読切小説
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俺の妻は元男
 俺は、褐色の踊り子が踊っているのを見物していた。胸と下腹部をかろうじて隠した衣装を着て、オイルで体をぬめらせて踊っている。豊かな胸や形の良い尻を見せつけながら、熱気を肢体から放っている。
 俺がいる所は、商店街の外れにある広場だ。ここでは様々なイベントや大道芸が行われる。愛の女神の踊り子アプサラスの踊りもその一つだ。彼女は、黄金の翼を持つ楽師ガンダルヴァの弦楽器の演奏に合わせて踊っている。
 俺は、アプサラスの胸と尻を強調する踊りを凝視する。俺の下半身を刺激する踊りだ。刺激するのはアプサラスだけでは無い。ガンダルヴァは、胸と下腹部を透けそうな衣装で覆っただけの露出度の高い格好だ。見物客の淫魔サキュバスは、胸と下腹部を黒皮の服で覆っただけの扇情的な格好だ。俺の下半身に力が入る。
 俺の尻に鋭い痛みが走った。俺は声を上げそうになる。後ろを振り向くと、高校時代の男友達がいる。口の端を吊り上げて笑いながら、俺の尻をつねり上げている。頭には黒い角を生やし、背には黒い翼を広げている。彼は、いや彼女は笑いながら怒っている。
 俺は、かつて男だった妻に尻をひねり上げられていた。

 俺たちは、踊りに背を向けて広場から出る。妻である司に小突かれながらだ。踊りを見るぐらいかまわないだろと言う俺に対して、司は肘鉄を喰らわす。
「鼻息荒くして食い入るように見やがって、恥ずかしいんだよ。それにチンポが起ちそうになっていただろ」
 司は、腹をさする俺に吐き捨てる。そして俺の耳元に顔をよせて詰問する。
「お前の臭くて汚いチンポを、毎日しゃぶってやっているのは誰だ?」
 司だと、俺は平板な声で答える。
「お前の前で股を開き、数え切れないほど中出しさせてやったのは誰だ?」
 司だと、俺は投げやりに答える。
「変態野郎のお前のために四つん這いになり、ケツの穴でやらせてやったのは、あの露出狂のアプサラスか?胸のでかいガンダルヴァか?淫乱サキュバスか?」
 変態野郎の妻をやっている司だと、うんざりしながら答える。
「分かっているじゃないか、この変態種馬野郎」
 司は、再び俺の尻をつねり上げた。
 司は、けっこう嫉妬深い。俺の持っているエロ本やエロDVDにも文句を言う。元男なのだから寛大かと思ったら、かえってうるさい。男のことを分かるからうるさいのかもしれない。
 俺は司の手をつかみ、強く握りしめる。いい加減に尻をつねられるのには飽きた。司は、俺の手を振りほどこうとするが出来ない。司よりも俺の方が力はあるのだ。人間だった時も俺の方が強かった。司がアルプになった後は、俺はインキュバスという魔物になった。力では俺が勝ち続けている。
 俺は、そっぽを向いている司を見た。アーモンド形の目が特徴である顔は、可愛らしさがある。身体は、男よりは小柄で線が細い。ノースリーブの薄紫色のシャツに白いホットパンツという姿であり、滑らかな手足をむき出しにしている。司からは、つけているレモンの香水の香りが漂ってくる。
 胸が小さいのが難点だが、十分に魅力的だ。俺は、司の魅力を再確認する。こいつは、男だった時から怪しい魅力があった。おかげで俺は、こいつとやってしまった。
 俺は、司と結ばれた昔のことを思い出した。

 俺と司は、工業高校の同級生だった。アニメや漫画、小説の話をしているうちにつるむようになった。俺たちは、放課後に空き教室でダラダラと話をした。その後に、一緒に漫画喫茶や本屋、図書館に行ったものだ。二人ともバイトがあるから毎日つるむことは出来なかったが、空いている日は大抵一緒だった。
 俺たちは、女には縁が無かった。当時の工業高校は男ばかりだ。他の学校の女子高生は、工業高校の男子を見向きもしなかった。教師も男ばかりだ。俺たちは、野郎ばかりで暮らしていたのだ。
