報告書「ベルゼブブ」(4)
「生きてる?」
目を覚ましたヴィベルが開口一番に発した言葉。
彼女自身はあの場で殺されたと思ったのだ。走馬灯すら見たのだ、無理もない。
「もう、痛いのは、いやぁ……」
横たえていた体を持ち上げ、背中を確認した。
「……半分無くなってる」
自慢の羽が半分になっていた。あの時に切られてしまったのだろう。
羽をなくしたことは悲しかったが、それ以上の恐怖が体を満たしていた。何もしていないのに体が勝手に震えている。
死にたくなるほどの痛みがやってくるだろう。だが、彼女に死ぬ勇気はなかった。
いつもの牢屋だ。カビや血や腐った臭いのする部屋に帰ってきたのだと、再確認して静かに涙を流した。感情を爆発させたものでなく、心からの絶望の涙だった。
何故自分がこんな目に合うのか、どうして? そんな思いが頭をめぐっていく。
抵抗する気力はなかった。
ただぼんやりとベッドで過ごすだけだ。
そのうち、誰かが近くにいることに気がついた。顔をあげるとカーミルが立っていた。
「何か用?」
「来い」
言われるままに立ち上がる。カーミルの後ろについていった。
歩いているはずなのに視界がぼやけるようだった。自分が自分でないような感覚。
連れて行かれた場所はとても熱いところだった。
ハンマーで赤くなった鉄が叩かれている。それは剣の形をしていた。剣を作っているのはサイクロプス。一目で集中しているのが分かる表情だった。
青白い肌、大きな1つ目、額の中心にある角。神の血を受け継いでいるといわれているサイクロプスすら手中に収めている。驚くべきことだった。
「…来たか」
アッシュも続いて入ってきた。いつも通りの暗い表情。ヴィベルはわずかに背筋が寒くなった。
「主人、連れてきたが……もしかして」
「カーミル。黙れ、余計な事を言うな」
「了解だ。私は行くぞ、胸糞悪いものは見たくない」
尻尾を揺らしながら、眠たげな眼でアッシュを一睨みしてからカーミルは部屋から出て行った。ヴィベルはまだここで何をされるのか理解していなかった。
「おい、イム。奥を借りるぞ」
「…………ん」
サイクロプスはイムという名前らしい。
アッシュはヴィベルの背中を押して奥の部屋に入った。そこはおかしな台が真ん中に置いてあった。四つん這いで固定する台にヴィベルは繋がれた。
「何を……するの?」
今まで半分マヒしていた恐怖が返ってきた。震えながら、首だけでアッシュを見ている。
「おまえ、感情を封印しようとしただろう? 何も感じなくなろうとしただろう? それじゃあ拷問しているこっちからするとつまらないんだよ。苦しんでもらわないとな。だからショックを与えて元に戻そうとした。まあ、やる前に戻ってきたみたいだがな、用意したついでにやらせてもらう」
「な、なにを?」
普段の数倍も饒舌なアッシュに言いようのない嫌な予感がした。何故なら笑っていた。
拷問の最中ですら無表情のアッシュが笑っているのだ。
ヴィベルはアッシュが取り出したものを見て完全に感情を取り戻した。
「や、や、やあああああああああああ!」
柄の長いハンマーだった。ただし、打つ場所が真っ赤に焼けている。何をするか、やっと理解した。
「残った羽が邪魔だな」
ハンマーを一旦置き、懐からナイフを出す。あの時ヴィベルの足を刺したナイフだった。それで半分になっていた羽を皮膚ごと削った。
「ひ、ひぃ、ひぎぃぃぃ、ギイィィィああああああああああああああ!」
「これくらいで騒ぐな。……もう片方も」
「ああああああああぎあいあああああ!」
ザリザリと血管が切れる音が聞こえた気がした。アッシュは切り落とした羽と皮膚を足元に捨てた。見覚えのある羽が、真っ赤になって落ちていた。
「私の……羽ぇ」
