でも現状法整備については後手後手に回ることが多く、書類上の手続きの煩雑さから魔物化には制限がかけられている。門の向こう、「外地」でうっかり魔物化した場合は仕方がないが。
「魔物、か・・・」
功自身、魔物について偏見はない。しかし、身近な女性、何度も身体を重ねた愛菜が魔物へと変わるとなれば話は別だ。
今思えば愛菜は私に止めて欲しかったのかもしれない。
でも私は・・・・。
「・・・・・」
急な告白で混乱し、無言で彼女を抱きしめるだけで精いっぱいだった。
その日から愛菜と連絡が取れなくなった。
人は失った時にはじめてそのものの大切さを知る。
私はきっと「愛菜」に恋していたのだろう。
彼女が本当に「魔物」になったかどうかなんてわからない。
だが、魔物になるということは自分自身の想いに「正直」になるということだ。
きっと愛菜は自分に正直になったのだろう。そして選んだ。
そう・・・・・、私は彼女に「選ばれなかった」。
「・・・・・・」
ラインを見てもメールを見ても彼女からの連絡はない。
何も生み出さず、無意味でただただ自分を傷つける行為だ。
それも今日で終わり。
今夜が過ぎれば彼女との想い出はすべて消去する。誕生日に貰った愛菜からのプレゼントは廃棄し、ハメ撮り写真すら残さないつもりだ。
ピンポーン！
不意にチャイムがなる。
ドアを開けたら彼女がいる、そんな夢のような事は起こらないことはわかっている。
でも・・・・。
ガチャッ
案の定、ドアを開いても誰もいない。大方、どこぞの暇なガキがピンポンダッシュをしたのだろう。
「クソッ！」
ドン！
私は怒りの矛先を見失ったまま、それをドアに叩きつけるしかできなかった。
「畜生！どこのガキだ！！まさかユーチューバーってやつか！クリスマスで一人寂しく過ごすぼっちを笑うとか！！！」
人間、一度落ち込むと悪い方向悪い方向へと向かう。しかしながら思考の悪循環はテーブルにいつの間にか置かれた手紙によって唐突に終わりを告げた。
「・・・・・なんだよこれ」
彼に多少なりとも警戒心というものがあるのなら、その手紙を考えも無しに手に取ったりはしなかっただろう。だが、怒りで正常な思考ができない彼は何の疑問も抱かずにそれを開いていた。
シュゥゥゥゥゥ・・・・
「なッ？」
彼が手紙に手を触れた瞬間、手紙から発生した白い煙が部屋に充満する。
「ゲホッゲホッ！！！」
思わず、口を押えるが少し煙を吸ってしまい咽てしまう。
まさかテロ？と思うが、そもそも一人寂しくクリスマスを過ごしている人間に爆弾を送り付けても意味がない。寧ろ、リア充の集まるような場所で起こすはずだろう。
つまりはただの「嫌がらせ」だ。
カチッ！
口を押えながらなんとか換気扇のスイッチを押す。轟音とともに換気扇が回り、ゆっくりと白い煙が外へと排出される。
そこには・・・。
「カレーを入れるアレ？」
どう見てもカレーを入れる「アレ」にしか見えない物が鎮座していた。
「ち・が・い・ま・す！！！！！！！！！」
「ｷｪｪｪｪｪｪｱｧｧｧｧｧｧｼｬｧﾍﾞｯﾀｧｧｧｧｧｧｧ!!」
「だ・か・ら！私はれっきとした魔物です！！！」
「へ？」
「やっと落ち着きましたね・・・・。何を隠そう！私の名前はサマンサ！三代続くジーニーの家系で・・・・」
― あまりに長いのでカット。全文聞きたい方はわっふるわっふると書くか、パーティーでアへっている作者を見つけて下さい ―
「で、このカードは喪失の悲しみや苦しみを味わっている、独身の男性に愛のプレゼントを贈るデビルサンタさんのプレゼントカードなのです！」
「悪いけど、カレーを入れるアレに欲情できるほど変態じゃないよ？」
「これは失礼。今、姿を見せますね」