 今の工業高校は違うらしい。魔物娘の生徒と教師が、続々と入ってきているらしい。放課後になると、他校の魔物娘が校門の前で目をぎらつかせて待ち構えているらしい。今の工業高校では、魔物娘による男狩りが盛んなのだそうだ。
 まあ、俺たちのころは違う。魔物娘は、まだターゲットにしていなかった。俺と司は、野郎ばかりの環境でつるんでいたわけだ。それはそれで楽しかった。女がいても、俺は相手にされないだろう。だったら、男ばかりの環境の方が楽だ。
 ただ面倒だったことは、俺と司が周りの連中からホモじゃないかと疑われていたことだ。司は、中性的な容姿の美少年だった。男ばかりの環境では、おかしな誘いがありそうな外見だ。そんな司が、俺とばかり一緒にいたら怪しまれるだろう。
 俺たちは、そんな連中の目を無視して楽しんでいた。いちいち気にしていても、何のメリットも無い。幸い、連中も嫌がらせをするほどクズでは無かった。
 こうして俺たちは楽しく暮らしていたが、あることをきっかけに生活が変わった。

 ある日、俺は司に家へ誘われた。見てもらいたいものが有るという話だ。俺は、司の暮らしている市営住宅へ放課後に行った。
 司の両親は、仕事で家にはいなかった。俺は、司と二人きりでいたのだ。司は、俺にアイスコーヒーを勧めた。俺が、眠気覚ましにコーヒーをよく飲むことを、司は知っていた。少し甘すぎるコーヒーを飲みながら、何を見せたいのかと司を促す。
 司は立ち上がると、制服のブレザーを脱ぎ始めた。どういうつもりか分からなくて、俺は顔をしかめてしまう。そう言えば、すでに衣替えの時期となっている。それにもかかわらず、司はブレザーを着ていた。しかもボタンをかけている。
 司はシャツを脱ぎ、その下に来ている無地のTシャツも脱いだ。そして上半身裸となる。そして俺を見つめた。俺には、なぜそんなことをするのか分からない。ただ、気のせいか司の胸は膨らんでいるような気がする。
 司は意を決したようにベルトを外し、スラックスを脱ぐ。そしてトランクスを脱ぎ捨てる。俺の前に立ち、裸の姿を俺に見せつける。
 俺は、呆れながら司を見返した。何をとち狂っているんだと、口を開きかける。その時、俺は一つのことに気が付いた。司の下腹部を凝視する。あるはずのものが無い。ペニスが無いのだ。
 動揺する俺を、司は黙って見ている。その時、司の体を紫色の光がつつんだ。俺は弾かれたように立ち上がり、後ずさりをする。光が収まった時、司の体は変わっていた。頭には黒い角が生え、背には黒い翼が広がっている。尻からは黒い尻尾が生えている。変貌した司は、俺を見つめていた。
 俺は、様々な感情と思念が渦巻く中で立ち尽くしていた。考えをまとめることが出来ない。意味の分からない言葉が、頭の中を飛び交う。
 俺は、やっと一つのことにたどり着いた。司は魔物化したのだ。異世界から魔物が移住を始めて十年ほどになるが、その影響で魔物となる人間も出始めているのだ。男が女の魔物となる事態もあるらしい。司は、アルプという女の魔物となったのだ。
 静かに俺を見つめていた司は、事情を説明し始めた。一月前に司は魔物化したそうだ。司は混乱し、魔物化を隠そうとしたが、無理だという結論にすぐに達した。そこで両親に話し、魔物化に対応する医療機関で診察を受けた。
 司はアルプとなったこと、アルプとは男から女へ変貌した魔物であること、魔界と魔物の魔力が司の性向と結びついて起こること、元に戻ることは不可能であること、健康上はほとんど問題が無いことなどを告げられた。
 医療機関を受診した後、司たちはその結果を学校側に告げた。司とその両親、学校の協議の結果、来月に司の魔物化を公表することにしたそうだ。俺にはその前に告げたわけだ。
 俺は、司の話を頭に入れて理解しようとする。混沌とした頭の中を秩序付けようと努力する。その内に、一つのことに気が付いた。司の性向が、女体化の原因の一つだということだ。司は、女としての性向があるのか?
