番外編「八日目夕方の雑多イベント」
［始まりの森丘・封印の間］
ベルンたちが入った封印の間、入口。
倒れて動かぬガーディアンを、ひとりの白衣を来た女性が調べていた。
「・・・ふーむ・・・」
その時、ざりっざりっと足音を立てて、リーフ・ライアーが女性に近づいていった。
「『ジーニアス』先生。なにかわかりましたか」
ジーニアスと呼ばれた女性は、『蛇の下半身』からぐるりと回し、リーフを正面に据えてメガネを取った。
「なんにも。ベルンくん、だっけ？彼の指輪が、如何にこのガーディアンに作用していたのか、全くわかんない。これ、相当複雑で、古いものみたい。私より、旧魔王様時代の魔法回路を知る者の助けが必要よ」
エキドナの『ジーニアス・ライアー』。リクラスト学園の教師である。
専攻学科は『補助魔法学科』及び『魔法回路学科』。後者は特別な学科で、パペットマスターの必修科目だが、それはおいて置く。
「貴女も旧魔王時代から生きているお方でしょうに」
「私が魔法回路に触れたのは魔王様が代わられて数年経ってから。まだまだ初心者なの」
「60年の年の功も役に立ちませんか」
「リーフちゃぁん？お姉ちゃんに絞め殺されたいかなー？」
ちなみに、リーフとジーニアスは義姉弟である。（リーフの兄がジーニアスと結婚）
「冗談はさておき、トラップに関しては色々と面白いことになってましたよ」
「・・・無視なの、リーフちゃん？」
「ツッコミを希望ですか？似合わないです」
「兄嫁ですが義理の弟が容赦ないです・・・」
「ふざけないでください。さっさと真面目な話に戻しますよ」
「・・・で、面白いことって？」
ジーニアスが小首を傾げて聞くと、リーフは腕組みをしながら言った。
「まず、入口トラップの触手。あれの反応術式を組んだのはファ先生なんですが、今日、術式を確認したところ、元々、生徒は例外なく侵入できないように組んであったのに、『特定の条件に合った男性』を引き込むように『組み換えられていた』そうです。侵入してからの触手トラップは正常に作動していたようですが。
次に、安らぎの間ですが、あそこは私の仕掛けた、催眠ガストラップがあったはずなんですが、何者かによって解除されていました。ベルン・トリニティの話から、彼やサティア・ウィーリィが解除したようではないようです。
さらにここ。この封印の間の扉の鍵は、『私が作った最難度の鍵』だったです。ところが、ベルン・トリニティの話では、数回ピッキングを試みたところ、解錠できたとのこと。確かにベルン・トリニティのピッキング技術は一回生の中では素晴らしい方ですが・・・正直、彼に解錠できたのはおかしい」
そこまで聞いて、ジーニアスは眉をひそめ、結論を言った。
「・・・つまり、誰かが、ベルンくんたちが封印の間に侵入、さらにバルフォスちゃんを解放できるように仕組んだってこと？」
「最悪、それが考えられます。さらに、ベルン・トリニティの話では、この封印の間の存在を、『お宝のある部屋』とボカして、未だ見つからぬ不審者３人組に情報を流した輩もいます。同一犯と考えると、いろいろ辻褄が合わせられます」
「う〜ん・・・誰なのかしら？」
ジーニアスが首を傾げる。そこに、リーフが尋ねた。
「・・・ところでジーニアス先生。貴女は、先週の月曜日から三日前まで突然休暇をとられていましたが・・・どこに行っておられたのですか？兄を置いて」
ピクリと眉を吊り上げたジーニアスが、リーフを睨んだ。
「・・・なに？リーフちゃんは私を疑うの？」
「バルフォス殿の封印場所を知り、学園のダンジョンのトラップに手を加えられる人物は相当限られます。部外者はそうそう入れないし、学園関係者でも封印場所を知る者は一握り。さらに実力があるとすれば・・・まず、貴女が疑われても仕方ない。第一、一週間前にここを私、ファ先生と午後の講義まで潰して見回った際には、こんな異常は見受けられなかった。教師の中で一番自由な時間を持っていたのは、貴女なんですよ、ジーニアス先生」
心外そうにするジーニアスの目をギロリと睨むリーフ。
