読切小説
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幸福な猫
「にゃんにゃー起きるにゃ」

ボスンと何かが俺が寝ている布団の上に飛び乗ってきた。その衝撃で起きはしたが布団の魔力にはかなわなかった。

「おーきーるーにゃー」

彼女はぷにぷにとした肉球をぺちぺちと俺の顔に何度も押し付けてくる、これはこれで気持ち良くて余計に起きる意思が消えていく。

「寝てるにゃ?だったら……」

肉球攻撃が止んだ、あきらめたのか?そう思ったときだった。

「のわっ!?」

俺の首筋を彼女のざらついた舌で舐められて変な声が出たと同時に飛び起きてしまった。

「起きてるんじゃないかにゃ!」
「休日くらい自由に寝かせろ!」
「にゃ?お前はボクのものにゃんだからボクにあわせるのは当然にゃ、まぁいいにゃ起きたからご褒美にボクの肉球をぷにぷにする権利をあげるにゃ」
「あーちょっと待ってくれ」

俺は机に置いてあるメモ帳を開きペラペラとめくる。
ある程度めくると【小学2年、にくきゅうをプニプニするけんり】と言う記述がある。

「その権利はもう貰ってるわ」
「にゃにゃ!?だったらボクのほっぺをつんつんする権利にゃ」

俺は再びメモ帳をめくる【小学4年、ほっぺをつんつんする権利】と書いてあるページも見つけた。

「あーそれもある」
「にゃんと!?……そのメモ帳はなんなのにゃ?」
「これ?これは今までお前から貰った権利を全部書いてあるだけだから」
「にゃ!!だったらそれを貸すにゃ」

ほとんど奪われる形で俺はメモ帳を真央に渡した。

「にゃー!?これにゃあボクはほとんどお前のものじゃにゃいか」
「すぐにお礼代わりに権利なんか渡すからだろ」
「だって、ご褒美をあげるのは主人の役目にゃ……これにゃお前にあげるご褒美がないにゃ」

真央がそばにいてくれるだけで十分ご褒美だよと内心思いつつ、ちょっと意地悪を思いついた。

「だったら真央の夫になる権利でも……なんて」
「にゃそれで良いにゃらあげるにゃ……にゃ!?今にゃんて言ったにゃ!?」
「やった、もーらい♪」

まさか貰えるとは思わなかったがちゃんとメモに書いておかなくては。

「にゃー!!ボクでいいのにゃ?」
「何が?」
「にゃぁ……その、勝人の奥さんのことにゃ」

困り顔で尋ねてくる真央……やべぇ、めっちゃかわいい。

「真央が嫌ならもちろん返すけど」
「にゃん!?嫌じゃにゃいにゃ!!」

真央の尻尾はピンと張り嬉しそうにしている。

「にゃおん♪」

真央は喉をゴロゴロと鳴らしながら俺に抱きついて顔をすりすりと押し付けてご満悦だった。

「なぁ、それって何か意味あるのか?」
「勝人がボクのものだってマーキングしてるのにゃん♪ あれ、でもボクは勝人のものにゃから……にゃにゃにゃ?」

頭を抱えながら転がる真央を見ながらメモ帳を拾い上げる。
長い付き合いだったけどこのメモ帳ももう要らないか、もうこんな約束がなくてもお互いがお互いのものなんだから。
俺はそれを引き出しに入れて鍵をかける、そして真央を抱き上げてベッドへとダイブした。
15/03/05 00:36更新 / アンノウン

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