連載小説
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ハーレムへの野望!女好き海賊ウィリアム・ラカム
 ここは“コブタ海域”にある始まりの島“ファース島”。なぜ始まりの島と呼ばれているのかは誰も知らない小さな島。そんなこの島には、美人な女主人が営む酒場があった。

「今日は大量だったなー!」
「ああ、ポセイドン様に感謝だな!」

「カリーナちゃん、ビール頂戴!」
「はーい!」

 漁業が盛んのこの島では、毎晩、漁師達が仕事を終えるとこの酒場を訪れる。ある漁師は仲間共にうまいビールで乾杯するために、またある漁師はこの島で1番の美人と評判の酒場の女主人“カリーナ”を目当てに。

「しっかし、カリーナちゃんはいつ見てもキレイだねー!」
「もー!やめて下さいよー!」

 1人の漁師が冗談っぽくカリーナを褒めると、カリーナはニコニコしながらも謙遜した。その光景に他の漁師達が笑っていた。これはこの酒場ではいつもの光景だった。

 今夜も酒場は漁師達で賑わっていた。

 すると、なにやら見慣れない若者が酒場を訪れた。薄い白シャツに茶色いズボンという身なりをしていた。明らかに漁師ではなかった。そもそもこの酒場に漁師以外の客が来ることはほぼない。

 そんな珍しい客にカリーナと漁師達の目は釘付けになった。しかし、若者はその好奇な視線を気にも止めず、空いていたカウンター席に腰掛けた。

 すると、それを見ていたカリーナはハッと我に帰り、若者に注文を訪ねた

「いらっしゃい、何を飲みます?」
「なあ、そこにあるのってワインか?」

 若者はカウンターの奥の端の方に置いてあるワイン瓶を指差して訪ねた。

「え?そうですけど?」
「じゃあ、あのワインをくれ」

 若者はワインを頼んだ。そのことでカリーナはおろか漁師達も驚いていた。

「こんな酒場でワイン!?」
「アイツ、明らかにこの島のもんじゃねぇな、ナニモンだ?」

 漁師達はヒソヒソと話し出した。そもそもカウンターに置いてあったワインはカリーナ自身がワイン好きだったから置いていただけであった。漁師達ももっぱらビールしか飲まないので、こんな酒場でワインを頼む客はカリーナは初めてだった。

 それでも客に変わりはないので、カリーナは内心驚きつつも、ほとんど取り出すことのないワイングラスを引き出しから取り出し、真っ赤なワインを注いだ。そして、そのワインをカウンターに置いて若者に差し出した。

「どうぞ」
「ありがとう」

 男はニコッと笑って礼を言った。カリーナは僅かに頬を赤らめた。その光景に漁師達は眉を眉をひそめた。
だが、若者は気づいていないのか、気にせずワインを一口飲み、口の中に転がした。

「うん、うまい」

 若者は満足気に微笑んだ。すると、若者はカリーナに声を掛けた

「なあ、お姉さん名前は?」
「え?カリーナですけど?」
「へえ、カリーナかー、かわいい名前だな!」
「は、はあ...」
「いやー、実はこの島に上陸した時に“この島には漁師達の酒場があって、そこの主人が島一番の美人“って聞いて、ここに来たんだ!」
「そんな美人だなんて...///」

 若者は屈託のない笑顔をカリーナに向けて、普通の男性なら言うのも憚られるキザな台詞を恥ずかし気もなく言った。

 カリーナは戸惑いつつも、満更でもない感じであった。その光景に漁師達は面白くないと言わんばかりの強張った表情で若者を睨みつけ、中には恨み言を吐いているものもいた。

「アイツよそ者の癖に俺たちの女神カリーナちゃんを〜!」
「ちょっと顔が良いからって調子に乗りやがって!」
「というか、カリーナちゃんの態度が俺たちの時と違う!」

 漁師の恨み言の通り、若者は端正な顔立ちをしていた。右目の近くの2つの涙ボクロがチャーミングだ。
そして、カリーナに見せた屈託のない笑顔も大抵の女性ならドキッとさせられるだろう。

