読切小説
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まもむす劇場-シンデレラ-
昔、昔、とある国がありました


その国はとても小さな国でしたが、とても平和な場所です
その小さな国にある小さな町の外れに…小さな屋敷がありました...


「シンデレラ!シンデレラ!」

「はい、お義母様…」

「あんた何をしているんだい?ええ?」

「ご覧の通り、掃除をしております」



お義母さんはテーブルを見て鼻で笑うと
「はんっ、どこが掃除だって?まだまだ汚いじゃないか!
 掃除って言うのはね!金色になるほどピカピカにすることなんだよ!
 今晩までにできないなら食事は抜きだからね!!」

「わかりました…ピカピカになるまで磨きます…」

「違うよ!金色にな る ま で だよ!耳が遠いのかい!?」

「……申し訳ございません、金色になるまでピカピカに磨きます」

「はん!わかったらさっさとやりな!
私は娘と一緒に出かけてくるからね!」

「はい、いってらっしゃいませ」

そういってお義母さんは部屋を出ていきました



そしてお母さんと娘が出かけていくのを見届けると…

「……なによ!あの態度!むかつくわ!」
とシンデレラは愚痴をこぼしました




シンデレラは幼い頃に親に捨てられ
拾ってくれたのがこの家の義母さんでした…

それからシンデレラはまるで奴隷のようにこき使われる毎日でしたが
他にいくあてもなく、義母と娘の苛めに耐えながら生きてきました


そして今日は義母と娘は新しい服を買いに出かけました
実は近々、お城で舞踏会があるのです…

そこでは王子様が居て、運がよければ一緒に踊ることができるのではないか
と、町で噂になっており、それを聞いたお義母さん達は居ても立っても居られず
今まで貯めていたお金を使って服を買いに行ったのです



シンデレラもその話は聞いていましたが、当然の事ながら参加はすることはできません
なぜならば、小汚い髪の毛に汚れた顔に服は継ぎ接ぎだらけ、とても人前に出られるような状態ではありません


「あ〜あ…舞踏会かぁ……」

シンデレラはお城に憧れていました
けれど、こんな格好ではいけませんし、お義母さんの事だから
自分の分は買ってこないだろう…と思い諦めていましたが
心のどこかでは諦められず、たとえいけなくてもその時間に一人で踊ろうと
時間の合間を縫って一人で踊りの練習をしていました...



それから数日後、ついに舞踏会の日がやってきました


「シンデレラや!私達はこれから舞踏会に行ってくるから留守番は頼んだよ!」

「はい、お気をつけていってらっしゃいませ…」

「おほほほほほ!では、い っ て き ま す」

「……(絞め殺したい…この婆…)」


そう思いながらもシンデレラはお義母さん達を見送り
一人で留守番をしていました
窓から見えるお城はとても綺麗で、中もきっと
豪華な飾り付けが施されているんだろうなぁ…と思い浮かべていました



