連載小説
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第四話 戦士の誇り 前編
「魔物が?」
「はい、それもつい先程の事です。」

ミルアーゼの街の門前で俺はムンドに騒ぎの原因を聞かされていた。
彼の説明をまとめるとこうだ。

街に着いたムンドは宿をとり部屋で俺を待っていた時にそれは起きた。
急に外が騒がしくなり窓から顔を出すと二人組みの魔物娘が街に入ってくるのが見えたという、ムンドは慌てて宿屋から飛び出し、ここまで避難してきた所で俺が来たというわけだ。
俺は内容を頭で整理しながら彼に詳しい事を聞いてみることにした。

「その魔物の種族はわかるか?」
「いえ、何分詳しくは無いので判りませんが…特徴なら分かります、一人は馬と人が合体した様な姿で、もう一人は緑色の鱗に…尻尾が生えていました。」
「…馬の姿と尻尾か。」

正直それだけでは何ともいえないが、大体のイメージは掴めた。
二人組みで別種族ということは、彼女達は捕食とは違う何らかの目的があってここに来たのだろう。だがいったい何のために…?

そう考えていると、一人の男が馬に乗って何処かへと走り去っていった。
俺は何事かと見ていたら、ムンドは説明するかのように言った。

「あれはどうやら、近隣の街へ応援を呼びに言ったようですね。」
「応援?」
「ええ、あの方角だと…ミノス城へ行ったのでしょう、きっと王国の兵士が駆けつけてくれますよ。」
「兵士だって?!」

思わず大きな声で聞き返してしまい、周りの視線が一斉に俺達の方へと向いた。
ムンドは訳も分からず、驚いた目で俺を見ている。
俺は彼らの反応を余所に焦っていた。

まずいな…。
いくら彼女達に力があるとはいえ、沢山の兵士に取り囲まれればひとたまりも無い、しかも彼女達は街に攻め込んでいるのだ。
下手をすれば魔王が生きてるかもしれないと勇者達に気づかれるかもしれない。
兵士達が来る前に二人を何とかしないと…。

「いやぁ、これでようやく一安心ですね。私も仕事が…ってアレスさん?何処へ行かれるんです?」
「街の中に入る。」
「え!?ちょっと、アレスさん!どうして?!」

俺はムンドの制止を振り切り門前へとやって来た。
中へ入ろうとすると門番と思われる男が俺を止めたが、「魔物を退治しに来た」というとすんなりと入れてくれた、…勿論そんな事をするつもりは毛頭無いが。
後ろで門が閉まると同時に、俺は街の中心へと向かって走る。
すぐに見つかってくれると良いんだが…。


しばらくすると大きく開いた場所に出た。
噴水や腰掛などがある辺り、ここは広場なのだろう。
その広場の中心に目的の二人はいた。
彼女達の周りには戦ったと思われる剣士達が何人か倒れており、残す所あと二人といった状況だった。

「くっ、くそ!!」
「駄目だ、強すぎる。」


残った二人の剣士は息を切らしながらも剣を構えている。
対して彼女達の方は目立った外傷も無く、退屈といった様子で二人を見ていた。

「ふん、この程度か。」

彼女達の一人、リザードマンが二人の前に仁王立ちする。
もう一人の足が馬の姿をしたケンタウロスは後ろで二人を無言で威圧していた。
二人の剣士は彼女達の気迫に押され、じりじりと後ずさりする。
俺は物陰に隠れながら彼女達二人を観察した…やはり俺の想像通りの相手だった。

リザードマン、洞窟などに住んでいるトカゲの姿をした魔物娘だ。
彼女達のほとんどは戦士である事が多い、よって多様な武器を扱える。
普段は無闇に人を襲わないはずだが今回は例外のようだ。

そしてケンタウロス、草原などに生息する人間の上半身と馬の下半身を持つ魔物娘だ。
強靭な足腰で草原を駆け回り、彼女達も同様に多様な武器を使える戦士である、そして何よりも誇りを重んじている。