 その時、俺は自分の体の奥から熱が沸き起こって来ることを感じた。腰の奥から頭頂まで熱が叩き付けられる。視界が歪み始める。俺は、意識をはっきりさせようとする。司が俺をじっと見ていた。アイスコーヒーのコップが俺の視界に入る。俺は司をにらみつける。俺に何を飲ませた!
 司は俺に歩み寄ると、俺を抱きしめた。はねつけたいが、力が上手く入らない。司に抱きしめられた所が熱を持っていく。司は、俺の口に自分の口を重ねる。司の甘い匂いと味が俺の中に広がる。司の体は柔らかく、温かい。
 気が付くと、俺は司を押し倒していた。司は、微笑みながら受け止めている。俺を愛撫しながら、俺の服を脱がせていく。俺は、司の体に舌を這わせる。司の体を貪らなくては、俺の体の熱は収まりそうにない。
 この日、俺たちは初めてセックスをした。お互い初めての体験で、技巧の無いものだった。俺は、体の奥底から湧き上がる力に任せて司を貪った。自分をこらえきれなかったのだ。司は、終始俺に応えようとしていた。ことの終わった後、俺たちは共にぐったりとしていた。
 司は、アイスコーヒーに虜の果実の果汁を入れていたのだ。虜の果実とは魔物たちが持ち込んだ果物で、強烈な媚薬となるのだそうだ。司は、俺を欲情させるために飲ませたのだ。
 司は、俺に恋愛感情を持っていたらしい。その感情が魔物の魔力と結びついてアルプとなったのかもしれない。はっきりしたことは、司にも分からないようだ。
 俺はどうなのだろうか?俺は、司をどう思っていたのだろうか?俺が司とセックスをしたのは、媚薬を飲まされたからだろうか?俺は、男のころの司をどう思っていたのだろうか?今の俺には、良く分からない。
 ただ、一線を越えた後は、俺たちは後戻りをする気は無かった。お互いを繰り返し貪り合うようになったのだ。

 司のカミングアウトは、騒動を起こしたが受け入れられた。なぜなら、他にもアルプ化した生徒たちがいることが発覚したからだ。学校側は、彼らのことを公表した。司を含めて十八人の生徒がアルプ化したことが明らかとなったのだ。
 後でわかったことだが、工業高校という環境はアルプ化しやすい環境らしい。俺は、工業高校の闇を見せつけられたような気分だ。男ばかりの環境というのも考えものだ。
 まあ、いずれにしろ複数の生徒がアルプ化したために、受け入れざるを得ない状態となったのだ。幸い、アルプを初めとする魔物を排撃しようとする者は、俺の通う工業高校では少数だった。それまで通りとはいかなかったが、司は学校生活を続けることが出来た。
 俺たちは、爛れた高校生活を送った。俺は、司とセックスしたことで性欲を抑えられなくなったのだ。司は、魔物化したために性欲を優先するようになった。俺たちは学校で、図書館で、路地で、そして互いの家で暇さえあればセックスをした。他人にばれないように注意をしたが、果たしてばれなかったか自信が無い。
 俺たちは、初めのころは手探りでセックスをした。経験が無いことに加え、司が元男だということで迷うことがあったのだ。俺は、コンドームを付けたペニスを司の中に入れ、司と自分の反応を探りながら体を動かした。司は、俺に合わせようと試行錯誤していた。
 経験を積むと、次第に様々なことを試し始めた。俺は、司にクンニするようになった。元はペニスの付いていた所をなめることに抵抗があったが、なめるとヴァギナ特有の面白い感触がある。独得の匂いと味も良いように思える。少なくともペニスとは違うと分かり、俺は積極的になめるようになった。