「安心しろ、2度と生えないようにしてやるから」
「ヤ………ダ。何でも……何でもします! だから、ゆ、許してください!」
ヴィベルを無視するように真っ赤になったハンマーを持ち上げる。
アッシュは何を思ったか、切り取ったヴィベルの羽を拾い上げた。そして皮膚の部分を食いちぎる。
「…見ろよ」
唾でも吐くように、食いちぎった皮膚をハンマーの先に飛ばす。
ジュウウウウウウウ…・・・・
一瞬で焼かれ、肉が焦げた臭いが漂ってきた。
「やあああ! やだあ! やめてぇ! なんでも、なんでもするからぁ、やめてええ!」
恐怖に駆られ、暴れるが、一向に身を焼かれる瞬間は訪れない。恐る恐る目を開けると、アッシュが【微笑んで】いた。
「……え?」
「やめてやろうか?」
今まで見たことがない微笑み。
「やめて……くれるの?」
アッシュはヴィベルの耳元に口を寄せた。
「お断りだ」
「へ?」
ジュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ
何をされたか理解できなかった。
突然微笑み、安心したところを焼かれた。
ジュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……………」
2か所目を焼かれてから絶叫することができた。ここの城に来て一番大きな絶叫だろう。
何度か口をパクパクさせ、そのまま白目をむいて気絶した。
幸運だったのは、ここでヴィベルが気絶したことだろう。もし彼女がまだ気絶しなかったなら、アッシュは他の部分も焼くつもりだったからだ。
肉の焼ける臭いが充満する。
隣の部屋からイムが顔をのぞかせた。
「…脅すだけじゃなかった。それより、剣は明日にはできる。部屋に届けておく」
「……待て」
「……ん?」
アッシュはイムの腕を取り、壁に押し付けた。
「穴を貸せ」
「今ちょっと……汗が」
今まで仕事をしていたイムは自分が汗臭いのを理解していた。それでも構わないと云わんばかりにアッシュはイムのズボンを脱がす。
「構わん。さっさと濡らせ」
すでに大きくなっている陰茎をイムの秘所に擦りつける。イムはそれに合わせて腰を前後し、自分で陰核を刺激した。
「ん……久しぶり、だ。求めてくれるのは……ぁふ」
「そうだったか?」
耳を舌先で舐め上げると大きく震えた。秘所も段々と湿り気を帯びてくる。
「最近あの子に、はぁ…ん、かまってばかりで2カ月はしてない……ひゃん!」
「そうか、だったらサービスでもしてやる」
アッシュは遊ばせていた手を使って胸を揉みしだく。手のひらに収まる控え目な胸だ。ただ中心の突起が自己主張をしている。それを摘みあげると小さく鳴いた。
「わたし、そんなに大きくないから……触っても楽しくない」
「十分柔らかいさ。顔、こっち向けろ」
「うん。……ちゅ………んん」
振り向いた時に目に入るのは大きな瞳。そのまま唇を奪う。最初は合わせるだけ、何度か小鳥が啄ばむ様なキスを繰り返し、深く舌を絡ませた。
唇の裏、歯茎、口の中をまんべんなく舐めまわし、舌を思い切り吸い上げる。
「んんん!? む…んん じゅる …プハ」
キスだけで呆けたような顔になるイムは口の端からよだれを流す。それを舐めとってから耳元で囁いた。
「どうだ?」
「す、すごい……ちゅ…ちゅぴ…あぁ、……優しい」
「言っただろう? サービスすると」
中断していた愛撫を再開する。正面をむきあい胸をもみ、耳や首筋、鎖骨に舌を這わせていく。熱くたぎった陰茎がイムの腹に当たっている。秘所からは幾筋も愛液が滴り、モノが欲しいと訴えていた。
「欲しい、おちんちん、ください。あん、はあぁう……ね、ねじ込んで、抉って、壊してぇ」
