読切小説
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捨てミノタウロスさんを拾ったら
 日が暮れかけた帰り道、人通りの少ない閑静な住宅街、アスファルトの道路の上。
 ”ひろってください”と書かれた段ボールの中。
 普通なら入っているのは子猫か子犬と相場が決まっているものだ。だが――

「ぐぉー……がぁー」

 そこに入っていたのは、牛のような角を生やした大きな女の人だ。
 大きすぎる体は段ボール箱に入りきらず、足や頭がはみ出している。
 上半身はほぼ裸で、おっきな胸にベルトのようなものが巻かれているだけ。下半身はもふもふとした毛皮に覆われていて、逆関節のような足と蹄に尻尾という、人間とはかけ離れたものになっている。
 いびきを掻きながら寝ているらしく、僕が箱に近寄っても女の人は起きる様子がない。
 お父さんに持たされているスマートフォンで調べてみると、この女性が『ミノタウロス』という魔物であることが分かった。

「ミノタウロス……」

 魔物を見るのは初めてではないけれど、今まで出会ったのはおとなしく、人間と仲の良い魔物ばかりだ。
 しかしミノタウロスは凶暴な魔物で、気性も荒いためにほとんど見かけない。問題を起こす可能性が高いから、らしい。
 夫がいるなら大よそは改善されるが、一人で眠っている彼女がそうである可能性は非常に低い。
 ここは起こしてしまう前に家へ帰ったほうがいいかもしれない。
 そう思って離れようとしたとき、

「……つっかまえたぁ〜」
「!?」
 
 身を起こしたミノタウロスの大きな手にがっしりと腕を掴まれる。
 その力は強く、とてもじゃないが引き剥がすことができない。

「な、なんで」
「オトコの匂いにはビンカンなんだよ……居眠りしてたってわかるぜぇ?
 特に、アタシはちっさなオトコの子のカラダがだぁいすきでねえ。
 昔からずーっと狙ってたのさ……オマエみたいなのを捕まえてやろうってな」
「少年を狙って……へ、変態だぁ……」
「う、うっせえ!ヒトの趣味にとやかく言うんじゃねえよ!
 ともかく……オマエはもう捕まったんだ。逃がすもんか」

 段ボール箱から起き上がり、ミノタウロスが僕の横に立つ。
 180cm以上はありそうな身長と綺麗に割れた腹筋が彼女の力強さを表している。
 力ずくでは逃げられるはずもない。

「……どうすれば解放してくれるの」
「そうだなあ……アタシを腹いっぱいにしてくれたら、放してやるよ」
「じゃあ……家でごはんを食べさせてあげるから、それで満足したら帰ってね」

 防犯ブザーを持っておくべきだったと後悔しながら、僕は歩き出そうとする。
 しかしミノタウロスにぐい、と腕を引っ張られ、危うく転びそうになった。

「待て待て、逃げられないように、アタシがオマエを持って歩く」
「え? ……わっ!」

 その瞬間、僕は背中のランドセルごと身体を持ち上げられていた。
 脇に抱えられ、僕は宙ぶらりんのまま連れて行かれる。
 
「なんだオマエ、かっるいカラダしてんなあ。ちゃんとメシ喰ってんのか?」
「うう……」
「おっと、名乗るのが遅れたな。アタシはゼニスってんだ。オマエは?」
「……翔太(しょうた)」
「よーし、翔太。オマエの家に案内しな」

 ミノタウロス……いやゼニスはのっしのっしと歩きながら、僕を家まで連れ去った。


 
 僕が暮らしているのは、お父さんが建てたらしい一戸建ての家だ。

「ほー、これがオマエの家か。なかなかでっけえじゃねえか」
「……ほんとにご飯食べたら帰ってくれるよね?」
「腹いっぱいになったらな」

 僕は玄関の鍵を開けると、土足のまま上がろうとするゼニスを一度制し、ランドセルをリビングに置いてキッチンから布巾を取ってくる。

「上がる前に、これで足を拭いてね。靴は履いてないみたいだし」
「ああ?面倒くせえなあ。オマエがやってくれよ」
「……しょうがないな」

 しぶしぶ両足の蹄を拭いてあげると、何故かゼニスは僕の頭を撫でてきた。
 大きくて無骨な手だけど、温かい。
 こうして誰かに撫でられるのは何時ぶりになるだろう。
 ……いや、余計なことは考えたくない。

