読切小説
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王様と花
王様と花



昔々のお話しです。西の大陸、北の海にグランベル王国と言う小さな国がありました。その国の王様、ピーター王は教皇に聖地を取り戻す聖戦に兵を率いて行くように命令されました。

何年もかかる危険な旅です。主神教の聖地は中つ国と言われる遥か東の砂漠の地にあるのです。王様は仕方なく、お城の大臣達に国を任せ、兵を率いて海を越え、陸路で遥か彼方の聖地を目指します。

何年も旅をして、なんとか聖地に着いた王様は文化の違いに驚きました。西の大陸では、傷を治すには神父を呼んで、香を焚いて神様にお祈りするだけでした。しかし、この砂漠の地では毒を消す液体を使ったり、ワインを布に染み込ませて傷に当てて治すのです。他にも、女の人は何やらローブのような奇妙な服装で目以外を隠していました。男性は友好的でしたが、女性は話しかけただけでも逃げるように去って行きました。

宗教も主神教の古い旧約聖典しか使わずに、新しい新約聖典は聖典では無いとして嫌われていました。主神教では勇者の聖地と呼ばれていたこの地も、彼らは聖アシュマールという聖者の地として大切にしています。ですから、西の大陸では彼らの事を中つ国アシュマール派とか、アシュマール教とかと呼んでいました。

食事も羊や山羊、魚などに香りのする砂のような粉のようなものを振りかけていました。食べたことの無いものばかりです。

ある時、絹服を着た貴族の男が、麻布を着た平民に裁かれていました。西の大陸では考えられない事です。この地で知り合った聖戦軍の騎士に聞くとその騎士は

『此処では、罪人は誰であれ神の名の下に公平に裁かれます。西の地で地に伏した者が、名士になる事もあります。反対に名士だった者が地に伏す者にもなります。』

と答えました。王様達は皆、びっくりしました。



さて、ピーター王は主神教聖戦軍として戦いました。しかし、主神教の将軍達の神の助けに頼った戦い方で軍隊は負け続け、兵士は死に、水も食事も尽きかけてしまいました。おまけに夜には闇夜に紛れてアサシンと呼ばれる兵士達に苦しみました。彼らは皆、曲芸師の様な体術で、ハシシと云う麻薬で皆、正気を失っていて、痛みに怯まずに攻撃してきました。彼らの毒を塗った剣や弓などに聖戦軍は苦しみました。王や将軍の3人に1人は彼らによって殺されました。

やがて何年か戦争が続き、慣れない砂漠での戦争で聖戦軍はボロボロになり、兵士も殆ど失ってしまいました。ピーター王はラビエールと言う国の王様と敵同士でしたが、お互いに尊敬し合い、仲良くなったので、聖戦軍が降伏した折、彼に手助けを頼んで国に帰る事になりました。その時ラビエール王、アフラム陛下から友情の証しとして見た事もない不思議な種をもらいました。彼の話によると、それはそれは美しい赤い花をつけるそうです。

生き残った兵士達も、最初の半分にもなりません。皆、長い長い旅と戦で疲れ果てていました。それから、何年か掛かって来た道を歩いて、海を越え、やっとの事で故郷のグランベル王国に帰ってきました。

しかし、国に戻った帰ってきた王様を大臣達は快く思っていませんでした。自分達が好き勝手出来ないからです。民は重い税金による収奪に苦しんでいました。ピーター王は直ぐに止めさせようとしましたが、大臣達は聖地から逃げ帰った背信者として、主神教法皇に報告して、王様を裁きに掛けました。

裁きの結果、王様は国はずれのクリフサイド離宮というところに軟禁される事になりました。元々、要塞であったそこは昔、ランドル国との戦争のために建てられました。何年も放ったらかしの断崖絶壁に聳える暗く、寒く、虚しいところです。時々、離宮に城からの使者と神父が来るだけで王様は1人ぼっちでした。

王様が聖戦に出掛けてからもう既に10年以上も経っていました。この時の人間の寿命は50程です。ピーター王は30代も後半でした。

聖戦で幾ら祈り、血を流せども、神の救いなど無いと思い知り、主神への信仰は失せ、若さを失い、残っているのは友達のアフラム王から友情の証しとして貰ったあの珍しい花の種だけです。

