『デルフィニウム』on Air! BACK

私達の宿『デルフィニウム』は、主におねぇさまが世界の壁や時空の壁やメタな境界まで飛び越える所為で、色々な珍品奇品が揃っていたりする。
大半はこちらでは使えないものだけど……たまに使えるように独自に改造したり、改良したり出来る物を持ってくることもある。
そうした物を改造するのは、大半はルミルサバトのSFスキーや、建築担当ジャイアントアント達からこの宿のことを耳にしたドワーフ達のギルド『趣味人(しゅみんちゅ)』。だけど時折、とあるジャンルを中心に、ある人物が徹底改造したりするのだ。

音に関わるものなら何でも御座れ、エクスタシーミュージックを追求してる(本人談)音狂いサキュバス――'DJ'。

彼女の手に掛かればスクロールの音楽の切り貼りや合わせ技、あとリミックスまでお手の物だったりする。それだけでなく、宿の音響や放送器具の設置まで担当する、音のスペシャリストなのだ――だからこそ、盗聴器設置は自重して欲しい。だからケイさんとは犬猿の仲というか、淫猫の仲というか。

で、そんな'DJ'が、最近何か部屋でやっているらしい。数日前におねぇさまがどっかしらから持ち込んだ、ツマミと棒の付いた箱のようなものを渡されていたから、それをいじっているんだろうか。
それともまた盗聴しているんだろうか。ニカとアリスちゃんの部屋に置いてあったときに散々『教育指導』したというのに、まだ反省していないのか……まぁ、反省したら'DJ'じゃないけど。また置かれているし。
業務開始三時間前から一時間ほど部屋に籠もって何かしている……怪しいけど、プライバシーに触れるわけにもいかないし……業務には影響出ていないしねぇ。
まぁ、軽く訊いてみるのもいいかな?

――――――

「'DJ'はんの所に向かわれますの?せやったら此方、差し入れが届いとりますんで渡しといてくれまへんか?」
「――差し入れ?」
ちょっと待て私はそんなもの受け取った覚えはないぞ?基本受領物は私を中継して送られる形式にはなっている。おねぇさま宛だったら兎も角、'DJ'宛は私が関知してなきゃいけなかった筈よ?
私の疑問と不審な視線に、オヂヤさんは台所で葱を切り、それをお椀に注がれた豚汁の上にぱらぱらと散らしながら……驚いたように言った。
「あら、聴いてはれへんのですか?'DJ'はん、オーナーの許可を貰て、'ラヂヲ番組'なるものを始めた言うてましたよ?
あ、豚汁頂きます?」
「……全く、聞いてないわ。あと豚汁は頂くわね」
お椀を受け取って、熱さに苦戦しつつも頂きつつ、私は呆れたように返した。何やってんのよ'DJ'、と言いますかオーナーも何許可してるんですか。
そもそも'ラヂヲ'なるものが何なのか分からないけど……恐らく音に関わるものなんでしょう。後で聞くとするか。
……んー、相変わらず出汁が効いていて美味しい。味のコツは『冷気で身を〆て、味を閉じこめる』らしい。この味は雪女にしか出せないはずだ。テッサちゃんも『悔しいですぅ><』と再現に熱を入れるけどたどり着かないらしいし。ルミルさん?最初から『餅は餅屋』って取り合わなかったって聞いたけど。
……話がずれた。まぁおねぇさまだって、害しかないものを認めるはずはないし、何らかの役には立つんでしょう。館内用放送案内機具のような感じで……。

