ﾍﾟﾗｯ

私はその手に取った重厚な皮で表紙を飾られた本を捲ると一番最初に出てきた日付を見て吃驚した。

「え、･･･５００年前･･･!?」
それだけではなくて更にはその日記の文を見て目を見開いてしまったの。

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＊＊＊＊年○月○日

ついに探していたアイテムが見つかって嬉しさの余り日記を書くことにした。

【妖狐の鈴と髪紐】

大陸のある南街にてとうとうソレを見つけた私は行商をしていた妖狐の姉さんになんとかソレを譲ってくれと交渉をするとその妖狐さんは渋る様子も無くソレを人間である私に売ってくれた。

全く錆びの無い鏡のように磨かれた綺麗な音色をだす二つの夫婦鈴。
二組の翠色の組紐。

ただ妖狐の姉さんがそれらを渡すときに二、三注意をしていたが嬉しさの余り最初の「一日に２時間以上つけないように。」という注意だけしか聞こえなかった。あと何をいっていたのかしら･･･

暫く寝れそうにないので酒を飲もう･･･

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「････う、うそっ･･･ママって最初から妖狐じゃなかったの?!」
掻い摘んで読んでみて分かったことはママが元々は人だったということ。
更に私は今に至るまでのママの軌跡を知りたくなったのでママには悪いけどもう少し読もうと思う。
このページから数ページは細々とした冒険がただ書き連なっているだけで別段魔法を使ったという表記は無かったのだけどちょうど１０ページほど進んだところでその文は出てきた。



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＊＊＊＊年×月○日

やっと数ヶ月ぶりに大きな仕事がギルドから舞い込んできた。
反魔物を謳う教会兵がわんさか来るんでそれの撃退の依頼。
私は短く切りそろえたばかりの髪に例の紐と夫婦鈴を、利き腕の右手にもう一本の組紐を巻いて自慢のブロンズヘアーを靡かせて戦場に駆けていき最も得意な魔法を唱えるとこのマジックアイテムの素晴らしさに目を見張った。

今まで数人にしか当てられなかった広域攻撃魔法がいつもの消費魔力容量で３倍近い威力がでた。
これには敵も見方も驚いた。
が、私も驚いた。

暫くは訓練して出力を制御できるようにしなくては･･･

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「･･･どうやらまだ髪がブロンズだったみたい･･･あとギルド? の隊員だった感じね･･」
正直意外ですよ、ママが魔法を使ったのなんて見たことないですし。
ましてや今のママの髪は綺麗な狐色で腰まで伸ばしてるもの。

いつギルドに入ったのか、いつから魔術師になったのか･･･今の性格のままの書き手は確実にずぼらなのであろう。
日記の日付がかなり飛び飛びになっているし。

やはりそのページ以降は毎日とまではいかなくとも、其れなりのペースで魔法の制御方法について日記が書かれている。
･･･結構参考になるわね。
あとでママにならおうかな?

･･･あ、このページ。
やけにインクが滲んでるけどどうしたんだろう?



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＊＊＊＊年△×月○日

やっちゃった・・・

妖狐の姉さんに言われていた注意をものの見事に破っちゃった。
訓練して疲れたからベッドにそのまま寝てしまい結果的に私は５時間近くも･･･

そして何故妖狐の姉さんが私に、いえ、人間に注意したのか分かった。



取れないのよ。鈴も紐も、私の髪の一部になったように・・・



どうしよう･･･どうしよう･･･どうしよう･･･どうしyeuk,v@o;p.

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「･･･これって･･･呪いのアイテムなんじゃ･･･」
このページの最後のほうはもうミミズがのたくりまわったような筆あとでとてもじゃないけど読み取ることは出来なかった。
けどその心境はとても分かりやすかったわ。

しかしこのアイテム、呪いのアイテムだとすると･･･

そのページからは暫く日付だけ書いてある白紙だ。
あ、ここからまた日記を書いてる。



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＊＊＊○年○月○日

･･･もう私は人間を諦めるしかないようだ。

何度も何度もこのアイテムを取ろうとしても失敗した。

髪はまるでその瞬間だけ鋼のように固くなり鋏を通さず。
火の魔法で焼ききろうとするも全て吸収されてしまった。
凄く嫌だったが･･･薬品で髪の毛ごと溶かそうとしたが垂らした薬品が空中でただの水に変化してしまう。
悔しさのあまり鈴を握った瞬間に全身に強烈な衝撃が走った。
まるで自分の心臓を握ったようだ。

