連載小説
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解決編
俺は犯人を捕まえる作戦を告げた。
「それ位のことなら出来るが・・・本当に像の場所が分かるのか?」
不安がるヴェラさんとカーラさんに俺は力強く頷いた。
「大丈夫。俺を信じてくれ。」
「・・・・・・分かった、今はお前を信じるしかないようだ。
ヴェラ、さっき探偵が言った通りに手配してくれ。」
「分かりました。」
「さあ、ソノミ君。
犯人を捕まえるとしよう。」
「いよいよですね。」



数十分後、俺、ソノミ君、ヴェラさん、カーラさんは展示室の隅に隠れて息を殺していた。
「なあ、探偵。言われたとおりに警備のマミーの大半を犯人探しと称して町の外にやったが、そんなことで本当に犯人が来るのか?」
「ああ、必ず来る。
犯人は遺跡から出るとき像を持っていなかったから、像はまだ遺跡の中に隠してあるはずだ。」
「でもコレックさん、そうだとしたら探せばすぐ見つかると思います。」
「いや、多分簡単には見つからないだろう。」
「・・・どういうことです?」
俺が続きを話そうとしたとき、ソノミ君が囁いた。
「あの、何か音がしません?」

ジャリッ、ジャリッ、ジャリッ

この音は・・・・庭のほうから聞こえてくるな・・・
「よし、作戦通りに行こう。
ヴェラさん町の外にやったマミー達を呼びに行ってくれ。」
「分かりました、お気をつけて。」
さあ、犯人との対面だ。



俺達が庭に出ると男が地面を掘っていた。
そして男の横には・・・
「・・・あれはイグニス!!
ということはあの男はクリプ!!」
・・・やはりな。
「うごくな!!
貴様が像を盗んだ怪盗エレメントか!!」
カーラさんの叫びにクリプはビクッとこちらを振り返った。
「ぼ、僕が像を盗んだ?
冗談はやめてくださいよ・・・」
「そうだよアタイ達の何処に像を持ってるっていうんだい?」
二人とも言い逃れをする気か・・・仕方ない。
「像ならそこだろう?
ソノミ君、あの穴を調べるぞ。」
「は〜い。」
「あっ、こら!!」
俺とソノミ君はその声に構わず穴に近づき中を覗いた。
そこにあったのは薄汚れた金属の塊。
俺達はそれを穴から引っ張り出しカーラさんの前に置いた。
「これが像だ。」
「えーーーーっ!」
驚くヴェラさんとカーラさん。
「こ、この汚れた塊があの像!?」
「そうだ、犯人がどうやって展示室から持ち出したのか説明しよう。
まず、人を雇って町で騒ぎを起こし遺跡の警備の目をそちらに向けさせた。
次に展示室の空気取りの穴のところに行き、イグニスを穴から中に侵入させる。
そしてこれを使った。」
俺はソノミ君が見つけた鉄塊を取り出した。
「おそらく、この鉄塊はもともとは細長い鉄板だったんだ。
それも溝付きのな。」
「でもそれが鉄板だったとしてどうやって像を外に持ち出すんです?」
「まず、鉄板を穴に差し込む。
そしてイグニスに像を鉄板の上に持ってきてもらい、そして彼女の炎で熱したんだ。
金は高温にすると溶けてしまうからな。
溶けた金を鉄板を使って外に流しだして回収したんだ。
金が溶ける温度は銀より高いから鉄も一緒に溶けてしまう心配はない。
その後、鉄板を高温で溶かし形を崩してその場に捨てたんだ。
少し分からないのは、どうして溶かした像をそのまま持って行かずこんなところに埋めた理由だ。
どうなんだ、クリプいや、怪盗エレメントと言ったほうがいいか?」
「・・・一ついいですか?
遺跡の警備を手薄にしたのはあなたの支持ですか?」
やつは下を向いたまま尋ねた。
「そうだ。
遺跡を出るときに持ってなかったのだから、像はまだ遺跡の中にあると考えた。
犯人としては一刻も早く回収したいはずだから、わざと遺跡の警備を手薄にすれば回収に来ると考えたんだ。
案の定その通りになったな。」
するとやつは頭を振りながら顔を上げた。
「いやいや見事です。
今回の仕事の誤算はあなたがいたことですね。
しかたない、おとなしく捕ま・・・・・るわけにはいけませんねぇ!!!
やれ!!」
「あいよ、ご主人!!!」
やつの合図で横にいたイグニスが俺達に炎を放った。
「きゃあああっ!!!」
「くっ!!!」
咄嗟のことで狼狽する俺達。
しかし、
「消えよ、炎!!!」
そう一声発し、カーラさんが杖を一振りする。
すると炎は一瞬にして消え去った。
「な・・・・!?
アタイの炎が・・・・!?」
「貴様程度の魔術で私を倒せると思ったか?
私はこの遺跡および町の管理をファラオ様より預かっているのだ。
盗人ごときに魔術では負けられん!!
私をなめるな!!!」
次の瞬間、彼女の手から無数の魔力の鎖が現れイグニスを縛り上げてしまった。
「くそおっ!!離せ、離せ!!」
「無駄だ。貴様の力ではその戒めの呪いは解けん!!」
「・・・くっ、まずい・・・・」
形勢不利を悟ったのかやつは逃げ出そうと走り出す!
「あら〜、相方を置いて何処に行くんですか?」
ナイスな先回りだ、ソノミ君!
俺は後を追いかけ挟み撃ちにする。
するとやつは身を翻し俺に向かって突進してきた。
「うお〜〜〜っ!!!」
なるほど、魔物であるソノミ君を相手にするより人間の俺を相手にしたほうが勝算があると踏んだか・・・
・・・甘いな。
俺は突き出された拳を避けて、アッパーを顎に叩き込んだ。
「ふっっ!!!」
「ぐぎゃっ!!」
堪らず吹っ飛んだその上から、
「ソノミボディプレ〜ス!!」
ソノミ君が圧し掛かって抑えてしまった。
「あ・・あなたは一体・・・?
なんで・・・こんなに・・・強い・・・?」
「俺の名はコレックだ。
これくらい強くないと助手に襲われるんでな。」
そこにヴェラさんが遺跡のマミー達を引き連れ戻ってきた。
「皆さんお待たせしました!」
やれやれ、一件落着か・・・