しばらくして、ジーニアスの方がわっと泣き崩れた。
「ごめんなさい、刑事さん！私がやりました！」
「ふざけないでください。兄にヘソクリの在り処を教えますよ」
「ヘヘヘヘソクリなんて、アリマセンヨ？」
「ふざけないでください」
「はい、正直に言います。休暇中は昔の友達と遊んでました。マジです。嘘吐いてません。だからヘソクリの場所は言わないでぇ・・・飲む時に必要なのよぉ・・・」
よよよとリーフに泣きつくジーニアスの様は、どう見ても60過ぎのババァには見えな（
「・・・一応の確認だけですよ。初めから疑いは薄いですから」
「・・・信じてくれるの？」
「一応、裏は取りますけどね。あ、ちなみにジーニアス先生のヘソクリの在り処など、私は知りません」
「・・・・・・ぇ？」
「ま、ヘソクリの『存在』は確認できましたが。また困った時の担保にさせていただきましょう」
リーフが淡々と告げると、ジーニアスはみるみるうちに顔が青ざめた。
「は、謀ったのね！？」
「私の得意分野ですので」
「あーもー！この義弟、可愛くなーいー！！！」
「私が可愛く見えるなら眼科に行かれた方がよろしいかと。さ、帰りましょう。報告に行きますよ」
「待てこの変態レザー義弟ぉーっ！」
そういう会話ののち、ふたりは葛藤の間を歩いて行った・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
［遠方の田舎町、ウィルベル］
町の裏に山、町を出れば広大な野原。
そんな田舎町、ウィルベルの一角の店に、『金属細工店』と『冒険家』を兼業する夫婦がいた。
今、その店にひとりのメデューサが入店した。
『カランカラ〜ン♪』
「いらっしゃいませ〜♪あ、リディアさん！おかえりなさい！」
店に入ったメデューサに、店番の女性、『メリッサ・ブラウン』が眩しいくらいの笑顔で挨拶した。
「ただいま、メリッサちゃん」
ロングヘアーに目を見張る巨乳。
この店の元店主（今でも現役ではあるが）の妻、『リディア・アルカディア』である。
「あの人と、フォンの坊やは？」
「工房にいますよ。呼びましょうか？」
「いや、いいよ。もうしばらくしたら閉店だし、のんびり待つよ」
そう言ったリディアは店に据えつけられた椅子に腰？を下ろした。
「久しぶりの旧友と飲むのはよかったよ。エキドナって種族の友達でね、『サティア』の通ってる学校で教師やってるらしいんだよ」
「へぇ・・・コネ、作って来ました？」
「それじゃあの子のためにならないだろう？あの子が友達の教科を選んでたら、厳しくしてくれって言っといたよ」
「ははは・・・選んでるといいですね」
ふたりが他愛ない会話をしている時、店の奥からふたりの男性が出てきた。
「おかえりなさい、お義母さん」
「リディア、おかえり」
片や隻眼の優男、片や筋骨隆々のハゲ男。
それぞれ、リディアの娘婿の『フォン・ウィーリィ』、夫の『ミッド・アルカディア』である。
そして、このフォンこそ、サティアの父であり、金属細工店店長、兼、有名冒険家（冒険についての著書が有名）であった。
「あ・な・た〜〜〜♥」
「リ・ディ・ア〜〜〜♥」
瞬間、リディアがミッドに抱きつき、ミッドがリディアを抱きしめてくるくる回り始めた。
「ただいま♥元気だった？寂しくなかった？」
「もちろん寂しかったさ！今か今かと毎日お前が帰ってくるのを待っていたんだ！・・・今夜は寝かせんからな♪」
「やぁん♥あなたったらぁん♥」
「うはははははは！」
（あーぁ、始まったよ・・・）
鬱陶しいほどハートマークを乱舞させるふたりのイチャイチャに、メリッサはやれやれという雰囲気でため息を吐き、フォンは苦笑いしながら『OPEN』となっていた札を『CLOSE』に切り替えた。
「あははは・・・♥」
「ふふふふ・・・♥」
「・・・フォン兄、辛くない？コレを結構見せつけられてさ」
「別に？仲がいいなぁって、羨ましく思うよ」
「・・・私は正直うんざりだわ・・・これが独り身の妬みなのかなぁ」