「ちょっ……やめてよ」
「照れなくてもいいんだぞ?良い事をした弟は褒めてやるもんだ」
「……いつからお姉さんになったの」
「ついさっき」

 ゼニスは無遠慮にリビングへ上がりこむと、部屋にある大きなソファを見つけて寝転ぶ。

「おっ、こりゃ柔らかくていいな。寝るのにゃピッタリだ。
 アタシはここで待っといてやるよ」
「……はあ」

 思わずため息が零れる。仕方ない、もう少しの辛抱だ。
 
「うん? おい、ちょっと待て。オマエの親はどこだ」
「……いないよ」
「なに?」
「母さんはずっと前に離婚して出て行った。
 お父さんは仕事でいつも夜遅くまで帰ってこないし、今日は出張だ」
「……じゃあ、誰がオマエにメシを作るんだよ」
「自分で作るよ。もう慣れた」
「……」

 それを聞くとゼニスは黙ってしまう。
 何を言ったらいいのか分からないような、複雑そうな表情をしていた。今までの天真爛漫な行動がウソのように。
 彼女はソファからむっくりと起き上がると、

「しょうがねえなあ。アタシも手伝ってやるよ」
「え?」
「おい、食材はどこに置いてあんだ」
「れ、冷蔵庫に決まってるでしょ」
「冷蔵庫ぉ?どれだよ」

 手伝ってくれるとは言ったが、ゼニスは全く言っていいほど物を知らなかった。
 包丁や鍋くらいは理解してくれたけど、冷蔵庫やクッキングヒーターは初めて見たようで、水を入れた鍋が温まるのに驚いていた。
 仕方ないので肉を切ってくれるよう頼んでみたのだが、

「こんな小せえ刃物普段使わねえから、勝手が分かんねえよ」

 と言って、力任せにかつざっくばらんに切り始める。
 かといって水菜を切らせると、

「野菜はニガテなんだよなあ」

 と、ぶつぶつ言いながら手を動かす。

「そもそも、今何を作ってんだ」
「パスタだよ。スパゲッティ」
「あー?何だそれ……いや、聞き覚えがあるな。喰ったことはねえけど」



 とにかく、料理は完成した。鶏肉と水菜のゆず胡椒パスタだ。
 結局ゼニスがやったのは食材を切る事と出来たものをテーブルに運ぶぐらいで、後は僕の後ろでずっと立っていただけである。

「ふうん。中々イイ匂いだけど……ちょっと量が少なくねえか」
「まあそう言うだろうと思って、パスタは大めに茹でてるよ。
 鶏肉はもうないけど、パスタソースなら置いてあるから」

 テーブルに料理を並び終えて、僕達は席につく。

「いただきます」
「いただきまぁす。はぐっ」

 一礼するのと同時に、ゼニスがパスタに食らいつく。フォークの使い方は滅茶苦茶だが、手づかみでないだけマシだろう。

「んぐんぐ……なるほどこういうモンか、ウマいじゃねえか。
 つるつるして食べにくいし、食ったことのねえ味付けだが、気に入ったぜ」
「……今まで、どこで育ってきたの?」
「自然いっぱいの草原さ。狩りさえすれば食いモンには困らない、イイトコだった。
 まあ、オトコがいないのは残念だったが……おい翔太、もう一杯」
「早いよ……はいはい」

