惚れたが悪いか ― ウツロカガミ ―
― Bar ペイパームーン ―
カウンター席で二人の女性がカクテルを楽しんでいた。
「でさ、リョウちゃんにネーム見せたらケツの中でションベンって無理ってダメ出ししたんだよ!」
背の低い少女が隣の背の高い女性に愚痴を漏らしていた。
「確かにそうだよ。アンタは男に夢見過ぎ。男は射精した後直ぐにションベンなんてできないんだから」
「でもさ、あのシーンは自分の部下を嬲って縛り首にした憎い将軍を雄奴隷に調教するのに必要な描写で・・・・」
「・・・・流石に50代のガチムチ爺さんをホモ奴隷調教ってハッキリ言ってグロ画像レベルだよ?分かってる?」
少女の名前は「立花深見」。
齢17か18ほどにしか見えない彼女だが、年齢は既にその数倍を超えている。
そう、彼女は「人間」ではない。
満月の光を写したかのような銀髪、赤い鬼灯のような瞳、雪のような白い肌。
不死者の国の貴族である魔物娘「ワイト」だ。
数年前、学業を修めるために「外地」から交換留学生として来日し、世界に誇る「書く兵器」保有国たる日本のサブカルチャーに毒された彼女は、学業を放り出し悪鬼ひしめく同人活動に手を染めた。
元々彼女にその才能があったのか、彼女がプロの漫画家になるのにそう時間はかからなかった。
彼女の代表作は「法衣を脱ぐとき」という作品で、魔王軍のリリムに誘惑された60代の法王がその誘惑に抗うために、騎士団長(こちらも60代)をホモレイプするという筋立ての作品だ。
その臭いまで感じるような描写から「蘇ったヤマジュン」とか「性転換した田亀源五郎」とさえ呼ばれている。
そんな彼女の目下の悩みは同棲している一人の男性のことだ。
「いっそのこと、実際に島崎に協力してもらったら?同棲してんだろ?」
「でも・・・・その・・・・」
深見が下を俯き、グラスの中のバノックバーン ― スコッチのトマトジュース割り ― を一気に呷る。
「・・・・・ヤッてないのよ」
「へ?」
「だ・か・ら!まだリョウちゃんとヤってないのよ、岬。フェラとパイズリはしたけど・・・・・」
岬と呼ばれた背の高い女性は、手元のショットグラスに入ったクレメンタイン・バーボンを一気飲みすると、それをチェーサーとして頼んだサミュエルアダムス・ボストンラガーで洗い流した。
「オーケーオーケー。お前たちは確か半年前から魔物娘専用のアパートで同棲してんだよな?で、なんでまだフェラしかしてないんだよ!」
「岬はリョウちゃんの男根を見たことないんだよ!あれは凶器だよホント!言い表すなら手垢のついたなんちゃってダークファンタジーの種付けゴブリンや孕ませオーク並みだよ!!」
「つまりは島崎のチンポに恐れをなして本番をしていないと・・・・・。アンタ、男舐めてる?」
「リュウちゃんを馬鹿にしてないよ!私が修羅場に入ったら文句言わずにアシしてくれるし・・・。終わったらちゃんとお礼にフェラしてあげるし」
「いいか深見。それを世間一般で都合のいい男っていうんだぜ」
「リュウちゃんを都合のいい男なんて・・・・」
「男なんて所詮はメスに種付けすることしか頭にない生き物なんだぜ?そんな男がフェラだけでホントに満足すると?」
「フェラだけじゃないもん!ちゃんとパイズリもするもん!」
「どっちも同じじゃ!」
正しくその通りである。
「でも・・・今更私からリュウちゃんに言うのは・・・その恥ずかしいし・・心の準備が・・私処女だし・・・」
この深見というワイトはかなりえげつないホモ漫画を描いているくせに「乙女」である。
おまけに結構な年齢であり(人間換算すればだが)、つまるところ「貴腐人」であるのだ。
「ったく!そういうのはちゃんと覚悟してから男と付き合えよな!」
「ちょっと岬!私はちゃんと・・・・!」
フィクションと現実は違う。
性に大らかな魔物娘であるとはいっても女性であり夢見る乙女でもあるのだ。