・・・タスケテ・・・まだ魔物には・・・なりたくな・・い・・・

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「････。」
私は無言のままその続きを読む。



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＊＊＊○年×月○日

日がたつにつれて私の髪は段々と伸びていくわけだがあの日以来、髪が金･･･というより山吹･･･いやちがう･･･そう、狐色になった。

今の私を鏡で見ると先端から中ほどまで赤銅色、中ほどから毛根まで狐色のなんとも滑稽な髪色になっている。

はははっ･･･

しかもこの頃やたらと胸が苦しくなってきた。
これは嬉しいことというべきか･･･はたまた魔物化が進んで暗くなるべきか･･･

B-カップのペタンコだった私の胸はものの数ヶ月で今やD カップになった。
しかもまだ大きくなるみたい･･･う〜ん･･･

とりあえず今の現状は素直に魔物化に身をゆだねるしかない、ということね。
もう覚悟は決めた。後はどうにでもなれ･･･

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「･･･自棄になってない? ママ。」
それにしてもココらへんからは魔物化の報告書みたいになっているわね。
姿から変わる人、中身から変わる人といるみたいだけどウチのママはどうやら外から変わる人みたい。

更に私はママの魔物になるまでの独白を読むことにする。



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＊＊＊○年△×月○日

とうとう魔物化が進行して一年が過ぎた。

今ではすっかり狐色の髪が生えそろい腰まで伸びている。
･･･ぶっちゃけ今のこの髪、好きになっちゃった。

だって今までの髪質とあまりに違いすぎるもの。
今までは朝に櫛で梳かないと爆発したままだった頭髪もこの狐色の髪になってから今の今まで一度も櫛を使っていない。
物凄いサラサラなのよ。
･･･自分で触っていても飽きないくらいに。

そして下に目を向ければ見事なまでのボン、キュッ、ボン。

最初は感じなかったけどついこの頃気づいたのはどんなに食べても太らないということ。
いや、一部分･･･いえ、二部分は肥えていくけどね?
B-　→　D 　→　F-　、と三段階に変化していった胸はただ大きいだけじゃなくて弾力があってしかも垂れない。そう、垂れない。
･･･大事な事だから二回書いたわ。

そして尻。其れなりの貧相なボディと自他共に認めていたけれど胸がDになったあたりから次第に肉付きよくなって今では安産型の綺麗なヒップラインが出ている。
･･･自分が男だったら今の自分をオカズにして３回はヌけるわ。

でもそのおかげで服や下着を体の変化にあわせて２回も買いなおす羽目になるとは･･･。

ただこの頃頭がやけに痒い、更にお尻も。
･･･頭は分からないけどお尻は痔かしら?

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「･･･やっぱりママの胸、私よりあるし･･･で、でもパパに『イイ尻だ。』って言われてたから･･･お尻は私の方が･･･」
･･･はっ!? お、落ち着いてよ私っ!

揺れ動く７本の尻尾を落ち着かせて更に私は続きを読む。

･･･というか読む前に多分次の日記の内容が予想できた。



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＊＊＊×年○月△日

朝起きたら頭に耳が生えた。
･･･うん。一目瞭然だけどね。

覚悟は決めてたから今更だけど。

ついこの頃頭が異様にかゆかったけど昨日は今まで一番痒かった。
日記も書けないくらい。
･･･日記を書かずに頭を掻く。

･･･何書いてるんだろう･･･

なんか魔物化が進んで以来私の頭が段々春になっていく気がする･･･
でも魔法の威力は二年前の比じゃない位威力が目に見えて上がっているし、体も頑丈そのもので全く病気にならないし怪我もしない。
･･･ここだけみると魔物化は得、という感じね。

あとお尻から見事な尻尾も一本生えた。

狐のソレに漏れずふんわりフカフカな尻尾が出来て吃驚だが抱き心地が良かったので抱き枕として使える辺りも素晴らしい。
ただ自分の体の一部なので力加減を間違えると･･･下が大洪水に。