カレーを入れるアレ、もといランプの側面についた紅いルビーのような瞳が輝くと、その場に一人の少女が立っていた。
アラビアの踊り子を思わせる強い意志を感じる面立ち
灼熱の太陽が焼き付いたかのような小麦色の肌
そして、少女の身体に似つかわしくないほど淫靡な衣装
「どう？欲情した」
しかしそれを見る功からは一言。
「チェンジ」
「何でですか！！このロリコンを採り入れたボディのどこが不満なんですか！私をおもちゃにしてもいいんですよ！」
＊「ロリコンを採り入れたボディ」については「サザンクロス ラーナ少尉 プラモ」で検索。
居た堪れない気持ちを貴方に。
＊因みに、プラモの癖に乳首も再現されています。
「何がロリコンを採り入れたボディじゃ！俺はつるぺったんな姿なんかタイプじゃないんじゃーーーーー！！！」
「じゃあどんなのがタイプなんですか！」
「そりゃ・・・おっぱいは大きくて・・」
「ふむふむ」
「眼はツリ目で」
「ふむふむ」
「やっぱりケツはデカい方がいい！」
功は所謂「お尻愛」な人である。
「つまりはこういう姿かしら？」
サマンサの姿が再び煙に包まれる。
そこから現れたのは・・・・。
「マーヴェラス！！」
まさに彼の理想そのものだった。
その姿を現すなら危険な砂漠の毒サソリ。ちょっと引っ掻かれただけで熱に魘される、そんな美女だった。
「性夜」ことクリスマスイヴに一人過ごす毒男。今の彼にその毒は効きすぎた。
「フォォォォォォ！！！！！」
ビョォォォォン！！
伝家の宝刀「ルパンダイブ」である。
スカッ
「へ？」
彼の身体はサマンサの身体をスルーしてしまう。そして・・・・
「はぺっ！」
コィーン！
壁に衝突してしまった。
「うぅっ、ひどい目にあった・・・」
「ちゃんと説明を聞いてくださいよ！私たちジーニーは願い事を叶えるには実体化しなければいけませんから」
サマンサが言うには人や魔物を害する願いは叶えられないが、願えば大概の願い事は叶えられるとのこと。
「願い事は、さっきのねーちゃんと一発ハメること」
「じゃあ、教えたとおりにちゃんとコいてくださいね」
サマンサのホログラム ― 曰く、仮契約用のシュミクラ（コピー）とのことだが ― が消える。
後は願い事を強く願いながらシコること。もっとも「カレーを入れるアレ」を、だが。
シコシコシコシコシコ
〜 がんばれ！がんばれ！ 〜
どこからともなく応援が聞こえてくるが彼には一心不乱にシコる「アレ」しかもう見えなかった。
「フォォォォォォ！！！！！！フィニッシャー！！！！」
功の雄叫びが木霊する。
ボフッ！
「カレーを入れるアレ」の注ぎ口から白いザーメン、もとい白い煙が立ち上るとそれはすぐさま人の形をとった。
ズズズ・・・。
身長は女性としては高く、その鍛えられた肉体はアマゾネスにも劣らない。
「感謝しますわ。戒めから解き放ってくれて・・・」
「サマンサ？」
「そうですわご主人様」
「さっきのホログラムのようだ・・・」
「さぁ楽にして眼を閉じて。カーマスートラに記されているよりもより深く愛し合いましょう」
彼は素直にサマンサの言葉に従った。
サマンサの柔らかな唇が功の唇とが触れ合い、そして・・・・。
「！」
サマンサの舌が彼の口内に滑り込んだ。そしてそれはまるで発情した蛇の交尾ように彼の舌と絡み合う。
〜 凄い！たかがディープキスなのにすごく感じる！ 〜
彼女の舌が功の咥内をたっぷりと蹂躙した後、彼女が顔を離した。
「ふふ。前戯はここまで。ねぇ、私の舌技、もっと別の所で味わってみない？」
彼女が挑発するように彼を見つめた。
「お、お願いします！！」
「いいこいいこ。欲望に忠実なのは美徳よ」
サマンサが幼子をあやすように彼の頭を撫でると、功の下腹部にゆっくりと顔を埋めた。
