読切小説
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幸せな家族計画
なんというか‥まぁその……。
妻と初めて会った切っ掛けが、空から突然降りてきた。これが正しいと思う。

そして‥いきなり手をガブリ。普通なら痛い筈なのに不思議と痛くなく、寧ろ快楽といえるくらい頭が真っ白になった。
これって……ドMに目覚めた?なんて薄らと思って、あとは………


雀がチュンチュンと鳴く朝。
知らない部屋のベッドで目覚めた。ここは?と思う前に隣に妻の頭。そして布団をめくり……2人とも服を着ていなかった。つまり……あれですか?その……これは‥事後ってヤツ?

!?!?

そうだ落ち着こう。まず落ち着こう。そして2人で話し合おう。そうするべきだ。ここでこっそりと逃げ出すのは男のする事じゃない。

妻が起きてから、傲慢かつ常に上から目線で言われながらも、なんとか話し合えた。話によると熱くも激しい夜だったらしい。つまりヤったと‥。初めてだったのに覚えてないって…畜生。
その‥布団に隠されて、シーツに付いた血の跡が微かに見えた。つまり妻も……。
ただ‥その夜の話の時のみ、打って変わって恥じらうように顔を紅に染めて話すからつい、そのギャップに抱きッとしたら
「何をするっ!!」ってビンタ1発。そして「い、一度夜を共にしたからって……こ、恋人面するな!!」
顔を真っ赤にして、指をプルプルと震わせていた。思えばきっとあれは……


それから転がり込むように、ほぼヒモ同然の同棲をして‥家の中にいる以上、家事全般は強制的に任されて……
まぁ‥そんなこんなで妻の妊娠が発覚して、男として責任を取る。それよりも意外な所で可愛さが出る妻と一緒に居たい気持ちがなによりも強かった。

そして、子供が産まれる前に結婚。傲慢で常に上から目線でも、白のウエディングドレスを着た姿は何よりも愛らしく、一生の宝物にしたい。心の底から決意に近い感情が沸き起こっていた。

程なくして妻が出産。病院のベッドの上で幸せなそうな妻の隣に産まれたばかりの女の子。
「がんばったな」
一言告げて、頭を撫でたら‥意外にも喜びの顔だった。
そして、隣にいる娘を見て‥可愛い。ウチの子供が一番可愛い。これを言う親の気持ちが本当によく分かった。

家事に育児が加わり、愛娘と常に一緒にいられる。だからか自然と苦にはならなかった。

そして十数年の月日が流れて……

口調と態度と性格が妻に似なかったのは‥教育の賜物と信じたい。ただ、それが新たな火種に……

「お母様!!」
「何かしら?」
夜。妻が帰ってきてから、娘は顔を見るなり火が付いたように怒り出した。
「お母様はお父様の事を、召し使いか何かと勘違いしていませんか?」
「そうかしら?」
「とぼけないで下さい!!確かに家はお母様の稼ぎで家は成り立っています。ですが!お父様の内助の功があっての家でもあります」
反抗期?と思いつつ、食器が宙を舞うと困るから然り気無く、テーブルの上を片付けていった。
「それであなたは何が言いた訳?」
「お父様に感謝の気持ちを伝えて下さい。私が知る限り、お母様は一度も言ったり、行動で示していません!」
「それはあなたが見ていないだけよ」
妻と娘は一触即発状態。ここは父として示す所だ。
「お前は寝ていて知らないと思うが、こう見えても母さんとは夜、ちゃんと愛しあっている」
「あなたは黙りなさい!」
「お父様は黙っていて!」
2人から同時に責められた。なぜそこだけ気が合う?
「その命令口調と今の冷ややかな目つき。だから、お父様に感謝が足りないと言うのです!!」
いかん。火に油を注いでしまったか?
「お母様が変わらないのでしたら……実力行使してでも‥」
「あら‥。あなたのような産まれて間もない。赤子同然の力で何が出来るのかしら?」
夜の妻は、本当に怪力だ。以前に腿を掴まれて、引き千切られると直感的に危機を感じた事がある。それと同じような事を娘にやるのはかなり酷だ。
妻を止めるのは当然として無理。だからといって、娘を止めれば‥娘の心中は穏やかではないだろう。
どちらも抑えきれずハラハラした気持ちを胸に秘めて結果。母子喧嘩を見守る事に……
結果は娘の降参で幕をひき、これで終わってくれるならと思った。だが……
これを切っ掛けに1〜2週間に1回。喧嘩をするようになり…ただ、適応力って凄いなと感心した。最初あったらハラハラした気持ちは既に無く、今では普通にご飯を食べて普通に見ている。その毎日が流れていった。

それから2年近くの時が流れて‥
その日初めて娘が勝った。珍しいなとナスのお新香を箸で摘まんでいた。
娘が妻を床に正座をさせて‥耳元で何かを囁くように言っている。
何よりも異変に感じたのが、何をしたか解らないが‥。妻の様子が、夜ベッドの上で愛し合うのと同じような感じだった。
そして、異変が起きたのは次の朝。
「あなた。起きて、起きて下さい」
夢うつつに誰?と思い眠い目を擦り……目の前に居たのは妻だった‥。
優しい口調の他に優しそうな笑み。普段の女帝の態度とは打って変わり、思わず「誰?」といいかけてしまった。
「起こしてしまってごめんなさい。でも‥今まで、その‥」
初めて見たときと同じ恥じらうような顔。直ぐに次の言葉を塞ぐように唇を重ねて、優しくベッドに寝かされた。
舌でお互いに口内を堪能し尽くし、唇が離されて、目の前に妻の顔。そして、ベッドの上で身体を逃がさないように四つん這いの体勢。
「今まで、その……『ありがとう』も言えなくて‥ごめんなさい」
目尻にはうっすらと涙を溜めていた。
「いや、いいよ」
首を軽く横に振り、指で涙を拭った。
「今日は‥いえ、今日から毎日。私からあなたへの感謝の気持ちです」
あいつはズボンを下げて、優しい手つきで息子を触り……
「これからはあなたに愛される女性になります。だから‥あなたも私の事を愛して下さい」
深く頷くと妻は息子を口に含み……。気がつくと中に何回も出していた。

「あなた‥。いつまでも愛しています」
幸せそうな顔で下腹部を撫でながら、眠っていった妻にキスをして娘に事情を聞こうと部屋を後にした。

冷蔵庫の前で子供の頃から、愛飲し続けているトマトジュースをコップに注いでいる娘を見つけた。
「なぁ‥昨日の夜。何をしたんだ?」
「ナイショ♪でも‥お父様も優しいお母様の方がいいでしょ?」
「まぁ‥まあな」
正直、女帝よりも優しいほうがいい。
「それに私も仲が良い夫婦だと見ていて気持ちがいいから♪でも……」
娘は急に顔を紅くして足をモジモジとし始めた。
「その…お父様もお母様も声が声が大きいから‥。その…声がもう少し小さかったら……」
12/08/09 00:25更新 / ジョワイユーズ

■作者メッセージ
あれなんですよ。あれ……
「僕」でも「私」でもないあの一人称。
文字に出すのがトラウマレベルなのですよ‥。
出せたほうがが色々としっくりと来るのですが……。

「お札」はそのまま打たずに「おふだ」や「おさつ」で済まして‥後は必ず繋がらないような言い方にしたりと……
複数の読み方がある漢字文化はいいですねぇ。

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