･･･本当に何書いてるのよ、私･･･

本当に魔物化は春になるわぁ〜、頭が。
それにまた下着を買い換えなければ･･･尻尾ついてても着れる物に。

まぁそれはいいとして、今私の居座ってるこの町。
･･･反魔領のど真ん中なのよねぇ〜。

入るときはまんま人だったから門番の人もスルーしてくれたけど･･･


うん、どうしよう･･･

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「･･･よりによってなんて所で･･･運が悪いのね･･･ママ･･･」
日記をとりあえず要点だけで纏めるとこの後知り合いの商人の荷物に混ざって脱出できたようです。

「･･･あれ? この日から旅に出たみたいね?」
流し読みしていく日記のページにはこの日以降育った街や故郷のこと、ママの入っていたギルドのことが出てきていないの。
･･･あ、別の街に寄った記録がある。



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＊＊○×年×月△日

日記を書き始めて５０年あまり。
まさかココまでくるとはね･･･。

あの私が妖狐になった宿のある町を抜けてから今まで野宿と他所のギルドの小間使いでなんとか生計をたてていたが如何せん限界だった。
そんな時に昨日偶然に妖狐の姉さんと立ち寄った町でバッタリと遭遇してちょっと嬉しくなった。
姉さんはしきりにいつこの状態･･･えっと･･･魔物化の最終段階になったのか、と聞いてきたので正直に答えたら渋い顔をされてしまった。
そして教えてもらったそれは日記の初日に聞いていた注意の一つであり「もし妖狐になってしまった場合は出来るだけ早く男と交わって。さもなくば命の危険があるから。」ということ。

・・・つまり交われと!?

といってもねぇ･･･
仕方ないので今日は寝ることにする。

ただこの町に入ってからアツい視線が常に注がれている気がする。
･･･気のせいかしら?

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ｶﾞﾁｬｯ

「あれぇ?お姉ちゃん、どうしてココにいるの?」
「えっ!? あ、アハハ･･･なんでもないよぉ?」
「･･･ふぅん?･･･まぁ黙っておいてあげる。もうすぐお風呂の時間だから準備してってパパが言ってたよ?」
急にドアが開いてその扉から覗き込む妹に日記を読むのに没頭しすぎて反応がにぶっちゃった･･･気付かれたかな!?
っていか感づいてるね･･･

「(ちぇっ･･･ママの使用済み下着とバイブ持ち出せなかった･･･あとパパの靴下･･･)」
「･･･なにか?」
「･･･ううん、なにも。」
不満そうな顔のまま去っていく妹はその６本の尻尾をくたりと垂らしていた。
･･･絶対に何か漁りに来たのね!?
･･･あ、ママが初めて妖狐になって交わったときがかかれてる。



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＊＊○×年×月○×日

やだ、きもちぃ♪
今日路地裏で暴漢数人に襲われて強姦されたのだけど･･･

気付いたら体中が真っ白に染まって暴漢の一人に跨って腰を振っていたわ。

全裸で。

やばい･･･これはマジでやばい♪
人の時にはギルドのキャンプ中にレイプされて処女取られて以来こういう性行為は遠ざかっていたけど･･･魔物がヤりたがる理由が分かるわぁ･･･♪

一人で腰を振っていると治安隊の人が来て何故か私が連行された。

なぜ?

そりゃあちょっと気絶させるまで犯しちゃったけどさ。もれなく全員。
でも最初の被害者は私よ?

でもあとでその暴漢達が顔を蒼くして何故か出頭してきたけど･･･なんで?

あと最近分かった事なのだけど･･･誰かに見られていないとイきにくくなっちゃった。
･･･魔物化の影響ってコワイワー･･･♪

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「･･･それは多分ママのせいですよ、っと。」
溜息しか出ないわ。
というかこの頃についたのね、この露出癖は･･･
ママとパパのその性癖、頼むから私達娘らの生活している空間(主に廊下、玄関、リビング、風呂場)で公開セックスはやめてほしい。･･･ニオイが強すぎて欲情しちゃうじゃないっ!