コンコン


「あら?こんな時間に何かしら?」

お義母さんが忘れ物でもしたのかなと、思って開けてみると
そこには小さな女の子が立っていました

「おぬち、ぶとーかいにいきたいとおもおりまつね?」

「は?詐欺なら間に合ってます」

「ちょちょ、ちょっと〜!はなしはさいごまできくでつ!」

「はいはい、わかったからお母さんの所に帰りなさい、それじゃ」

「ま、まつでつ〜!ほんとうにきいてほしいでつ〜」

「ああもう…さっさと言いなさいよほら!」

「ありがとうでつ!なにをかくそう、わらわ?はまじょなのでつ!」

「なんで一人称に疑問符がつくのよ…」

「まじょっぽくいってみたかったんでつ!」

「あ〜、はいはい…すごいすごい、びっくりしたわまじょさんだなんて
はい、これでいい?お母さんの所に帰りなさい」

「あ…ちょっと〜ほんとうにまじょなんでつよ〜」

「ちいさいのに魔女なわけないじゃない、いいからそろそろ帰りなさい、もう遅いんだから」

「むむむ〜…じゃあしょーこ、みせつでつ!」


そういって自称魔女の小さな女の子は杖を取り出し唱え始めました


「ちちんぷいぷい〜いたいのいたいのとんでくでつ〜♪」


自称魔女が魔法の呪文を唱えると…
なんと!シンデレラの服がなんとも豪華できれいなドレスに変わったのです
いいえ、それだけじゃありません、小汚い髪はまるでシルクのようにふわりと柔らかく艶やかに
顔も当然ながら、化粧をしたのではないかと思えるほど綺麗な顔になりました

「う、うそ…これがわたし……」

鏡を見たシンデレラは自分とは思えないほどに綺麗になった姿に驚きました
でも…一つだけ…違和感がありました

「ねぇ…私のヘビ……」

「ちょっとしっぱいしまつた(>ヮ<;」

「ちょっとじゃないわよ!これじゃラミアじゃない!」

「だ、だいじょうぶでつ!わらわ?のまほーは12じできれるでつ」

「12時…本当なのかしら?」

「ほ、ほんとうでつ!しんじてほしいでつ!」

「………元に戻らなかったら…今度会ったときに締め上げるからね」

「ひぃ〜(>ゎ<;」

「それにしても…歩くのは遠いわね…」

「それならだいじょうぶでつ!」


自信満々に自称魔女はまた魔法をとなえました

「ぷっちんぷっちんぷりりんぷりん〜でつ!」

すると目の前に輝いて美しい馬車が現れました
夜中でも輝く馬車を引くのは美しいユニコーンです

「…す……すごい……」

シンデレラは一度ならず二度も驚きました
もう小さい子供を自称魔女なんて思うことはできないほどです

「さぁ、いくでつ!ぶとーかいに!」

「あ…あり…がとう……」

「あい♪」

シンデレラは馬車に乗りました

「12じのかねがなったらちゃんとかえってくるでつよ!」

「うん、わかった…ありがとう魔女さん!」

「あ〜い♪」


こうしてシンデレラは美しいドレスを身に纏い
豪華な馬車で舞踏会の開かれるお城へ向ったのでした








その頃、舞踏会はあいさつが行われていました
あいさつを行っているのは騎士団長のデュラハンです
彼女のハキハキとした声が場内に響き渡ります

「皆の者、この度は舞踏会に来ていただき真にありがとうございます
しかしながら今回、王子殿の参加も予定されておられましたが
都合がとれなかったため
残念ながら王子殿の参加は見送りとなったことをここにお詫び申し上げます」


「ええーー!?」
「王子様会えないの〜?」
「やーん、踊りたかったのにぃ」


王子を一目見ようと、一緒に踊ってもらおうと
様々の思いで参加した娘たちはがっかりしてしまいました
折角なので皆はそれぞれの楽しみ方で舞踏会を楽しみます
ある者は曲に合わせて踊り、ある者は男を口説き、ある者はおしゃべりをしていました


そこに、シンデレラがやってきました

「なんて美しいお嬢さんなんだ…」
「きっとどこかの貴族の娘に違いない」
「ああ…一緒に踊りたい」
「はっ、踊るのはこの僕とさ!」


男は皆、美しいシンデレラから目が離せませんでした
娘たちはを認めたくはありませんが、否定できない美しさに嫉妬気味です
こんな女性がいる時に王子様がいたら…と思うとほっとしてしまいます