 あっさりと一皿を平らげるゼニスを見て、パスタ1kgで足りるかどうか不安になった。 
 しかし料理をよそっていると、あることに気付く。

「(誰かと食べる夕食、久しぶりかもしれない)」

 母さんとは離婚してから会っていないし、父さんとは深夜帰りと出張が多くて、食べる機会がほとんどない。
 賑やかしとはいえど、話す相手がいるのは珍しい。
 無遠慮な相手だが、それだけでは片づけられない何かが芽生えている。 

「(……何考えてるんだ僕は。あんな乱暴な魔物に)」

 それは、自分でもよく分からない感情だった。



「翔太、おかわり」
「……もうないんだけど」
「なんだ、もうないのか……ま、腹八分目っていうから、これくらいにしとくか。
 ふーっ、ごちそうさん」
「……ごちそうさま」

 結局、湯がいたパスタは平らげられ、全部無くなってしまった。

「さぁて、メシも食ったことだし一寝入りするか」

 ゼニスはというと、そのままリビングにあるソファに寝っころがってしまう。

「……食べてすぐ寝ると牛になるよ」
「残念だな、アタシらはもともと牛だっての」
「とにかく……日が変わるまでには出て行ってよね」
「まあカタいこと言うなよ。おい、ちょっとこっち来い」

 寝たまま手招きするゼニスに、僕はしぶしぶ近づいていく。

「なに?食器の片づけがあるんだけ――わっぷ!」

 彼女の傍に立った瞬間、物凄い力で抱き寄せられる。
 ゼニスが胸にあるベルトを上にずらすと、僕の顔がその大きな両胸の間に埋もれ、挟まれて息が苦しくなる。
 そのまま背中に手と足を回され、がっちりホールドされてしまう。

「あぁ〜、やっぱ幼いオトコのカラダはいいなあ。抱いて寝るのにピッタリだ」
「もがっ……は、はなし……むぐぅっ」

 汗の匂いとミノタウロス独特の獣っぽい体臭が混ざり合い、息をするたびにむわっとする。だが嫌な臭いではなく、むしろ心地よくなってしまう。

「ほらほら、寝てる間はアタシのおっぱいに好きなだけ甘えていいんだぞ?
 それじゃあ、おやすみぃ、しょうたぁ……」

 なにより、大きなおっぱいに頭を挟まれている――という状況に、頭がくらくらしだす。
 抵抗しようにも、頭と背中を手で押さえられ、下半身を足で押さえられ、もがくことすら難しい。

「ちょ、ちょっと……こ、のまま……ね、ないでっ……」

 ゼニスの身体は温かく、包まれているとどこか安心さえしてしまう。
 獣の香りとむっちりとした柔らかさに埋もれ、抵抗する気も起きないようにされていく。

「……ぐぅ〜……」
「んむぅ〜っ……!」

 結局僕は諦めて、ゼニスにされるがままの抱き枕にされるしかなかった。 




「むにゃ……おっと、そろそろ腹もこなれてきたか。
 おい翔太、オマエの部屋に連れてけよ。あるんだろ」
「……あるけど」

 ゼニスは逃げないように僕を抱きしめたまま、誘導通りに僕を子供部屋まで連れて行く。

「ちっせえベッドだな……ま、問題はねえか」
「ちょ、ちょっと。お腹いっぱいになったら帰る約束でしょ」
「ああ、そのつもりだぜ……だけど、まだ食ってねえモンがあるだろ」
「え……」
「モチロン……オマエの身体、だけどなぁ♪」

 僕の身体はベッドに押し倒され、その上にゼニスが覆いかぶさってくる。
 そして乱暴に僕の衣服を脱がし始めた。

「や、やめてよっ、恥ずかしいっ……」
「姉と弟は裸の付き合いをするモンだ。それなら恥ずかしくねェだろ?」
「いや、だからいつから僕のお姉さんに……ぱ、パンツは本当にダメだってば!」

 しかし力では敵うはずもなく、無情に下着は脱がされていく。

「おいおい……意外と立派なモン持ってんじゃねえか。
 もうおっきくなってるし、ココは全然嫌がってねえぜ?」
「さ、触らないで……ひゃぁっ」

 ゼニスの大きな手でぎゅっとおちんちんを握られ、上下にしこしこと扱かれる。
 その動きはゼニスの性格からは考えられないほど繊細で、しなやかな手つきだ。
 普段触ることのないおちんちんを触られるだけで、身体が何故かビクビク震えてしまう。