「なんでだろうねぇ？メリッサ、こんなに可愛いのに・・・なんで相手が見つからないんだろう？」
フォンが首を傾げるのを見て、メリッサは、大きく、ため息を吐いた。
（・・・フォン兄に見合う人がいないからに決まってんじゃん）
「・・・どしたの？メリッサ？」
「べつに、どうも・・・」
「フォ〜ン〜？お楽しみのところ、ちょ〜ぉっといいかしらぁ？」
フォンとメリッサのふたりが店の入口を見ると、まるでホラー映画のように細く扉を開けて、外から首を突っ込んだメドゥーサ、『シェリー・ウィーリィ』が顔を引きつらせていた。
彼女が、サティアの母、フォンの妻である。
「ど、どうしたのさ、シェリー？こ、怖いよ？」
「フォン、貴方・・・浮気してるでしょ・・・」
その一言に、フォンはぎょっと目を見開いた。
「バカな！？僕はシェリー一筋だよ！まかり間違っても、浮気なんかするもんか！」
「・・・本当に？」
「うん！」
「絶対？」
「もちろん！」
「じゃあこの手紙はなによ！？」
そう言って、シェリーはフォンに一通の手紙を投げつけた。
その手紙には『Dear My Fon（愛しい私のフォンへ）』と書かれており、それから本文が続いていた。
「え？・・・あぁ、これ？」
「中身は読んだわよ！貴方、この差出人のヴァンパイアのダンスパーティに行くんでしょ！？私に内緒で！酷いわ！フォンは浮気しないって、思ってたのに！」
ぎゃいぎゃいとまだ話を続けるシェリー。その前で頭を掻いて困ったようにするフォン。
そのふたりを見て、メリッサが肩を竦めた。
「今度はこっち？久しぶりの、シェリーの勘違い嫉妬劇場、はーじまーるよー、って？」
「・・・我が娘ながら、恥ずかしいな」
いつの間にやらイチャイチャをやめていたミッドも、頭を抱えた。
「・・・シェリー？」
「なによ！？」
「そろそろ、ネタばらし、していい？」
「・・・ネタばらし？」
フォンはぺらりと手紙をシェリーに見えるように向け、差出人の『From,Cury-D-Irminas』を指差した。
「この人、娘さんたちが僕の本のファンで、いっぺんでいいから会いに来て欲しいって前々から言ってきてたんだ」
「・・・へ？」
「でさ、ほら、今度、ヴァクレーン地方に、僕ら旅に行くだろ？この人、ヴァクレーン地方に住んでるから、そこで寄らせてもらっていいですか？ってこの前手紙送ったんだ・・・この前、『とある方に宿を貸してもらう』って、言ったろ？」
そこまでフォンの話を聞き、シェリーが顔を真っ赤にさせ、はにかんだ笑顔をした。
「あ、あはは！私ったら、すっごい勘違いしてたわけ！？」
「うん。しっかりしてよ。僕がシェリー以外の人を好きになるわけないんだから」
「そうよねぇ！あははは！」
「あはははは・・・あ」
「あははは、じゃないわよこのバカ娘ェッ！！！」
その時、シェリーの背後からリディアがシェリーのこめかみに梅干しを食らわせた！
「フォン坊やを疑うとはなにごとだ！フォン坊やを疑うとはなにごとだ！大切なことだからもう一回！フォン坊やを疑うとはなにごとだ！」
「あいだだだだだだだだ！？ママいつの間に帰ってきだだだだだだだ！！ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃぃ！！！」
シェリーのこめかみとリディアの拳の摩擦によりぶすぶすと煙が出るくらいの梅干しに、シェリーは涙を流して許しを懇願した。リディアは鬼のような怒りの形相をし、フォンはあたふたとしながらリディアをなだめた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「まぁ、あれだな・・・サティアが学園に行って１週間か」
夜、フォン自宅にて、夕食をみんなで食べ終えたミッドがポツリと言った。
「そうですねぇ・・・お婆ちゃん、寂しいわ」
フォンの母、スケルトンの『エリィ・ウィーリィ』がほぅと息を吐きながら言った。
「学園で都会出の怖い生徒に絡まれてないかしら？」
「私が軽く鍛えてあげたんだから、大丈夫ですよ」