「やあ、麗しきお嬢さん、僕の名前はピエ〜ル…以後お見知りおきを」

「は、はぁ…」

「もし、宜しければ私と一曲踊っていただけませんか?」

「いやよ」

「な・・・ガーーン!」


男はシンデレラに言い寄りましたがあっさりと断られたショックで石像のように硬くなってしまいました

それからも他の男も言い寄りましたが断られてショックで石化
会場には踊る男と口説く男、そして振られて石化した男がいました

シンデレラは王子を探しましたが、本人は参加していない事実をしらないため探し続けたのです




シンデレラは王子がなかなか見つからないので誰かに声をかけてみることにしました
ちょうど、柱の下に男の子が立っていました
小柄で見るからに弱そうで内気な気配を漂わせています
きっと臨時で雇われた使用人なのでしょう

「ちょっと、そこの使用人」


「え?あ、僕のこと?」

「あんた以外に誰が居るのよ?」

「え?あ…うん…それで、何か用かな?」

「王子様知らない?さっきから探しても見つからないんだけど」

「え…えーっと…実は……都合が悪くてきてないんだよ…」

「なんですって!」

ざわざわ…

「わわ、声が大きいよ……」

「あ、ご、ごめん…皆様、失礼いたしました〜」

突然の大声に皆は驚きましたが
シンデレラがにこやかに謝ると舞踏会はまた賑やかな雰囲気に戻りました


「……はぁ、最悪…踊れると思ったのに…」

シンデレラは王子に会えると思っていたのに参加してない事実を聞かされてがっかりしました


「あ、あの…僕でよかったら…どうかな?」

「は?なんでヘタレそうなあんたと踊らないといけないのよ?」

「だ、だよね…あ、あはは……」


男の子はしゅんと落ち込み、俯いて
シンデレラも王子が居ないことに落ち込み、皆が踊る様子をみていました

二人は気まずい雰囲気のまま、時間は過ぎていきました……





「…ねぇ」

「え、あうん…何かな?」

「踊ろうか?」

「えっ?」

「踊りたいんでしょ?」

「う、うん…でも…さっき…」

「気が変わったのよ、私だって本当は王子様と踊りたかったけど…
居ないんだったら仕方がないじゃない?
それに、折角の楽しい舞踏会なのにしょげててもつまらないでしょ
ほら、こっちきなさいよ」

「あ、うん…」



こうしてシンデレラと男の子はお互いの手を取り、演奏に合わせて踊りを始めました

「痛っ!」

「ご、ごめん!」

しかし、男の子は不慣れだったのかシンデレラの足を踏んでしまいました

「あ、あんたねぇ…」

「ごめん、本当にごめん!」

「次はしっかりしなさいよ!」

「う、うん…」


再びシンデレラと男の子は演奏に合わせて踊りを始めました


「っうぅ!」

「う、うわ…ご、ごめんなさい!」

「あーもう!ちょっとこっちきなさい!!」

「う、うわ…ひ引っ張らないで!」


シンデレラは男の子をお城の庭に連れて行きました
そこは人気がなく、舞踏会の演奏曲が聞こえてきます


「あんたって踊りとか踊ったことないの?」

「え…あ、あるけど…その……誰かと踊るのは…」

「初めて?」

「う…うん……」

「呆れた………」

「ご…ごめん……」

「まぁ、私も初めて誰かと踊ったけどね」

「あ、そ、そうなんだ…じゃあ一緒だね」

「一緒にしないでよ!あんたみたいな下手糞な踊りと一緒なんて真っ平御免だわ!」

「う……ごめんなさい…」

「あんた、さっきから謝ってばかりね…」

「ごめん……」

「はぁ……また言ってるし…」

「うぅ…」


シンデレラは男の子のヘタレっぷりにはうんざりしてきました
このまま帰ろうかと思いましたが、それでは納得がいきません
なぜならば魔女に素敵なドレスや衣装をしてもらいながら
満足に踊れずに帰るのは流石に気が引けたのです