 司は、俺にフェラをしてくれるようになった。元男の司にとって、ペニスをなめることには嫌悪感があるだろう。だが、司はやってくれるようになった。もっとも、臭い、しょっぱいと文句は言う。俺は、司とやる前にはボディーシートで体を拭くが、それでも臭いや味が残る場合があるらしい。まあ、司は文句を言うくせに、俺に体を拭く暇を与えずに俺の体を貪ることが多いのだが。
 俺たちは、アナルセックスも試してみた。ヴァギナと違ってアナルは入れにくい。事前に準備が必要だ。俺は、ワセリンやローション、バターなどでアヌスを滑らせてからゆっくりと入れた。初めのころは、司は力を入れすぎていたが、次第にほぐれるようになった。
 俺と司は、様々なプレイを試してみて、お互いの体の隅々まで味わった。女となった司の体は、俺には驚くことばかりだった。例えば匂いだ。男と女では匂いが違うのだ。俺は、司が男だった頃に、運動後の司と一緒にいたことがあるから分かる。男だった頃の司と女となった司の匂いは、違う。もしかしたら、人間と魔物の匂いが違うのかもしれないが。
 俺は、司を貪りつくさなくては気がすまなかった。司も、俺を貪りつくさなくては気がすまないようだった。司と交わり続けたために、俺はインキュバスとなった。そのことは、俺たちのセックスをさらに激しいものとした。俺たちは、性欲の赴くままに爛れた生活を送ったのだ。

 だが、俺たちは結婚するつもりは無かった。理由は貧乏だからだ。結婚には金がかかるし、子供が生まれればシャレにならない金がかかる。俺たちには無理な相談だ。だから、俺たちはセックスしまくったが、いつも避妊には気を使っていた。
 俺の家は貧乏だ。俺は、高校を卒業したら働かなくてはならない。しかも、高校へ通うために奨学金を借りているのだ。卒業したら利子と共に返さなくてはならない。そして俺のような高卒は、ロクな就職はできないだろう。大卒でも正社員になるのが難しいご時世だ。俺みたいなのは、使い捨ての非正規労働者になるだけだ。
 司も俺と似たような有様だ。俺たちには結婚は許されない。俺たちに将来なんて無いんだ。俺たちがセックスにのめり込んだのは、憂さ晴らしをするためでもある。セックスをしている間は、つまらないことを忘れていられる。
 それでも時間はたち、就職活動しなくてはいけなくなる。結果は予想通りだ。募集している所はろくでもない条件ばかりだ。そんな所からも俺は、書類選考と面接で落とされまくった。司も同じだ。
 そんな時に、就活担当の教師は一つの求人を勧めた。魔物娘が創設した企業が、情報通信関係の正社員を募集しているそうだ。俺たちは、情報技術科の学生だから該当するのだそうだ。
 当時、魔物娘達は企業を次々と創っていた。求人も盛んに行っていた。ただ、魔物娘の企業に就職しようとする人間は、当時はほとんどいなかった。ブラック企業以上に警戒されていたのだ。
 俺たちは、魔物娘の企業の求人に応募した。俺たちは、人間の企業に愛想を尽かしていた。魔物娘の企業が反社会的でもかまわない。せいぜい魔物の使い走りになってやろう。そう考えて魔物娘の企業の面接を受けた。
 面接は悪くは無かった。頭に角を生やし、背に翼のある美女が面接官だった。サキュバスという魔物だと、あとで知った。彼女は、穏やかな微笑を浮かべながら確認するように質問をしてきた。
 今まで受けた面接に比べれば上等だ。高圧的な態度で尋問する奴、やる気のない態度をむき出しにする奴、わざとらしく愛想のいい奴、こんな連中ばかりだ。サキュバスの面接官は、そいつらとは違った。
 俺たちは採用されることになり、魔物娘の企業で働き始めた。どんな酷い待遇が待っているかと覚悟していたが、予想外に良かった。労働法は神経質なくらい守り、労働法を別としても過重労働をさせる事は慎重に避けていた。賃金も、高卒ではかなり良い方だろう。