あっという間にパンツが脱がされ、空気に触れた彼自身がより一層硬くなる。
「うふふふ」
彼女がその熱い吐息を彼の分身に吹きかける。
「あふん！」
魔力を含んだ吐息だ。彼がだらしない声をあげるのは無理からぬことだろう。
彼は目を閉じて彼女の長い舌が彼自身に絡みつくのを待った。
ボフン！
「ぼふん？」
彼が前を見ると・・・・。
「あ、時間切れ」
小一時間前見た褐色幼女がそこにいた。
「え？今のおねたんは？ねぇ、おねたんは？」
哀れ、ショックのあまり功は幼児退行を起こしてしまう。
「こうなれば先手必勝！」
サマンサが下着代わりの前張を引き剥ぐと、そのまま彼と身を重ねる。
「つまり私たちジーニーは願い事を叶えるためには魔力の素である精を頂く必要があるんです！」
全裸に仁王立ちで力説するサマンサ。あの後功からたっぷりと精を頂いたおかげか、彼の望みであるちょっと黒ギャル気味のアラビア美女の姿をしている。
「じゃあ、その姿でずっと居てもらうためには・・・・」
「ヤってヤってヤりまくるしかないでしょ！」
サマンサがドヤ顔をした瞬間だった。
ボフン！
「あ」
彼が理想の美女を侍らせるようになるのはまだ時間がかかるようだ。
ピンポーン！
「ん？誰か来たのか？」
今しがた魔物娘の押し売りを受けたばかりだと言うのに、功は警戒することなく、ついいつものように玄関のドアを開いてしまった。
「あ！」
「よ！」
そこに立っていたのは外地で魔物娘「ハイオーク」に転化した「愛菜」だった。
― 小一時間後 ―
バチュ！バチュ！
「ハッハッ！確かに外地ではしゃぎ過ぎて半年間お前を放置プレイしていた私が悪いっけど・・さ！！」
ハイオークと化した愛菜が功の両腕を押さえながら、彼に跨り激しく腰を振る。その腰使いは泡姫で培った熟練の技ではあるが、彼女は魔物化に伴い処女膜も再生させたのだろう。結合部からは彼のザーメンと破瓜の血が混ざりあいピンク色になった淫液が滴っていた。
バチュ！バチュ！
〜 でも、連絡くらい・・・、ウグッ！ 〜
「なんだと？サプライズなのに教えてどうすんだよ！折角、性夜をプレゼントしてやろうと思っていたのに他の女を引っ張り込みやがって！」
ギュッ！
〜 ぎゃぁぁぁ！マンコを締めないで！！い、痛い！ 〜
「痛い？チンポをガチガチにしやがって！！この淫棒めが！！」
魔物娘「ハイオーク」の性格を一言いうなら、「意地悪」
転化する前の愛菜はどちらかと言うと攻め好きな「ドＳ」だった。彼女は外地でハイオークに転化したことにより、その性癖も強化されてしまったのだ。
「姉御！！カレーできましたぜ！！」
「サマンサ・・・タスケテ・・・」
イマカノとマエカノの鉢合わせ。人間ならば修羅場になりそうなシチュエーションではあるが、魔物娘は同じ魔物娘を排除しない。
サマンサは彼女の持つ「ハイオークのカリスマ」に屈服し、彼女の舎弟へと堕ちていた。即堕ちである。
「気に入った！よし！今度はお前がコイツをファックしていいぞ！！」
「ありがとうございます姉御！！」
いそいそと前張を引き剥がすサマンサ。
〜 わーい今夜は特盛黒豚ポークカレーだ（白目） 〜
イけないパーティーは終わらない。
「ジングルベール、ジングルベール、鈴が鳴る〜〜〜」
冬の夜空に少女の歌声が響く。
時間は既に深夜。盛り場なら今の煌々とネオンが輝き、喧噪に包まれているがアパート街ともなるとその喧噪は鳴りを潜める。
その闇夜を一台のソリが疾走していた。
「ねぇねぇ、マチネちゃん。あとどれくらい残ってんの？ソレ」
少女らしい明るい声。しかしその声を発した主は黒皮のマイクロビキニといういで立ち。おまけにその瞳は血のように紅く、肌も青かった。
生まれながらに過激派に所属する魔物娘「デビル」だ。