稀にこういうこともある。
最も毎回毎回燃える凌辱シチュエーション(ゲイにとってだが)について相談される身からすればたまったもんじゃない。
急に彼女を襲い始めた頭痛はバーボンのおかげだと岬は思いたかった。
月光に照らされたベッドルーム。
クィーンサイズのベッドの上では一人の少女が大柄な男性に跪いて、その熱く滾る肉槍を口内に咥え込んでいた。
ジュプジュプと少女の口に余るほどのモノを吸い上げながらも、その細い指はさわさわと彼の柔らかな肉袋を愛撫していた。
「ぅっうっふっぅ・・・この前のアシスタント代だよリュウちゃん」
少女は咥え込んでいた肉塊を口から引きずり出すと、鈴口をそのピンク色の舌でチロチロと刺激する。
「フッちゃん!もう・・・イッ」
フッちゃんと呼ばれた少女、立花深見は男の根本を強く握る。
「だめだよリュウちゃん。もっと楽しまきゃ!」
そう言うと深見はその胸の谷間に暴発寸前のソレを納めると、乳房の左右に手を乗せより強く挟み込むとぐりぐりと強く攻める。
魔物娘は生まれながらにして様々な性技に長けている。
それこそ人間の娼婦とセックスする以上に。
ただのフェラやパイズリでさえも極上の快楽を味わうことができる。
「フッちゃん!イ・・・イクゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」
彼の熱情が吐き出される瞬間、深見は島崎のソレを再び咥え込んだ。
熱いマグマのようなリュウのザーメンを飲み込んだ瞬間、深見も達していた。
「ふぁ・・・・美味しかったよリュウちゃん」
光を落としたベッドルームに深見の赤い瞳が輝いていた。
男の名前は「島崎リュウ」。
一年前に魔物娘婚活パーティで深見と知り合い、お互い共通のゲームをやっていた事により意気投合。
春夏秋冬のゲーム内のイベントを協力してクリアするなどのデート?を通じて半年前にこの魔物娘専用アパートで同棲している。
〜 今日もお預けか・・・・ 〜
リュウはベッドの上で一人そう思う。
傍らにはネグリジェ姿の深見。
男なら当然ヤリたくなっても仕方がない、が散々彼女の搾精テクニックで骨抜きにされてしまった彼自身は、こんな美味しすぎるシチュエーションであってもピクりとも反応しない。
インキュバスでない人の身ならば致し方のないことだ。
彼女のテクニックは極上で、はっきりいってソープランドで大枚はたいて本番してもこれほどの満足感は得られないだろう。
しかし、彼も男だ。
惚れた女をモノにしたいと思っても可笑しくはない。
実際、何度も彼女を誘うがしかし大概は彼女のフェラやパイズリ、髪コキでイッてしまいなかなか挿入までいかなかった。
男扱いされていないのでは?と思ったことさえある。
だが、彼がエロ本やエロビデオで抜こうとしたら怒るため一応は彼女にとって自分は恋人なのだろう。
平凡な公務員である、自分にとっては過ぎた女。
少なくともアシスタントの「お礼」としてあれだけの快楽を与えてくれるのだ。
これ以上望むことは贅沢。
そう言い聞かせようとするが、腕に感じる彼女の乳房やその幼いながらも雌を感じる身体に男としての欲情が掻き立てられる。
ハッキリ言って男にとって今の状況は「生殺し」だ。
今はこの心地良い疲労感に身を委ねて眠りについたほうがいい。
リュウは静かに目を閉じると程なくして寝息を立て始めた。
「さてと・・・」
リュウがダイニングの時計を見る。
短針は20時を過ぎていた。
今日は深見は帰宅が遅い。
いつものネームの打ち合わせだ。
漫画というのはまず、ネームが通らなければ作画が行われない。
特に、エロ漫画(ゲイ漫画であっても)などはどのくらいの描写が可能かのすり合わせは必要だ。
曲がりなりにも恋人であるため思わないこともないが、しかしそれも彼女の仕事である以上仕方のないことであると割り切っている。
ピンポーン!