眼はトロンとし、口からよだれを垂れ流す。発情しきった表情だった。短く呼吸をしてアッシュに寄りかかるようにしている。立っているのが精いっぱいらしかった。
「首につかまれ」
ひざの裏に手をまわし、持ち上げた。一気に、貫くように根元まで挿入した。
「きたぁ、あああはん! ひぃ、深い、深いぃ! ぁあん、あぁ、あひぃ〜!」
駅弁といわれるスタイルで激しく上下させる。
「望み通り壊してやる」
「うん、うん。壊して…壊してぇ!!」
ガツンガツンと子宮に叩きつけるようにピストンを繰り返す。
「あ、ダメぇ イクゥ、イク! あぁあああぁああ、イクウウウウウ!」
ブシュー、と勢いよく潮を吹くがそれでもアッシュの腰は止まらない。一突きごとにピュピュと潮を吹き、体を震わせる。
「イってるのに、またぁ、ひゃぁあ、いくぅ、イク! …は、は、はあああああああ!」
絶頂の先にある、さらなる絶頂。
イムはガクガクと何度か震えた後、気絶した。同時に熱い精子がアッシュから放たれていた。
「…ふぅ」
アッシュは気絶したイムを床に転がして、ヴィベルを牢屋に運んだ。
焼かれた背中からは血が流れ出ている。アッシュが宣言したとおり、2度と羽は生えないだろう。
「…あ?」
背中の痛みで目を覚ます。
最近は痛みで目が覚めることが増えてきた。夢だと祈りつつ痛む背中に手を当てると、あるべきモノがなくなっていた。
「もう…飛べないんだ…アハ……アハハ」
大きく息を吸い込んだ。
「アハハハハハハハハハハー! ハハハハハハ! アハハハハハハハハハハハハハハハハ! はは……はは、わあああああああ!」
寝かされたベッドから立ち上がり、天井に向かって飛ぶ。が、頭から落ちた。
飛ぶ、落ちる。飛ぶ、落ちる。
それを何度も何度も何度も何度も何度も………
「気は済んだか?」
頭から血を流し、意識が朦朧としたときに声が掛けられた。
「お前はもう飛べない」
「もう、ひどいことしないで…」
アッシュの姿を確認すると、壁際で蹲って震えた。
「自分の主人には敬語を使え」
「…わか、りました」
アッシュはその姿に満足したように、小さく忍び笑いをもらして牢屋から出て行った。鍵はかけない。もうヴィベルに逆らう気がないことが分かっているのかもしれない。
カーミルは尻尾を揺らしながら廊下にモップをかけていた。基本的にこういう雑用はミリアがやるのだが、彼女の場合、細かい場所がきれいになっていないときのほうが多い。だからこうして時々カーミルは自主的に白を掃除したりする。
自分の仕事、城の警護が暇だからやっているだけなのだが。
「主人、あの子は?」
牢屋へ続く階段から出てきたアッシュに声をかけるが、反応がない。
「……」
「主人?」
「…だまだ大丈夫だまだ大丈夫だまだ大丈夫だまだ大丈夫だまだ大丈夫だまだ大丈夫だまだ大丈夫だまだ大丈夫だまだ大丈夫だ……」
ブツブツと同じことを繰り返している。
「いつもの発作か」
アッシュはスイッチを切ったように突然豹変する時がある。
こうして訳の分からないことを呟くときもあれば、妙な興奮状態になる時もある。情緒不安定なのだ。最近は少し落ち着いていたのだが。
「主人、主人。地下の子はどうする?」
「まだ大丈夫だまだ大丈夫だまだ大丈……地下? ……最低限の世話をして放っておけ」
目に理性を宿すと、すぐにいつもの状態に戻る。情緒不安定の時は仕事の話をすると戻る。カーミルはもう一度アッシュの顔色をうかがい、心配ないことを確認すると掃除に戻った。
「ブタから手紙が来てた」
「ギース・ガントレットから?」
「明日来るってさ」
「はぁ……わかった。俺は部屋に戻る。何かあったら知らせろ」
アッシュはつまらなそうに自分の部屋に行った。
目を覚ましたヴィベルが開口一番に発した言葉。