二人の共通点は戦士であることと、人間を無闇に襲わないことだがどうして街に攻め込んでいるんだ?
訳も分からないまま俺は二人の様子を伺い続けた。


「さて、お前たちはどうするのだ?かかって来ぬのなら、早々に立ち去るがいい!」

二人に向かってリザードマンは声を張り上げた。
倒れてる者達を見れば一目瞭然だ、たった二人で敵うはずも無い。
だが彼らは恐怖のあまり愚行を犯してしまう。

「く、くそおぉぉぉ!!」

二人は怒声を上げ、共同して彼女達へと切り掛かった。
後ろのケンタウロスが弓を引こうとするがリザードマンが手で制し、地面に突き刺してあった剣を引き抜いた。

「よろしい、剣士として散るがいい!!」

彼女はそう言うと剣を大きく横に薙ぎ払い、二人の剣士を一掃した。
吹き飛ばされた二人の剣士は呻き声を上げ地面にひれ伏してしまう。
一瞬肝を冷やしたが、彼女達も命までは取らない様で二人は気絶しているだけだった。
倒れてる剣士達も怪我をしているものの命に別状は無さそうだ。

「予定より早く終わったな。」

後ろにいたケンタウロスがリザードマンにへと話しかけた。
リザードマンは剣を納めながら答える。

「人間など取るに足らん、このような大きな街ですら我ら二人で占拠出来るのだ、我らが安息できる日もそう遠くなかろう。」
「魔王が倒されて以来、人間は付け上がり、何人もの同胞が捕らえられた。…これを機に同志を集め、宣戦布告として反旗を翻そう!」

二人の目的を聞いてしまった俺は思い悩んでしまった。
魔王が倒されたという影響はこんな所にも問題を作ってしまったようだ。
魔王を失った今、彼女達は人間に支配されてしまうとばかり危惧していたが、逆に自らが立ち上がり人間に復讐しようと考えるものも出てきてしまった。
当然といえば当然だ、人間だって同じ事をするだろう。
だがその結末は決まって両方の破滅だ、じきに魔物と人間が戦争を起こしてしまう。
それだけは何としても阻止しなければ…。

「他に立ち向かってくるものはいないか?!いないのであれば、屈服したとみなしこの街を我らのものとするぞ!!」

リザードマンが痺れを切らし、街全体を見渡しながら宣告した。
…今こうして見ていても何も変わらない。
だったら、行くのは今しかない。




「では、今日よりここは我らが―」
「待て、あれを見ろ。」

ケンタウロスが向かってくる何かを指差した。

それは彼女達の前にゆっくりと姿を現す男。

魔物に淡々と向かってくる姿はまさに勇者。

だが彼はこう答えるだろう。

俺は勇者などではない。

では何かと問われればまた彼は答える。

ただ、一人の『夫』だと。



彼女達は俺を見るなり「ほぅ」と感嘆した。

「人間にしては中々勇ましい奴だ、勇気は認めよう。…だが我らに楯突く以上、それなりの覚悟はあるのだろうな?」
「ああ、俺は聞き分けの悪い娘に親に代わってお灸を添えてやろうと思ってな。」
「いい度胸だ、私を失望させるなよ?」

そう言って彼女、リザードマンは剣を抜いた。

「レイ、手を出すな?こいつは私一人で倒す。」
「分かった。…リザ、油断するな。」

彼女、レイと呼ばれたケンタウロスは数歩下がり、戦いを見守ろうとするものの、その眼光は明らかに俺へと向けられていた。
俺が何かおかしなことをしでかそうとすれば、確実に打って出るだろう、そんな目だ。

「さあ待たせたな、武器を取るがいい!」
「生憎、今俺は武器を持ってないんだ。」
「なんだと?武器も無しに私と戦うつもりか?」
「いや?時と場によって変わる、それに幸運にも…。」

俺は周りにある目ぼしい物を見渡す。
剣士達が使っていた剣、槍、盾、そして兜、十分だ。

「不自由はし無さそうだ。」
「…それも良かろう、どこからでもかかってこい!」

リザは剣を構え、戦闘態勢へと入る。
ここからが本番だ。
俺は近くにある剣を拾いながらも状況を整理する。

さっきから気づいていたが、こいつは決闘やら正々堂々が大好きな性分らしい。
戦士として生きてきた為か、戦いは全てそれで成り立っていると勘違いしている。
そういうお堅い奴に判らせるとっておきの方法がある。
それはやはり…。

俺は剣を構えゆっくりと近づき…。

ガンッ!!