「あと二十五枚だよソワレちゃん。キャッ」
不意に訪れた「揺れ」にマチネと呼ばれた少女が悲鳴をあげた。
「ちょっと奴隷！ナニ気を抜いてんだよ！」
ピシッ！
マチネが手にした鞭を振り下ろす。
「ふごッ！ふっごごごごご！！！！」
見ると、二人の乗ったソリを引いているのは一人の男性だった。鍛えられた身体に黒革のハーネスとボールギャグを取り付けられ、その頭にはトナカイの角が付けられている。
彼の名は「正木・クロード」。
外資系企業の役員であり好青年然とした人物ではある。しかし、その性根は下劣であり、気に入った女性ならば恋人や夫がいてもお構いなし。
そんな屑にも劣るような人物が魔物娘をターゲットとしないわけがない。
伴侶を持つキキーモラを襲おうとしたのが運の尽き。事前に彼が行っていた魔界銀製アクセサリーの不審な買い込みを調べ上げた過激派は彼をクロと処断。そのまま過去の悪事をネットでバラされた挙句、組織の首魁であるデーモンの「マクスウェル・レーム」、その忠実な部下であるデビルの「ソワレ」と「マチネ」の賞与として渡された。
その後、上司のレーム直伝の調教を二人から一年以上喰らうことになり、今夜は彼女達の乗るソリを引く「トナカイ」として久方ぶりに外界へと出ていた。
「さっさと終えてアジトに戻ろうよソワレちゃん！」
「あったかいホットショコラに黄金色のターキー！そ・れ・に！」
「外地からの直輸入！トリコノミール謹製トリコノロール！！！」
「「イェイ！！！」」
魔物娘とはいっても「乙女」である。
やはりスィーツ（笑）に弱い生き物なのだ。
「そうと！」
「決まったら！」
「「ターボ全開で終わらせなきゃね！！！」」
二人がソリに中央に設置されたボタンを押した。
その瞬間だった。
ヴィィィィィィィン！！
「ふごッ！！！！！！！！！ふぃぃぃぃぃぃぃぃ！！！」
クロードのアナルに押し込まれた魔界銀製のバイブが激しく振動を始めた。
「そおら、走れ走れぇ！！！！」
「ちんたら走ったらまたバイブのレベルを上げるよ？」
・・・・クロードの心に反逆の意思などもはや残っていなかった。
寧ろ、二人の「お嬢様」からもっと激しい責めをしてもらうにはどのような「しくじり」をするべきかを考えていた。
「ふごっ！ふぐぐ！！（ありがとうございます！ありがとうございます！）」
身も心も完全に堕ちたクロードをソワレとマチネは愉悦に満ちた瞳で見つめていた。
そもそもは神の子がこの地に生まれたことを祝う宗教行事である「降誕祭」であったが、現在においてはそれを厳密に守っていることは稀だ。
大概、宗教的な祝日というものは長い時間でその有り様を変える。現在、「クリスマス」というのは家族や恋人と一緒に過ごす日へと変わった。
日本においては「聖夜」が「性夜」とまで言われるように、いささか邪であるが「恋人」と過ごす日としての意味合いが強い。
しかしながら、この季節に絶望の淵に叩き落される人々もいる。
そう
一緒にクリスマスを過ごす「家族」も「恋人」もいない、「クリぽっち」呼ばれる人々だ。
明かりの落とされた部屋。
独身男性の部屋としては掃除が行き届き、部屋の調度品も高級な品物ではないが、大切に扱われているのだろう、まるで新品のように輝いていた。
部屋の主の性格が表れた部屋と言える。
しかしながら・・・。
「・・・・・・」
ベッドで毛布に包まる男性は生気のない死んだような瞳でスマートフォンをスワイプする。
クリスマスだと言うのに共に過ごすべき家族は地方で、今の彼にわざわざ帰省するほどの気力はない。
その画面に映るのは生きる喜びを謳歌する、気力に満ち溢れた男と豊満でやや肉感的な女性だ。
「愛菜・・・・・・」