『此処は虚しいところだから、この花が咲いたら少しは寂しさが無くなるのかもしれない。ラビエール王アフラムよ、貴方の友情に感謝します…』

王様は離宮の庭の真ん中、1番日当たりの良い場所に種を植えました。それから、毎日毎日、晴れの日も、風邪の日も王様は花を育てるために水をあげました。

やがて、種は芽吹き、葉を付けて、城壁に蔦を伸ばし、大きな蕾を付けました。王様は水をあげる時に、友人に話しかけるようにその蕾に話しかけました。

『今日はすこし寒くなったので、もう直ぐ冬が来るかもしれない。寒くはないか?』

王様が話しかけると蕾が頷いたような感じがしました。

『そうか…だが、この国の冬は美しいのだ。雪の降る白の世界は本当にいいものだ…。お前も見たいか?』

コクリ…

『そうか、そうか。降臨祭の少し前には雪が積もる。時期に見れるさ…。それから年が明けて、春の足音が聞こえてくる。お前は春に咲くのであろう?』

コクリ…

『うむ。私もお前か咲くのを楽しみにしている。…どれ、落ち葉を集めて来よう。神父の話によると、良い肥料になるようだからな。』

すると蕾はユラユラと嬉しそうに揺れました。

『嬉しいか!そうか、そうか。待っておれ、行って来るとしよう。』

王様は落ち葉を集めに行きました。種を植えてから、王様は生き生きとしています。たまにくる、使者や神父は王様を哀れみました。

『ピーター陛下は寂しさの余り、蕾に話しかけておられる…。おいたわしや、きっと歳をとり、おかしくなってしまったのだ。』

と口々に話していました。



それから冬が来て、国中が雪に覆われた頃のある満月の夜に、王様は病に身体を悪くしていました。

すると扉を叩く音が聞こえました。王様は病気で疲れていたので無視しましたが、一向に扉を叩くコンコンという音は収まりません。王様は渋々扉を開けました。城からの使者かと思いましたが、目の前には白いフードに巡業服を纏った老婆がいました。

『こんな夜更けに其方は何用でここに来た?ここに居るのはこの王とは名ばかりの年老い、弱った男がいるだけだ。』

すると、老婆は頭をさげて王様に深々とお辞儀をしました。

『夜分にごめん下さいまし。私はカルミナと申します。見てのとうりの旅殉教のお婆でございます。私めはランドル国の修道教会にいく途中ですので、このお薬めを病にお身体を悪くした国王陛下へお届けするようにと、お城の従者様から仰せ使いました。』

『それは大義であった。さぁ、外は冷える。中へ入りなさい。外よりはマシであろう。好きな部屋を使い、休みなさい。』

王様は老婆を寝室に招きいれました。 そして、老婆から薬の入った小さな小瓶を受け取りました。

『良く効くお薬でございます。匙ひとつ分でございますがお飲み下さいまし…』

王様は薬をひと匙すくい、飲みました。甘い甘い極上の蜜の様な味でした。体がポカポカと暖かくなり、たちまち眠くなりました。

『王様、王様…そこでお休みになりますと、お身体を冷やしますよ?さぁ、寝台へお休み下さいまし。』

老婆は、王様の身体を支えて寝台へ寝かせ、毛布を掛けました。王様はうとうとしています。

『王様…今度は花の咲く頃にまたお会いしましょう……』

王様が夢に堕ちる前、目の前の老婆が一瞬、若く美しい女に見えました。




翌日、王様はすっかり元気になりました。お礼を言おうと老婆を探しましたが、老婆の姿は無く、代わりに寝室の小さな机には小瓶と匙があるだけでした。

『昨晩、旅殉教の老婆がやってきて、薬を届けてくれた。御蔭ですっかり良くなったよ。』

蕾はこころなしか嬉しそうに揺れている様に見えました。

『そうか、嬉しいか。ありがとう。』

そのことでお城の使者が来た折、お礼を言おうとしました。

しかし、老婆の事を使者に聞いても

『王様、その様な者を私は知りません。』

神父にきいても

『主神様の身使いではないのでしょうか?いやはや、ありがたい…』

などと、頼りのない返事が返ってくるばかりです。あの残された小瓶だけが、あれが現実だったと伝えていました。




月日は流れて降臨祭が終わり、年が明けて、春が来て暖かくなり、時はもうすぐ5月の主聖祭です。蕾は日に日に大きくなりました。離宮の城壁を護る様に生えた棘のある蔦は色艶めき、美しい緑色をしています。城からの使者や神父はきみ悪がり、何時しか離宮に寄り付かなくなりました。王様は何時もの様に水をやり、伸びすぎた余計な葉っぱを剪定していますが、今か今かと花が開くのを待っていました。土の仕事で王様の手は傷がたくさん出来て、厚い皮がはりましたが、王様は毎日楽しそうで、とても嬉しそうでした。