「汚い手に限る!!」

近くにあった兜を彼女に向かって思い切り蹴飛ばした!!

「くっ、小癪な真似を!」

彼女は飛んできた兜を訳も無く両断した。
その隙に俺は彼女に急接近し剣を振り下ろしたが…。

「甘いっ!!」

彼女はすばやく剣を構え、俺の隙を突いた攻撃を受け止めた。
二人の間でつば競り合いが起きる。

「残念だったな、私にそのような小細工など効かぬぞ?」
「だろうな、だが“二つ目”は効いたようだ。…足をすくわれるぞ?」
「?!」

リザはその言葉に反射的にも下を向いてしまう。
その彼女が見たものは急速に接近してくる俺の脚だった。

「ぐぅっ!!」

顎を蹴り上げられ、リザは大きく後ろへと仰け反った。
俺は不敵な笑みを浮かべながら彼女に言った。

「ほら、効いた。」

リザは体勢を崩しながらも倒れまいとその場に留まった。
彼女の顎が赤く腫れ上がるのをみて俺は少し心に痛みを感じた。

「卑怯者め、許さんぞ!!」

後ろで見ていたレイが怒声を上げ、俺に弓を引こうとしたがリザは無言でそれを制した。

「リザ、どうして?!」
「これは一対一の勝負だ、私に恥をかかせないでくれ!」
「!…すまない。」

レイはゆっくりと弓を下ろし俺を睨み付けたが、俺はひらひらと手を振り気にもしないという合図をする。

「さすが人間だ、我々に敵わないと知って卑怯な手に出るとはつくづく愚かな種族だ。」
「言うのは構わないが、それに翻弄されるお前はなんなんだ?」
「ふん、同じ手は二度は通じぬ!」

言うと同時にリザは俺との距離を一瞬で縮め、剣を横へと薙ぎ払う。
俺は傍にあった槍と盾を拾い上げ、彼女の攻撃を盾で防いだ。
彼女の攻撃がひしひしと伝わり、鉄の盾が大きく拉げた。
これが彼女達の力か…。
俺が心の中でそっと賞賛していると、彼女は続けて打ってくる。

「はぁっ!!」

彼女は盾を貫く勢いで鋭い突きを放ってきた。
俺は瞬時に盾を構え防御の態勢を取る。
不意に彼女は勝ち誇った笑みを浮かべる。

「貰った!!」

勢い付いた彼女の剣は容易く盾を貫通し、鉄の破れる音と共に俺の身体に深々と突き刺さる…、とリザは確信していた。
彼女の思い通りに盾は貫通した。
だが…。
「?!」

リザは信じられないという様子で目を見開く。
何故なら、彼女の目の前にいた筈の男が忽然と消えていたからだ。
残されたのは無残にも貫かれた盾と、虚空を突く剣のみであった。
押し戻されていた筈の力が急になくなった為に、彼女は前へと躓いてしまう。
その瞬間、彼女の尻尾の下、所謂お尻から乾いた音が鳴り響き全身に刺激が走った。

「ひゃあっ?!」

素っ頓狂な声を上げ、リザの身体は大きく反り返った。
彼女の目の前にいた筈の男はいつの間にか後ろへと回り込み、槍の持ち手の部分でお尻を引っ叩いたのだ。


俺はそのまま槍を投げ捨て、彼女の様子を見る。
予想外の痛みと恥ずかしさにまだ叩かれたままの状態だ。
後ろから「卑劣な…。」という声が聞こえたが聞こえない事にする。

「なんだ、可愛い声出せるんじゃないか、剣士より“そっち”のほうが向いているんじゃないか?」

俺は彼女に挑発の言葉をかけた。
…そろそろ来てもいい頃なんだが。

そう思っているとリザに変化が現れた。

「貴様…。」

憎しみが込められた言葉と眼光を込めて、リザが振り向く。
その姿はまさに怒り狂った猛獣の様だった。
尻尾を大きく下に叩きつけ、轟音と共に拉げた盾が鉄屑へと変わっていく。