男、「塩山功」と「愛菜」は恋人ではない。「客」と「娼婦」、所謂「泡姫」の関係だ。
彼女と塩山の関係は三年ほど前に遡る。その豊満な体はともすれば下品にも見えるがしかし、それを補って余るほどの濃厚なサービス。
ただのセールストークとは思うが彼女は三十過ぎのうだつの上がらない功にも優しく語り掛け、日々の仕事で心にぽっかりと穴の空いた彼を満たしてくれた。
彼も愛菜を愛し、やがて二人はルール違反ではあるが店外でもデートするようになり、店では許されないはずの「中出し」もするようになった。
しかし、楽しい時はいずれ去り行く。万物不変の真理である。
半年前のことだ。
いつものように功が愛菜と店外デートを楽しんでいた時だ。
「私、店を辞めるんだ」
「急だな。何かあったの？」
「うん」
愛菜は静かに頷いた。思えば、愛菜も三十路を過ぎつつある。店としてもこれ以上の集客は見込めないだろう。客はテクや愛嬌よりも常に若い女性を望むからだ。
「功ちゃん心配しなくてもいいよ！蓄えも十分だし、それに私外地に行って魔物になるつもりだし」
「え？！」
この国においては「魔物化」は不慮の事故や治療目的以外ではハードルが高い。先進国の中でいち早く魔物達を受け入れ、法的な立場と庇護を与えたこの国でも現状法整備については後手後手に回ることが多く、書類上の手続きの煩雑さから魔物化には制限がかけられている。門の向こう、「外地」でうっかり魔物化した場合は仕方がないが。
「魔物、か・・・」
功自身、魔物について偏見はない。しかし、身近な女性、何度も身体を重ねた愛菜が魔物へと変わるとなれば話は別だ。
今思えば愛菜は私に止めて欲しかったのかもしれない。
でも私は・・・・。
「・・・・・」
急な告白で混乱し、無言で彼女を抱きしめるだけで精いっぱいだった。
その日から愛菜と連絡が取れなくなった。
人は失った時にはじめてそのものの大切さを知る。
私はきっと「愛菜」に恋していたのだろう。
彼女が本当に「魔物」になったかどうかなんてわからない。
だが、魔物になるということは自分自身の想いに「正直」になるということだ。
きっと愛菜は自分に正直になったのだろう。そして選んだ。
そう・・・・・、私は彼女に「選ばれなかった」。
「・・・・・・」
ラインを見てもメールを見ても彼女からの連絡はない。
何も生み出さず、無意味でただただ自分を傷つける行為だ。
それも今日で終わり。
今夜が過ぎれば彼女との想い出はすべて消去する。誕生日に貰った愛菜からのプレゼントは廃棄し、ハメ撮り写真すら残さないつもりだ。
ピンポーン！
不意にチャイムがなる。
ドアを開けたら彼女がいる、そんな夢のような事は起こらないことはわかっている。
でも・・・・。
ガチャッ
案の定、ドアを開いても誰もいない。大方、どこぞの暇なガキがピンポンダッシュをしたのだろう。
「クソッ！」
ドン！
私は怒りの矛先を見失ったまま、それをドアに叩きつけるしかできなかった。
「畜生！どこのガキだ！！まさかユーチューバーってやつか！クリスマスで一人寂しく過ごすぼっちを笑うとか！！！」
人間、一度落ち込むと悪い方向悪い方向へと向かう。しかしながら思考の悪循環はテーブルにいつの間にか置かれた手紙によって唐突に終わりを告げた。
「・・・・・なんだよこれ」
彼に多少なりとも警戒心というものがあるのなら、その手紙を考えも無しに手に取ったりはしなかっただろう。だが、怒りで正常な思考ができない彼は何の疑問も抱かずにそれを開いていた。
シュゥゥゥゥゥ・・・・
「なッ？」
彼が手紙に手を触れた瞬間、手紙から発生した白い煙が部屋に充満する。
「ゲホッゲホッ！！！」
思わず、口を押えるが少し煙を吸ってしまい咽てしまう。