そんな主聖祭前の満月のこと、王様が寝ていると、夢の中で、王様を呼ぶ声が聞こえました。

『王様…王様…私の王様…。お庭に…私は…お庭にいます……』

美しい、透き通るようなソプラノの声が響きました。

『其方は誰だ?…私を呼ぶ其方は誰だ?』

『王様…王様…私の王様…。お庭に…私は…お庭にいます……』

同じ言葉が続いたが、今度は遠く霞ゆくように消えていってしまいました。夢はそこで途切れて、王様は目を覚ました。王様は不思議に思ったので、上着を一枚羽織り庭に出ました。

庭に出ると、花の良いに香りが一面に広がっていて、月光の下、今まさに蕾が開かんとしていました。

『おぉ…開くのか?』

ゆっくりと…ゆっくりと冬名残りの夜風に吹かれながら、花が開いていきます。月明かりに照らされた蕾の中は何よりも鮮やかな赤色でした。王様は感動に胸を震わせていましす。王様は結婚をしてませんでしたが、もしかしたら、息子や娘が産まれる時の父親の心はこの様なものかと思いました。

そして、ついに花が咲きました。夜露に濡れた大きな赤い花びらが1枚1枚、螺旋状にたくさん集まって咲いている大きな大きな花です。

大きな花の中心には何やら人影の様なものが見えました。

『…誰ぞいるのか?』

王様が花に近づくと月明かりに照らされたその人影が、此方をみました。艶めいた薄い翡翠の肌に亜麻色の髪、花と同じ紅い瞳と薄紅色の唇…一糸纏わぬ姿の女性が王様を見ています。

魔物のようでしたが、王様は思わず

『美しい...…』

と声をもらしてしまいました。

『王様…王様…私の王様…。やっと…やっと会えました…。』

花の中の乙女は、涙で頬を濡らしながら王様に言葉を投げかけました。

『其方は誰ぞ?もしや、夢の中で私を呼んだのは其方か?』

『はい…そうです王様。私は元は何の変哲のない薔薇という花の種でした。それがどう言うわけか、魔力と言うものを受けてしまい、私が生まれました。そして、砂漠の地にてラビエール王からあなた様に渡り、あなたの優しさと慈しみで私は花を咲かせたのです。』

すると乙女は王様を抱き寄せる様に、自身の蔦を王様の背中に回しました。

『王様…私はあなた様をお慕いしております。愛しております。お優しい王様…私の王様。どうか私と共に居て下さい…』

王様は乙女の手を取りました。

『其方は私の生き甲斐だ。暗く虚しいこの牢獄の様な離宮で其方は私の全てなのだ。誰が手離そうか!?』

そう王様が答えると、乙女は王様を抱き寄せ、嬉しそうに微笑みました。王様もまた、乙女をきつく抱きしめました。

『いつまでも、其方と呼ぶのは素っ気がない。名はあるか?』

『私はアルラウネと呼ばれる魔物娘でございます。』

『…それは種族の名であろう?私は其方の名を聞いたのだ。』

『…名はまだありません…お好きにお呼びくださいませ。』

『…では……ロゼット。ランドル・ファラン国の言葉で至上の花という意味だ。其方の名はこれからロゼットだ。』

乙女はパッ…っと顔を赤らめて嬉しそうに恥ずかしそうに微笑みました。

『私は…ロゼット…素敵……大切にします。』

王様と目が合う。ロゼットは恥ずかしさを隠すように、王様の頭に手を回し、口付けをしました。王様はびっくりしましたが、愛しいロゼットを優しく受け取りました。

甘い甘い口付けでした。ロゼットが口移しで自らの蜜を王様に飲ませているのです。王様はその甘さに覚えがありました。

『この…甘い、蜜のような味は……あの冬の日…』

『…あの時、病気の王様に会いたくても蕾の私は会いに行けませんでした。そうしたら、ある夜に真っ白な魔界のお姫様が現れて、私が作った蜜を届けてくれました。次の日に王様が元気になってくれていて、本当に嬉しかった…』