「はいはい!」
リュウが玄関のドアを開くと、そこには・・・
「ども〜!」
ドアには部屋の持ち主である深見ではなく、別の女性が立っていた。
目の前の女性は黒の革ジャンとエナメルのブラ、黒の革パンを身に着けていて、そのしなやかな肢体はネコ科の猛獣を思わせた。
「真中さんライブ帰りですか?」
その女性の名前は「真中岬」。
魔物娘「サキュバス」である彼女は煽情的な衣装を着て、リードボーカルとしてバンドを率いている。
無論、深見と彼女は友人であり、半年前にこのアパートに引っ越した際のパーティに参加したためリュウは面識がある。
「あれ〜深見は?」
「フッちゃ・・・深見さんは今日はネームの打ち合わせで帰るのは遅いですよ。今夜は寒いですし、深見が帰って来るまで部屋の中で温まっていてください」
「じゃあこれ!」
彼女がリュウに重々しい紙袋を手渡す。
「これは?」
「今日はライブの最終日だし、深見と一緒に飲もうと上等のバーボンを持ってきたのさ!明日リュウは休みだろ?」
「そうだけど・・・・」
「楽しく飲んでたら深見のヤツも直ぐに来るって!ちょっと待ってろよ・・・」
岬は革パンに押し込んでいたスマートフォンを取り出すと、画面をフリップし数度ディスプレーを叩く。
「っしと、深見には連絡しておいたよ。もうすぐ帰るってさ!ささっ飲も飲も!」
半ば押し切られるようにリュウは岬を部屋に通した。
「じゃじゃーん!ブッカーズ!それもマスターブレンダーのブッカー・ノウが存命だった頃の代物だよ!!」
「・・・・・・・?」
「んだよ!ノリが悪いな〜。これはもう手に入らないレアモノだってのによぉ」
リュウはハードリカーの類は全く飲んだことがない。
故にいくらレアであっても彼の目からすればただのウィスキー以外の何物ではないのだ。
「まぁ一杯舐めてみれば良さがわかるさ」
「はぁ・・・・」
岬がショットグラスに琥珀色の液体を少量注ぎ渡す。
彼が一気に飲み干した瞬間喉を焼くような刺激が襲う。
しかし、同時に甘さとバニラのような風味が彼を包み込んだ。
「キツイけど美味い・・・・」
「おや?結構イケる口かい?初めて飲んだヤツは大概美味いとは言わないんだが、ブッカーズの良さが分かるなんてイイ男だね!これも・・・」
リュウの目の前にオレンジジュースが並々と注がれたグラスが置かれる。
「こいつはチェイサーさ。ウィスキーを飲んだ後にコイツを飲めば悪酔いしないからより長くウィスキーを楽しめるってわけ」
岬に促されるままにリュウが目の前のオレンジジュースを飲み干す。
途端に口の中のウィスキー由来のアルコール臭さが無くなり、オレンジジュースのすっきりとした風味が焼けた口内をリフレッシュさせる。
「ささっ!もう一杯」
ショットグラスに先ほどと同じ量のウィスキーが注がれる。
リュウは先程と同じく、それを呷りチェイサーのオレンジジュースを飲み干した。
数回それを繰り返した頃だ。
サワッ
「!」
テーブル下から伸びた岬の足がリュウの股間を撫でる。
「確かに深見のヤツが怯えるくらいの巨砲だな・・・・。ちょっと股が濡れちまうよ」
「な、何を・・・!」
「ナニってただの友人同士のスキンシップさ、魔物風味のな。アンタも散々深見と楽しんでんだろ?」
「ッ・・・・・・・」
「苦しいならアタシ様に相談しなよ?アタシに出来ることならなんでもしてやるから・・・・」
岬の紅い瞳がリュウを見つめる。
「僕は・・彼女を裏切れない・・・・・!」
「ふ〜ん。まあいいけどさ、これ見ても同じことを言えるかい?」
岬が見せたスマートフォンの画面、そこには高級レストランで見慣れない男と会食するドレスアップした深見が写されていた。