「ほら、手だしなさいよ」

「え?」

「踊り…練習しましょ、あの会場にいたらいい笑いものだけど
ここは人気がないから、練習するにはいいじゃない」

「え…いいの?」

「本当はすっごく嫌だけど、このまま帰るのも嫌なのよ
だから練習するの!しっかりと踊れるようになりなさいよ!」

「あ…ありがとう……」





「痛っ!」

「ご、ごめん!」

「まったく…あんた硬くなりすぎ!まるで私が石化睨みをしてるみたいじゃない!」

「あ…ご、ごめん」

「ほら…背筋伸ばして…」

「うん…」

「腰に力を入れすぎ!足まで力はいって硬くなってる」

「う、うん……えっと…」

「ああもう!」

「え?んぐっ……」


シンデレラは緊張して固くなった男の子を抱きしめてキスをしました
硬くなった男の子をほぐすにはこれが一番だと思ったからです
シンデレラは勢いとはいえ、キスをして物凄く後悔しましたが、後の祭りです
今は踊りを教えることに集中して、忘れることにしました

「んは…ほら…このまま…手を回して…」

「うん……」

「そう…ほら曲に合わせてゆっくりと体を動かすのよ」

「…うん」





こうしてシンデレラに指導されながら男の子は少しずつ踊りが上手になりました
所々でシンデレラの足を踏んでしまい怒られながらも
二人はとても楽しい時間を過ごしたのです


ガーン!ゴーン!ガーン!ゴーン!


そんな楽しい時間も12時の鐘と共に終わりを告げました


「いけない、もう12時じゃない!」

「え?どうしたの?」

「私は12時になったら帰らないといけないの!」

「あ……そうなんだ…あの…」

「なによ?さっさと言いなさいよ」

「き、きょうは…あの…ありがとう……」

「どういたしまして、それじゃあね使用人君」

「え?あ…………あ!な、なまえ………」

男の子はシンデレラの名前を聞こうとしましたが
すでにシンデレラは遠くに走っていった後だったので聞くに聞けませんでした……





それから数日後…


なんと王子からの命で町に住む娘全員に召集をかけられたのです
広場には色々な魔物娘達が集まって賑わっていました
当然ながらシンデレラもその場所に集められたのです





「皆の者、よく集まってくれたこれより王子殿と踊ってもらう」


「うそっ!踊れるの?」
「何この神展開…」
「あぁ…王子様…」
「……うふふ…」


騎士団長のデュラハンからの話を聞いて
皆は舞踏会で会えなかった王子に会える
しかも踊るとなれば娘達はいてもたっても居られません



「それでは、王子殿のご登場です」


「王子様よ!」
「ああ…素敵な王子様」
「王子x私…いえ…私x王子…うん、これだ」


豪華なファンファーレと共に現れたのは…

小柄で見るからに弱そうな男の子でした


「え?あれが王子様?」
「やばっ、かわいい♪」
「…王子x私…うん、こっちだ」

「え…冗談でしょ?あの子……」


シンデレラは王子を見てとても驚きました
そうです、あの舞踏会で踊りを教えた男の子です


「これより、一人ずつ踊ってもらい、最後まで踊ることが出来た者を王子の嫁とします」


「うそーー!」
「神展開すぎじゃない?」
「余裕よ、余裕!」
「結婚……ぽ……」

「……な、なによそれ…」


皆が王子と結婚できると確信している中で
シンデレラは落ち込みました、踊りを教えた子が王子だった驚きもありましたが
その男の子が踊りを踊りきったら結婚すると言っているのですから……



「それでは、順番に踊ってもらいます」


王子が娘と踊りを始めました
始めの子はハーピーです

「痛っ」

「ごめん、大丈夫?」

「へ、平気です…王子様、続けましょう」


「そこまで!次」
踊りを再開しようとしましたがデュラハンに止められてしまいました
ハーピーは抗議をしましたが、流石に騎士団長、ひとにらみするとハーピーは大人しくなりました