まさかテロ？と思うが、そもそも一人寂しくクリスマスを過ごしている人間に爆弾を送り付けても意味がない。寧ろ、リア充の集まるような場所で起こすはずだろう。
つまりはただの「嫌がらせ」だ。
カチッ！
口を押えながらなんとか換気扇のスイッチを押す。轟音とともに換気扇が回り、ゆっくりと白い煙が外へと排出される。
そこには・・・。
「カレーを入れるアレ？」
どう見てもカレーを入れる「アレ」にしか見えない物が鎮座していた。
「ち・が・い・ま・す！！！！！！！！！」
「ｷｪｪｪｪｪｪｱｧｧｧｧｧｧｼｬｧﾍﾞｯﾀｧｧｧｧｧｧｧ!!」
「だ・か・ら！私はれっきとした魔物です！！！」
「へ？」
「やっと落ち着きましたね・・・・。何を隠そう！私の名前はサマンサ！三代続くジーニーの家系で・・・・」
― あまりに長いのでカット。全文聞きたい方はわっふるわっふると書くか、パーティーでアへっている作者を見つけて下さい ―
「で、このカードは喪失の悲しみや苦しみを味わっている、独身の男性に愛のプレゼントを贈るデビルサンタさんのプレゼントカードなのです！」
「悪いけど、カレーを入れるアレに欲情できるほど変態じゃないよ？」
「これは失礼。今、姿を見せますね」
カレーを入れるアレ、もといランプの側面についた紅いルビーのような瞳が輝くと、その場に一人の少女が立っていた。
アラビアの踊り子を思わせる強い意志を感じる面立ち
灼熱の太陽が焼き付いたかのような小麦色の肌
そして、少女の身体に似つかわしくないほど淫靡な衣装
「どう？欲情した」
しかしそれを見る功からは一言。
「チェンジ」
「何でですか！！このロリコンを採り入れたボディのどこが不満なんですか！私をおもちゃにしてもいいんですよ！」
＊「ロリコンを採り入れたボディ」については「サザンクロス ラーナ少尉 プラモ」で検索。
居た堪れない気持ちを貴方に。
＊因みに、プラモの癖に乳首も再現されています。
「何がロリコンを採り入れたボディじゃ！俺はつるぺったんな姿なんかタイプじゃないんじゃーーーーー！！！」
「じゃあどんなのがタイプなんですか！」
「そりゃ・・・おっぱいは大きくて・・」
「ふむふむ」
「眼はツリ目で」
「ふむふむ」
「やっぱりケツはデカい方がいい！」
功は所謂「お尻愛」な人である。
「つまりはこういう姿かしら？」
サマンサの姿が再び煙に包まれる。
そこから現れたのは・・・・。
「マーヴェラス！！」
まさに彼の理想そのものだった。
その姿を現すなら危険な砂漠の毒サソリ。ちょっと引っ掻かれただけで熱に魘される、そんな美女だった。
「性夜」ことクリスマスイヴに一人過ごす毒男。今の彼にその毒は効きすぎた。
「フォォォォォォ！！！！！」
ビョォォォォン！！
伝家の宝刀「ルパンダイブ」である。
スカッ
「へ？」
彼の身体はサマンサの身体をスルーしてしまう。そして・・・・
「はぺっ！」
コィーン！
壁に衝突してしまった。
「うぅっ、ひどい目にあった・・・」
「ちゃんと説明を聞いてくださいよ！私たちジーニーは願い事を叶えるには実体化しなければいけませんから」
サマンサが言うには人や魔物を害する願いは叶えられないが、願えば大概の願い事は叶えられるとのこと。
「願い事は、さっきのねーちゃんと一発ハメること」
「じゃあ、教えたとおりにちゃんとコいてくださいね」
サマンサのホログラム ― 曰く、仮契約用のシュミクラ（コピー）とのことだが ― が消える。
後は願い事を強く願いながらシコること。もっとも「カレーを入れるアレ」を、だが。
シコシコシコシコシコ
〜 がんばれ！がんばれ！ 〜
どこからともなく応援が聞こえてくるが彼には一心不乱にシコる「アレ」しかもう見えなかった。
「フォォォォォォ！！！！！！フィニッシャー！！！！」