「せっかくだ、皮も剥いてやるか……はむっ」
「んうっ?!」

 身体を持ち上げられ、浮いたおちんちんをぱっくりと口で咥えられる。
 先っぽだけをしつこく舐められ、それから舌がおちんちんの皮の下にぬるりと入ってくる。
 触ったことのない皮の下を舐めなぞられ、ほんの少しの痛みとそれ以上の気持ちよさが襲ってきた。
 
「ひゃ、あぁぁ……っ、そ、そんなとこ、きたな……」
「はにいっへるんだ、ほっへもうまひぞ?んっ、れろれろ……」

 たっぷりと皮の下を舐められた後、ゼニスはおちんちんの根元を押さえて余った皮を下に降ろす。 
 僕も見たことのない、おちんちんの皮の下にあったピンク色の先っぽが現れた。 
 そこはとても敏感で、ゼニスの温い息がかかるだけでピクピクしてしまう。
 ようやく彼女は僕の身体を降ろし、またその上に跨った。

「オマエ、射精したことはあるのか?」
「しゃ、しゃせい?」
「おっと、精通もしてねえのか……じゃあ今夜、ついにオトコになっちまうわけだな♪」

 楽しそうに舌なめずりをして、ゼニスは自分の股間を僕のおちんちんにくっつける。
 そして毛皮の奥にある、ぬるぬるになった穴を指で広げて、僕に見せつけた。
 今までこんなにまじまじと見たことのない、女の人の股間。

「な、なに……するの?」
「いいか、ここは『おまんこ』だ。赤ちゃんの生まれてくる穴……ここにオマエのちんちんを突っ込んでずぽずぽすると、お互いに気持ちよくなれる」
「お、おちんちんを……」
「さっき手でシゴいてやっただけでも気持ち良かっただろ?
 それとは比べ物にならない……ぬるぬるで、ぐちょぐちょで、きゅーって締め付けてくる穴にちんちんが飲み込まれるんだ。
 おまんこだと、気持ち良すぎて泣いちゃうかもなぁ……?」

 ごくり、と唾を飲み込む。
 それは聞くだけで気持ちよさそうで、これからされる事にドキドキしてしまう。

「それじゃあ……初モノチンポ、いただきまぁす♪」

 くちゅり、と僕のおちんちんがおまんこに飲み込まれていく。
 にゅぷっ、ぬぷぷぷっ……。
 ゼニスのおまんこは確かに熱くて、ぬるぬるで、ぎゅっとおちんちんを締め付けてくる。
 おちんちんを刺激されるのがこんなに気持ちいいなんて知らなかった。

「ふぅぅっ……どうだ?奥までぜーんぶ入っちまったぜ」
「あ、あったかいぃ……」

 腰とおちんちんが溶けてしまいそうなほど気持ちよくて、体全体がむずむずする。
 おちんちんはひたすら熱く、何かが出てしまいそうになる。
 それはまさに未知の快感で、お風呂に入ったときのように体が火照っていく。

「それじゃあ、動くぞ……ねっとり、たーっぷり犯してやる♪」
「あっ……あああっ!」

 ゼニスが腰を持ち上げ、同時におまんこからおちんちんが引き抜かれていく。
 柔らかい肉に引っ張られる感触と、ヒダのたくさんついた壁で擦られる快感。
 先っぽまで抜かれると、またおまんこの一番奥まで食べられる――それを何度も繰り返される。

「だっ、だめっ、うっ、うごか、ないでぇっ」
「おいおい、まだゆーっくりしか動いてないぜ?お楽しみはこれからだ……はぁんっ♪」

 いきなりゼニスの腰の動きが早くなる。
 じゅっぽ、じゅっぽ、にゅっぽ、とおまんこが跳ね、入れたり出したりを繰り返す。
 股間全体が熱くてたまらず、溶けそうな気持ちよさが下半身に絡み付く。

