読切小説
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ま(れに見る寛容さと)れ(いを見ないほど大らかな)ふ(とっぱら)ドラゴン
「じゃあ、イチャイチャした後に8時間…?」

「よいぞしたり、よいぞしなかったする」

「まあそれでいいかな」

「後は何かあるか?」

「とりあえずこんな所で…」

「よし、ではまず美味しいものを食わせてやろう」

「え〜なんだろ。楽しみ」

「下準備として我を思う存分、抱くがよいぞ」

「そんな急に言われても俺の下の準備が…」

「ならば、我のうなじを見てよいぞ」

「そこはつむじ。別に頭頂部見て興奮しな…
 あっ、でも髪の良い匂いが」

「よいぞよいぞ♥」









「下準備終わりました?」

「子を成すまで続けるぞ」

「あ、わかった。美味しいものって『母乳』って訳、
 王道だけどありきたりですね、嫌いじゃないけど」

「いや、胎盤」

「いろいろ言いたいことはあるけど、なんで胎盤?」

「世界最高の邪竜である我の一部ならば世界最高の美食となるは自明の理」

「この世界では捕獲レベルと美味さが比例するわけじゃないんだよね」

「む、そうなのか、ならば別の物でもよいぞ」

「じゃあ、高そうなフカヒレとかフォアグラとか…」

「高価なものがいいなら我のヒレとか肝臓を食べればよい
 少々ちぎってもすぐ治るゆえ気にしなくてよいぞ」」

「確かに邪竜の肉とか肝とか想像もつかない値段になるだろうけど…」

「おぬしから精を貰い、我は血肉を与える
 これが流行りの『えすでーじーず』」

「嫌な永久機関が完成しちまったなぁ…」

「我のおいしいお肉を食べるがよいぞ」

「いやぁそれは…」

「よいぞ」

「……あ!よく考えたら俺は毎日唇やら胸やらにしゃぶりついて
 ある意味で身体を食べさせてもらってるんで、
もうすでに願いが叶ってますね!うんうん」

「ふむ…そういうなら…これで美食の願いはよいな」

「今後もありがたく頂かせていただきます」

「次は働かず遊びに耽りたいとの願いだったな」

「まあこれは言っておいてなんだけど、すでに叶えられてるね」

「そういわず我が体でもっと遊ぶがよいぞ」

「さっきもしたから他のことで遊んでもいいんだけど、
 結局、邪竜さんとの交尾が一番楽しいのは否定できない…」

「で、あろう。今回は恥骨を見てよいぞ」

「そこは鎖骨だし、恥骨が見えたら大惨事だから、
 でも鎖骨が普通に素敵すぎて興奮してくる…」

「よいぞよいぞ♥」








「いくらやっても飽きないんだからすごいと思う」

「お主が我に堕ちれば堕ちるほど、
 我もお主に堕ちていく。より深みに至ったまぐわいは
 更なる堕落を生ずる。飽きるなどありえん」

「もっと具体的に言うと?」

「スケベすればするほど気持ちよいぞ」

「スケベ言うな」

「他に遊びたいものはないのか」

「いろいろあったはずなんだけど、最近だとやりたい事ランキング
 
 一位 交尾
 二位 セックス
 三位 エッチ みたいな感じになってる…」

「ナイス堕落」

「ナイスバルクみたいに言うのやめて」

「次は地位と名誉だな」

「承認欲求も大事な欲求だからね」

「しかし…『邪竜の夫』の肩書だけでは不満か?」

「それは『邪竜』が凄いんであって『夫』はそうでもないから」

「とてもすごい我が見初めたのだから、お主もとてもすごいぞ」
 
「ドラゴン種は力も強いけど、自己肯定感も強くて羨ましい」

「強さを身に付ければ自ずと自信も出てくるもの、
 我が稽古をつけて鍛えてやってもよいぞ」

「いや、鍛える暇があったらダラダラ交尾したい…」

「その向上心のなさ…ナイス堕落」

「この鷹揚さを何かと怒りがちな現代人に見習ってほしいね」

「しかし、如何にすればお主の納得行く地位と名誉が手に入る?」

「何かこう大きな功績を挙げると
 多分誰かが良い感じの賞とか勲章をくれると思う」

「願った割にずいぶんフワフワな認識ぞ」

「返す言葉もございません」

「だが、大きな功績だけならば簡単に出来るぞ」

「え、本当?」

「我とスケベするがよいぞ」

「スケベ言うな、流石にちょっと萎えるんじゃ」

「ならば、我がふとももを見て回春するがよいぞ」

「そこ二の腕…いや、ドラゴン的には前足だから太ももなのか?
 そんなことを思いながらも興奮してしまう自分がいる」

「よいぞよいぞ♥」
 







「うむ、我を押し倒し、組み敷き、鳴かせ、果てさせたのだから
 立派な『邪竜退治』救国の英雄と持て囃されること間違いなし」

「泣いた赤鬼のワンランク上のバージョン」

「そういう訳で邪竜討伐を祝し、我が爪と鱗で作りし勲章を授けようぞ」

「HP 攻撃 防御 素早さのステータスに倍率補正かかって