いいぞ、その調子だ。
お堅い奴を乱すには怒らせるのが一番だ、後は全力で来る一撃を待つのみ。
俺は追い討ちをかける様にして続ける。

「ほらどうした?早く来いよ、…“お嬢さん”?」

プチン。

彼女から何かが切れる音がした。

「がぁぁぁっっ!!!」

怒声と共にリザは俺へと真っ直ぐに突進してきた。
俺はここぞとばかりに身構え、両手を頭の前にへと出す。

そして彼女は思い切り剣を振り下ろした!!



「な、な…。」
「なんだと…。」

リザ自身、後ろで見ていたレイの二人の思考がとまった。
見た事も無い、ありえない光景が目の前で起きたからだ。

勢い良く振り下ろされた剣は、

「…。」

彼、アレスの両手で挟み込まれ、受け止められていたのだ。


リザは俺の行動にまだ実感が湧いていないようだった。
それはそうだ、俺も知ったときはそんな顔をしたよ。

ロークシナの村で、ジパングから来た旅芸人に俺はある“業”を教えられた。
手を水平に開き、剣が頭上から振り下ろされる瞬間、挟み込む様にして受け止める防衛方法だ。
確か名前は、真剣しら…忘れてしまった。
だが我ながら良く成功したものだ。
あと少しでも遅かったら、頭は真っ二つになっていただろう。

俺はそのまま受け止めた剣を水平に下ろしていく。

「くっ!!」

彼女はハッと自我を取り戻し剣を引き抜こうとしが、歯を食いしばり渾身の力を込めても剣はぴくりともせず、ゆっくりと下ろされていく。

剣が真横へと到達すると俺はリザに顔を近づけた。
息が触れ合う位置まできて、俺は彼女へ語りかける。

「いいかお嬢さん、いや、リザ。」

名前を呼ばれた彼女は露骨に反応して俺を見た。
澄んだ、真っ直ぐな瞳だ。
その黄色い瞳を見つめながら俺は話を続ける。

「決闘やらなんたらをするのは勝手だが、相手も同じ条件で戦うとは限らない。…それは生きるもの全てに言える事だ、正々堂々なんて関係ない。それを卑怯だの卑劣など罵る方がお門違いだ、戦いというのは常に…。」

俺はそこで言葉を切り、リザの足を引っ掛け後ろに転ばせた。
彼女は後ろに倒れ尻餅をついてしまい、その首元へと俺は剣を向け言葉を繋いだ。

「勝つか負けるか、だろ?」

俺は笑いかけながら彼女へと問う。
彼女の顔には悔しさや怒りなどという感情は無く、逆に清清しいといった面持ちをしていた。
その後、俺にはもう勝てないと悟り「参った」と呟いた。

後ろにいたレイが複雑な心境で何かを言おうとした時、遠くから勢い良く門が開かれる音がした!
続けて何頭もの馬の足音がこちらに向かってくる。
俺はハッとなりレイに向かって叫んだ。

「くそ、忘れてたっ!レイ逃げろ!!」
「な、いきなりなんだ?!」

いきなり叫ばれたレイは訳も分からずあたふたとしていた。
その間に兵士達が広場にへと到達し俺達を見つける。

「いたぞ、あそこだ!!」

兵士達が近づいてくる…このままでは皆捕まってしまう!