 社内教育も良かった。様々な教育法を組み合わせて俺たちを教育してくれた。例えばOJTだ。OJTは、教育担当の社員次第で天地の差がある。企業によっては、人を潰すためにやっている場合もある。俺たちの受けた教育は天の方だ。教育担当者である小人の魔物娘ドワーフは、慎重に忍耐強く俺たちに仕事を教えてくれた。俺たちがまともに仕事を出来るようになったのは、教育担当の社員のおかげだ。
 俺たちは、魔物娘の企業のおかげできちんと仕事ができ、きちんと生活できるようになった。奨学金は、賞与のおかげで予想よりも早く返すことができた。至れり尽くせりだ。
 ただ、少し困ったことがあった。魔物娘たちは、俺と司が結婚することを望んでいるのだ。彼女たちは、関係を持った男女は結婚するべきだと考えるらしい。特に、女の方が魔物娘の場合は、その考えは強い。司はアルプ化しているから、魔物娘の価値観によれば、俺と司は結婚すべきだと考えているらしい。
 俺と司は話し合った。今の会社にいる限りは、結婚して子供が出来てもやっていけるのではないか。今の会社にいられなくなっても、魔物娘の企業活動は盛んになっている。その会社で働くことが出来るのではないか。俺たちはそう考え、籍を入れることにした。ただ、結婚式は挙げなかった。俺たちは、貧乏生活が長いので金を使うことを警戒したのだ。新婚旅行も行かなかった。
 俺たちは、会社の既婚者向けの寮に入った。魔物娘と結婚する場合、その方が何かと都合が良いのだ。こうして俺たちは夫婦生活を始めた。

 昔のことを思い出すと、いろいろと感慨がある。昔を懐かしむほど年を取ってはいないが、今まで色々あったような気がする。
 俺は司を見た。司は、むき出しの二の腕と太ももに銀のアクセサリーを付けている。俺が強引に買ってやったのだ。司がアクセサリーショップで熱心に見ていたのを、俺は知っていたからだ。司は、無駄遣いするなと怒ったが、こうして付けている。香水も、俺が司に勧めた。
 俺は、司にはしゃれた格好をさせたい。司は、しゃれた格好が似合う女だ。俺は、こざっぱりした格好が出来ればいい。だが、司にはファッションを楽しんでほしい。今の俺たちには、少しくらいの金ならあるのだから。
 突然、俺は司に手を引かれた。司は、そのまま小路へと引いていく。どうしたと言っても、司は答えない。そして俺は、建物の間にある狭い空間に引き込まれた。
「お前は、放って置けばすぐに女を見る。さっきもダークエルフの女の胸を見ていただろ」
 司は、上目づかいに睨んでくる。
 俺は首を傾げた。そう言えば、さっき褐色の肌の女とすれ違ったような気がする。だが、注視した覚えはない。
「抜いてやるよ、種馬野郎」
 司はそう言うと、俺の前にひざまずく。俺のジーンズのジッパーを引き下ろし、トランクスも引き下げる。俺のペニスを露出させると、口を付けて舌を這わせ始めた。
 俺は、司を引き離そうとしたがやめた。司は、俺の弱点を知り尽くしている。俺は、快楽には抗えない。
「毎日洗ってやっているのに、なんでこんなに臭いんだよ。味も濃いし」
 司は、文句を言いながらも俺に奉仕を続ける。俺のベルトを外し、ジーンズとトランクスを膝まで引き下げる。完全にむき出しになった俺のペニスの所々に舌を這わせ、吸い付く。陰嚢を口に含んでなめ回しながら、俺のアヌスと蟻の徒渡りを指でくすぐる。
 俺は、呻き声を抑えられない。腰の抜けるようなフェラとはこのことだ。元は男だったから、男の気持ちの良い所ややり方を知っているのだろうか?俺は、たちまち上りつめる。司は、すばやく俺のペニスを口に含む。司は、俺が出そうになる兆候を知り尽くしているのだ。司は俺のペニスを吸い、手でさおを愛撫する。司の頬はくぼむ。