――――――

……と思ったら、どうしてこうなった。
「さぁ!Here We Goin'!銀河の遍く果てに向けて放つinfomation makin'!異世界からもCriminal除いて呼び寄せるよー!じゃんじゃんCallin'!Callin'!」
最後のCallin'!に合わせて腕を上下させる様を見て、正直不安しか湧かないんだけど。それ美影ちゃんの世界で流行ってるらしい奴よね?
話を'DJ'から伺ったところ、どうやら渡されたモノは、電波……?と言うモノを用いて放たれた音を受け取って聞くためのモノらしい。盗聴器と同じ原理と言えばそれまでだけど、その範囲の桁が違う。具体的に言えば、フリスアリス領がすっぽり入るくらいの範囲をキャッチできるそうだ。
さらに、ルミルサバトSF担当の総力結集及びおねぇさまの力添えにより、かなり範囲が広がっている。いや、広がっているなんてモノじゃない。何処の大陸に『異世界の電波をキャッチするラヂヲ』なるモノが存在するんだろうか。現にココに存在させてしまった訳だけど。
ちなみに魔王……様に使用許可及び特許を貰っている。『将来的にきっと必要になるから♪』って魔王の娘さんは無邪気に言っていたわけだけど。何する気ですか魔王……様。
兎も角、異世界の電波が届く以上、こちらも異世界に向けて発信しよう!と'DJ'は自らがパーソナリティを勤めたラヂヲ番組『Delfinium Juke-box Channel』を立ち上げ、異世界の暦の隔週で放送しているそうだ。
ちなみにその世界、ピクシーとリャナンシーが司会進行役の『ステラのラジオ キラキラ☆星』が人気らしく、異世界のゲストも招かれたり異世界の視聴者の手紙も読み上げたりしているとか……異世界じゃこれが常識なのね。
兎も角、ラヂヲ番組が出来るなら、CM制作も出来るんじゃないか、そう息巻いているのが我らが'DJ'で、実際現在制作するために、音楽やSE、キャッチコピーを考えているらしい。で、店が休業日なのを良いことに、私が駆り出されました、と。
まぁ宣伝になるのなら良いんだけど……にしても何で私が?そこまでの文才はないわよ……と思ったけど、考えてみれば宿の状況やらお勧めやら色々と一番把握しているの、私かおねぇさまなのよね。その辺りで呼び出されたに違いない。
「……で、どの辺りの宣伝を中心にするの?宣伝する時間は?結びはどうして欲しい?」
「んーミー的にはSpringとDinnerを中心に、お土産もちょびっと。時間は三十秒〜一分。Half or allネ。結びは……hmm……『心に愛とぬくもりを「温泉宿『デルフィニウム』」』なんてgoodじゃない?」
働いている側からしてみればもっと愛を下さい……とはならない。何故ならおねぇさまがそれこそ霧の大陸に収まりきらない位の量の愛を、従業員に向けているのだから。
普通ならば妖狐なんて目じゃないくらい強いはずのルミルさんや、魔物を殲滅してきた元『神の尖兵』の懺悔様、そして前番台のケイさんすら……。
ルミル「何じゃ?本気の儂とやる気な、何じゃその出鱈目な魔力ふぁ!ぐ、振り解けんふぁああああっ!尻尾!尻尾はふぁやぁっ!何をするのじゃ!や、やめ、ひゃ!み、耳くしゅくしゅは止めひゃふぁあっちがうっちがうのじゃあそのあなはちがぁぁひぁあああっあっあっあああああああああああああ!」
懺悔様『何をするのですかこのひっ!い、嫌ぁぁひゃああっ!ぁあ、あああ、ああああやめ!やめぇ!やめぇへそほじほじやめぇふきゃう!ふゅあ!むねぇむねつんつんするのにゃあああああっ!いれないれっ!ちくびいれひゃらめぇぇぇほひゅあああああ!あ、あぁああっあっああああああああああああああああっ!』
ケイ『ふにゃああああああっらめにゃあっ!みみぃっ!みみほじほじひひゃうぁああわきぃわきくしゅぇほぁぁっ!ふゃああっ!ろ、ろこいれてひぎゅあああああああっ!すれ、す、すれるにゃあああっかららのなかすれるのにゃあああああああみぴゃ、あ、ああ、あああああああああああああああああああ!』
……あぁ……おねぇさまのふさふさ尻尾が衣服の内側から全身をすっぽり包み込んで……体に付いた汚れを根刮ぎ洗い落としながらふかふかとまるで高級毛布のように全身を柔らかく受け止めながらほかほかと温めてそのまま耳や口やお臍やお〇〇〇や菊の門からすぽって中に入ってくしゅくしゅと身を震わせて愛を以て体のあちらこちらを綺麗にしてふやふやになったところでさらに深く肌を重ね合わせて乳首と乳首で触れ合ったり胸の中に招いたり尻尾を触手に変化させて
「Comin'back Plz!」
「――はっ!」
'DJ'の声で我に返る私。またやってしまった……例によって例の如く、妄想暴走を……!
「Hey girl?流石にdaydreamには遅すぎるんじゃない?」
「うう……ご免なさいDJ」
やや呆れたように呟くDJに、私は何も返すことが出来なかった……。
兎も角、愛も温もりも、それこそ過剰なまでに与える事を考えると、キャッチコピーとしては悪くない。……けど、相手が受容できるかが問題だよね……。過ぎたるは猶及ばざるが如し、って言うし……。
「オーナーが加減をmissするとyou thinkin'?」
「思えません。むしろ限界を突破させようとするのが目に見えます」
でもそれが最大の問題なんだけどね……。前も後ろも口も耳もお臍も一切合切の処女を頂いてあらゆる体位を試すくらいのことを、外の世界の人にも行いそうで……でも……そのプレイって本当に素敵
「だからComin'back Plz!」
「……はっ!」
また妄想がっ!もうやめて!ワタシの平常性はゼロよ!
……おねぇさまの事は今は考えないようにしよう。そう心に決め、ワタシは宿のお勧めを書き出すことにしたのだった……。