「いいから行けっ!!」
「くっ、リザ…すまない!」

レイは風を切るようにして反対側へと走り抜けていった。
俺は倒れているリザを抱きかかえ、そのまま路地にへと走る。

「な、なな、なにをしている?!」
「うるせぇ、だまってろっ!!」

リザに一喝しながら俺は追っ手を振り切る。

「一匹出口に向かったぞ、追え!!」
「もう一匹はこの近くだ、探し出して仕留めろ!」
「絶対に逃がすな!!」

後ろで兵達が騒いでいる。
どうやらレイは無事に逃げているようだ。
だがこちらにも追っ手は来ている、どこかに隠れないと…。

角を曲がった所で適当な建物に目を付けた。
何の建物かは分からないがこの際だ、言ってられない。
俺は勢いのままに扉を蹴破り転げるようにして中に入る。
辺りを確認したが、幸いここの主は避難した後らしく中はしんと静まり返っていた。
俺はリザを下ろし、急いで扉を閉め鍵をかける。
外からは俺を追ってきた兵士達が慌しく通り過ぎていく。

「逃がすな!!」
「行け、行けぇ!!」
「…。」


…しばらくして、辺りから足音は聞こえなくなった。

「…何とか振り切ったな。」

俺はその場に座り込み、脱力した。
改めて見てみると目の前にカウンターと奥へと続く部屋と階段が見えた、ここはどうやら宿屋だったらしい。
せっかくだし部屋に行って休ませてもらおう、宿代は後で払えばいいか。
俺は身体に鞭を打ち、疲れている身体を無理やり立ち上がらせた。
…ふと、リザが俺の方をじっと見ていたので首をかしげながら聞くと、彼女は首をぶんぶんと振って「なんでもない」と否定した、気になるが…まあいいだろう。

「リザ、外はまだ兵士がうろついている、下手に出るよりここで隠れている方が安全だ。」
「…。」
「幸いここは宿屋だ、寝泊りする部屋もある、食事は…まあ何とかなるだろう。」
「…。」
「レイもきっと無事だろうし、後で合流できるから心配するな?」
「…。」
「…そんなに俺が嫌いか?」
「へ?!いや、そういうわけでは…。」

俺がウンザリしながらも聞くと彼女は慌てて否定をする。
一体何なんだ?訳が分からない。
とりあえず俺は階段へと上り始めた。
後ろからリザがいそいそとついて来る、顔は伏せていたが尻尾はゆっくりと横に振っている。
彼女達を見て分かった事だが、尻尾やらなんやらの動きはその時の感情を表してるようだ。
今は…喜んでる?

部屋に着くと俺は荷物を置き、椅子に座る。
リザはちょこんとベッドに腰掛け、何処か落ち着かない様子 でこちらを見つめていた。

「なにか飲むか?お茶ぐらいなら作れるが。」
「…。」
「いらないのか。」
「…いる。」

彼女は呟くようにして答えた、さっきから様子が変だがまあ無理も無いか。
…こんなことならもっと劇的な出会いが欲しかったな。
俺はそう思いながらもお茶を彼女へと渡す、これは俺が一番好きな女将さんの作ったお茶だ。
俺も淹れたてのお茶に口をつける、やはりこのお茶が一番好きだ。

「なぜ…。」

不意に彼女が口を開いた。

「なぜ、私を助けたのだ?」
「なぜって…。」

彼女は顔を伏せ俺に聞いた、なぜ助けたのかと?

「私はお前たち人間を支配しようとしたのだぞ?何故なんだ?」
「…そうだな、あるとすれば…。」

そういって俺は立ち上がり彼女の前に屈み、丁度顔が正面に来て彼女の目をみながら答えた。

「お前を気に入ったから。」
「き、気に入った?」

彼女は目を瞬かせて俺を見た、その黄色い瞳は少し熱を帯びている様に見えた。
俺は頷きながら答える。

「お前と戦ってるとき、最初は逃がすつもりでいたんだが気が変わった。」
「逃がす?私たちをか?」
「兵士が来ると聞いたからな、いくらお前たちでも囲まれたらひとたまりも無いだろう?だから説得して逃がそうと思った、だが戦って少しずつお前が分かってきた。」
「…どんな風に?」
「正義感があり、意思が強かった、剣にその思いが込められてたよ。」

彼女と剣を合わせて分かったことだ。確かに彼女は人間を嫌ってはいるが殺そうとはしない、そして同胞を救う為に全力で立ち向かう。
そんな彼女を俺は少し親近感を感じた。
彼女なら、俺を理解してくれるかもしれない。
だから俺は気に入った、いや…。