エリィが心配そうに言うと、リディアがエリィの肩を撫でて言った。
（・・・幼少のサティアに木の板を割らせる練習させるとか、やめて欲しかったけどね）
「シェリー？なんか言ったかい？」
「いえ、なにも」
「ワシ的には・・・サンドラとか、トリニティとか、あそこらへんが手を出さんか心配だがな・・・」
腕を組んでうーむと悩むミッド。それに反応したのはシェリーだった。
「別に、ロックくんやベルンくんが告白して、サティアがOKしたならいいじゃない。パパはいや？」
「・・・サティアが『お祖父ちゃん！彼氏ができたの！』とか言ってきたら、ワシゃ泣くかもしらん・・・」
モリモリの筋肉を縮めてよよよと泣くミッドに、女性陣が微妙に引いた。
「ふ、フォンは、どうなの？サティアちゃんが彼氏として、あの子たちを連れてきたりしたら？」
「僕も、別にいいよ。サティアが選んだなら、それでいいさ」
にっこりと笑って言うフォンに、問いかけたエリィは「そう」と言って微笑んだ。
「・・・ま、もしサティアを泣かしたら殺すけどね」
笑顔で、それはそれは曇りのない笑顔で言ったフォンの言葉に全員がギョッとした。
「・・・え、えと？フォン坊や？聞き間違いかしら？今・・・ころ？」
「サティアを泣かしたら殺しますよ、って言ったんです」
これまた笑顔で言うフォンに、サティアが心配になった。
「ま、まさか、フォン、刃傷沙汰とか・・・」
「え？まさか。下手したら僕が負けるよ」
「・・・え？？？」
「冒険したり、本書いたりして得た人脈とかで社会的に殺すから」
にっこり笑ったフォンの表情の裏の闇に、全員がゾッとした・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
［リクラスト学園］
［文科系サークル部室棟］
『カチャカチャカチャカチャ・・・』
とある部屋で、タイプライターの音がけたたましく鳴る。
その時、扉が開き、メガネをかけた男子生徒が入ってきた。
「・・・あれ？『舞』部長、まだいたんすか？」
「うん。今晩中に書き上げたい原稿があるからさ」
舞と呼ばれたカラステングは、足で器用に足元にあるタイプライターキーを押し、書き上げた『原稿』にチェックを入れていた。
「もう夜の７時半すよ？また寮長に怒られても知りませんよ」
「一部屋一部屋みんな見回ったりしないから。今晩はここに泊まるし」
「知らないっすよ〜・・・ところで、原稿どんなんすか？読んでみたいっす」
「勝手に読んでいいよ。数枚あるけど、一枚に収めるつもりだから、どれを見てもネタは同じだから」
そう言われ、男子は原稿を一枚取った。
「えーと・・・・・・・・・は！？」
そして、目を見開いた。
「ちょっ！？部長！？こんなネタ大丈夫なんすか！？」
「なにー？信憑性はお墨付きだよ」
「それじゃないっす！こんなネタ、生徒会風紀委員部に喧嘩売るようなマネっすよ！？」
「生徒会が怖くてこの部続けらんないよ」
のらりくらりと無視する舞に、男子はため息を吐いた。
「マジ知らないっすよ？生徒会から活動停止くらっても」
「ふふ〜ん♪今回は後ろ盾もあるからだいじょび、だいじょび」
「・・・勝手にしてください。俺、帰りますから」
「おつ〜」
ため息を吐いた男子は扉を開け、『学園新聞部』の扉を閉めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
［選択肢］
放課後、どこへ行こうかな？
１、寮へ
２、学校へ
３、図書館へ
４、学生購買園へ
５、食堂へ
６、街へ
７、ジパング喫茶店へ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
↑で、１番を選んだ人のみ、下の選択肢を選んでください。
寮へ戻り、ケータイで・・・
Ａ.ロックとだべる
Ｂ.ネフィアとだべる
Ｃ.クラリアを『呼びだす』
Ｄ.ラトラを『呼びだす』
Ｅ.ミルキィを『呼びだす』
Ｆ.成美を『呼びだす』
ベルンたちが入った封印の間、入口。
