読切小説
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I am GOD 〜我は神なり〜
「ハーッハッハッハ! 俺は世界一強くなーったァ!!」

ひょんなことから、俺は異世界に転生した!
その時、神っぽいのと対面し、俺は雷や電気を操ること全般ができるチートをもらった!

この世界に来てすぐ、どこかの森で雷を落としまくって、能力の使い方を練習していた。
あらかた試し終わって、さぁこれから俺の天下を取るぞ! と意気込んで、まずはと磁場に乗って飛行し、空中から世界を一望していた。

「お兄さァ〜ん、そういう荒っぽいのよくないよぉ〜」

そこに掛けられる声。
バカな、ここは上空だぞ...。
しかし、俺に敵はいない!

そう思って振り向くと、そこには

ビリッ、ビリリッ!

自分と同じように雷を帯びた、青い獣の特徴を有した女。
この女は、自分と同じように磁場に乗って空を飛ぶ術を心得ているようだ。

「クククッ、なんだ女か」
「女ナメちゃいけないよ、それにいつの世にもいるクソ野郎に女笑われたくないね」

本当に気に障る女だ。

「貴様みたいなやつは...こうしてやる!!」

女に放電攻撃をぶち込んだ!
しかし!!

「あははははっ、くすぐったい〜...。 んぅ、クソ野郎の精とは思えないほど美味しいねぇ〜...」
「......!!」

自分は俗にいう『エネル顔』をしているに違いない。
異世界に来て『我が世の春が来たー!』と思っていたら、さっそく天敵とカチ会ってしまったのだから。

「くっ、ここは戦略的撤退だッ!」

自分は体を雷化させて逃亡しようとした。
...のだが。

「あはははっ、そうはさせないよ〜」

雷化した体は、ものの見事にビリビリ獣女に吸い寄せられて、吸収されてしまったのだった。

「あーれー!」
「あははははっ、君に天下は三日すらこなかったねっ」







ドクン、ドクン

音がする、そしてここは暖かい...

「ここは...」
「気が付いたー?」

どこからか声がする、あのいけ好かないビリビリ獣女の声だ。

「ここはどこだっ! 出せ!!」
「んーとねっ、そこはアタシの子宮の中だよ、君が『これから悪いことするぞー!』って意気込んでたから、アタシのお腹の中に封印したわけ。 しっかし、体を雷にできるとは、ことが早く終わって助かったよ」

異世界に来て半日そこらで幽閉の身になるとは、しかもこんなチートをもらったくせに。

「くっ、出せっ!!」

5億ボルトの放電攻撃をお見舞いする!
しかし...。

「あははははっ、そうやって放電しても、アタシの栄養分として吸収されちゃうだけだよー」

無駄骨だった。

「くっ、お前っ、どうしたら俺を外に出してくれるんだっ、言えッ!!」

力づくで出られないなら、出してもらう方向へシフトするだけだ。

「んーっとね、性根を入れ替えて『今日からちゃんと世のため人のために生きます』って誓ってくれたらいいよー」
「わかった、今日から世のため人の為生きる! だから出してくれ!!」

...と言ったものの、外に出してくれそうな気配は一向にない。

「...なんで出してくれない!!」
「あははははっ、だって君、本心から言ってないじゃないか。 今出したって、また悪いことするにきまってるだろう?」

図星だった。

「なんでそんなことわかるッ、お前には俺の心の中なんてわからないだろう!!」

正論を突きつけてやった、がしかし。

「わかるよぉ、君の力とアタシの力は似ているからね、ちょっとひねった使い方をすれば、お互いの心なんてダダ漏れさァ」

確かに思考は電気信号のうんぬんとかいうけどさ...。
コイツはより捻った使い方をしているから、こっちに心を読ませてないってか。

チートオブチートを得ても、相性により手も足も出ない相手がいるというのは、フィクションではお約束だろう。
だからって、こっちにきて半日も経つ前に出会っちゃうとかなんやねーん!!

「だからさー、ちゃんと心の底からそういうこと言えたら、外の世界に出してあげる。 それまでは赤ちゃんみたいにそこにいなさい♥」
「嘘やろー!!