「だから、俺はお前に惚れた。」
「ほ、惚れた!?」

彼女は俺の言葉を聞いて顔を真っ赤にした。
俺はそのまま彼女に近づいていく。

「リザ、お前が好きになったよ。」
「わ、私は…きゃっ!」

俺はそのまま彼女をベッドにへと押し倒した。
彼女は声を上げながらも抵抗もせず、身を任せていた。
彼女と目が合う。
見つめられた彼女は顔を赤くし顔を背けるが、俺はそれを阻止するように顔をこちらへと向かわせる。
彼女の息が段々と荒くなっていく。

「ほ、本当に私でいいのか…私とお前は、今日会ったばかりなのだぞ…?」
「ああ、俺はそれで十分だ。お前は嫌か?」
「私は、強い男は…好きだ、お前なら…嫌ではない。」
「それは良かった、じゃあ…。」
「ま、待ってくれ、お前の名前は…?」
「あ、言ってなかったか?…アレスだ。」
「ア、アレス、私は…。」

彼女の頬は赤みが増し、目を泳がしながら何かを言いかける。
俺は彼女の言葉より先に思いを伝えた。

「リザ、俺の妻になってくれ。」

そういった瞬間彼女の理性は砕け、押し倒していたはずの俺はいつの間にか押し倒される形になっていた。
どうやら先程まで我慢して耐えていたようだ。

「アレス!!私、私は!」

彼女は俺の上に跨り服を捲りあげた。
服の上からでもわかるぐらいにゆさゆさと揺れる乳房が現れ、俺を魅了した。
顔は淫靡に満ち、息を荒げ、尻尾を勢い良く振っている。
俺はそれに答えるように彼女の胸を優しく触った。

「んぐ、はぁっ、駄目!…乳首、よわ…んんっ!」

ゆっくりと揉み解していき乳首も同様に弄っていく。
彼女は身体を震わせ、快感に身を委ねている。
俺はその姿に興奮し、彼女の陰部に俺の肉棒を擦り付けた。

「んん、下着の上からでも、敏感に、感じて…。」

布の上からでも分かるくらい彼女は濡れていた。
俺がそのまま擦り付けていると、彼女は我慢できなくなり俺の下着の中へと手を入れた。
激しく盛る肉棒を握り、淫らにしごいてきた。

「私の身体で、こんなに硬くなって、そんなに私が、んっ、良いのか?」
「だったら好きなんか、言わないだろう?」
「ふふ、もう、私も、欲しくなって、ん、きたっ。」

彼女は俺の前でゆっくりと下着を脱いだ。
下着からは糸が引き、陰部は綺麗なピンク色をしていた。
彼女はいやらしくその口を指で弄り、愛液を滴らせた。

「もう、我慢できない、挿れるぞ…?」
「あ、ああ。」

促されるまま彼女はゆっくりと腰を下ろし、俺の盛る肉棒を陰部へ咥え込んでいく。
入るたびにいやらしい水の音を鳴らし、俺の肉棒を滑らかにする。
彼女は勢い良く上下に腰を振り、快楽に満ちた顔をした。