功の雄叫びが木霊する。
ボフッ！
「カレーを入れるアレ」の注ぎ口から白いザーメン、もとい白い煙が立ち上るとそれはすぐさま人の形をとった。
ズズズ・・・。
身長は女性としては高く、その鍛えられた肉体はアマゾネスにも劣らない。
「感謝しますわ。戒めから解き放ってくれて・・・」
「サマンサ？」
「そうですわご主人様」
「さっきのホログラムのようだ・・・」
「さぁ楽にして眼を閉じて。カーマスートラに記されているよりもより深く愛し合いましょう」
彼は素直にサマンサの言葉に従った。
サマンサの柔らかな唇が功の唇とが触れ合い、そして・・・・。
「！」
サマンサの舌が彼の口内に滑り込んだ。そしてそれはまるで発情した蛇の交尾ように彼の舌と絡み合う。
〜 凄い！たかがディープキスなのにすごく感じる！ 〜
彼女の舌が功の咥内をたっぷりと蹂躙した後、彼女が顔を離した。
「ふふ。前戯はここまで。ねぇ、私の舌技、もっと別の所で味わってみない？」
彼女が挑発するように彼を見つめた。
「お、お願いします！！」
「いいこいいこ。欲望に忠実なのは美徳よ」
サマンサが幼子をあやすように彼の頭を撫でると、功の下腹部にゆっくりと顔を埋めた。
あっという間にパンツが脱がされ、空気に触れた彼自身がより一層硬くなる。
「うふふふ」
彼女がその熱い吐息を彼の分身に吹きかける。
「あふん！」
魔力を含んだ吐息だ。彼がだらしない声をあげるのは無理からぬことだろう。
彼は目を閉じて彼女の長い舌が彼自身に絡みつくのを待った。
ボフン！
「ぼふん？」
彼が前を見ると・・・・。
「あ、時間切れ」
小一時間前見た褐色幼女がそこにいた。
「え？今のおねたんは？ねぇ、おねたんは？」
哀れ、ショックのあまり功は幼児退行を起こしてしまう。
「こうなれば先手必勝！」
サマンサが下着代わりの前張を引き剥ぐと、そのまま彼と身を重ねる。
「つまり私たちジーニーは願い事を叶えるためには魔力の素である精を頂く必要があるんです！」
全裸に仁王立ちで力説するサマンサ。あの後功からたっぷりと精を頂いたおかげか、彼の望みであるちょっと黒ギャル気味のアラビア美女の姿をしている。
「じゃあ、その姿でずっと居てもらうためには・・・・」
「ヤってヤってヤりまくるしかないでしょ！」
サマンサがドヤ顔をした瞬間だった。
ボフン！
「あ」
彼が理想の美女を侍らせるようになるのはまだ時間がかかるようだ。
ピンポーン！
「ん？誰か来たのか？」
今しがた魔物娘の押し売りを受けたばかりだと言うのに、功は警戒することなく、ついいつものように玄関のドアを開いてしまった。
「あ！」
「よ！」
そこに立っていたのは外地で魔物娘「ハイオーク」に転化した「愛菜」だった。
― 小一時間後 ―
バチュ！バチュ！
「ハッハッ！確かに外地ではしゃぎ過ぎて半年間お前を放置プレイしていた私が悪いっけど・・さ！！」
ハイオークと化した愛菜が功の両腕を押さえながら、彼に跨り激しく腰を振る。その腰使いは泡姫で培った熟練の技ではあるが、彼女は魔物化に伴い処女膜も再生させたのだろう。結合部からは彼のザーメンと破瓜の血が混ざりあいピンク色になった淫液が滴っていた。
バチュ！バチュ！
〜 でも、連絡くらい・・・、ウグッ！ 〜
「なんだと？サプライズなのに教えてどうすんだよ！折角、性夜をプレゼントしてやろうと思っていたのに他の女を引っ張り込みやがって！」
ギュッ！
〜 ぎゃぁぁぁ！マンコを締めないで！！い、痛い！ 〜
「痛い？チンポをガチガチにしやがって！！この淫棒めが！！」
魔物娘「ハイオーク」の性格を一言いうなら、「意地悪」
転化する前の愛菜はどちらかと言うと攻め好きな「ドＳ」だった。彼女は外地でハイオークに転化したことにより、その性癖も強化されてしまったのだ。
