読切小説
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大好きなのじゃ!
昼下がり、とある町のとある家にて。
「あ〜にう〜え〜っ、膝を借りるぞっ。」
そう言ってソファで読書をしている男の膝に、男と向き合うような形でバフォメットが入り込む。
了承も取らずにした行為であったが、男は怒ることをせずただ本を畳んだ。
「どうしたんだ、ナン・・随分といきなりじゃないか?」
ナンと呼ばれたバフォメットは、にこりと笑って返す。
「まあそれはそうじゃが嫌では無かろ?現に兄上は笑っておるしの。」
言いつつ男に顔を近づけるナン。
対して兄上と呼ばれた男、ギリアは笑いながら彼女を持ち上げた。
「まあな。
血が繋がってないとはいえ、お前から兄と慕われて悪い気はしないさ。」
そう言ったかと思うと今度は胸元に抱き締める。
「それに、この抱き心地だろ?
ん〜・・ああ、可愛いなあこんちょくしょうめぇ〜・・」
「兄上こそ優しくて素敵なのじゃ〜。」
抱き締められ撫でられつつ、笑うナン。
対してギリアは、笑いながら優しく彼女の頭をグリグリと撫でまわす。
「あんだと〜?
それを言うならナンだって、可愛いだけじゃなくって
サバトに居る時の威厳バリバリの姿のカッコ良さだろ、
それに偶にドジやらかした時の慌ててる姿だって素敵だぜ?」
口々にナンの良い所を言っていくギリアに、ナンも対抗意識を燃やした。
「なにを〜!それならわしも言ってしまうがの、
兄上だって只優しいだけでなく、間違いを見つけてくれる聡明さ、
加えてそれをあまり傷つけぬように言葉を選べる賢さ、
自らを抑えてまでも争いを止めさせようとする器の大きさじゃろ、
後はぁ〜・・」
「っつ、おいナン!お前ばっかりずるいぞ!
俺だってまだ思いつくぞ、ホットケーキ食ってるときの笑顔だろ、
消毒液塗ってるときちょっとしみて泣きそうになってた顔だろ、
後は〜・・」
「あ、兄上こそ喋ってばかりではないか!わしだって・・」

言い合うこと数十分。
二人は満足そうな顔をしてソファに横になっていた。
ナンは男の上に乗って、さながらトト○の某シーンのようだ。
「ふぅ〜・・この辺にしとこう、ナン。」
休戦を持ち出すギリアにナンはニヤニヤ笑って挑発的な言葉をかける。
「ほほ〜ぉ?それはわしに勝てっこないと思ったからかの?」
「違うっての、俺だってまだまだ言えるけどな。
でも、言い合うよりその時間をお前とぐうたらする時間にあてた方が
楽しいだろうなってそんだけだ。」
しかしそこは彼も手慣れた様子で、挑発をかわす。
「そうじゃなぁ・・言い合っておるのも楽しいが・・うむ、やっぱり兄上の言う通りじゃの!
じゃったらこうして・・っと。
ふふん、兄上の胸に頬ずりしてやるのじゃ〜。」
ナンも同意して、宣言通りギリアの胸に頬を擦り始める。
彼はそれを見ながらほっこりとした笑顔で話しかけた。
「はは、全くお前は本当に可愛い奴だなぁ〜・・。
教団の人達に見せて、こいつがお前達が苦戦してる奴のボスだ、
な〜んて言ったらどうなるかねぇ〜。」
「もちろん、奴らのボスがこんなに可愛い訳がない、に決まっておろう。」
冗談めかした言葉に、冗談で返すナン。
しかし彼は、いやいや、と別の可能性を示した。
「分かんないぜ?隠れロリコンが、
頬ずりされてた奴俺と代われ!なんて誰も居ないところで言うかもしれん。」
対して難しい顔になるナン。
「むむ、それは困るのう・・わしの頬ずりは兄上専用じゃからな。」
「それは当然だ、俺の胸だってナン専用だぜ。」
「じゃよなじゃよな!!ふふん兄上も分かっておるのう!!」
「それこそ当然ってものだぜ、俺はお前の兄上なんだからな!」
「然り!然り!なんてのぉ〜!!」
盛り上がっていく二人。
そこには笑顔だけが限りなくあった。