「あっ、あっ、な、なんか、で、でちゃう……っ」

 おしっこが出そうな感覚に襲われる――今でも気持ち良すぎて怖いけれど、これを出してしまうと、もっと気持ちよくなれそうな気がする。
 しかしその瞬間、ゼニスの腰の動きがピタッと止まった。

「あ……? あ、なんで……」

 お預けを食らった犬のような僕に、ゼニスは嬉しそうに微笑む。

「もう出そうなんだろ?それは精液っていうんだ。
 ただ……出したいなら、ちゃーんとおねだりしないとな」
「え……」
「ほら、『僕のセイエキ、お姉ちゃんのおまんこに出したい』って言ってみな?」
「そ、そんな……」

 身体はがっしり押さえつけられていて、僕からは腰を振ることができない。
 だから気持ちよくしてもらおうと思ったら、言うしかないのだ。
 精液やおまんこ……正直まだそれらの言葉の意味ははっきりと分からないけれど、すごくえっちで、恥ずかしい事なのは分かる。
 それに彼女を……ゼニスをお姉ちゃんと呼んでしまうこと。
 彼女の事は気になりつつあるけれど――もし一度でもそう呼んでしまったら、もう後には戻れない気がした。

「ほらほらぁ♪このままじゃ苦しくて、満足できないだろ?
 一回言うだけでイイんだ。そしたらアタシが、もーっと気持ちいいトコロに連れてってやる……♪」
「う……あ……」

 ゼニスに仄かに抱いていたある感情と、おあずけにされた切なさが入り混じり、僕はもう限界だった。

「……したい」
「ん〜?♪」
「ぼ、ぼくのセイエキ……お姉ちゃんのおまんこに、出したい……っ」
「よーし、よくできたなぁ♪ それじゃあお姉ちゃんとして、たっぷり甘やかしてやる……♪」

 心底嬉しそうにゼニスが言うと、また彼女のおまんこが蠢きはじめる。
 さっきよりも遥かに激しい上下運動でおちんちんが飲み込まれ、引き抜かれを繰り返す。
 待ち望んだ快感に、僕はもう一瞬もガマンすることができない。

「あ、ぁ、で、でるっ、せいえき、でちゃう……っ!!」

 どぴゅる、とおちんちんから凄まじい気持ちよさとともに何かが飛び出していく。
 その熱い何かはゼニスのおまんこの中に注がれ、びゅくびゅくと吐き出される。

「んはぁっ……出た出た、翔太の、初めてのセイエキ……。
 すっごく濃くて……アタシの中に入りきらねえほどたっぷりだ……♪
 すっかりトロけきったカオもかわいいぞ♪」

 おちんちんの奥まで吸い上げられるような感覚に、頭が真っ白になる。
 その快感は五秒以上続いて、僕の意識を気持ちよさで塗りつぶした。

「よーしよし、初めてなのに上手に射精できたな……えらいえらい♪
 お姉ちゃんも、とっても気持ちよかったぞ……♪」

 おまんことおちんちんで繋がったまま、ゼニスが僕の頭を優しく撫でてくる。
 同時にたゆんとした二つのおっぱいが僕の顔を包み込み、頭の中がぽわんとなる。
 精液を出した疲れもあり、ゆっくりと僕は眠気に包まれていく。

「お……おねえ……ちゃぁんっ……」
「もう疲れたか?オマエが寝るまで、ずっと抱きしめててやるよ……。
 おやすみ、翔太……」

 僕が昔から求めていたもの――その何かが、満たされていく気がした。










 あの後気を失った僕は、またゼニスのおっぱいの中で目が覚めた。
 どうやらあの後、僕たちはそのままベッドで眠ってしまっていたらしい。
 慌てて顔を離すと、そこにはにやにやと笑うゼニスの姿があった。