 すると、若者は笑顔のまま、漁師達にとっては聞き捨てならないことを言い出す

「なあ、カリーナ」
「は、はい///」

「俺とハーレム海賊やらねぇ?」

「....え?」

 カリーナは若者の問いに思わず思考が停止してしまった。すると、それを聞いた漁師達は全員血相を変えて立ち上がり、その中の漁師の1人が若者のいるカウンターを手で思い切り叩きつける。

「テメェ、いい加減にしろよ、ゴラァ!!」
「俺たちのカリーナちゃんを口説こうとした挙句、海賊やらねぇだー!?」
「ちょっと調子に乗りすぎじゃねぇかー!ああ!?」

 カウンターを叩きつける音でハッと我にカリーナは慌てて漁師達を宥めるようとした。

「皆さん、やめて!落ち着いてください!!」

「カリーナちゃん、こんな奴を庇うなんて!」
「きっとこの野郎に洗脳されちまったんだ!」
「テメェ!俺たちのカリーナちゃんに何を吹き込みやがった!?」

 しかし、漁師達はカリーナに聞く耳を持たなかった。カリーナが慌てふためく横で、若者はため息を一つ吐いて、ニタニタと笑いながら漁師達に言った。

「“俺たちの”ってなぁ、結婚してなけりゃあ、誰のものでもないぜ?」
「ちょっと、あなた!」

 カリーナは若者を止めたようとしたが、時既に遅し、若者のこの一言で漁師達はさらにヒートアップした。

「んだとゴラァ!!」
「カリーナちゃんは俺たちだけ女神!!」
「テメェのようなふざけた野郎には渡さねぇぞ!!」

 漁師達と若者が一触即発の空気の中、カリーナはもはや手の施しようがないと言わんばかりの半泣きであった。

「もういい!やっちまえ!!」

 ついに1人の漁師が若者に殴り掛かった。次の瞬間...

           バリーン!!!

 突如、酒場の窓ガラスが派手に割れた。漁師達と若者はすぐさま音のなった方を見た。

「な!なんだ!?」

 すると、酒場にバンダナを巻き、腰に細めのカットラスを携えた男が3人、下卑た笑い声を上げて入ってきた。

「「「ギャハハハ!!」」」

「テメェら!!よくもカリーナちゃんの店をーー!!」

 1人の漁師が果敢にも3人に向かっていった。しかし

「おっと!動くんじゃねぇ!ヒヒヒ!」
「!?」

 男の1人が酒場の窓ガラスを割った銃を突きつけた。これには思わず漁師達も怯えを隠しきれなかった。

「なんだ、揃いも揃って腰抜けばかりか!!ハッハッハ!!」

 男の1人が侮蔑の言葉を高らかに言い放つ。これに漁師達は苦虫を噛み潰したような表情で怒りを抑えていた。下手なことをすれば、殺されかねない。

「まあ、俺たち“ゲスタ海賊団”が相手なら無理もねぇか!」

「ゲスタ海賊団!?」

 その名を聞いた瞬間、カリーナが怯えるように言った。すると、特に怯える様子もない若者は怯えるカリーナに質問した。

「誰だ?」

「このあたりの海を荒らし回っている恐ろしい海賊団です!」

 カリーナだけでなく、漁師達も一斉に顔色が悪くなった。それもそのはず、“ゲスタ海賊団”は最近このあたりの海に現れ、暴虐の限りを尽くしていた。この3人はそのゲスタ海賊団の下っ端であった。

 すると、下っ端の1人がカリーナを見つけるなり、いきなりカリーナの腕を掴んだ

「おお!!良い女見っけ!!」
「うっひょ!コイツは上玉だー!」
「船に連れて行こうぜ!!」

 そういうなり、カリーナの手を無理矢理引っ張り、連れて行こうとした。

「やめて!!離して!!」
「うるせぇ!ぶっ殺すぞ!!」

 カリーナは泣きながら抵抗しようとしたが、銃を突きつけられる。

 その場の誰もが絶望していた。すると、その時、

「おい」
「ああ、なんだテメェ?」

 若者がどすの効いた声を発し、カリーナの腕を掴んでいる下っ端の腕を掴んだ。次の瞬間...