彼女自身はあの場で殺されたと思ったのだ。走馬灯すら見たのだ、無理もない。
「もう、痛いのは、いやぁ……」
横たえていた体を持ち上げ、背中を確認した。
「……半分無くなってる」
自慢の羽が半分になっていた。あの時に切られてしまったのだろう。
羽をなくしたことは悲しかったが、それ以上の恐怖が体を満たしていた。何もしていないのに体が勝手に震えている。
死にたくなるほどの痛みがやってくるだろう。だが、彼女に死ぬ勇気はなかった。
いつもの牢屋だ。カビや血や腐った臭いのする部屋に帰ってきたのだと、再確認して静かに涙を流した。感情を爆発させたものでなく、心からの絶望の涙だった。
何故自分がこんな目に合うのか、どうして? そんな思いが頭をめぐっていく。
抵抗する気力はなかった。
ただぼんやりとベッドで過ごすだけだ。
そのうち、誰かが近くにいることに気がついた。顔をあげるとカーミルが立っていた。
「何か用?」
「来い」
言われるままに立ち上がる。カーミルの後ろについていった。
歩いているはずなのに視界がぼやけるようだった。自分が自分でないような感覚。
連れて行かれた場所はとても熱いところだった。
ハンマーで赤くなった鉄が叩かれている。それは剣の形をしていた。剣を作っているのはサイクロプス。一目で集中しているのが分かる表情だった。
青白い肌、大きな1つ目、額の中心にある角。神の血を受け継いでいるといわれているサイクロプスすら手中に収めている。驚くべきことだった。
「…来たか」
アッシュも続いて入ってきた。いつも通りの暗い表情。ヴィベルはわずかに背筋が寒くなった。
「主人、連れてきたが……もしかして」
「カーミル。黙れ、余計な事を言うな」
「了解だ。私は行くぞ、胸糞悪いものは見たくない」
尻尾を揺らしながら、眠たげな眼でアッシュを一睨みしてからカーミルは部屋から出て行った。ヴィベルはまだここで何をされるのか理解していなかった。
「おい、イム。奥を借りるぞ」
「…………ん」
サイクロプスはイムという名前らしい。
アッシュはヴィベルの背中を押して奥の部屋に入った。そこはおかしな台が真ん中に置いてあった。四つん這いで固定する台にヴィベルは繋がれた。
「何を……するの?」
今まで半分マヒしていた恐怖が返ってきた。震えながら、首だけでアッシュを見ている。
「おまえ、感情を封印しようとしただろう? 何も感じなくなろうとしただろう? それじゃあ拷問しているこっちからするとつまらないんだよ。苦しんでもらわないとな。だからショックを与えて元に戻そうとした。まあ、やる前に戻ってきたみたいだがな、用意したついでにやらせてもらう」
「な、なにを?」
普段の数倍も饒舌なアッシュに言いようのない嫌な予感がした。何故なら笑っていた。
拷問の最中ですら無表情のアッシュが笑っているのだ。
ヴィベルはアッシュが取り出したものを見て完全に感情を取り戻した。
「や、や、やあああああああああああ!」
柄の長いハンマーだった。ただし、打つ場所が真っ赤に焼けている。何をするか、やっと理解した。
「残った羽が邪魔だな」
ハンマーを一旦置き、懐からナイフを出す。あの時ヴィベルの足を刺したナイフだった。それで半分になっていた羽を皮膚ごと削った。
「ひ、ひぃ、ひぎぃぃぃ、ギイィィィああああああああああああああ!」
「これくらいで騒ぐな。……もう片方も」
「ああああああああぎあいあああああ!」
ザリザリと血管が切れる音が聞こえた気がした。アッシュは切り落とした羽と皮膚を足元に捨てた。見覚えのある羽が、真っ赤になって落ちていた。
「私の……羽ぇ」
「安心しろ、2度と生えないようにしてやるから」
「ヤ………ダ。何でも……何でもします! だから、ゆ、許してください!」