本日何度目かわからない絶叫。
しかし、獣女の子宮の中からでは、外界には届かないのでした。






「なぁ、ビリビリ女」
「なんだい、ビリビリ男」
「私はちゃんと心を入れ替えた......だから、外に出してくれ!」
「うん、断る!」
「なぜだー!!」

この世界に来てから何日たったかもわからないある日に、何回目かもわからない絶叫をあげる。

「だって心から言ってないじゃないか」
「くっそー、わからないように意識してるのにー!!」
「あはははは、確かに能力の格は君が上だろうね、でも、雷使いとしての年季の差じゃ負けないよ」

年季の差ね...。
たしかにヤハハハハと笑う雷使いの耳たぶも、相性が致命的に悪い主人公相手に、単純な雷撃以外の方法で対抗することができていたしな...。

「クッソー、いつか絶対に、ここから外に出てみせる!!」
「あははは、やってみるといいよー、できるものならねー」





「おい、ビリビリ女」
「なんだい、ビリビリ男」
「この世界がどういう世界か教えてくれ」

時間感覚なんて全くない、だが結構な時が経っているのはわかる。
いい加減、不毛な脱獄以外の方法に目を向けないとダメだを現実を見始めた。

「そうだねぇー、まず人間がいるね。 人間以外には排他的なやつから、人間以外の種族とも共存できる懐の深い奴までいろんなのがいるね」
「...まぁ、それはわかる」
「その人間以外の種族が、アタシみたいな魔物娘っていう種族さ。 人間の男の精...生命のエネルギーみたいなもんかな? を糧に生きているんだ」
「......電撃が精扱いになって、お前に吸収される一方だったのも、こういう理由か...」
「だろうね、その精は人間の男の精液に多分に含まれるんだ、それ以外には汗とかヨダレとか...。 でも、一番は精液さね」
「とりあえず、精液だけ食ってれば生きていける生命体ってか?」
「まぁ、間違ってはいないかな」

なんという究極生命体だ、柱●男なんかメじゃないぞ。

「じゃあよ、俺みたいな能力のやつは、どうやって生きているんだ?」
「うーん、それは千差万別かなー、特に決まった生き方なんてないよ」

そんな何やってもいいんじゃ、ゲーム性として破綻しかけていないかい。
ただ雷落とすだけで食っていける職業とかないかな、ないよね。

「じゃあ、そこは頭ひねるしかないのかー...」
「そういうことだねー」






「なぁ、ビリビリちゃん」
「なんだい、ビリビリ君」
「この世界には『電気』って概念はあるのかい?」
「...聞いたことが無い訳じゃないけど、この国じゃあんまりかな」
「そうか...」

電気の供給業ならうまくやっていけるんじゃないかと思ったが、考えが甘かったようだ...。

「勘違いするなよ、『この国じゃ』あんまりなだけで、外国じゃ上手く活用しているようだぞ、その『ゲンキ』っての」
「『デンキ』な」

外国かー、外国じゃどうしようもないかー...。
...こいつ一緒に行こうって言ったらついてきてくれるかな...。

「.........」

ビリビリちゃんが妙に静かだ。

「......アタシはいいぞ」
「なんの話だよ」
「外国に行くって話」
「......本気で言ってるんか」
「構わないって言ってんだろ、君が世のため人の為生きられる日が来るなら」
「.........」

まったくこいつは、ときおりドキッとさせることを真顔(推定)で言うんだから。

「惚れたか」
「バカを言うな、初対面の男を子宮に封印するような女に惚れるか」
「あはははは、そういうことにしておくよ」





「おいビリリィ」
「なにかな、ビリー」
「やけに外が騒がしい(気がする)な」
「そりゃー結構やばいからね」

なんだと、何が起きている?

「外国には教団ていう魔物娘なんぞと共存なんてできるか! って宗教があるのさ。 その教団の人間が黒船に乗って、割合魔物娘と共存している日本が気に食わなくて攻めてきたのさ」
「...いつの世もいるクソッタレだな」
「本当だね」

自分はコイツの胎内で力のコントロールを身に着けていた、もしかしたら教団の軍団に無双できるんじゃないか。

「言っておくけど、殺しちゃだめだぞ。 あくまで生け捕りだ」
「......なんで、そんな出してやるみたいな流れになってんだよ」
「だってお前」

「心の底から困っている人を助けたいって思ってるだろ」

「...心を読むんじゃないよ」

ビリリィが制限を解いたのか、体が勝手に雷化していく。
そして、自分は超久しぶりの外界に出ることができていた!!

「......お前も雷使いだ、俺の力の使い方を見れば、お前も同じことできるかもしれない。 だから一緒に来て見てろ」
「言われなくてもついていくつもりだ、一人じゃ死なせないぞ」





ワーワー

「追え追え、魔物どもを村へ追い込め!!」
「隊長! 止まってください! よその隊が全滅したと報告があります!」
「なんだと!?」

そのとき、隊長に落ちる雷撃。

「ウガーッ!!」
「隊長ー!!」


そのころ村の上空では...。

「こうすればどれだけ強力な電撃も非殺傷性にできる、アタシの計算は正しかった」
「ただ空中で『頭が沸騰しちゃうよー』ってしてるだけだけどな」

俺たちはかつてのように磁場に乗って飛行していた。
そこから雷を落とすのはかつてと同じである、しかしそのまま俺の力を使っては死人が出る恐れがあった。
そこでビリリィは考えた、かつて自分が教えた『電気』という概念の詳細から、俺が精製した電気を魔物娘の体を通すことで非殺傷性にすることができるんじゃないかと。
魔物娘いえどそれは心配..とも思うかもしれないが、そこはこいつの種族が、雷を操ることに長けた魔物『雷獣』であったことために無問題だった。