『そうであったか…ロゼット、礼を言う。ありがとう。』

王様はそっと、ロゼットの額に祝福の口付けをしました。ロゼットは全身が優しい喜びに包まれました。

『王様……私の王様…』

蔦が王様の服を1枚1枚剥がしていきます。

『…ロゼット。其方になら、この身と命をやろう。』

王様は戦争に行っていたので、傷だらけでしたが、剣を振るために鍛えられた身体は古代の彫刻のような均整のとれたものでした。ロゼットは王様の身体を優しく抱いて花の中に招き入れました。王様とロゼットを薔薇の花がすっぽりと包み込みました。

王様とロゼットはぴったりとくっついたまま、薔薇の中に沈んでいきます。そこは蜜で溢れていて、幾つもの蔦が2人を離すまいと巻きついてきました。

『さぁ、王様…夫婦の契りをいたしましょう…』

王様は静かに頷きました。ロゼットは王様の分身に手を触れます。王様は息を漏らしました。徐々に硬さを帯びていくそれを愛おしそうになでまわしました。

絵画のような可憐で美しい顔立ち、亜麻色の髪、小さ過ぎず大きすぎない美しさを体現したような双丘、なだらかな曲線を描く腰、子を儲けるのに適したまろい尻、ロゼットの身体全てが王様の理想をそのまま表したようでした。

ロゼットは淫らに微笑むと男根を自らの秘所に当てがい腰を沈めました。肉を掻き分けていく感覚に彼女は少し顔を歪めましたが、嬉しそうに口端を緩めました。

王様を受け入れた乙女の中は、蜜の渦の只中で、もう離さないと言わんばかりに、キツく王様の分身を求めていました。王様は自身が求めるがまま、愛しい乙女を貪りました。

滴る蜜の跳ねる音か、2人の奏でる愛の音かの区別もなく淫らな音楽が奏でられています。

お互いを尊重し慈しむ純粋な愛情がそこにはありました。王様が不意にロゼットの頭に手を回して抱きしめました。耳元で

『ロゼットよ、愛している。』

と囁きました。するとロゼットは全身を震わせました。秘所から愛液を吹き出し、天上に到達してなお、ロゼットの体内は蠢き、その最奧にある蜜壺の口は精を受け入れようと、口を鯉のようにパクパクと王様に求めています。

たまらず、道連れのように王様は呻き声を上げてロゼットに精を放ちました。ロゼットはしっかりと自身の足と花の蔦を王様の腰に絡めています。一滴も逃すまいと魔の蜜壺は放たれた精を飲み込んでいます。ロゼットは目をチカチカさせ、口を緩めて空を漂うような絶頂に身を浸していました。

2人は心地よい睡魔に身を任せて何処からとなく口付けをすると、夢の中に旅立ちました。




夢から覚め、花から顔を出すと何時ぞやの老婆が立っていました。

『これは、確かカルミナと言う何時ぞやの婆や…。あの時は助かりました。礼を言う。ありがとう。』

老婆は頭を下げました。するとロゼットは王様に

『この方が、私の蜜を王様に届けてくれた方です。』

と言いました。

『グランベル王国、ピーター陛下にはご機嫌麗しく…』

すると突然、老婆の身体が光に包まれました。そして、老婆は大きな角と尻尾、真っ白な翼を持つ美しい女性に変貌しました。白い悪魔は微笑みました。

『私はカルミナ。魔王の娘、リリムの1人。ピーター陛下、それから、薔薇のアルラウネ。』

『ロゼットと言います。王様から頂きました。』

『クスクス…そう、ロゼット。お久しぶりです。立派に美しく咲きましたね。』

王様は驚きながら、カルミナを見ました。

『魔界の姫君とは知らず失礼した。それで、其方は何故私たちを助けたのですか?』

『全ての魔物娘と人間を愛する母上…魔王様のご意思です。そして、恋する魔物娘の後押しもリリムとしては当然の事です。そして、私からお願いがあります。』

『何でも言ってください。あなたは私たちの恩人なのですから。』

『ありがとう。…いま、人間は苦しみの中にあります。身分や貧富の差に苦しめられ、利害や宗教や考え方の違いで起こる戦争によって苦しみます。母上は皆、愛し、愛される権利…幸せになる権利があるとお考えです。魔物娘と人の争いのない、愛のある世界を作りたいと思っています。もちろん、私も…』