ヴィベルを無視するように真っ赤になったハンマーを持ち上げる。
アッシュは何を思ったか、切り取ったヴィベルの羽を拾い上げた。そして皮膚の部分を食いちぎる。
「…見ろよ」
唾でも吐くように、食いちぎった皮膚をハンマーの先に飛ばす。
ジュウウウウウウウ…・・・・
一瞬で焼かれ、肉が焦げた臭いが漂ってきた。
「やあああ! やだあ! やめてぇ! なんでも、なんでもするからぁ、やめてええ!」
恐怖に駆られ、暴れるが、一向に身を焼かれる瞬間は訪れない。恐る恐る目を開けると、アッシュが【微笑んで】いた。
「……え?」
「やめてやろうか?」
今まで見たことがない微笑み。
「やめて……くれるの?」
アッシュはヴィベルの耳元に口を寄せた。
「お断りだ」
「へ?」
ジュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ
何をされたか理解できなかった。
突然微笑み、安心したところを焼かれた。
ジュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……………」
2か所目を焼かれてから絶叫することができた。ここの城に来て一番大きな絶叫だろう。
何度か口をパクパクさせ、そのまま白目をむいて気絶した。
幸運だったのは、ここでヴィベルが気絶したことだろう。もし彼女がまだ気絶しなかったなら、アッシュは他の部分も焼くつもりだったからだ。
肉の焼ける臭いが充満する。
隣の部屋からイムが顔をのぞかせた。
「…脅すだけじゃなかった。それより、剣は明日にはできる。部屋に届けておく」
「……待て」
「……ん?」
アッシュはイムの腕を取り、壁に押し付けた。
「穴を貸せ」
「今ちょっと……汗が」
今まで仕事をしていたイムは自分が汗臭いのを理解していた。それでも構わないと云わんばかりにアッシュはイムのズボンを脱がす。
「構わん。さっさと濡らせ」
すでに大きくなっている陰茎をイムの秘所に擦りつける。イムはそれに合わせて腰を前後し、自分で陰核を刺激した。
「ん……久しぶり、だ。求めてくれるのは……ぁふ」
「そうだったか?」
耳を舌先で舐め上げると大きく震えた。秘所も段々と湿り気を帯びてくる。
「最近あの子に、はぁ…ん、かまってばかりで2カ月はしてない……ひゃん!」
「そうか、だったらサービスでもしてやる」
アッシュは遊ばせていた手を使って胸を揉みしだく。手のひらに収まる控え目な胸だ。ただ中心の突起が自己主張をしている。それを摘みあげると小さく鳴いた。
「わたし、そんなに大きくないから……触っても楽しくない」
「十分柔らかいさ。顔、こっち向けろ」
「うん。……ちゅ………んん」
振り向いた時に目に入るのは大きな瞳。そのまま唇を奪う。最初は合わせるだけ、何度か小鳥が啄ばむ様なキスを繰り返し、深く舌を絡ませた。
唇の裏、歯茎、口の中をまんべんなく舐めまわし、舌を思い切り吸い上げる。
「んんん!? む…んん じゅる …プハ」
キスだけで呆けたような顔になるイムは口の端からよだれを流す。それを舐めとってから耳元で囁いた。
「どうだ?」
「す、すごい……ちゅ…ちゅぴ…あぁ、……優しい」
「言っただろう? サービスすると」
中断していた愛撫を再開する。正面をむきあい胸をもみ、耳や首筋、鎖骨に舌を這わせていく。熱くたぎった陰茎がイムの腹に当たっている。秘所からは幾筋も愛液が滴り、モノが欲しいと訴えていた。
「欲しい、おちんちん、ください。あん、はあぁう……ね、ねじ込んで、抉って、壊してぇ」
眼はトロンとし、口からよだれを垂れ流す。発情しきった表情だった。短く呼吸をしてアッシュに寄りかかるようにしている。立っているのが精いっぱいらしかった。