王子は他の娘達と踊りましたが足を踏んでしまい
踊りは中断…そして次の娘 を繰り返しました


そしてお義母さんも踊りましたが結局上手くいかず
お義母さんの娘も足を踏まれて踊りきることができませんでした


そして、シンデレラの番です

「……」

王子はシンデレラを見つめたまま動きません
普段のシンデレラは汚い髪に、汚れた顔、継ぎ接ぎだらけの服に毛先はヘビ
当然ながら王子は彼女が舞踏会で踊りを教えてくれたことをわかるはずがありません


「王子様、私はこの通り汚いので、踊らない方が良いかと思います」

「そうはいかないよ、皆と踊ったのに君だけ踊らないのは…」

「そうですよ、王子様!この娘はこの通り汚らしいゴミのような娘なんですから
触ったら汚れるどころか病気になってしまいますわ!」


そこに現れて言い放ったのはお義母さんでした
シンデレラは内心で絞め殺したいと思いましたが
力の入った拳を震わせるだけに押し留めました


「大丈夫だよ、僕と踊ってくれないかな…」

「ちょ、ちょっと王子様!汚れますよ!?」


「そこの者!王子の御意思だぞ!」

「はっ、こ、これはとんだご無礼を……」


デュラハンに制止されたお義母さんは下がり
王子はシンデレラの手を取りました…



王子とシンデレラは踊り始めました
するとどうでしょう…

今までの町の娘達と違い、踊りは続いています
その踊りをみて皆は見とれ、まるで舞踏会の踊りを見ているようでした


そして踊りも終盤にさしかかり…

「いたっ!!」

「ご、ごめん!」

王子はシンデレラの足を踏んでしまいました…

「痛いじゃない!このバカ!………あ…」


周囲が急に騒がしくなります
それもそのはず…王子に対して暴言を吐いたからです

「も、もうしわけございません…王子様…」

「い、いや大丈夫だよ…僕が悪いんだし」

「い、いえいえ…そんな……」

「あ、あの……一ついいかな?」

「はい……なんでしょうか?」

「君は舞踏会に来てた?」

「そ、そんなわけないじゃ…いえ、そんなことはありません
見ての通り私は汚れております、舞踏会なんて大層な場所になんて…」

「うーん……そうか…」



シャー!シャー!

「うん?ヘビ…?」

シャーーー!

王子に向ってヘビが何かを言いたそうに話しかけてきます
しかし、ヘビは言葉を話せないのでシャーシャーとしか言えません

シャーーー!シャーー!

「うーん…?」


王子が手を出すと、ヘビは王子に擦り寄りました
まるで愛しい人に甘えるかのように…

「い、いけません王子様!」

そういってシンデレラはその場を後に去っていきました……



「おい、兵士共…」

「はっ!」

「あの娘を捕らえろ、王子に無礼な口をきいたのだから生かしてはおけん」

「はは!」


「!!や、やめてよデュラハンさん!」

「王子殿、申し訳ありませんがあの娘の無礼を見過ごすことはできません」

「あ、あやまったからいいじゃないか!」

「なりません」

「そ、そんな…そこをなんとか!」

「なりません!」

「う……」

「さ、王子殿…お城に帰りましょう」

「………うん…」



王子はお嫁さんが決まることなくお城に戻り
シンデレラはまもなくして兵士に捕らわれたのです

お義母さんとその娘はいい気味だと内心で笑い
シンデレラが連れ去られると館で大笑いをしました
「あはははははは!!!いいざまよねぇ!」
「くすくす…そうですねお母様…くすくす

「いやぁ、ちょうどよかったわぁ…そろそろ邪魔に思えてきたから捨てようかと思ってたけど
自分から居なくなってくれるなんてねぇ…おはははは」
「傑作でしたね!あの顔…プププッ」