「あんっ、いい、良いぞ、アレス、私を、もっと、激しく。」
「うう、こいつは、すごいな。」

俺は予想外の快楽に我慢しようと身体を起こし、彼女を強く抱きしめた。
彼女の柔らかな胸が当たり、彼女の髪の香りが俺を恍惚とさせた。

「はぅっ!そんなに、抱きしめたら、感じ、ひゃあっ!!」

俺は彼女の後ろ、刺激でぴんとした尻尾を握った。
そのまま手をするすると下に持っていき、付け根の方まで優しく触っていく。

「だ、駄目!尻尾は、尻尾はよわ…ん!!」
「うわ、馬鹿、締め付けすぎ…うわぁ!」

尻尾を触った途端、彼女の蜜壷は締め付けを増し、俺の肉棒を刺激した。
刺激を受けた肉棒はいとも簡単に射精してしまう。

「あぁ、私の、中に、入って来ている…。アレスのいやらしい液が、私の中に…。」

二人は絶頂を向かえ共にベットへと倒れこんだ。
息を整え、互いに体温を感じる。

「はぁ、はぁ、アレス。」
「なんだ、リザ?」

彼女は俺の方へ向き頬を赤らめて言った。

「お前が、好きだ。」
「俺もだ。」

そう言って、彼女に口づけをした。



「魔王様が、私たちの為に…。」

俺はリザにこれまでの経緯を話した。
彼女は俺の話を聞き顎に手を当てて考えている。
俺は少し気になったので聞いてみた。

「俺の事、幻滅したか?」
「他に、妻がいたことがか?」
「ああ、後悔はしない事にしたが、聞いておこうと思ってな。」
「私たちの事を思ってしてくれたなら問題ない。それに私に言った言葉は、嘘ではないのであろう?」
「当たり前だ、俺はそういう事は嘘は付かない。」
「それなら…いい、後、私も聞いてもいいか?」

リザは唐突に俺に問いかけるように言った。

「どうして最初に魔王様の任だと言わなかったのだ?」
「魔王の任?」
「そうだ、あの時お前が魔王の任で来たと言えば私もすんなり受け入れていたかもしれない、なぜ先に告白したのだ?」

なるほど、確かに魔王の命令だと聞けば彼女達も嫌とは言えない。そっちの方が楽だし効率もいいと彼女は考えたのだろう。
それは勿論俺も考えていた、だが…。

「俺には出来なかった。」
「出来なかった?何故?」
「魔王の命だといえばお前たちは従ってくれるだろう、だがそれは命であって俺を気に入ったからではない、そんな状態で妻にするなんていったら、誘拐して強姦するようなものだ。」
「だが、それは私たちでも似たような事をする奴もいるぞ?」
「それはそれだ、俺は自分で妻を選びたい。つまり…。」

そういって彼女の方へ向き答えた。

「俺は好きな相手を妻にしたい。」
「…!!」

そういった途端リザは顔を伏せた。
どうしたと思ってみていると急にもじもじとし始めた。
後ろの尻尾を見ると嬉しそうに左右に振っていた、これは確か…。

「リザ…まさか。」
「お前のせいだぞ…。」

そう言ってリザは俺をベッドへと無理やり座らせた。
彼女の頬は赤く染まり、腰をくねくねと動かした。
どうやら、俺の言葉に発情したようだ。

「お前が、あ、あんな事言うから、またそ、その気になってしまったではないか、責任とって、今度はお前が私を、お、犯せ。」
「お前何言って…。」
「こ、こんな恥ずかしい事を言わせて、生殺しにする気か!は、早く犯せ!!」

そう言って彼女は後ろ向き、手を付いて引き締まったお尻を突き出してきた。
尻尾は大きく揺れ、掴んでくださいとばかりに訴えかけていた。
そこには蜜壷が涎を垂らし俺の肉棒を求め、ひくひくとさせている。

「これは…難儀しそうだ。」

苦笑いするもその言葉に反して俺の肉棒は盛り、彼女を求めた。
俺はその様子を見て、悔しさ紛れに彼女の尻を叩いた。
乾いた音と共に彼女の身体は跳ね、可愛い声を出す。
不意に彼女が後ろを振り向きこう言った。

「んんっ、もっと、強く叩いて、くれないか?」

何かに目覚めてしまったようだ。
俺は苦笑しながらも挿入し、願い通りに叩いてあげた。



快楽に発狂した彼女をヴェンの所へ送ったのはそれから二回した後だった。
さすがにもう勘弁して欲しい。
誰もいなくなった部屋から出て、カウンターに代金を置き宿屋を後にした。
外に出ると騒ぎは収まっており、ちらほらと街の住人の姿が見えた。
とりあえずほっと一息つき、街の中心へと歩き出した。

リザの仲間、レイも探さないといけないな。
また戦う事にならなければ良いが…。
そう思いながら俺は広場へとたどり着いた。




11/08/06 16:58更新 / ひげ親父
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■作者メッセージ

大変長くなってしまい申し訳ありませんでした。
後編と読みきり作品は現在作成中でございます。
なるべく早くあげたいと思っておりますのでまた読んでくださるとありがたいです。

ここまで読んでいただきありがとうございました!!

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