読切小説
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鋼の血液、炎の身体
真夜中の墓場。
そんな場所にいては、異形の輩にでも襲われてしまいそうだ。
しかし、その真ん中。
そこにいた少年……
金剛健は、それすら望んでいた。
その目は失意に満ちており、口からは自分への呪詛ばかりが溢れていた。
実際、彼が身につけている衣装は、全て襲われる為の物と言って良かった。
髪は暗闇で目立つように脱色されており、服はカルト組織である《教団》の上の連中が他の誰かを身代わりにするときに使う《魔寄せ》の術式が組まれた物、そして身体には魔物の好む、魔界の瘴気を振りかけていた。
そう、つまり彼は自殺をしに来たのである。
そんな絶好のコンディションの中。
彼は、自分への殺意に満ちた、異常な程に低い声を上げた。
「おい、こんな所に人が倒れているぞ!」
しかし、まだ魔物は来ない。
「おい、人が倒れているぞ!」
「人がぶっ倒れてる!」
「おい、とりあえず置いてくからな!」
……とりあえず、ひたすらに叫んだあと、自演で倒れた。
しかし、だれも来ない。
「おい、人が」
「あ……あなた……タケちゃん?」
よし、ようやく魔物が来た。
彼は拳を握りしめ、そのまま彼女に話しかけた。
「なあ、早く俺を殺してくれ!」
「な、何言っているの?」
再び、話しかける。
「ああ、俺は死にに来たんだ!教団の奴らが、魔物は人をころ…」
「タケちゃん!」
しかし、その言葉は、途中で止まった。
彼女が、自らの檻に彼を閉じ込め、炎で口を塞いだのだ。
「……そんなに私がキライ?」
「さっき会ったばかりじゃないか。嫌むぐぅ⁉」
すると、今度は炎ではなく、唇で口を塞がれた。
否……それだけでなく、彼女は激しく、彼の口の中をしゃぶり始めた。
そんな突然の激しいキスに童貞の健が耐え切れる筈もなく、彼は思わず股間を大きくしてしまった。
しかし、キスはなかなか終わらない。
いい加減に健の頭の処理が追いつかなくなって、そのまま約6分。
ようやく彼女は、健の口から、名残惜しそうに舌を引き抜いた。
健がとろん、とした目になっているが、それに構わずに彼女は続けた。
「ねぇ、タケちゃんは…私を覚えてないの?」
「う…へ?ごめんなさい…」
彼の思考が止まりかけた脳は、既に一つの可能性を見出していた。
しかし、彼はそれを打ち消した。
その人は……既に死んだ筈なのである。
しかし、彼女は冷たい笑みを浮かべると、そっと耳打ちした。
「そう……やっぱり。」
「ごめん、だから、はなしてぇ…」
彼の、命乞いにも似た言葉。
しかし彼女は今度は憎悪にも似た表情を浮かべ、彼を睨みつけた。
「私が死ぬ時…!絶対忘れないって言ったのに!どうせ、タケちゃんはただの幼馴染の私なんてどうでも良かったんだ!」
「まって、ぇ、ねぇ、まさか、春香ねぇさん…?」
慌てて彼は彼女の名前を呼ぶも、遅い。
「今更遅いから。タケちゃんは有罪!終身なんて訪れないけど、終身刑だよ!」
「まって、おれが、わるかったからぁ…」
抵抗しようとする健。しかし、一瞬で組み伏せられてしまった。
そのまま彼女は乱暴に彼の服を引き裂くと、その怒張に自らの秘所をあてがった。
あれに飲み込まれたら、戻れない。
そう思った彼が、抵抗を再び始めようと……
する隙さえ与えず、彼女は腰を下ろした。
「あがぁ⁉」
「あはぁ♡」
思考がショートする。
ひたすらに熱く、狭く、柔らかい彼女の秘所が、俺のモノを一気に奥まで咥え込んだ。
耐えきれず、俺はホースのような勢いで、彼女の中に射精する。
「ふふ……そうだよね?私を忘れたのは、私以外の人と沢山出会ったからだよね?」
「ひ、ひゅ、はぇ?」
上気した頬。
彼女は小刻みに絶頂しながらも、ニッ、といつかのように笑い……
「はぁ…これからは、私だけのものだからね…タケちゃん♡」
わかっている。
これに頷けば、もう家には帰れないとも。
人間では無くなってしまう事も。
死んでも解放されない、彼女という檻に囚われることを。
しかし、彼には。
「うん…そう、だね、春香ねぇ!」
その狂気の愛を、受け入れる以外の事は、考える事など出来なかった。
そのまま、彼らは二人で溺れて行く。

突然消えた一人の少年を知る者は、今となっては、一人しかいない。
18/08/01 23:44更新 / 魔物兄貴♂×3‼

■作者メッセージ
ヤンデレ、好きだったので書きました。
ラストが少し雑な気もしたので、後日談書くかもしれません。

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