その日の夜…
玉座に座る国王と王子が今日の出来事のお話をしていました




「これ、王子や…嫁は見つかったかね?」

「い、いえ…残念ながら……」

「ふむ、そうか……ならば約束通り、隣国のお姫様と結婚することを考えてくれるな?」

「……」

「どうした?王子?」

「……は…」

《お待ちください!》

王子の返事を遮るように大声を上げたのは
騎士団長のデュラハンでした

「おお、何事じゃ?デュラハン…」

「はい、実は王子にはもう一人…候補が居たのです」

「ほう…?それは?」

「はい、シンデレラと言うメドゥーサです」

「ふむふむ……」

「実は、お昼に用事で出かけていたので彼女は広場にはおりませんでした…
もしよろしければ、この場で踊らせてせていただきたいのです」

「ふむぅ……良かろう、王子…その娘と踊れなかったら
結婚を考えてくれるな?」

「あ…あの…………わ、わかりました……」

「うむ、ではここに通せ」

「はっ!シンデレラ!入ってきたまえ」


「…はい」





「おぉ……」

国王はその美しき娘に目を奪われました


そこに現れたのはとても綺麗な盛装をされた娘でした
まるで宝石のように輝く髪に引けを取らない艶やかな顔
そして白く突けばマシュマロのようにふわふわしそうな肌

そんな彼女を見て、国王だけではなく
王子…そして兵士も見とれてしまいます









――――数時間前――――


コンコン

「娘を連れてきました!」

「うむ、通せ」

「はっ!」

ガチャ…


部屋に入ってきたのは兵士に捕らえさせた小汚い娘
彼女は無礼な口を聞いたがそれよりも気になることがあったので
都合を作るための口実だった

「…名はなんという?」

「シンデレラです……」

「良い名だ……貴女には聞きたいことがある
必ず、正直に答えろ、いいな?」

「……はい…」

「まず、お前は…メドゥーサだな?」

「はい、そうです…」

「次に…先ほど開かれた舞踏会に参加したか?」

「………」

「聞こえなかったか?舞踏会に参加したか?」

「…はい………」

「ふむ………なるほど……」

「あの……それが何か……」


「実は貴女にはもう一度踊っていただきたいのだ」

「え?」

「実は今回、町娘達を集め、踊りきったら嫁になる…これには訳があってな」





シンデレラはデュラハンから今夜までに嫁が見つからなければ
王子が隣国のお姫様と結婚する事を聞かされました
しかし…隣国の姫様との結婚には裏があり
この国を手中に収めようと企んでいたのでした
国王は今までは断っていましたが…結婚の話を教団に持ち出されて
断るに断れなくなっていたのです
もしも王子が今夜までに結婚相手が見つかれば
結婚の話はなかったことになるのですが……