「おはよう、翔太」
「……おはよう」

 そんな彼女の顔が直視できない。
 昨日の事を思い出すだけで、顔から火が出てきそうだった。

「ふぁ〜ぁ、オマエが起きるまで待ってたらハラ減っちまったなあ。
 朝飯、作ってくれよ」
「……服、着なおしてからね」

 時計を見るとすでに九時を回っている。今日が休みの日でよかった。



 二人で朝食を食べていると、突然チャイムが鳴った。
 誰だろう、と思いながら玄関に行き、ドアを開ける前にインターホンの画面を見る。
 そこには二人の警察官が立っていた。
 その二人は、警察のヒトが着ている服を除けば、本で読んだことのある『アヌビス』と『人虎(じんこ)』という魔物にそっくりだった。
 恐る恐る、僕はインターホンの受話器を取る。

「朝からすみません、警察のものですが」

 クールな女の人の声に、びくっと僕の身体が跳ねる。 
 いきなり警察の人が来るなんて、一体何の用だろう?
 悪い事なんてしていないはずなのに、僕は不安になってしまう。

「な、何の用ですか?」
「実はですね、最近この辺りを県が認可していない魔物が歩いている、という情報に、
 それと加えて昨日、不審者が男の子を連れ去っている所を見た、という通報がありまして。
 遅ればせながら注意喚起に参りました」
「え……」

 それはもしかしなくても、僕とゼニスのことではないのか。

「ポスターもお配りしておりますので、ドアを開けていただいてもよろしいですか?」
「は、はい……」

 僕がドアを開けると、そこにはゼニスと同じくらい背の高い女性警察官が二人立っていた。

「おや……君ひとりかい?両親の方は?」
「お母さんは……いません。お父さんは、昨日から仕事の出張でまだです」
「……そ、そうか。こんな小さな子なのに、なんて健気な……うっ」
「こら、仕事に私情を挟むな……気持ちは分かるが」

 アヌビスさんが人虎さんをたしなめ、ようやく話が戻る。

「さて、本題だが……このポスターを見てほしい」
「!」

 アヌビスさんは手に持っていたポスターを広げ、僕に見せた。
 そこに写っているのは牛の特徴を持った魔物――ゼニスによく似た外見の女性だ。

「これは『ミノタウロス』という魔物娘だ。聞いたことはあるかな?
 彼女たちはまだ県で認可……えっと、認められていない魔物娘でな。
 気性が荒く、男を無理やり襲ってしまうほどの凶暴さがあるのがその一端だ」
「寝ている事も多いので、危険性はトップクラスというほどではないが……。
 その魔物娘がこのあたりをうろついているという話らしい。
 もし一人で彼女を見かけたら、すぐに警察を呼んでくれ。いいね?」
「は、はあ……」

 この辺りにいる――というのは、どう考えてもゼニスの事を指している。
 どうしよう。すぐそこで朝食を食べているところなのに。

「せ、先輩。こんないたいけな子供をそのままにはしておけません。
 襲われてトラウマにでもなってしまったらどうするんですか。すぐに保護しましょう!」
「いや、だから……自分の好みだからといって暴走するのはやめろ。発情期なのかお前は」
「し、しかし……」