倒れて動かぬガーディアンを、ひとりの白衣を来た女性が調べていた。
「・・・ふーむ・・・」
その時、ざりっざりっと足音を立てて、リーフ・ライアーが女性に近づいていった。
「『ジーニアス』先生。なにかわかりましたか」
ジーニアスと呼ばれた女性は、『蛇の下半身』からぐるりと回し、リーフを正面に据えてメガネを取った。
「なんにも。ベルンくん、だっけ？彼の指輪が、如何にこのガーディアンに作用していたのか、全くわかんない。これ、相当複雑で、古いものみたい。私より、旧魔王様時代の魔法回路を知る者の助けが必要よ」
エキドナの『ジーニアス・ライアー』。リクラスト学園の教師である。
専攻学科は『補助魔法学科』及び『魔法回路学科』。後者は特別な学科で、パペットマスターの必修科目だが、それはおいて置く。
「貴女も旧魔王時代から生きているお方でしょうに」
「私が魔法回路に触れたのは魔王様が代わられて数年経ってから。まだまだ初心者なの」
「60年の年の功も役に立ちませんか」
「リーフちゃぁん？お姉ちゃんに絞め殺されたいかなー？」
ちなみに、リーフとジーニアスは義姉弟である。（リーフの兄がジーニアスと結婚）
「冗談はさておき、トラップに関しては色々と面白いことになってましたよ」
「・・・無視なの、リーフちゃん？」
「ツッコミを希望ですか？似合わないです」
「兄嫁ですが義理の弟が容赦ないです・・・」
「ふざけないでください。さっさと真面目な話に戻しますよ」
「・・・で、面白いことって？」
ジーニアスが小首を傾げて聞くと、リーフは腕組みをしながら言った。
「まず、入口トラップの触手。あれの反応術式を組んだのはファ先生なんですが、今日、術式を確認したところ、元々、生徒は例外なく侵入できないように組んであったのに、『特定の条件に合った男性』を引き込むように『組み換えられていた』そうです。侵入してからの触手トラップは正常に作動していたようですが。
次に、安らぎの間ですが、あそこは私の仕掛けた、催眠ガストラップがあったはずなんですが、何者かによって解除されていました。ベルン・トリニティの話から、彼やサティア・ウィーリィが解除したようではないようです。
さらにここ。この封印の間の扉の鍵は、『私が作った最難度の鍵』だったです。ところが、ベルン・トリニティの話では、数回ピッキングを試みたところ、解錠できたとのこと。確かにベルン・トリニティのピッキング技術は一回生の中では素晴らしい方ですが・・・正直、彼に解錠できたのはおかしい」
そこまで聞いて、ジーニアスは眉をひそめ、結論を言った。
「・・・つまり、誰かが、ベルンくんたちが封印の間に侵入、さらにバルフォスちゃんを解放できるように仕組んだってこと？」
「最悪、それが考えられます。さらに、ベルン・トリニティの話では、この封印の間の存在を、『お宝のある部屋』とボカして、未だ見つからぬ不審者３人組に情報を流した輩もいます。同一犯と考えると、いろいろ辻褄が合わせられます」
「う〜ん・・・誰なのかしら？」
ジーニアスが首を傾げる。そこに、リーフが尋ねた。
「・・・ところでジーニアス先生。貴女は、先週の月曜日から三日前まで突然休暇をとられていましたが・・・どこに行っておられたのですか？兄を置いて」
ピクリと眉を吊り上げたジーニアスが、リーフを睨んだ。
「・・・なに？リーフちゃんは私を疑うの？」
「バルフォス殿の封印場所を知り、学園のダンジョンのトラップに手を加えられる人物は相当限られます。部外者はそうそう入れないし、学園関係者でも封印場所を知る者は一握り。さらに実力があるとすれば・・・まず、貴女が疑われても仕方ない。第一、一週間前にここを私、ファ先生と午後の講義まで潰して見回った際には、こんな異常は見受けられなかった。教師の中で一番自由な時間を持っていたのは、貴女なんですよ、ジーニアス先生」
心外そうにするジーニアスの目をギロリと睨むリーフ。
しばらくして、ジーニアスの方がわっと泣き崩れた。
「ごめんなさい、刑事さん！私がやりました！」
