読切小説
[TOP]
愛変わらず
「紀柚、好きだ、愛してる」
「……」

いつも通りに抱きつこうとしてきた幼馴染の筆斗をボクはかわしながら弓を引き絞り狙いをつける。

「で、今回は誰がターゲットなの?」
「……前みたいな邪魔をしなければ教えてあげる」
「前みたい?……こういうことか!」

彼はボクの目の前に両手を広げて飛び出てきた。

「撃つなら俺を撃て!」

ボクは仕方なく弓を下ろして、はぁと溜息をつく。

「相変わらずボクの邪魔しかできないのかなキミは」
「あれ?撃たないの?」
「逆に聞くけど撃たれたいの?」
「紀柚に撃たれるなら俺は一向に構わないけど」
「そんなに撃って欲しいなら撃ってあげようか?」

そう言ってボクは弓に黄金の矢をつがえ彼に向けた。
いつも通りにニコニコと笑いながらボクを見つめる彼を見て、ボクの中に不安がよぎり弓を持つ手が震える。

もしも、彼が矢が刺さった後にボクじゃない人が好きだと気付いてしまったら?
それはそれで喜ばしい事のはずなのに……それが怖い自分がいる、彼にボクだけを好きであって欲しいと願う自分がいる。
本当にこんなどうしようもない事で自分の気持ちに気付くなんてボクはバカだなぁ……。

「大丈夫だって、そんなに怖がらなくたって俺は変わらないよ。俺は変わらずに紀柚が好きだって叫ぶに決まってる。だから、紀柚の返事を乗せて撃ってくれればいいさ」

「ん……わかった」

その言葉信じてると自然と手の震えは止まり、ボクは弓を引いた。
ボクの想いを乗せた黄金の矢は筆斗の胸に刺さり融けるように消えていく。

「紀柚、好きだ、愛してる……ほらな、変わらない」
「……ありがと」

改めて筆斗の告白を聞いてボクは恥ずかしくなりながらもお礼を言った。

「と言うか、両想いなのになんで今まで俺は邪険に扱われたの!?」
「それは……しょうがないだろ!ボクだって筆斗の事が好きだって気付いたのさっきなんだから!大体、挨拶代わりに好きだなんて言ってくる筆斗も悪いんだから」
「まぁそれは確かに俺も悪かったかも……そうだ!」

何か思いついたように筆斗は手を叩くと、そのままボクを抱き寄せてボクの唇を塞いだ。

「これで許してくれるとうれしいな、なんて」

少し格好つけた様に筆斗が言う。
だめだ、こんな事されたら顔がにやけるに決まってるじゃないか。

「……許さない♪」
「あれ、怒っちゃった?」
「もっとシてくれないと絶対に許さないんだから♥」
「あーそういうことね、愛してるよ紀柚」
「ボクも、筆斗のこと愛してる♥」

これからも彼はボクを愛してくれるのだろう、それこそ愛変わらずに。
15/05/29 14:39更新 / アンノウン

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33