読切小説
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ドラゴンと少年
 
 昔々あるところに一匹のドラゴンが海辺に近い洞穴に住んでいた。そのドラゴンには不思議な魔法が使えそして、ドラゴンの中では珍しい心の優しいドラゴンだった。だが、ドラゴンを見ただけで逃げ出す人もいるので彼女には友達がいなかった。

 そんなある日、秋の霧が濃い砂浜を散歩しているとその砂浜で、1人の少年がうずくまって泣いていた。ドラゴンが声をかけると少年は驚いた様子であったが、彼女の優しい微笑みに少年は、心を開いた。

 少年は、ここに最近この町に引っ越してきたが父親は仕事が忙しく母親は少年が生まれたと同時に亡くなっていたのだ。そして、この町での生活になじめず友達もいないと少年は泣きながら言った。

 その様子を見た彼女は、優しく抱いてあげこれからは、「私がお友達になってあげる」と言った。少年はとても喜んだ。その日から、少年とドラゴンの遊びと冒険の連続だった。
 
 少年は、手先が器用で紙と鋏で作るカットペーパーが得意であった。海の魚やドラゴンを象ったきり絵で彼女を喜ばせた。彼女は、手先が器用ではなかったので少年からカットペーパーのやり方を教わりながら不器用に鋏を使い魚のきり絵を作った。他にも、少年が作った紙でできた船を魔法で本物の船へと変え冒険へとでた。

 船を出し、旅を続けた少年とドラゴンは海の嵐を超え、無人島についたり自由気ままに旅を続けた。その少年とドラゴンを見た王国の王様やお妃は挨拶をしたり海賊達は髑髏の旗を降ろした。

 月日は、流れ少年は立派な大人になった。だが、それと同時にドラゴンと遊ばなくなってしまった。ドラゴンは少年が来るのを待った。雨の日も風の日も海が荒れる嵐の日でもドラゴンは待った。少年が来るのを・・・・・

 
 1年・・2年・・・・3年と月日が流れても少年はこなかった。ドラゴンは、二度と会えない少年を思い緑の鱗に涙を流し洞窟へと帰っていった。そして、少年から教わったカットペーパーをモクモクとやりつづけたのだった。

               〜12年後〜


 少年は、大学を出て会社に就職した。毎日いつも通りの生活をしていた。そんなある日、ふとっボトルシップに目をやると何かに気づいたのか急いで車に乗り自分が育った町へと進めた。

 少年は、霧が深い海の近くに車を止めた。そして、見覚えのある洞窟へと少年は歩き出した。

洞窟の中は、船のきり絵が大量にあった。その奥には、ドラゴンが静かに眠っていた。そして、少年は、静かに言った。

 

            「ただいま、僕の親友」


 
  後に、ドラゴンと少年の話しは町に響き渡り。ドラゴンと少年は結婚する事になった。

  



  「おしまい」静かに絵本を閉じ横にいる緑の鱗をした少女に話し掛けた。

 「え〜これでお終い?もっと聞かせてよ〜〜〜」

 「うふふ・・・だめよ。明日も早いんだから。おやすみなさい・・・」少女のおでこにキスをして、静かに部屋の扉を閉める。

 「僕らの昔話を聞かせたのか?」優しい目で言う男性。

 「そうよ・・・ね、あたしと一緒にいて今幸せ?」

 「なんだい急に」

 「すこしね・・・・どう?」

 「すごく幸せだよ・・・」女性の体に抱きつく男性。

 「あたしも・・・」力強く男性を抱きしめる女性。

 その横の壁には額縁と一緒に小さな船のきり絵が置かれていた。

 
11/09/18 23:23更新 / pi-sann

■作者メッセージ
 大人になっても子どもの心は忘れたらダメだと思う。そう思いこの話を書きました。皆さんは、どう思いましたか?
 

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