「首につかまれ」
ひざの裏に手をまわし、持ち上げた。一気に、貫くように根元まで挿入した。
「きたぁ、あああはん! ひぃ、深い、深いぃ! ぁあん、あぁ、あひぃ〜!」
駅弁といわれるスタイルで激しく上下させる。
「望み通り壊してやる」
「うん、うん。壊して…壊してぇ!!」
ガツンガツンと子宮に叩きつけるようにピストンを繰り返す。
「あ、ダメぇ イクゥ、イク! あぁあああぁああ、イクウウウウウ!」
ブシュー、と勢いよく潮を吹くがそれでもアッシュの腰は止まらない。一突きごとにピュピュと潮を吹き、体を震わせる。
「イってるのに、またぁ、ひゃぁあ、いくぅ、イク! …は、は、はあああああああ!」
絶頂の先にある、さらなる絶頂。
イムはガクガクと何度か震えた後、気絶した。同時に熱い精子がアッシュから放たれていた。
「…ふぅ」
アッシュは気絶したイムを床に転がして、ヴィベルを牢屋に運んだ。
焼かれた背中からは血が流れ出ている。アッシュが宣言したとおり、2度と羽は生えないだろう。
「…あ?」
背中の痛みで目を覚ます。
最近は痛みで目が覚めることが増えてきた。夢だと祈りつつ痛む背中に手を当てると、あるべきモノがなくなっていた。
「もう…飛べないんだ…アハ……アハハ」
大きく息を吸い込んだ。
「アハハハハハハハハハハー! ハハハハハハ! アハハハハハハハハハハハハハハハハ! はは……はは、わあああああああ!」
寝かされたベッドから立ち上がり、天井に向かって飛ぶ。が、頭から落ちた。
飛ぶ、落ちる。飛ぶ、落ちる。
それを何度も何度も何度も何度も何度も………
「気は済んだか?」
頭から血を流し、意識が朦朧としたときに声が掛けられた。
「お前はもう飛べない」
「もう、ひどいことしないで…」
アッシュの姿を確認すると、壁際で蹲って震えた。
「自分の主人には敬語を使え」
「…わか、りました」
アッシュはその姿に満足したように、小さく忍び笑いをもらして牢屋から出て行った。鍵はかけない。もうヴィベルに逆らう気がないことが分かっているのかもしれない。
カーミルは尻尾を揺らしながら廊下にモップをかけていた。基本的にこういう雑用はミリアがやるのだが、彼女の場合、細かい場所がきれいになっていないときのほうが多い。だからこうして時々カーミルは自主的に白を掃除したりする。
自分の仕事、城の警護が暇だからやっているだけなのだが。
「主人、あの子は?」
牢屋へ続く階段から出てきたアッシュに声をかけるが、反応がない。
「……」
「主人?」
「…だまだ大丈夫だまだ大丈夫だまだ大丈夫だまだ大丈夫だまだ大丈夫だまだ大丈夫だまだ大丈夫だまだ大丈夫だまだ大丈夫だ……」
ブツブツと同じことを繰り返している。
「いつもの発作か」
アッシュはスイッチを切ったように突然豹変する時がある。
こうして訳の分からないことを呟くときもあれば、妙な興奮状態になる時もある。情緒不安定なのだ。最近は少し落ち着いていたのだが。
「主人、主人。地下の子はどうする?」
「まだ大丈夫だまだ大丈夫だまだ大丈……地下? ……最低限の世話をして放っておけ」
目に理性を宿すと、すぐにいつもの状態に戻る。情緒不安定の時は仕事の話をすると戻る。カーミルはもう一度アッシュの顔色をうかがい、心配ないことを確認すると掃除に戻った。
「ブタから手紙が来てた」
「ギース・ガントレットから?」
「明日来るってさ」
「はぁ……わかった。俺は部屋に戻る。何かあったら知らせろ」
アッシュはつまらなそうに自分の部屋に行った。
10/06/02 18:16更新 / Action
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