「ふざけないでください。兄にヘソクリの在り処を教えますよ」
「ヘヘヘヘソクリなんて、アリマセンヨ？」
「ふざけないでください」
「はい、正直に言います。休暇中は昔の友達と遊んでました。マジです。嘘吐いてません。だからヘソクリの場所は言わないでぇ・・・飲む時に必要なのよぉ・・・」
よよよとリーフに泣きつくジーニアスの様は、どう見ても60過ぎのババァには見えな（
「・・・一応の確認だけですよ。初めから疑いは薄いですから」
「・・・信じてくれるの？」
「一応、裏は取りますけどね。あ、ちなみにジーニアス先生のヘソクリの在り処など、私は知りません」
「・・・・・・ぇ？」
「ま、ヘソクリの『存在』は確認できましたが。また困った時の担保にさせていただきましょう」
リーフが淡々と告げると、ジーニアスはみるみるうちに顔が青ざめた。
「は、謀ったのね！？」
「私の得意分野ですので」
「あーもー！この義弟、可愛くなーいー！！！」
「私が可愛く見えるなら眼科に行かれた方がよろしいかと。さ、帰りましょう。報告に行きますよ」
「待てこの変態レザー義弟ぉーっ！」
そういう会話ののち、ふたりは葛藤の間を歩いて行った・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
［遠方の田舎町、ウィルベル］
町の裏に山、町を出れば広大な野原。
そんな田舎町、ウィルベルの一角の店に、『金属細工店』と『冒険家』を兼業する夫婦がいた。
今、その店にひとりのメデューサが入店した。
『カランカラ〜ン♪』
「いらっしゃいませ〜♪あ、リディアさん！おかえりなさい！」
店に入ったメデューサに、店番の女性、『メリッサ・ブラウン』が眩しいくらいの笑顔で挨拶した。
「ただいま、メリッサちゃん」
ロングヘアーに目を見張る巨乳。
この店の元店主（今でも現役ではあるが）の妻、『リディア・アルカディア』である。
「あの人と、フォンの坊やは？」
「工房にいますよ。呼びましょうか？」
「いや、いいよ。もうしばらくしたら閉店だし、のんびり待つよ」
そう言ったリディアは店に据えつけられた椅子に腰？を下ろした。
「久しぶりの旧友と飲むのはよかったよ。エキドナって種族の友達でね、『サティア』の通ってる学校で教師やってるらしいんだよ」
「へぇ・・・コネ、作って来ました？」
「それじゃあの子のためにならないだろう？あの子が友達の教科を選んでたら、厳しくしてくれって言っといたよ」
「ははは・・・選んでるといいですね」
ふたりが他愛ない会話をしている時、店の奥からふたりの男性が出てきた。
「おかえりなさい、お義母さん」
「リディア、おかえり」
片や隻眼の優男、片や筋骨隆々のハゲ男。
それぞれ、リディアの娘婿の『フォン・ウィーリィ』、夫の『ミッド・アルカディア』である。
そして、このフォンこそ、サティアの父であり、金属細工店店長、兼、有名冒険家（冒険についての著書が有名）であった。
「あ・な・た〜〜〜♥」
「リ・ディ・ア〜〜〜♥」
瞬間、リディアがミッドに抱きつき、ミッドがリディアを抱きしめてくるくる回り始めた。
「ただいま♥元気だった？寂しくなかった？」
「もちろん寂しかったさ！今か今かと毎日お前が帰ってくるのを待っていたんだ！・・・今夜は寝かせんからな♪」
「やぁん♥あなたったらぁん♥」
「うはははははは！」
（あーぁ、始まったよ・・・）
鬱陶しいほどハートマークを乱舞させるふたりのイチャイチャに、メリッサはやれやれという雰囲気でため息を吐き、フォンは苦笑いしながら『OPEN』となっていた札を『CLOSE』に切り替えた。
「あははは・・・♥」
「ふふふふ・・・♥」
「・・・フォン兄、辛くない？コレを結構見せつけられてさ」
「別に？仲がいいなぁって、羨ましく思うよ」
「・・・私は正直うんざりだわ・・・これが独り身の妬みなのかなぁ」
「なんでだろうねぇ？メリッサ、こんなに可愛いのに・・・なんで相手が見つからないんだろう？」
フォンが首を傾げるのを見て、メリッサは、大きく、ため息を吐いた。