 火耐性闇耐性がup↑した気がする」

「『倒す前にくれよ!』って言われる奴ぞ」

「でも、これ見せると自慢できそうだし、いいね」

「我もお主が我のものだと示せるので満足」

「しかし…冷静に考えると嫁の鱗と爪のアクセサリーを見せびらかすなんて、
 とんだサイコ野郎だな、医大で退学になってそう」

「邪竜である我の封印を解いて求婚しながら抱き着いてきた時点で、
 元々正気とは言えないぞ、お主」

「普通のドラゴンよりも気性が大らかって聞いてたから、
 封印解いてご褒美貰おうと解放したけど、
 理性がもたなかった。性欲も解放してしまった」

「模範的堕落思考ぞ、我が夫になるべくしてなったと言える」

「堕落の道をひた走らせていただいております」

「お主の我の誘惑に素直に堕落し溺れる姿、好ましくてよいぞ」

「さっき言った愛されたいって願いも、もう叶ってますね」

「念には念を入れて愛情の確認作業をするがよいぞ」

「身体を重ねて愛情確認するのもいいけど、さっきもらった
 勲章を眺めて、こういうところから愛を感じるのもまたいい

 ……やべ、勲章の爪と鱗、見てたら興奮してきた」

「よいぞよいぞ♥」










「興奮しない所を探した方が早いと思ったけど、
 この調子だとどこ見ても興奮すると思う」

「ふむ…堕落極まったということか」

「まだ堕ちれる」

「ならば、最後の願いを叶えたゆえ、共に堕落の果てを目指すとしよう」

「その前にさっき言った8時間睡眠しても良いですか?」

「確かに、イチャイチャした後ならばよい…
 よいのか?」

「良いことにしてもらえると嬉しい」

「お主がそこまでいうならば、よいぞ」

「わーい、キミに会うまでは寝るのが一番好きだったんだよ

 zzzz……」








「…8時間も我らの睦みを途切れさせるとは…
 もしや睡眠とは我の敵なのでは?燼滅すべきでは」

「寝起き一発目から不穏なこと言わないで」

「お主の寝顔を眺めたり、舐めたりして待って居ったが
 放置プレイというにはあまりに酷ぞ…」

「まあ、今の体になってから寝なくても良くなったし、
 こんなに悲しませてまで睡眠取ることないかな」

「ちなみに、昔は寝ないとどうなったのだ?」

「様々な不調をきたして死ぬ」

「つまり、睡眠は我からお主を引き離し、
 それが出来ねば命を取ると脅しているのか

 敵…やはり睡眠は我の敵ぞ…」

「睡眠にキレてる人初めて見たかもしれない」

「睡眠を撃退するためにはお主を興奮させる必要があるな。
 我が胸を見て興奮するがよいぞ」

「いや、そこは胸じゃなくておっぱ…

 おっぱいだ!?突然のストレートなエロは刺激が強すぎる…」

「ならやめておくか?」

「やります、やります」

「よいぞよいぞ♥」








「寝るよりスッキリして気持ち良くなって元気が出てくる」

「疲労がポンと取れるというわけか」

「それ以上いけない」

「これでお主の願いは全て叶ったということか」

「青い鳥はすぐそばにいた、みたいな結果になったけども」

「現状で満足するのもまたナイス堕落」

「何にもしないでずーーっと交尾してるとか、
 世界一堕落してる夫婦の自信あるよ」

『すいません、わたくし 週刊魔界 の記者をやっておりまして、
 取材させていただけないでしょうか?』

「よいぞ」

「別にいいけど、チャイムも無しに家に上がり込むのはどうなんだ」

『何度も鳴らしたのですが…
 喘ぎ声とベッドが軋む音しか聞こえてこないので上がらせてもらいました』

「チャイムもっと音の大きい物にしようか…
 で、取材したい事って?」

「おそらく我らの堕落した生活を記事にするつもりぞ
 ここまで堕落した生活をしてるのは稀有、ということであろう」

『え…?いえ、あ〜まあ…そんなところです』

「それなら喜んで協力しますよ」

「よいぞよいぞ」

『ありがとうございましす。記事が載りましたら
 雑誌を送らせていただきます』

「楽しみですね」

「うむ、うむ」






しばらく後……





<自分の国なんていらない!

 食事も娯楽も睡眠も捨て去り

 交尾に没頭する超ストイックな邪竜夫婦!!>
 






「……いつ抗議に行きます?」

「宵ぞ」
24/01/07 03:26更新 / ヤルダケヤル

■作者メッセージ
『取材の最後に邪竜の夫が妻の鱗と爪を加工した装飾品を私に見せてくれたが、
意図がよくわからなかった』

明けまして…?明けたの?本当に明けたの?去年一回しか投稿してないよ…?
本当に堕落してるのは俺だったのね…

それでも、皆さん今年もよろしくお願いします
読んでいただきありがとうございました。

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