「フッちゃん・・・・・!」
「おんや〜〜アイツ、言ってなかったのか?不死者の国から婚約者が来てるって」
「婚約者・・・そんな嘘だ!!」
「ま、信じるも信じないのもアンタ次第さ。でも、深見はアンタに秘密を持った・・・・ならアンタも秘密を一つくらい持っていいんじゃない?」
岬が近づく。
彼女の白い手がジーンズ越しにリュウの「ソレ」を愛撫する。
「ホラ、辛くて苦しくてたまらないんだろ?」
「うっ・・・・・!」
彼女の愛撫はまるで「男性」の身体を知り尽くしているかのように的確に彼を責めたててくる。
その瞬間、だった。
「ただいまリュウちゃん!」
明るい深見の声が響く。
「チッ!」
岬が舌打ちする。
「リュウちゃん!ちかれたよぉ〜〜〜」
深見は岬にわき目を振らずリュウに抱きしめる。
だが、リュウが彼女を抱きしめ返すことはなくそのまま床に倒れる。
愛しき彼女の声を聞いて、緊張の糸が切れたのかリュウはいつの間にか寝息を立てていた。
「あ〜、その少々飲み過ぎたみたいで・・・・」
「ちょっと岬!リュウちゃんはあまり飲めないんだから加減してって言ったでしょ!」
「悪りぃ悪りぃ!部屋まで運ぶの手伝うわ・・・・」
岬はベッドルームまでリュウを運ぶと、玄関へと向かっていった。
いつもと変わらぬ日常。
しかし、確実に何かが変わろうとしていた。
「リュウちゃんごめんね・・・・私・・・もう・・」
幸せそうに眠る彼の寝顔を見つめながら、深見の瞳から涙がポタリポタリと滴っていた。
カウンター席で二人の女性がカクテルを楽しんでいた。
「でさ、リョウちゃんにネーム見せたらケツの中でションベンって無理ってダメ出ししたんだよ!」
背の低い少女が隣の背の高い女性に愚痴を漏らしていた。
「確かにそうだよ。アンタは男に夢見過ぎ。男は射精した後直ぐにションベンなんてできないんだから」
「でもさ、あのシーンは自分の部下を嬲って縛り首にした憎い将軍を雄奴隷に調教するのに必要な描写で・・・・」
「・・・・流石に50代のガチムチ爺さんをホモ奴隷調教ってハッキリ言ってグロ画像レベルだよ?分かってる?」
少女の名前は「立花深見」。
齢17か18ほどにしか見えない彼女だが、年齢は既にその数倍を超えている。
そう、彼女は「人間」ではない。
満月の光を写したかのような銀髪、赤い鬼灯のような瞳、雪のような白い肌。
不死者の国の貴族である魔物娘「ワイト」だ。
数年前、学業を修めるために「外地」から交換留学生として来日し、世界に誇る「書く兵器」保有国たる日本のサブカルチャーに毒された彼女は、学業を放り出し悪鬼ひしめく同人活動に手を染めた。
元々彼女にその才能があったのか、彼女がプロの漫画家になるのにそう時間はかからなかった。
彼女の代表作は「法衣を脱ぐとき」という作品で、魔王軍のリリムに誘惑された60代の法王がその誘惑に抗うために、騎士団長(こちらも60代)をホモレイプするという筋立ての作品だ。
その臭いまで感じるような描写から「蘇ったヤマジュン」とか「性転換した田亀源五郎」とさえ呼ばれている。
そんな彼女の目下の悩みは同棲している一人の男性のことだ。
「いっそのこと、実際に島崎に協力してもらったら?同棲してんだろ?」
「でも・・・・その・・・・」
深見が下を俯き、グラスの中のバノックバーン ― スコッチのトマトジュース割り ― を一気に呷る。
「・・・・・ヤッてないのよ」
「へ?」
「だ・か・ら!まだリョウちゃんとヤってないのよ、岬。フェラとパイズリはしたけど・・・・・」