（・・・フォン兄に見合う人がいないからに決まってんじゃん）
「・・・どしたの？メリッサ？」
「べつに、どうも・・・」
「フォ〜ン〜？お楽しみのところ、ちょ〜ぉっといいかしらぁ？」
フォンとメリッサのふたりが店の入口を見ると、まるでホラー映画のように細く扉を開けて、外から首を突っ込んだメドゥーサ、『シェリー・ウィーリィ』が顔を引きつらせていた。
彼女が、サティアの母、フォンの妻である。
「ど、どうしたのさ、シェリー？こ、怖いよ？」
「フォン、貴方・・・浮気してるでしょ・・・」
その一言に、フォンはぎょっと目を見開いた。
「バカな！？僕はシェリー一筋だよ！まかり間違っても、浮気なんかするもんか！」
「・・・本当に？」
「うん！」
「絶対？」
「もちろん！」
「じゃあこの手紙はなによ！？」
そう言って、シェリーはフォンに一通の手紙を投げつけた。
その手紙には『Dear My Fon（愛しい私のフォンへ）』と書かれており、それから本文が続いていた。
「え？・・・あぁ、これ？」
「中身は読んだわよ！貴方、この差出人のヴァンパイアのダンスパーティに行くんでしょ！？私に内緒で！酷いわ！フォンは浮気しないって、思ってたのに！」
ぎゃいぎゃいとまだ話を続けるシェリー。その前で頭を掻いて困ったようにするフォン。
そのふたりを見て、メリッサが肩を竦めた。
「今度はこっち？久しぶりの、シェリーの勘違い嫉妬劇場、はーじまーるよー、って？」
「・・・我が娘ながら、恥ずかしいな」
いつの間にやらイチャイチャをやめていたミッドも、頭を抱えた。
「・・・シェリー？」
「なによ！？」
「そろそろ、ネタばらし、していい？」
「・・・ネタばらし？」
フォンはぺらりと手紙をシェリーに見えるように向け、差出人の『From,Cury-D-Irminas』を指差した。
「この人、娘さんたちが僕の本のファンで、いっぺんでいいから会いに来て欲しいって前々から言ってきてたんだ」
「・・・へ？」
「でさ、ほら、今度、ヴァクレーン地方に、僕ら旅に行くだろ？この人、ヴァクレーン地方に住んでるから、そこで寄らせてもらっていいですか？ってこの前手紙送ったんだ・・・この前、『とある方に宿を貸してもらう』って、言ったろ？」
そこまでフォンの話を聞き、シェリーが顔を真っ赤にさせ、はにかんだ笑顔をした。
「あ、あはは！私ったら、すっごい勘違いしてたわけ！？」
「うん。しっかりしてよ。僕がシェリー以外の人を好きになるわけないんだから」
「そうよねぇ！あははは！」
「あはははは・・・あ」
「あははは、じゃないわよこのバカ娘ェッ！！！」
その時、シェリーの背後からリディアがシェリーのこめかみに梅干しを食らわせた！
「フォン坊やを疑うとはなにごとだ！フォン坊やを疑うとはなにごとだ！大切なことだからもう一回！フォン坊やを疑うとはなにごとだ！」
「あいだだだだだだだだ！？ママいつの間に帰ってきだだだだだだだ！！ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃぃ！！！」
シェリーのこめかみとリディアの拳の摩擦によりぶすぶすと煙が出るくらいの梅干しに、シェリーは涙を流して許しを懇願した。リディアは鬼のような怒りの形相をし、フォンはあたふたとしながらリディアをなだめた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「まぁ、あれだな・・・サティアが学園に行って１週間か」
夜、フォン自宅にて、夕食をみんなで食べ終えたミッドがポツリと言った。
「そうですねぇ・・・お婆ちゃん、寂しいわ」
フォンの母、スケルトンの『エリィ・ウィーリィ』がほぅと息を吐きながら言った。
「学園で都会出の怖い生徒に絡まれてないかしら？」
「私が軽く鍛えてあげたんだから、大丈夫ですよ」
エリィが心配そうに言うと、リディアがエリィの肩を撫でて言った。
（・・・幼少のサティアに木の板を割らせる練習させるとか、やめて欲しかったけどね）