そんな風にしてだらだらと夜まで過ごした二人。
夕食まで済ませた後、二人は湯船で向き合っていた。
「のうのう兄上。
正直に答えて欲しいんじゃが・・やはり胸は大きい方が良いのかの?」
「どうした急に?そりゃ俺だって男だからまあ大きい方が・・」
いきなりの質問に素で返すギリア。
その言葉は少なからずナンに響いた。
「そうか・・そうじゃよな。
・・兄上程の男とて、巨乳の誘惑には勝てんのか・・。
くぅっ・・忌々しきはあのばいんばいんよ・・」
俯いて呟き始めた彼女を見て、
ギリアはハハと笑ってその角を根元からなぞる。
彼女はその優しい手つきの気持ちよさに、んぅ、と呻いて彼を見上げた。
見上げた先にある自らの兄上の顔は穏やかであった。
「確かにそうだがよ。
俺がお前を好きになったのはまず中身の方だったんだぜ?
だから、胸の嗜好くらいでお前から離れるなんて事無いから安心しろよ。」
笑って言うギリアだったが、ナンの表情は晴れない。
「そう言ってくれるのは嬉しいがの・・。
でもやっぱり悔しいものは悔しいのじゃ・・。」
落ち込んだままの彼女。
それを見てギリアは「全く・・」と彼女の胸元に顔を近づけていき、
「んぅ・・!?兄、上ぇ〜・・」
その壁面にある小さな突起を舐め始めた。
「いき、なり・・何を・・!」
ナンは抗議の声を上げるが彼は耳を貸さず舐め続ける。
「ひ、や・・兄上ぇ・・そんなに、されたらぁっ・・」
彼女の顔が赤く染まり湯の中へ倒れそうになると、
ギリアは片手を回し彼女を支え、やっと言葉を口にする。
「これで分かったか、ナン?
胸にしたって、お前のも大好きなんだぞ。」
「ふぁ、あ、兄上・・っ、分かったのじゃ・・」
息を荒くしながらも答えるナン。
その答えに彼は満足そうに微笑むと、再び緩やかな壁面に顔を埋めた。
「大きいのもそれはそれで気持ち良いらしいけどさ・・」
そのまま額をそこに擦りつつ続ける。
「皆が注目しない分、この感触を俺だけのものにできるっていう
優越感があるって言うかな・・」
少々失礼ではあったものの、いちいち素直な彼の言葉はナンの気持ちを明るくさせた。
「兄上、注目されないというのはこの際目を瞑るとして・・
正直嬉しく思うぞい、その言葉、ありがとうな。」
見た目の年相応の笑顔となったナンに、
胸から顔を離したギリアは安心したように自身もまた顔を綻ばせた。
「お、やっと笑ったな。
やっぱりナンは沈んでるより笑ってる方が似合うよ。」
それを聞くと彼女はニンマリと笑って無い胸を張る。

「そうじゃろうそうじゃろう!
何せわしの笑顔は評議会にて億のロリコン殺しと言われた代物じゃからな!
それそれ、もっとわしを笑わせてみるが良い!!」
自慢して調子に乗るナンを、ほんとに可愛いなあ、と思いながら
叩きつけられた挑戦状に彼もニヤリと笑う。
「よーし分かった!滅茶苦茶笑わせてやるから覚悟しろよ、ナン!」
「おお?よしよし期待してやろうではないか!」
短く話した後ギリアは両手を彼女の腹、もっと言えば脇腹に回した。
「・・兄上?」
ナンが嫌な予感を感じてその言葉を発したのとほぼ同時に
「あひゃっ!?あにぅ、えっはひ、ひゃはふぅひゃははは!」
ギリアは彼女の脇腹をくすぐり始める。
「あに、うえっ、た、確かにひっ・・
笑わせっろとはいっひゃあっ、くすぐれとは、いっひぇひひひ・・」
「何ぃ〜?聞こえんなぁ〜?」
抗議の声にもギリアはくすぐることをやめはしない。
「あひゃっ、あ〜にひっ・・う〜えへぇ〜!!」
風呂場に彼女の笑い混じりの悲鳴が響くのはそれからそう長くはかからなかった。