「ギャーー!!」

 下っ端が腕を押さえてうめき声を上げた。若者が下っ端の腕をへし折ったのだ。すると、残り2人の下っ端が細いカットラスを取り出し、それを若者に突きつけ、声を荒げた。

「テ、テメェ!!」
「俺たちにこんな事をして、タダで済むと思ってんのか!!」

 しかし、若者は動じることなく下っ端に言い放つ。

「バーカ、そりゃこっちのセリフだ!」
「何だと!!」

「この俺の目の前で女を泣かせて、タダで済むと思ってんのか!!」

「うるせぇ!!ぶっ殺してやる!!」
「このヒーロー気取りが!!あの世で後悔しろ!!」

 若者は下っ端に堂々と言い放つと、下っ端の2人が若者に若者に斬りかかった。

「お前らがな!」
 
 そう言うと若者は飲んでいたワインをグラスこと下っ端の1人の顔に勢いよくぶち撒けた。

「うわ!!」
 
 そして、怯んだ隙に鼻っ柱を思い切り殴り付けた。

「グハー!!」
 
 下っ端は倒れ、苦しそうに鼻を押さえていた。すると、残った最後の下っ端が若者に向かって細いカットラスを振り上げた。

「このヤロー!!」

 すると、若者はさっきまで座っていた椅子を持ち上げ、振り下ろされたカットラスを受け止めた。

「な!?」

 そして、若者はその状態でガラ空きの腹を前蹴りし、下っ端が怯んだ所をそのまま椅子で殴り付けた。

「ガハァ!!」

 下っ端は頭を押さえて倒れ込んだ。

「おい!誰かコイツらを縛っておけ!」

 若者がそういうと、若者の強さに空いた口が塞がらない様子の漁師達はハッと我に帰り、酒場にあったロープで3人の下っ端を縛り付けた。

「す、すごい...」

 カリーナもまた、漁師達と同様に空いた口が塞がらなかった。すると、若者がカリーナに声を掛けた。

「大丈夫か?」
「は、はい!ありがとうございました!」

 カリーナは深々と頭を下げて礼を言うと、若者は申し訳なさそうに言った。

「しっかし、すまねぇな、グラス割っちまって」
「いいんですよ、そんなの!」
「そっか、そう言ってくれるとありがてぇ!」

 若者はカリーナの言葉に安堵の笑みを浮かべた。

「じゃあ、俺はこの辺で、お代置いとくぜ」
「え!?でもまだ、お礼が!?」

 若者はカリーナの言葉を無視して、酒場を出ようとする。すると、1人の漁師が帰ろうとする若者の肩を掴んで訪ねた。

「待て!オメェは一体ナニモンなんだ!?」

 すると、若者は振り返って答えた。

「俺はウィリアム・ラカム! 海賊だ!」

 若者“ウィル”がそう言った瞬間、酒場は驚きに包まれた。

「「「「「「えええええええ!?海賊!?」」」」」」
 
 これはウィルが海賊として、前代未聞の偉業を成し遂げるまでのお話である。
22/09/14 18:28更新 / 運の良いツチノコ
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■作者メッセージ
キャラ1

ウィリアム・ラカム
異名:なし
種族:インキュバス(ネタバレ防止)
懸賞金:なし
武器:カットラス(表面が太いやつ)
戦闘能力:我流の剣術

・概要
本作の主人公。最近デビューした海賊。まだ船員もおらず、船も小船で活動している。夢はハーレムを作ること。

思ったことがあったら感想に書いて下さい!^_^

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