「シェリー？なんか言ったかい？」
「いえ、なにも」
「ワシ的には・・・サンドラとか、トリニティとか、あそこらへんが手を出さんか心配だがな・・・」
腕を組んでうーむと悩むミッド。それに反応したのはシェリーだった。
「別に、ロックくんやベルンくんが告白して、サティアがOKしたならいいじゃない。パパはいや？」
「・・・サティアが『お祖父ちゃん！彼氏ができたの！』とか言ってきたら、ワシゃ泣くかもしらん・・・」
モリモリの筋肉を縮めてよよよと泣くミッドに、女性陣が微妙に引いた。
「ふ、フォンは、どうなの？サティアちゃんが彼氏として、あの子たちを連れてきたりしたら？」
「僕も、別にいいよ。サティアが選んだなら、それでいいさ」
にっこりと笑って言うフォンに、問いかけたエリィは「そう」と言って微笑んだ。
「・・・ま、もしサティアを泣かしたら殺すけどね」
笑顔で、それはそれは曇りのない笑顔で言ったフォンの言葉に全員がギョッとした。
「・・・え、えと？フォン坊や？聞き間違いかしら？今・・・ころ？」
「サティアを泣かしたら殺しますよ、って言ったんです」
これまた笑顔で言うフォンに、サティアが心配になった。
「ま、まさか、フォン、刃傷沙汰とか・・・」
「え？まさか。下手したら僕が負けるよ」
「・・・え？？？」
「冒険したり、本書いたりして得た人脈とかで社会的に殺すから」
にっこり笑ったフォンの表情の裏の闇に、全員がゾッとした・・・
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［リクラスト学園］
［文科系サークル部室棟］
『カチャカチャカチャカチャ・・・』
とある部屋で、タイプライターの音がけたたましく鳴る。
その時、扉が開き、メガネをかけた男子生徒が入ってきた。
「・・・あれ？『舞』部長、まだいたんすか？」
「うん。今晩中に書き上げたい原稿があるからさ」
舞と呼ばれたカラステングは、足で器用に足元にあるタイプライターキーを押し、書き上げた『原稿』にチェックを入れていた。
「もう夜の７時半すよ？また寮長に怒られても知りませんよ」
「一部屋一部屋みんな見回ったりしないから。今晩はここに泊まるし」
「知らないっすよ〜・・・ところで、原稿どんなんすか？読んでみたいっす」
「勝手に読んでいいよ。数枚あるけど、一枚に収めるつもりだから、どれを見てもネタは同じだから」
そう言われ、男子は原稿を一枚取った。
「えーと・・・・・・・・・は！？」
そして、目を見開いた。
「ちょっ！？部長！？こんなネタ大丈夫なんすか！？」
「なにー？信憑性はお墨付きだよ」
「それじゃないっす！こんなネタ、生徒会風紀委員部に喧嘩売るようなマネっすよ！？」
「生徒会が怖くてこの部続けらんないよ」
のらりくらりと無視する舞に、男子はため息を吐いた。
「マジ知らないっすよ？生徒会から活動停止くらっても」
「ふふ〜ん♪今回は後ろ盾もあるからだいじょび、だいじょび」
「・・・勝手にしてください。俺、帰りますから」
「おつ〜」
ため息を吐いた男子は扉を開け、『学園新聞部』の扉を閉めた。
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［選択肢］
放課後、どこへ行こうかな？
１、寮へ
２、学校へ
３、図書館へ
４、学生購買園へ
５、食堂へ
６、街へ
７、ジパング喫茶店へ
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↑で、１番を選んだ人のみ、下の選択肢を選んでください。
寮へ戻り、ケータイで・・・
Ａ.ロックとだべる
Ｂ.ネフィアとだべる
Ｃ.クラリアを『呼びだす』
Ｄ.ラトラを『呼びだす』
Ｅ.ミルキィを『呼びだす』
Ｆ.成美を『呼びだす』
12/06/27 13:30更新 / ganota_Mk2
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