「姉御！！カレーできましたぜ！！」
「サマンサ・・・タスケテ・・・」
イマカノとマエカノの鉢合わせ。人間ならば修羅場になりそうなシチュエーションではあるが、魔物娘は同じ魔物娘を排除しない。
サマンサは彼女の持つ「ハイオークのカリスマ」に屈服し、彼女の舎弟へと堕ちていた。即堕ちである。
「気に入った！よし！今度はお前がコイツをファックしていいぞ！！」
「ありがとうございます姉御！！」
いそいそと前張を引き剥がすサマンサ。
〜 わーい今夜は特盛黒豚ポークカレーだ（白目） 〜
イけないパーティーは終わらない。
「ジングルベール、ジングルベール、鈴が鳴る〜〜〜」
冬の夜空に少女の歌声が響く。
時間は既に深夜。盛り場なら今の煌々とネオンが輝き、喧噪に包まれているがアパート街ともなるとその喧噪は鳴りを潜める。
その闇夜を一台のソリが疾走していた。
「ねぇねぇ、マチネちゃん。あとどれくらい残ってんの？ソレ」
少女らしい明るい声。しかしその声を発した主は黒皮のマイクロビキニといういで立ち。おまけにその瞳は血のように紅く、肌も青かった。
生まれながらに過激派に所属する魔物娘「デビル」だ。
「あと二十五枚だよソワレちゃん。キャッ」
不意に訪れた「揺れ」にマチネと呼ばれた少女が悲鳴をあげた。
「ちょっと奴隷！ナニ気を抜いてんだよ！」
ピシッ！
マチネが手にした鞭を振り下ろす。
「ふごッ！ふっごごごごご！！！！」
見ると、二人の乗ったソリを引いているのは一人の男性だった。鍛えられた身体に黒革のハーネスとボールギャグを取り付けられ、その頭にはトナカイの角が付けられている。
彼の名は「正木・クロード」。
外資系企業の役員であり好青年然とした人物ではある。しかし、その性根は下劣であり、気に入った女性ならば恋人や夫がいてもお構いなし。
そんな屑にも劣るような人物が魔物娘をターゲットとしないわけがない。
伴侶を持つキキーモラを襲おうとしたのが運の尽き。事前に彼が行っていた魔界銀製アクセサリーの不審な買い込みを調べ上げた過激派は彼をクロと処断。そのまま過去の悪事をネットでバラされた挙句、組織の首魁であるデーモンの「マクスウェル・レーム」、その忠実な部下であるデビルの「ソワレ」と「マチネ」の賞与として渡された。
その後、上司のレーム直伝の調教を二人から一年以上喰らうことになり、今夜は彼女達の乗るソリを引く「トナカイ」として久方ぶりに外界へと出ていた。
「さっさと終えてアジトに戻ろうよソワレちゃん！」
「あったかいホットショコラに黄金色のターキー！そ・れ・に！」
「外地からの直輸入！トリコノミール謹製トリコノロール！！！」
「「イェイ！！！」」
魔物娘とはいっても「乙女」である。
やはりスィーツ（笑）に弱い生き物なのだ。
「そうと！」
「決まったら！」
「「ターボ全開で終わらせなきゃね！！！」」
二人がソリに中央に設置されたボタンを押した。
その瞬間だった。
ヴィィィィィィィン！！
「ふごッ！！！！！！！！！ふぃぃぃぃぃぃぃぃ！！！」
クロードのアナルに押し込まれた魔界銀製のバイブが激しく振動を始めた。
「そおら、走れ走れぇ！！！！」
「ちんたら走ったらまたバイブのレベルを上げるよ？」
・・・・クロードの心に反逆の意思などもはや残っていなかった。
寧ろ、二人の「お嬢様」からもっと激しい責めをしてもらうにはどのような「しくじり」をするべきかを考えていた。
「ふごっ！ふぐぐ！！（ありがとうございます！ありがとうございます！）」
身も心も完全に堕ちたクロードをソワレとマチネは愉悦に満ちた瞳で見つめていた。
18/12/25 21:52更新 / 法螺男