―――で、出来たCMがこちら―――

(BGMイメージ:Claire de Lune/上原ひろみ)

――柔らかな風が似合う森の中に、その宿はあります。

「いらっしゃいませー♪」

――皆様をお出迎えするのは、綺麗な床上手の従業員達。

「はい♪どうぞ召し上がれ」

――山の幸の旨みを生かした精進料理を、ご賞味あれ。

「ふぅ……♪」

――滋養強壮に良い温泉は、主に混浴となっております。

「みんなおいでよー♪」

――『妖精の国』への観光が出来る、唯一の宿です。

『心に、愛とぬくもりを』

温泉宿:デルフィニウム

――――――

「Taja!!
さぁて今週は早めの時間でお送りするD.J.C.『Delfinium Juke-box Channel』!MCはわぁたくしぃ'DJ'がお送りしまっす!
周波数は072、放送局はMMRでStay Tune!
この番組では、listenerの思い出の曲や、私のイチオシmusicを寄せられたお葉書やゲストと共に紹介していきまっす!OK?
Yeah!じゃあ早速本日一曲目逝っくよ〜!みんなの住むところはどんな季節かな?私が今いるこの『デルフィニウム:レコーディングスタジオ』ではそろそろアルラウネやドリアード達がTaste Goodなjuiceを出し始めるHarvestな季節が到来しそう!
そんな実りの季節に似合うnumber――SBT666『ショートケーキ注意報』」

――――――

――魔女たちのダンスと歌声が評判のグループの音楽を流しつつ、ゲストを招く'DJ'。本日のゲストは、界隈では有名な巨乳のピクシーと、程良い硬さのリャナンシーの二人だという。願ってもない機会だって、本当に喜んでたなぁ……。
……同時に、この宿に来るお客も色々な人が増えたなぁ……一般客用のコテージの利用が増えたのが個人的には嬉しい。だってこの世界じゃ……一般客なんて早々……ねぇ。
そんなわけで、従業員も様々に増えていたりする。人間だったり魔物だったり……まぁ、どんなに素行が悪い人や魔物でも、私とおねぇさまを筆頭に、ミナエさんやルミルさんといった、この宿に住まう匠達の手に掛かれば……うふ……うふふ……ふふふふふ……本当に、みんな、みんな可愛くって♪
もっと……もっともっとくちゅくちゅのふわふわに愛を与えたく

「ランちゃん、はよ戻ってきてくれまへんか?」

「――ひぅぅああぁっ!」

―――参考資料:研修受講者の声―――

ex1.「……はひゅー……はひゅー……も……もう……らめ……ぇ……(びくんっびくんっ)」
ex2.「……もふもふがぁ……もふもふがぁぁ……(ガクガクガクガク)」
ex3.「……はふぁ……はひゃ……おねぇさま……おねぇさまぁ……(ぷしゃあ……)」
ex4.「……あは……はひ……ひひゃぅ……きれーに……され……ちゃ……た……(フッ……ぱたり)」

―――以上、魔物娘含むの声でした―――

「――さァあThis is the End of Time!本日は――!」
「ステラのラジオ☆キラキラ星より参りましたステラと!」
「同じくステラのラジオ☆キラキラ星より参りましたナンシーの!」
「――二人のCuteなguestを招いて、お送りしましたー!
なお、Today's Twinkle Star Radioは特別編でお送りするそうです!
それでは皆さん――周波数はそのまま、Stay Tune!」

「「「Bye-bye!」」」

fin.
11/06/02 20:49 up
Special Thanks:沈黙の天使様より巨乳ピクシーの『ステラ』ちゃん、及びあっさりこってりリャナンシーの『ナンシー』をお借りいたしました。
と言うわけで元より異世界交流があったりするこの宿も、ついに異世界に向けて宣伝を始めたようです。
交わりが好きな客は館内の宿泊施設に、
交わりを望まない一般客は森の中にあるコテージに宿泊する形となっております。
もちろん露天風呂はどちらも完備。
妖精界に観光の際や、豊胸効果もあると言う温泉を御所望の方は、ぜひとも当宿へおいでませ♪
初ヶ瀬マキナ
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