『それで、私たちに何が出来ますか?』

王様が聞きました。

『あなた方の国を作ってください。魔物と人が平等に愛しあえる国を、誰も苦しまない国を…』

王様は答えます。

『私はこの離宮に追放同然できたのだ。今更私に出来る事は無い…』

カルミナはクスクスと微笑みながら、

『あなたには、1人では無いのですよ?素晴らしい伴侶が居るではありませんか。それに、まず2人が愛し合うことが大切です。先ずはそこから…』

そう言うとカルミナは空気を歪めて消えてしまいました。


王様とロゼットは何が何やらさっぱりでしたが、カルミナが言うとうりに先ずは2人がより深く愛し合うことを考えました。

それからしばらく経って、蜂の魔物娘のハニービーがロゼットの蜜を求めてやってきました。

『とても美味しそうな蜜ですので、分けて頂け無いでしょうか?』

とハニービーは深々と頭を下げました。王様とロゼットは快く蜜を分け与えました。

『今度来た時には、グランベル国の様子を教えて欲しいのだが頼めないだろうか?』

『はい。お安い御用です!』

と、ハニービーは元気に空に飛んでいきました。そして3日ほど経ってまたハニービーが飛んできました。

『この国は酷い国です…酷い飢饉が続いているのに、一部の身分の高い人間や教会の人間が土地の実りや富を収奪しています。皆貧しく、食べるのにも事欠く人々も沢山います…』

『そうか…私が知らない所でそんなことに…教えてくれてありがとう。』

王様はハニービーにお礼を言って、この前より多くの蜜を分け与えました。

『こんなに沢山…』

目をパチクリしているハニービーに王様は言いました。

『頼みがあるので今度は、あなたの仲間と共にきなさい。』

ハニービーは元気よく返事をすると、空へと飛んでいきました。

『ロゼット…私に考えがあります。』

数日経ち、王様とロゼットのもとにハニービー達がやってきました。ロゼットと愛を深め合い蜜を沢山、沢山作りました。王様はハニービー達にその蜜を貧しい人々に届ける様に頼みました。蜜にはロゼットの魔力が込められていて、食べた人に離宮の場所が解るようになっています。

さらに幾日か経ち、離宮には沢山の人々が集まっていました。皆、服と言えないようなボロボロの布を着ていました。中には小さな教会の神父やシスターまでもいます。ハニービーに頼んで王様とロゼットは彼らを自分達がいる庭まで来る様に伝えてもらいました。

広い離宮の庭に集まった人々は皆、目を疑いました。王様が若返っているからです。ロゼットと共に過ごした結果、王様は青春を取り戻しました。

王様は赤い薔薇の花を集めたマントに蔦の王冠を被り、ロゼットを傍に人々に話をしました。





『愛しき国民よ、私は国王ピーター・グランベルである。私はあなた方が苦しんでいる中、何も出来なかった事をまず、お詫びしたい。

故に私は新しい国を作る事をここに宣言する。飢えず、収奪に苦しむ事なく、誰もが幸せになれる、自己や他者を愛し、愛される権利をここに作りたい。

私は隣にいる愛すべき伴侶により魔物になった。主神への背信だ、冒涜だと人が言うかもしれない。然し、私が聖戦の、荒涼とした砂漠で見た光景に救いなど有りはしなかった。

そこにあったのは人間同士の醜い争いだけではないか。兵士達は皆救いを、奇跡を信じながら戦った。

神の為に祈れども、多くの血を流せども、救いは無く、報われる事は無かった。それは敵とて同じであろう。

国民の皆よ、主神に祈り救われたか?飢饉により国は貧しくなり、収奪によりあなた方は苦しんだ。人を救う筈の教会が人民を苦しめ、人を護る騎士や貴族は人民を害している。

主神の奇跡を信じなさいと彼らは無責任に言う。神に祈れども救いの奇跡は起きず、我らは唯、滅びるのを待てと言うのか?それは余りにも残酷ではないか。

私は魔物に…我が妃ロゼットに触れ、彼女達の考えを聞き、言葉を交わした。そこには教会が語る様な魔物の姿は無く、彼女達は人間との友好を強く望んでいる。教会の言うことを信じるのならば、魔物は滅ぼすべき絶対の悪である。

……友好と愛を求める者を剣で切れと?滅せと?魔物と言うだけで?…その様な事を私は出来ない。友好を求める声を消す事など、愛を求める小さな手を振り払う事など出来ない。あっては成らない!