岬と呼ばれた背の高い女性は、手元のショットグラスに入ったクレメンタイン・バーボンを一気飲みすると、それをチェーサーとして頼んだサミュエルアダムス・ボストンラガーで洗い流した。
「オーケーオーケー。お前たちは確か半年前から魔物娘専用のアパートで同棲してんだよな?で、なんでまだフェラしかしてないんだよ!」
「岬はリョウちゃんの男根を見たことないんだよ!あれは凶器だよホント!言い表すなら手垢のついたなんちゃってダークファンタジーの種付けゴブリンや孕ませオーク並みだよ!!」
「つまりは島崎のチンポに恐れをなして本番をしていないと・・・・・。アンタ、男舐めてる?」
「リュウちゃんを馬鹿にしてないよ!私が修羅場に入ったら文句言わずにアシしてくれるし・・・。終わったらちゃんとお礼にフェラしてあげるし」
「いいか深見。それを世間一般で都合のいい男っていうんだぜ」
「リュウちゃんを都合のいい男なんて・・・・」
「男なんて所詮はメスに種付けすることしか頭にない生き物なんだぜ?そんな男がフェラだけでホントに満足すると?」
「フェラだけじゃないもん!ちゃんとパイズリもするもん!」
「どっちも同じじゃ!」
正しくその通りである。
「でも・・・今更私からリュウちゃんに言うのは・・・その恥ずかしいし・・心の準備が・・私処女だし・・・」
この深見というワイトはかなりえげつないホモ漫画を描いているくせに「乙女」である。
おまけに結構な年齢であり(人間換算すればだが)、つまるところ「貴腐人」であるのだ。
「ったく!そういうのはちゃんと覚悟してから男と付き合えよな!」
「ちょっと岬!私はちゃんと・・・・!」
フィクションと現実は違う。
性に大らかな魔物娘であるとはいっても女性であり夢見る乙女でもあるのだ。
稀にこういうこともある。
最も毎回毎回燃える凌辱シチュエーション(ゲイにとってだが)について相談される身からすればたまったもんじゃない。
急に彼女を襲い始めた頭痛はバーボンのおかげだと岬は思いたかった。
月光に照らされたベッドルーム。
クィーンサイズのベッドの上では一人の少女が大柄な男性に跪いて、その熱く滾る肉槍を口内に咥え込んでいた。
ジュプジュプと少女の口に余るほどのモノを吸い上げながらも、その細い指はさわさわと彼の柔らかな肉袋を愛撫していた。
「ぅっうっふっぅ・・・この前のアシスタント代だよリュウちゃん」
少女は咥え込んでいた肉塊を口から引きずり出すと、鈴口をそのピンク色の舌でチロチロと刺激する。
「フッちゃん!もう・・・イッ」
フッちゃんと呼ばれた少女、立花深見は男の根本を強く握る。
「だめだよリュウちゃん。もっと楽しまきゃ!」
そう言うと深見はその胸の谷間に暴発寸前のソレを納めると、乳房の左右に手を乗せより強く挟み込むとぐりぐりと強く攻める。
魔物娘は生まれながらにして様々な性技に長けている。
それこそ人間の娼婦とセックスする以上に。
ただのフェラやパイズリでさえも極上の快楽を味わうことができる。
「フッちゃん!イ・・・イクゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」
彼の熱情が吐き出される瞬間、深見は島崎のソレを再び咥え込んだ。
熱いマグマのようなリュウのザーメンを飲み込んだ瞬間、深見も達していた。
「ふぁ・・・・美味しかったよリュウちゃん」
光を落としたベッドルームに深見の赤い瞳が輝いていた。
男の名前は「島崎リュウ」。
一年前に魔物娘婚活パーティで深見と知り合い、お互い共通のゲームをやっていた事により意気投合。
春夏秋冬のゲーム内のイベントを協力してクリアするなどのデート?を通じて半年前にこの魔物娘専用アパートで同棲している。