やはりクリプが怪盗エレメントだった。
奴はなぜ像を庭に埋めて隠したのか。
この疑問は奴へのその後の尋問で明らかになった。
当初の計画では像は盗んだ後すぐに遺跡から持ち出すつもりだった。
ところが俺のアドバイスを受けたヴェラさんの指示で外部の人間に対するチェックが行われ、像が見つかりそうになったので咄嗟に庭に埋めて隠したらしい。
あとは大体俺の推理通りだった。
奴にとって俺達の存在はあらゆる意味で想定外だったわけだ。



次の日の昼、俺とソノミ君は町の入り口でヴェラさんに見送られていた。
「本当にありがとうございました。でもどうしてトリックが分かったんです?」
「アイスだよ。」
「アイス?」
「ソノミ君が口の周りに解けたアイスを付けてるのを見て気づいたんだ。
金属は高温で溶けるってことにな。
しかしすまないな、俺が空気穴の存在に気づかなかった為に、守る対象だった像を溶かされてしまった・・・」
「仕方がありません・・・
でも犯人が捕まっただけでもいいことです。」
「そうですよ、先生。
終わりよければすべて良しです!」
・・・時々ソノミ君の楽観ぶりがうらやましくなるな。


「じゃあ、そろそろ失礼するよ。」
「ヴェラ、また何かあったらいつでも訪ねてきてね!」
「お〜い、お〜い!
待ってくれ!」
「?」
出発しようとする俺達を呼ぶ声がする・・・
「はぁはぁ、間に合ったな。」
「カーラさんか?」
「お姉さま、どうしたんです?」
猛スピードで走ってきた彼女は息を整え俺の方を向いて頭を下げた。
「探偵・・・じゃなかった・・・コレック殿!!
今回の事件の犯人逮捕への協力まことに感謝する。
後、初めてお会いしたときの無礼な態度を許して欲しい。」
・・・いきなりかしこまった態度に出られると、こっちも戸惑うな・・・
「いや、俺はヴェラさんから依頼があったからやったんだ。
それにあった時のことも気にしてないから顔を上げてくれ。
あと、俺のことは今まで通り探偵でいいよ。」
「・・・すまない。」
ようやく彼女は顔を上げた。


「で、何のようだ?」
「ああ、そうだった!
渡したいものがあるんだ。」
そう言って彼女はポーチの中から包みを取り出し、俺に渡した。
包みを開けるとそこには立派な銀の首飾りがあった。
「一体これは・・・?」
「あなたの働きに対する謝礼だ。
つけると知力が強化されるといわれる物だ。」
「しかし、これはかなり高額な物じゃないのか?」
「私達の窮地を救ってくれたのだ。
この位安いものだ。
それに、ヴェラはあなたに独断で依頼を出した。
なら報酬もそんなに多く出せないはず。
ヴェラの出せなかった分の埋め合わせと思って貰ってほしい。」
「分かった、ありがとう。」
俺は首飾りを受け取ったが、残念なことに俺はあまり装飾品などに興味はなかった。
ふむ、この首飾りをどうするか・・・そうだ!!
「ソノミ君、この首飾りは君にあげるよ。」
「ええーーっ!!
いいんですか!?」
「ああ、もともとこの依頼を受けるきっかけは君が作ったからな。
まあ、ボーナスだと思ってくれればいい。」
「わーーい、ありがとうございます!!」
早速、首飾りを付ける彼女。
この首飾りの力で少しは助手として成長できればいいんだが・・・
「ソノミ、すごく似合ってるよ。」
「ありがと、ヴェラ。
おおっ、なにか頭が冴えてきました!
さあ先生、事務所に帰りましょう!」
勢いよく出発する彼女だったが、
「おい待て、ソノミ君!
そっちは反対の方角だ!」
首飾りの力も彼女には効かないらしい・・・
そんなことを考えつつ俺はヴェラさんとカーラさんに見送られ、ソノミ君の後を追いかけるのだった。






終わり


11/02/03 19:35更新 / ビッグ・リッグス
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■作者メッセージ
これで完結です。
そう言えば、この話の元ネタをずばり当てた方がいて感想を見てびっくりしました。
では最後まで読んでいただきありがとうございました。

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