「さて…この話を聞いてわかると思うが…貴女にはもう一度踊ってほしい」

「……私に脅しをかけてるの?」

「ふふ…半分な……
最近の王子殿は舞踏会に出会った貴女の事ばかりを話題に出しておられた
もし、貴女が王子を好かないのであれば…このまま帰っても構わない」

「それって…」

「後はお前の気持ち次第ってことだ…」

「……」




「わたしは……」

あんなヘタレにあったのは始めてだわ…
王子っていったらこう、凛々しくて逞しい人だと思ってた
でも、彼は全然違うし…ヘタレすぎる…
ああいうの…ほっとけない……







「…………わかった、踊るわ
あんななさけないヘタレ王子じゃこの先心配だもの…」


「ヘタレ王子…か、ふふ…あっはっはっはっは!」

「あ……ごめんなさい…」

「いやいやいや…確かにな…私だけの時ならば別に口を崩しても構わん
すぐに衣装の用意をしよう、今夜中に仕立ててもらわなければな」




――――――――――――――――――――







「さ、ご挨拶を…」


「はい、私は…シンデレラと申します……」


「…ほぉ……」



「それでは、早速ですが踊っていただきましょう」

「あ、うん……え?君は…!?」

「よろしくお願いします…王子様」


王子は驚きました、彼女の顔をみると…
そう、舞踏会にいた彼女とまったく同じでした…

いいえ、町でも会ってはいましたが
コレほどまでに綺麗になると正直、驚きます




こうして王子とシンデレラは踊りを披露しました

少しぎこちなさがありましたが
二人の踊りはまるで恋人達がはしゃぎあっているようにも見えたのです

そして無事に最後まで踊りかけようとした時でした

「っ!?」

王子がシンデレラの足を踏んでしまったのです
二人はそのままバランスを崩し、倒れてしまいました……


「うぅ…なんであそこで踏むのよ!」

「うわ、ご、ごめんなさい」


「むぅ……」

「国王さま、よくご覧ください…王子殿とシンデレラを」

「む?」


シンデレラが王子をぽかぽかと叩いていますが、それは本気ではなく
まるで悪戯をされて軽く怒っているような、なんとも微笑ましく思える光景でした


「あの二人ならばこの国を任せることができるかと…
王子殿は少々腑抜けな所もありますが、シンデレラならばそれを補い
共に国を繁栄させて隣国の企てもきっと乗り越えられる…と、私は思います」

「ふぅむ……」




「二人とも、もうよい!」

「!?」
「!!」

「シンデレラ…と、言ったな?」

「あ……はい……」

「君には……王子の嫁になってもらいたい」

「お、お父様…それって!?」

「うむ…シンデレラが良ければ、結婚を認めよう」

「…王様!は、はい!ぜひともお願いします!!」






こうしてシンデレラは王子と結婚をすることができたのです…
結婚に呼ばれたお義母さん達はハンカチを食いちぎりそうな勢いで悔しがっているところに
シンデレラはわざとお義母さん達に聞こえるように鼻で笑うと、顔を真っ赤にして更に悔しがりました
今までの鬱憤を晴らし、とても清々しい気分を味わいながら式は盛大に行われました



「ねぇ、王子様」

「あ、なにかな…シンデレラ」

「私…たぶん……ううん、きっとあの時、王子様に惚れてたかも」

「あ…ぼ、僕もだよ……」

「うふふ♪王子様…大好き」

「僕も大好きだよ、シンデレラ…」










えー…それでは
それでは、誓いの口付けを……












―――ちゅっ♪――――

























13/04/11 00:17更新 / ロッテン

■作者メッセージ
シンデレラ役:メドゥーサ
王子役:人間の男性
お義母さん:エキドナ
お義母さんの娘:ラミア

魔女:魔女
騎士団長:デュラハン
国王:人間の男性

その他大勢:魔物娘とか色々


すげえ最後投げやりになった…気分が
シンデレラときくとツンデレラが頭に浮かんでしまった俺は病気でした(性的な意味で



















コンコン

「ん、入れ」

「しつれいしまつ!」

「おお、魔女か今回はよくやってくれた」

「いえいえ!おやくにたててこうえいでつ!!」

「さすがにラミアに変わってた時は正直驚いたが……本当によくやってくれたよ」

「あい♪」

「……これで、この国も隣国に奪われる心配は少しぬぐえたな…」

「あい!でもまだまだあぶないでつ!」

「そうだな……一時しのぎ…と言えば聞こえは悪いが、現状ではそうなるな」

「あい〜…」

「そうそう、魔女にはコレを…」

「おぉう?なんでつか?」

「サバトから、貴女に…と」

「おおおお?おおおおお!!!!ままままままじょ、まじょにきゅーにんてーしょうー!!!!」

「今回の活躍がサバトにも届いたらしい」

「うひょおおおお!!うれちいでつ!

「ははは、それはよかった…」

「あい♪♪♪♪♪♪」

「さて…魔女…これからもこの国のために…頑張ってくれないか?」

「あ、あい!とうぜんでつ!ふんこつさいしん!がんばりまつ!」

「ありがとう…」















次回…


シンデレラ…第二章〜邪悪なる隣国〜


「いや…それはないから……」

「え?ないんでつか?ざんねん…」

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