〜 今日もお預けか・・・・ 〜
リュウはベッドの上で一人そう思う。
傍らにはネグリジェ姿の深見。
男なら当然ヤリたくなっても仕方がない、が散々彼女の搾精テクニックで骨抜きにされてしまった彼自身は、こんな美味しすぎるシチュエーションであってもピクりとも反応しない。
インキュバスでない人の身ならば致し方のないことだ。
彼女のテクニックは極上で、はっきりいってソープランドで大枚はたいて本番してもこれほどの満足感は得られないだろう。
しかし、彼も男だ。
惚れた女をモノにしたいと思っても可笑しくはない。
実際、何度も彼女を誘うがしかし大概は彼女のフェラやパイズリ、髪コキでイッてしまいなかなか挿入までいかなかった。
男扱いされていないのでは?と思ったことさえある。
だが、彼がエロ本やエロビデオで抜こうとしたら怒るため一応は彼女にとって自分は恋人なのだろう。
平凡な公務員である、自分にとっては過ぎた女。
少なくともアシスタントの「お礼」としてあれだけの快楽を与えてくれるのだ。
これ以上望むことは贅沢。
そう言い聞かせようとするが、腕に感じる彼女の乳房やその幼いながらも雌を感じる身体に男としての欲情が掻き立てられる。
ハッキリ言って男にとって今の状況は「生殺し」だ。
今はこの心地良い疲労感に身を委ねて眠りについたほうがいい。
リュウは静かに目を閉じると程なくして寝息を立て始めた。
「さてと・・・」
リュウがダイニングの時計を見る。
短針は20時を過ぎていた。
今日は深見は帰宅が遅い。
いつものネームの打ち合わせだ。
漫画というのはまず、ネームが通らなければ作画が行われない。
特に、エロ漫画(ゲイ漫画であっても)などはどのくらいの描写が可能かのすり合わせは必要だ。
曲がりなりにも恋人であるため思わないこともないが、しかしそれも彼女の仕事である以上仕方のないことであると割り切っている。
ピンポーン!
「はいはい!」
リュウが玄関のドアを開くと、そこには・・・
「ども〜!」
ドアには部屋の持ち主である深見ではなく、別の女性が立っていた。
目の前の女性は黒の革ジャンとエナメルのブラ、黒の革パンを身に着けていて、そのしなやかな肢体はネコ科の猛獣を思わせた。
「真中さんライブ帰りですか?」
その女性の名前は「真中岬」。
魔物娘「サキュバス」である彼女は煽情的な衣装を着て、リードボーカルとしてバンドを率いている。
無論、深見と彼女は友人であり、半年前にこのアパートに引っ越した際のパーティに参加したためリュウは面識がある。
「あれ〜深見は?」
「フッちゃ・・・深見さんは今日はネームの打ち合わせで帰るのは遅いですよ。今夜は寒いですし、深見が帰って来るまで部屋の中で温まっていてください」
「じゃあこれ!」
彼女がリュウに重々しい紙袋を手渡す。
「これは?」
「今日はライブの最終日だし、深見と一緒に飲もうと上等のバーボンを持ってきたのさ!明日リュウは休みだろ?」
「そうだけど・・・・」
「楽しく飲んでたら深見のヤツも直ぐに来るって!ちょっと待ってろよ・・・」
岬は革パンに押し込んでいたスマートフォンを取り出すと、画面をフリップし数度ディスプレーを叩く。
「っしと、深見には連絡しておいたよ。もうすぐ帰るってさ!ささっ飲も飲も!」
半ば押し切られるようにリュウは岬を部屋に通した。
「じゃじゃーん!ブッカーズ!それもマスターブレンダーのブッカー・ノウが存命だった頃の代物だよ!!」
「・・・・・・・?」
「んだよ!ノリが悪いな〜。これはもう手に入らないレアモノだってのによぉ」
リュウはハードリカーの類は全く飲んだことがない。