 俺は、司の口の中で弾けた。陰嚢と前立腺が強い刺激で震え、激しい射精が行われる。司の頬はふくれ上がる。司は、喉を鳴らしながら精液を飲み込んでいく。口の中のものを飲み込むと、頬をくぼませながら俺のペニスを吸い上げる。前立腺どころか陰嚢から液が吸い上げられているような気がする。
 長い吸引が終わった後、司は俺のペニスから口を離した。半開きになった司の口の中で、ピンク色の濡れた舌がうごめく。司は、俺を見上げながら微笑む。そうして再び、俺のペニスを奉仕し始める。俺のペニスは、たちまち回復する。
 司は立ち上がると、ホットパンツを膝まで下ろした。そしてショーツも下ろす。司の薄い茂みは濡れており、日の光で輝く。俺は司の前にしゃがみこみ、司の茂みに口を付ける。甘酸っぱい匂いと塩味が俺の中に広がる。ヴァギナ特有の匂いと味だ。ここに元はペニスが付いていたとは信じ難い。
 俺は、司の中に入れるために立ち上がった。ポケットに入っているコンドームを取り出そうとする。司は、俺の手を抑える。
「生でやれよ。中出ししてもかまわないからさ」
 俺は、司の言うとおりにする。たぎり立ったペニスをゆっくりと司の中へと沈めていく。司の柔らかい肉の泉が俺を迎え入れて包み込む。俺は司の中を初めはゆっくりと、次第に早く動いて味わう。司は、慣れた態度で俺の動きに合わせる。俺たちは、動きと共に息づかいも早くなる。
 絶頂が近くなると、俺は中から出そうとした。司は俺の動きを察知すると、俺に抱き付いて俺を逃がさないようにする。俺のペニスを軟肉で締め付ける。俺は逃げられない。
 先に弾けたのは司だ。司は、全身を痙攣させて俺を刺激する。その刺激で俺も弾ける。司の中へ精液を撃ち出す。俺の体も痙攣を始める。俺たちは声を抑えようとするが、声が漏れてしまう。
 痙攣が終わり、俺は司を見つめた。司は、虚ろな目で宙を見ている。次第に視線が焦点を結ぶ。俺を見つめて微笑む。俺は、司の口に吸い付く。司も俺の口を吸う。俺は、司を抱きながら司の匂いをかぐ。香水の香りと混ざり合った甘い匂いだ。
 俺たちは、抱きしめ合いながら口を重ね合わせていた。

 俺たちは、セックスの汚れをボディーシートでふき取ると商店街へ戻った。司は、生き生きとした様子で歩いている。アルプは、男の精を吸い取る魔物だ。司にとって俺の精はエネルギーのようなものだ。
 俺たちは、高校生のころからやりまくっているのに飽きることが無い。魔物となった俺たちは、セックスに飽きることは無いのかもしれない。
 司は、俺に体を付けて歩いている。司の感触は心地よく、司の匂いも俺を楽しませる。司の体を楽しんでいると、彼女は俺に顔を寄せた。俺にだけ聞こえるように話してくる。
「あのさあ、俺、出来たみたいなんだ」
 俺は、司の言ったことの意味を少しの間分からなかった。五歩ほど歩いて、俺は司の顔を食い入るように見つめる。病院に行って確認したんだよ。あれだけやりまくったんだ、出来て当然だよな。そう、司は照れたように言う。
 俺は、何か言おうとする。だが、言葉が上手く出てこない。俺は馬鹿みたいに口を開け閉めした後、話すことをあきらめた。何も言わずに司を抱きしめる。
「バカ、人前で恥ずかしいだろ!」
 司はそう罵るが、俺を振りほどこうとしない。周りの人が見ているようだが、そんなことはどうでもいい。俺は司を強く抱きしめるが、腹の子のことを考えて力を緩める。そして抱き直す。
 俺は、かつて男であった妻を抱きしめ、彼女との間に出来た子を抱きしめ続けた。

16/07/12 22:28更新 / 鬼畜軍曹

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