連載小説
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種付けおぢさん ― 汚ねぇアへ顔 ―

― 佐藤正商事 ―

数年前はただの木っ端商事だったが、早くに「外地」― 魔界 ― と取引することにより大企業へと成長した。
その為社員も魔物娘やインキュバスが人間の社員よりも多い。
社内を見渡せば愛する夫と一緒に働く魔物娘の姿。
社員同士が愛の言葉を交わすにつれ室内に立ち込めるピンク色ガス!
こんなところにいればただの人間でさえ・・・

「部長・・・どうも〜レッサーサキュバスになったようで有給使います〜一週間ほど〜」

・・・・ほら言わんこっちゃない。

そんな部下を憎々しく見る「大久 武多」 ― 通称オーク部長 ―。

〜 畜生!どいつもこいつも性の喜び知りやがって!〜

この大久は人一倍僻み易い性格でおまけにその性根は下劣。
そんなクズ人間に魔物娘は靡かない。
何せ、ある意味花嫁斡旋所と言える魔物娘のいるソープでさえ入店拒否されるくらいだ。
魔物娘でも選ぶ権利くらいはある。
そんな彼が人の幸福を奪い取るような真似をするのは必然だった。

― 斎藤 彰 ―

イケメンでスポーツ万能、おまけに性格も良好。
大久の真逆の好青年。
彼のルサンチマンが高まる。
まず新婚気分の彰を理由をつけて「外地」へ島流し。
現地に雇ったチンピラを送り込み彰を拘束。
連絡は外地でも使える魔力機関組み込み済みの携帯で送られる手はずだ。
魔物娘がいくら身体機能に優れてもいても所詮は雌。
大切な旦那様の首筋にナイフが突きつけられたら言いなりになるはずだ。
明日は休日。

〜 一晩使って壊してやる 〜

下衆な笑みを隠しながら大久は会社を後にした。


「はぁ・・・・・・」

広いダイニングに一人の女性の溜息が響く。
彼女の名前は「若葉 響」。
亜麻色の髪と牛の角と尻尾を持った魔物娘「ホルスタウロス」だ。
彼女はつい一か月前に幼馴染の彰と結婚したばかり、つまりは新婚ほやほや。
しかし、愛しの彰は今異界のボローヴェに単身赴任中。
寂しい一人寝を自らで慰めるのも一回や二回ではない。

ピンポーン!

「はいはーい!!」

彼女がドアを開けると、そこには彰ではなく大久が立っていた。

「いやぁ奥さん悪いねぇ。急に押しかけて」

若葉はこの男が好きになれなかった。
彼は女性をモノとしか見ていない。
今も彼女の胸を何度も嫌らしく見ている。
今すぐ叩出したいが、夫の上司だ。
薄っぺらな笑顔で応対する。

「急に単身赴任なんて頼むことになってしまって、新婚なのに申し訳ないね」

〜 そろそろ頃合いだな 〜

スマートフォンの呼び出し音が鳴る。
大久が自らのスマートフォンを見るが着信はない。

「彰くん!心配していたんだから!私、彰くんの身にもしものことがあったら・・・・。えっ!テロリストが捕まった?」

大久のスマートフォンが鳴る。

〜 来たな! 〜

大久がスマートフォンを見る。
そこには・・・・

― イェーイ おっさん見てるぅ〜? ―
― 俺たち逆に捕まっちまって、引き渡された自警団のオーガやデュラハンにたっぷり調教されちゃった。キャハ ―
― このまま此処に永住するから、もらった金は返せないわ御免ねぇ〜wwww ―

全裸のオーガ、デュラハン、etcに囲まれる人相の悪い三人組。
「変態」だの「中出し中毒」と全身に落書きされアへ顔ダブルピースをするその醜悪な姿に吐き気を催す。
彼は今すぐ逃げるべきだった。
彰の身が無事で、若葉に電話をかけてきたということは・・・・

ヒュッン!

大久は今自分がどのような状態になっているのか最初理解できなかった。
痛みとともに意識がクリアーとなる。
彼は一瞬にして壁際まで投げ飛ばされたのだ。
骨が折れるということはないが、軽いショック状態で起き上がれない。
そんな彼を若葉は見下ろしていた。

「インキュバスって知ってる?」

― インキュバス ―
魔物娘と番った人間がなる存在。
魔物娘の性欲を受け止めるようになる。
寿命が延びる。
だが、それだけではない。
戦闘力も上がるのだ。
ナイフや銃器をへし折ることすら造作もない。
愛する者を守るために。

「思い出すわ。旅立ちの前、必死に交わりインキュバスになってくれた彰くんの姿。やっぱり備えは必要ね・・・・」

今更ながらに大久は旅立つ前に彰が一週間ほど有給を使っていたことを思い出した。

「ま、待て!確か魔物娘は人を傷つけないんだろ!」

「ええ・・・・。でもそれはね」

見ると若葉の角に金属の付け角が付けられていた。

「傷つけなければ何でもするってことだよ!!!」

若葉は角を大久に向け地面を蹴った。

― 魔界銀 ―
魔界で採掘される特殊鋼で、この特性は人を傷つけないこと。
この魔界銀で作られた武器で傷つけられると「精」と呼ばれる生命エネルギーを損なう。
わかりやすく言えば・・・・・

「あへぇ〜〜〜」

身体から力が抜け、腰砕けになり行動不能になってしまうのだ。
ピンク色に上気した肌。
涙や涎、鼻水を垂れ流し白目を剥いた大久の姿。
なぜだかダブルピースをしている。
剛の者が多いミノタウロスを原種とするホルスタウロスの「頭突き」を食らったのだ。
魔界銀製の付け角の一撃で失った「精」も並大抵の量ではない。

「汚ねぇアへ顔」

若葉はそう吐き捨てると写真を数枚撮り、何処かへと電話をする。

「ああ、私若葉。グランマ、ノノちゃんってまだいる?ホラゾンビの。ちょうどいいお婿さんが見つかったから回収に来てほしんだけど。今すぐ?ええ大丈夫よ」

若葉は電話を切ると汚ねぇアへ顔の大久に近づく。

「家族が増えるよ!やったね豚ちゃん!!」


数日後

ピンポーン!

チャイムが鳴る。
今の彼女とっては聞きなれたそれも凱歌のように聞こえる。
若葉は喜び勇んでドアを開け放つ。

「おかえりなさい!!!彰くん!!!」











17/09/29 21:45更新 / 法螺男
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