故にいくらレアであっても彼の目からすればただのウィスキー以外の何物ではないのだ。
「まぁ一杯舐めてみれば良さがわかるさ」
「はぁ・・・・」
岬がショットグラスに琥珀色の液体を少量注ぎ渡す。
彼が一気に飲み干した瞬間喉を焼くような刺激が襲う。
しかし、同時に甘さとバニラのような風味が彼を包み込んだ。
「キツイけど美味い・・・・」
「おや?結構イケる口かい?初めて飲んだヤツは大概美味いとは言わないんだが、ブッカーズの良さが分かるなんてイイ男だね!これも・・・」
リュウの目の前にオレンジジュースが並々と注がれたグラスが置かれる。
「こいつはチェイサーさ。ウィスキーを飲んだ後にコイツを飲めば悪酔いしないからより長くウィスキーを楽しめるってわけ」
岬に促されるままにリュウが目の前のオレンジジュースを飲み干す。
途端に口の中のウィスキー由来のアルコール臭さが無くなり、オレンジジュースのすっきりとした風味が焼けた口内をリフレッシュさせる。
「ささっ!もう一杯」
ショットグラスに先ほどと同じ量のウィスキーが注がれる。
リュウは先程と同じく、それを呷りチェイサーのオレンジジュースを飲み干した。
数回それを繰り返した頃だ。
サワッ
「!」
テーブル下から伸びた岬の足がリュウの股間を撫でる。
「確かに深見のヤツが怯えるくらいの巨砲だな・・・・。ちょっと股が濡れちまうよ」
「な、何を・・・!」
「ナニってただの友人同士のスキンシップさ、魔物風味のな。アンタも散々深見と楽しんでんだろ?」
「ッ・・・・・・・」
「苦しいならアタシ様に相談しなよ?アタシに出来ることならなんでもしてやるから・・・・」
岬の紅い瞳がリュウを見つめる。
「僕は・・彼女を裏切れない・・・・・!」
「ふ〜ん。まあいいけどさ、これ見ても同じことを言えるかい?」
岬が見せたスマートフォンの画面、そこには高級レストランで見慣れない男と会食するドレスアップした深見が写されていた。
「フッちゃん・・・・・!」
「おんや〜〜アイツ、言ってなかったのか?不死者の国から婚約者が来てるって」
「婚約者・・・そんな嘘だ!!」
「ま、信じるも信じないのもアンタ次第さ。でも、深見はアンタに秘密を持った・・・・ならアンタも秘密を一つくらい持っていいんじゃない?」
岬が近づく。
彼女の白い手がジーンズ越しにリュウの「ソレ」を愛撫する。
「ホラ、辛くて苦しくてたまらないんだろ?」
「うっ・・・・・!」
彼女の愛撫はまるで「男性」の身体を知り尽くしているかのように的確に彼を責めたててくる。
その瞬間、だった。
「ただいまリュウちゃん!」
明るい深見の声が響く。
「チッ!」
岬が舌打ちする。
「リュウちゃん!ちかれたよぉ〜〜〜」
深見は岬にわき目を振らずリュウに抱きしめる。
だが、リュウが彼女を抱きしめ返すことはなくそのまま床に倒れる。
愛しき彼女の声を聞いて、緊張の糸が切れたのかリュウはいつの間にか寝息を立てていた。
「あ〜、その少々飲み過ぎたみたいで・・・・」
「ちょっと岬!リュウちゃんはあまり飲めないんだから加減してって言ったでしょ!」
「悪りぃ悪りぃ!部屋まで運ぶの手伝うわ・・・・」
岬はベッドルームまでリュウを運ぶと、玄関へと向かっていった。
いつもと変わらぬ日常。
しかし、確実に何かが変わろうとしていた。
「リュウちゃんごめんね・・・・私・・・もう・・」
幸せそうに眠る彼の寝顔を見つめながら、深見の瞳から涙がポタリポタリと滴っていた。
17/11/25 19:04更新 / 法螺男
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