・・・はっ!? 私、何をっ!?

んんっ、この日からまた旅に出たみたい。以前と同じような感じね。
･･･あ、日記の最後のページはまた街。しかも今度は港街。

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＊○＊＊年○月○日

日記を書いてとうとう一世紀･･･長生きもいいことばかりじゃないわね･･･
人間だったらとっくにあの世に行ってしまってるけど･･･魔物は本当につくづく頑丈ね。

６００ページもあった日記帳も今日で最後のページになっちゃった。
マメに書いたらきっと数年で無くなったでしょうがズボラなのが災いしてちょうど１００年。
一世紀は長いようで短かったなぁ･･･

この町に着くまで点々としていたけどいつの間にやら大陸の東端までやってきてしまったよ。
途中で(お腹の)ご飯と(ナカの)ゴハンを食べたりつまみ食いしたりして。

･･･だめだわ、やっぱりピンク脳になってる･･･

今日、町についてはじめに入った食堂で私は衝撃的な出会いをしたの。
【アブラアゲ】なるジパングの食べ物を口にした瞬間、男の精とはまた違う至福に満たされたのよ。

そして私は頭の中に電撃が走った。

きっとこれは人間の頃信じていた主神でなくて他の神がきっと私に啓示してきたのよ!
これはもう行くしかない。行かなきゃ何か大切な機会を逃しそうな気がする･･･

そうと決まれば早いもので･･･
明日の朝一に出港する船への乗船券を手に入れて安い宿屋で早めに就寝することにした。
荷物を纏めて部屋のベットで全裸で寝そべり明日を夢見てオナ禁して寝る。

いざ行かん。ジパングへ!

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「日記はここで終わっている、っと。」
･･･ママって中々の波乱万丈な人生だったのね。
そんな人が今や４０人の娘の母親とは･･･。

人生は奇なり。

というか完全に魔物になってから情事に染まりすぎっ!
･･･でも妖狐だからしかたない? のかな･･･

「さぁて･･･物色してオナってから風呂はいろっと♪」
ママの日記をそっと戻してパパのパンツと汗まみれのシャツを持って私は部屋を後にしたの。








･･･ｺﾄｯ



ーー別な日記が娘が去った後、ちょうど父親の下着いれの横･･･母親の二冊目が床へと落ちていく中ページがパラパラと捲られる。

『渡来し･･･４００年･･･花魁･･･落ちる･･･抜け･･･公園･･･素敵な･･･』

ページが捲られるたびに単語がそのページから落ちるようにして外気に晒され、やがて･･･

パサッ!･･･ﾊﾟﾗﾊﾟﾗ･････

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＊○○×年○月×日

以前から体調が悪かったので医者に見てもらったら･･･なんと４０人目ができていたの。
やっぱりダンは最高の夫よ♪

私の性癖を理解してそのうえで交わって･･･しかも私より先にイったことが無い。
･･･うふふ♪

やっぱり長生きするものね。
人間の頃では考えられない。

今だったら言える。
私、妖狐になって良かった。

私は今、とっても幸せよ♪
これからも･･･いっぱい愛してね、ダン♪

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その頃風呂場では･･･






「ダンっ♪」
「梨花♪」
風呂に入って温まっている万年発情馬鹿ップル夫婦は新築で立てた家に態々作った露天風呂(仕切りなんてありません♪)で優雅に月見酒を楽しんでいた。

「あ、お酒切れたからちょっと足してきますね、ダン。」
「うん、お願いするね、梨花。」
互いに温まりすぎた体を冷ます為にヒノキで作られた浴槽の縁に腰掛けていると酒が空になったのに気付いた梨花が冷ましついでにと風呂を抜け全裸で家の中へ消えてしばらくすると新たに酒の詰まった徳利を持ってダンのお猪口へと注ぐ。



「･･･ダン、私幸せよ?」
「なんだい? 行き成り･･･僕もだよ♪」
「･･･ダン♪」
微笑みあう２人にはもう互いの瞳しか見えておらずどちらからとも無く口付けをすると舌を絡ませること無く離して梨花はダンの瞳を見つめて嬉しそうに･･･


「私もっ♪」


【完】