雷撃を喰らった教団兵はビクンビクンと痙攣して射精しながら動けなくなっており、そこを形勢が逆転したことに気づいて戻ってきたジパングの魔物娘に襲われて、『おいしくいただかれていた』。

その時、ドンッ!と響く轟音。

「やつら、兵士が残っているのもお構いなしなのね...」

黒船が村へ向かって大砲を撃ってきたのだ!

「見てろ、雷は、電気は攻撃するだけが能じゃない!」

自分は周囲に大出力で放電する。
放たれた雷は膜のように形を変えていき、防壁へと姿を変えた!

「これは...!」
「雷に指向性を与えると、電磁バリア...つまり、結界みたいなもんになるわけよ!!」

神様にもらったチートオブチートで張った電磁バリアは、大火力の黒船の砲撃もやすやすと防いでいた。

「しかしどうする、守っているだけじゃ芸がないぞ」
「それはこうする、だから今は心を読んでその通りに協力しろ」

自分は掌に雷撃を圧縮して光球を出力し始める。
ビリリィは自分の心を読んで、その通りに電力に指向性を与え...

出来上がった光球を、黒船目掛けた思いっきり投擲した。
ゴォォォッと飛んで行った光球は、黒船に衝突すると、轟音を立てて弾けた!

「ウワァーーーーー!!!!」

沈黙する黒船。
中身の人間は全員気絶したようだ、こいつの体で変質させた電気を使ったんだ、まず死にはしない。

「何が起きたんだ?」
「映画でみた使い方だ、EMP...電磁パルスを発生させて、その衝撃波で黒船の中の人間全員を一気に気絶させて無力化したんだ」
「......もう何がなんだか...」

しょうがない、必要な電力が用意できなくて、自分の世界でも満足に扱える代物じゃなかったんだもの。





「なあ、ビリー」
「なんだい、ビリリィ」
「本当によかったのか、外国に行く話」
「いいんだ、ここが俺の居場所だよ」

村にある、彼女の自宅の縁側でお茶を飲みながら話していた。

あれから自分は外国に行く話を考え直した。
もしかしたら教団とかいう奴らは、もう一度この村を攻めてくるかもしれなかったからだ。
だから、自分はこの村を守る者として腰を落ち着けることにしたのだ。

それに、自分は村を救った英雄『雷様』と呼ばれて親しまれていた。
力で天下を取ろうしたなら、絶対にありえなかった結末だ。

(感謝している)
「......おや〜、何か考えているなら口で言わないとわからないよ〜?」

ニヤニヤしながら腕を抱きしめてくるビリリィというあだ名の雷獣。

「俺とお前は相性がいいから、言いにくいことだって心で思うだけで分かり合えるじゃないか」
「ちぇー」

自分は神様にとんでもないチートをもらった。
しかし、その力で天下を取ったって、その先に待っているのは、血を吐きながら走り続けないといけない悲しいマラソンだ。
自分の最大の幸運は、力を得てすぐ、それをわからせてくれる人にであったことだろう。

なにせ、それで悪神として討伐される明日はこなくなって、
守護神としてみんなに親しまれる今日が得られたんですからね。
19/09/07 01:48更新 / 妖怪人間ボム

■作者メッセージ
ドーモ、妖怪人間ボムです。

つい昨日、『アフガン航空相撲』なるものすごいワードを目にして、これは作品にしないといけない! と頑張りました。

ですが、航空相撲がどういうものか考えたところまではよかったものの、四股名と部屋名を考えるところで力尽きました。
リアルのお相撲さんの四股名を考えている親方に自然とこうべが垂れた瞬間でした。

ですが、その燃えカス...雷獣さんの四股名を考えていた時に思い浮かんだアイデアがなんとか日の目を見ました。
妖怪人間ボムという人間は、本人にも全く理解できないと思った瞬間でした。

それだけ難産なアイデアから、あっさり別のアイデアが生まれるんですから、とにかく思いついたアイデアは形にすることが、物書きのコツなのかもしれません。

説教臭くなってしまいましたが、これも歳を喰った証拠でしょうか。

次回もよろしくお願いします。





元ネタ

雷獣さんや男(ビリー)が磁場に乗って空を飛ぶのは、スパイダーマンのエレクトロが元ネタでございます。

電磁パルスはパシフィックリムのレザーバックが元ネタです。

電磁バリアは...特にない。

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