…では、人間の敵は、あなた方を苦しめたのは何か?それは我々と同じ人間だ。主神でも魔物でも無く、他者と言う人間なのだ。



私は、王として…いや、1人の小さな人間として彼女達との友好に、その果ての未来に希望を見出したいと思う。

もう一度、私は人間と魔物の新しい国を作る事をここに宣言する。誰もが飢えず、収奪に苦しむ事なく、誰もが幸せになれる、全ての者が自由に自己や他者を愛し、愛される権利をここに作りたい。いや、作らねばならない。憎しみと争いの呪われた人間の歴史に終止符を打たねばならない!

……それには諸君らの力が必要なのだ。私に今一度ついて来てはくれないだろうか。もし、私が滅ぼすべき悪と言うのであれば、私と妃諸々この離宮を焼きなさい。』





王様の演説が終わりました。あたりは静まりかえっています。

すると、突然…





王様!!王様!!ピーター陛下!!!






拍手と歓声と共に彼らは賛同の声を上げました。王様は高らかに新しい国家の宣言をしました。

王様とロゼットはまず、蜜を使って女の人を皆アルラウネに変えました。すると、伴侶の男性は次々とインキュバスになりました。次に王様はアルラウネ達の蜜を使って、ハニービーや妖精族の魔物娘を呼び入れました。ロゼットから始まった薔薇の花はその間にどんどん増えて今やクリフサイド離宮周辺を覆い尽くしています。王様の離宮は薔薇の城と呼ばれました。

グランベルのお城から、離宮の異変に気付いた大臣たちが、これはまずい!と王様達がいる離宮に向けて軍隊が送られてきましたが、ハニービーや妖精族や魔王の軍隊が守ってくれました。攻めてきたお城の兵士達は今では彼女達のお婿さんになっています。みんな幸せそうです。

お城の貴族や教会の偉い司祭達は周辺の国や教会本部に援軍を要請しましたが、飢饉の対策や戦争やらで忙しく、手を貸せないと言ってきました。その間に王様達の離宮にはどんどん人が流れて、大きくなりました。


王様の演説から程なくして、グランベル王国はロゼットの薔薇の花に飲み込まれ、魔物の国となりました。王様は自分の国を取り戻したのです。王国を自分達の好き勝手にしていた大臣や貴族や主神教会の司祭は皆捕らえられて、王様によって公平に裁かれました。しかし、王様は彼らを害する事はありません。伴侶が既にいる者は伴侶を魔物化してから自宅に軟禁しました。独身の者は魔王軍からの監察官が着き自宅に軟禁されました。罪を犯した聖職者は魔王軍に引き渡して堕落神教会へと送られました。刑期はいずれも3〜5年程でかなり軽いものです。ですが、皆愛と快楽に溺れて魔物娘の虜となりました。刑期を終えても家から出ないで快楽を貪り続ける者もいました。


王様が約束したように、誰もが飢えずに、それ故に収奪に苦しむ事無く、誰もが幸せになれる、素晴らしい国になりました。王様とロゼットの間には沢山の子供達が産まれました。2人が愛し合う度にロゼットは美しくなり、王様は知恵と力を得ました。



薔薇の国と呼ばれるグランベル王国は栄え続けました。皆幸せに暮らしています。



ピーター王とロゼットは離宮の中庭に咲き続けています。永遠に美しく。これからもずっと……



終わり。
19/05/04 01:48更新 / francois

■作者メッセージ
お読み頂きありがとうございます。


今回は昔話風にしてみました。前作と同じ時代のお話しですが、此方は侵略者サイドのお話しです。ある宗教戦争がモデルになっています。当然、イヤイヤお付き合い同然で面倒くさいながらに参加した小国や脅されて参加した国もあるだろうと思い、書きなぐりました。

最初の設定では、王様はもっと悪い人でしたが、ハッピーエンドにしたかったので……

カルミナ嬢はお気に入りのキャラクターですのでまたメッセンジャーとして出すかもです。


お読み頂きありがとうございます。ではまたU・x・Uつ

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