連載小説
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07.黒霧の世界
 ・・・あたしはどこかに立っていた・・・。

 ・・・だれかの叫びが聞こえる気がする・・・。

 あれは・・・一体なんだろう、異型の[なにか]が青年を抱き抱えている・・・。

 なんとなくどこかで見た気がする・・・。

 ここは・・、どこかの町の聖堂だろうか・・・、もともと祈りをささげる声で満ちていたであろう空間は

 沢山の死骸の山、いたるところに血の池飛び散ったガラスが存在していた・・・。

 ひたり・・・ひたり・・と、[なにか]は青年を手放しその場で魔法陣を描くと

 手の平一つ動かないあたしに片手を伸ばし

 コアのハッチに手をかける・・・、








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 「うおおおお!!」

 「!?」

 い、今のは・・・、夢? あたしはたしか自分のメモリーの整理をしていたはず・・、時代が変わってゴーレムでも夢を見るようになったのか?

 「どうしたの!?」

 リーベルがあわてて駆け寄って来る

 「・・怖い夢を見た、といったら笑うか?」
 「ううん?むしろ心配するよ、だって私の大切なゴーレムなんだから。」
 「ふふっ、そいつはありがたいな。」
 「で、どんな夢だったの?」

 「・・ヒミツ。」

 「ケチ!」

 残念ながらグロリアは夢の内容は奇妙すぎて説明できる自信がないと考えた、それにどことなくというのだろうか彼女にだけには話したくないと感じたのだ、このままグダグダしてもであたしは内容について口を紡ぐことにした。

 「んじゃ、目的地に行きますか!」

 「もう、話をそらさないでよ。」

 昨夜、ノワルからもらった一枚のメモ、そこにはこの町の象徴であり中心地、ましてやこの町誕生の発端となった黒いもやを納めている時計塔の写真であり裏には指定された時間にこの場に来るようにと書かれていた。

 時計塔へ向かう途中昨日のキマイラの魔法道具店を通過した、中は大忙しのようで店員に加えて数体のゴーレムが混じっている

 「おやっ、キマイラさん今日は大忙しだね。」

 「イラッシャーイ!!」
 「合計、四点、金額三三九....ナリぃ」
 「お買い上げありがとぉ、まったねぇーん。」

 「店長も総動員ってわけだ。」

 「そんなところさ、昨日ぶりだったかな、何か買いに来たのかい?」

 「いんやこれから時計塔にいくのさ、昨夜呼び出しをくらったんでね。」
 「ほ〜代表さんかな、まあ頑張っていきな、...あと、聞き流すくらいでいいんだけど。」
 「?」
 「もしこの町が気にいって定住してくれたらさ、わたしの店で働いてくれたらな〜なんて」
 「そうだね....その時になったら考えてみるさ。」
 「ホント〜!?ぜっ絶対だよー!!」
 「考えてみるって言っただけだよ。」
 「おっとそうだった、じゃあ気長に待たせてもらうさ。」

 (....定住かぁ。)

 リーベルは魔物になってから今まで一度もまともな暮らしはおろかコミュニケーションをとろうとしたことがない、初めはグロリアを修復することに力を注ぎ、その後は情報集めにこの町へ、..と腰を下ろすことは一度も考えたことはなかったからだ。

 彼女らは店を後にしこの町の象徴、時計塔へと歩みを進める、内部は暗い空間に包まれレンガの床に刻まれた魔法陣、それを囲う多数の燭台、中心には得体のしれない漆黒のもやが居座っている。

 「よく来てくださいました、お待ちしておりましたわ。」
 「それで、話とはいったいなにかな?」

 そこにはゴスロリのドッペルゲンガー、ノワルとこの町の代表、リリムのアーリアの姿があった、

 「あなたの話をノワルから聞きましたわ、彼女、面白がって今まで以上に積極的なの、証拠にほらこうしてここにいるのですわ、いつもなら神出鬼没で町中のどこにいるかも分からないのに。」

 「こんなに面白い話し、みすみす逃すわけにはいきませんの。」
 「君たちの話がよく見えて子ないんだけど。」
 「あらっ、失礼しましたわ、こちらへどうぞ」

 魔法陣の部屋より奥の部屋、応接室の暖炉の床に付けられた取っ手をアーリアは力強く引き上げる、中には新たな部屋へ続く螺旋階段、輝く小さな結晶が壁面に埋め込まれ必要最低限の範囲を照らしていた。

 その奥は小さな会議室となっており大きな机の中心には水晶が置かれている、その水晶は魔道具の一種なのだろう、光を湾曲し一つの映像を宙に描いている

 「わたくしたちが直面している危機ですわ、今は大人しいですがこれを放っておけばいずれ大きな災厄となるかもしれませんわ。」

 そこに映し出されたのはとある土地、そこには家一つ分ともいえる大きな黒いもやが辺りを包み豪雷が鳴り響いている

 「初めは時計塔のもやと同時期に現れたものでしたわ。」

 アーリアが映像を早送りすると黒いもやは次第に大きくなってゆく

 「それは時計塔の物以上に早く大きなものへ...今では町一つといっても過言ではありませんわ、そして、」

 黒いもやの拡大が止まるとその中から人影が現れる 

 「あなたの所持していたクロスボウから検出された魔力には。」

 それは人間であったものというべきだろう

 「どういうことだよありゃ・・・。」

 その目はうつろに、首元には何かの根っこの様なものが張り付いているている

 「このもやを構成する魔力と同質のものが存在したのですわ。」

 それはもやの中から一人、また一人と現れる。

 「あなた方にもこのもやの調査について協力していただきたいのですわ。」



















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 「一体ここはどこだというの?」

 私の名前はフィリアス・レーンハルト、勇者である。

 私は今大きな霧に包まれた廃墟群の中に居る、なぜこのようなところに来ているのか、それは数日前にさかのぼる。

 私がとある町で休息をとっていた時のことである、「あなたにこの手紙を渡すようにと言われました」と、配達員から手紙を受け取ったのである、差出人は不明、今思えばあの配達員、目がうつろで気味の悪い奴だった、そして受け取った手紙は「支度を済まし町を出てたあとから見てほしい」と念を押されたのだ。

 差出人が不明な手紙に読む場所を指示してくるとは、この送り主の態度は気に入らないが向かわないわけにはいかない、勇者たるもの本当にわたしを必要としているならば向かわなければならないからだ、もし罠であればその根性をたたっ切ってくれる。

 と、町を出てから手紙を開いた瞬間、黒い霧が噴き出し気づけばこの廃墟にいた訳だ

 「おお、やっときたか、てっきり来ないもんだと、」
 「お前があの手紙を書いた張本人か。」
 「フフフ、いい出来だっただろう?」
 「初めから怪しいとは思っていたが胡散臭さに拍車がかかったな。」

 「お褒めの言葉と受け取ろう、が、この話はこれまでして勇者の仕事、魔物退治の話をしよう。」

 魔物退治か...、勇者としてこの依頼を受けない理由はない、だが、こいつを信じるわけではない、十分に警戒しよう。
16/02/25 14:02更新 / B,バス
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■作者メッセージ
 工事完了

いつも以上に短い気がする

ついにバトルだあああああ。

 長かった、幾度とない文の改良、それによる矛盾、解消できたらいいなと思います。

 文にする際必要とされる些細な情報、余計な情報の取捨選択の難しさをあらためて実感します

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