「全く、兄上は意地悪なのじゃ。
その癖こうやって優しい所もあるから尚更性質が悪い。」
布団の中、ギリアに腕枕されながら彼の方を向いたナンが言う。
言葉とは裏腹にその表情は楽しげだ。
「しょうがないだろ、な〜んかそうしたくなっちまうんだから。
好きな奴ほど意地悪したくなるとかいうあれだよ。」
彼の言い分にナンは楽しそうに呆れの溜息をつく。
「兄上よ・・それではまるで子供じゃ。
折角なのじゃからもっと格好つけて言ってみてくれ。」
言われたギリアは刹那の後思いついた言葉を口にした。
「そうだな〜こんな意地悪をしても大丈夫だっていう信頼の証って事で、どうだ?」
信頼、それもギリアが彼女の事を分かっているという事からくるもの。
おどけた調子でありながらも嘘のないその言葉に、
「んむ、合格じゃ兄上よ、惚れ直してしまいそうじゃ。」
ナンはそう言って彼に抱きつく。
「ほんとに惚れ直してくれたっていいんだぜ。」
見上げられたギリアはそう言い、
枕にしている腕を曲げて彼女の体を包むように抱き締めた。
「ふふ、それは無理な話じゃ。
現在進行形で惚れ続けておるんじゃから、の。」
区切った後の言葉を言う瞬間片目でウィンクをするナン。
その言葉と仕草にギリアの心は改めて射抜かれていた。
「そっか・・まぁいいや。
お前が出来ないんなら、俺が改めて惚れるまでよ。」
言って彼女の額に軽くキスをするギリア。
「ふふん良いぞ、好きなだけ惚れるが良い!」
「おうよ、お前が嫌って言っても惚れてやる!」
「くふふ、それは楽しみじゃのぅ!」
有頂天になり話す二人。
その盛り上がりはギリアが先に眠ってしまうまで続いた。

「・・本当に、兄上は卑怯で意地悪い人間じゃ。
あれだけ楽しんでおきながら先に寝てしまうとはの。」
自らを抱き締めたままの穏やかな兄の寝顔を見つつ語りかけるように呟くナン。
その表情は兄を慕う妹のそれでありながら、まるで弟を見守る姉のようでもあった。
「まあそういう、わしに負けず劣らず子供っぽい一面も好きなんじゃがの。」
言って彼の額に軽くキスをするナン。
「これは兄上が寝る前にした事へのお返しじゃ。
わしも子供じゃからやられっぱなしは好きでないのでな。」
言って抱きつく力を更に強める彼女。
彼女の言葉はまだ止まらない。
「それにの兄上。
さっきはそれこそカッコつけてしまったが、あの言葉嬉しかったぞい。
惚れるのは何度でも良いとはそういう事でもあるんじゃよ。」
瞬間ギリアの口がゆっくり動き、分かってる、という言葉を紡いだ。
恐らく寝言だっただろうがナンにはその唇を奪わずにはいられなかった。
ギリアが起きないのを良いことに・・まぁ別に起きても良かっただろうが・・
彼女はその甘さと心地よさを存分に堪能し、
結局起きなかった兄を愛おしそうに見つめ恍惚の表情で溜息をついた後に
「何度でも言うぞ、大好きじゃよ兄上・・」と囁いてその胸に埋まり目を閉じる。
その寝顔は紛れもなく安心しきった妹の顔であり、一人の女の顔であった。
14/05/15 14:02更新 / GARU

■作者メッセージ
俺はロリコンじゃない!ただ兄と呼ばれたいだけだ!
出来れば兄上とか兄さんとか呼ばれたいなッ!
そしてこちらからも頭を撫で撫でして二人してにやけていたい!
・・ハッ、これでは人が言う所のシスコンか!?
むむむ・・?待てよ?
バフォ様は精神的に年上でありながら年下!?
姉萌えと妹萌えを同時に満たせる究極の対シスコン兵器と言う事か!
流石バフォ様!俺の欲望をいとも容易く満たしてのける!
そこに痺れる、憧れるゥ!!

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