 少し血走った人虎さんの目線に、僕はちょっと怖くなる。

「こ、こわくないぞ。お姉さんに任せていれば、なにも心配することはない……」
「いや、あ、あの……」

 じりじり僕に近づいてくる彼女に向かって、

「おいおい、ちょっと待てよ。そいつはアタシのモンだぜ」

 いつの間にか玄関に来ていたゼニスが言う。

「むっ、だれ……え? き、きさま!件のミノタウロスじゃないか!」
「こ、こんな所にいるとは……よ、予想外にも過ぎる!どどど、どうすれば……」

 警察官の二人も、僕自身も、予想外の事態にうろたえている。特にアヌビスさんは。
 ただ一人、ゼニスだけが冷静に言い放つ。

「……話は聞いた。早く連れて行け」
「え?」
「なに?」

 僕は振り向いてゼニスを見る。その表情は初めて見る、とても寂しそうな、悲しそうな顔。

「アタシはここにいちゃいけないんだろ?……知ってたさ。自分が厄介モンだってぐらいな。
 だが、ここで暴れてオマエに迷惑を掛けるわけにはいかねえ」
「ぜ、ゼニス……」
「なあに、死ぬってワケじゃないんだ。そんなツラするなよ。
 時間が経ちゃあ、許しも出る。また会えるさ」
「……認めるのか?無許可でこちらに来たことを……」
「ああ。もともとウソ付くのはニガテなんだ」
「……」

 ゼニスは玄関の土間へ降り、ドアの前に立つ。 

「それでは、任意同行を……」

 そのまま、彼女は振り返らずに進もうとする。



「――待ってください!」

 気が付くと、僕は叫んでいた。

「その人は、僕の……姉さんです……」

 ゼニスの足が止まる。

「大事な、大事な……たったひとりの、姉さんなんです」 

 僕の言葉を聞いて、困惑の表情を浮かべるアヌビスさんと人虎さん。
 
「だ、から……連れて、行かないで……!」

 声が泣き声に変わり、目から涙が溢れる。鼻の奥がつんとする。

「こ、これは……なんなのだ、これは?どうすればよいのだ?」
「先輩……」

 前が見えなくなり、僕はその場でうずくまる。

「……。私達が探しているのは、国から許可を受けずに、一人身で放浪している魔物娘だ。
 そして、既に伴侶を持っている者は基本的にその対象に入らない」
「……」
「夫を持っている、もしくは同等の存在を持つとみなされた者は、その人間が申請することで国から許可を受けられる。
 これはどんな魔物娘であれ平等の権利だ、差別されることはない。この県で定められた条例の一つだ。
 言いたいことは分かるか?」
「……」
「つまり『ここには一人身の魔物娘はいなかった』……我々はただ、注意喚起に来ただけだ」
「……警察官さん……」

 立ち尽くしたままのゼニスを押しのけ、人虎さんが慌てふためくアヌビスさんを引っ張って玄関から出て行く。

「え?え??そ、それで大丈夫なのか? わ、わからん!ぜんぜんわからん!」
「先輩……帰りましょう。仕事は済みました」
「あ、ああ……そう、なのか?」
「私もいつか、君のような素晴らしい男の子を迎えられるよう、努力するよ」

 ばたん、と玄関のドアが閉められる。
 僕とゼニスだけが取り残され、しんと静まりかえった時間が流れた。

「……どうして、アタシのことをかばった?」

 振り返らないまま、ゼニスは聞く。

「アタシ、は……欲望のままに、オマエを好き放題した。それなのに……なんで……」

 声が震えている。そんなゼニスの声を聞くのも初めてだった。

「ゼニスは……確かに、いいかげんで、大ざっぱで、面倒くさがりで。
 最初に会ったときは……あんまり好きになれなかった。
 でも、僕にお母さんがいないことを知ってから……僕を甘えさせてくれた」
「あれは……アタシが、そうしたかっただけで――」
「それでも、」

 ゼニスの言葉が止まる。

「それでも僕は、嬉しかった。
 今までずうっと、満たされないココロの中がいっぱいになっていく気がした。
 ゼニスのおかげで、少しの間でも幸せになれたんだ。
 だからもう……離れたく、なかったんだ」

 顔を伏せたまま、彼女は僕の前に立つ。
 僕の脇に腕を差し込んでゆっくりと持ち上げて、僕をぎゅっと抱きしめる。 
 そしてゼニスの首に手を回し、僕からも抱き返す。

「ばか……やろうっ」

 抱き合っていたせいで、彼女の泣き顔は見れなかった。  

「好きだよ、ゼニス姉さん」






 それから――僕の家庭はゼニスも含め、賑やかになっていくのだが。
 それはまた、別のお話。  
18/07/27 23:32更新 / しおやき

■作者メッセージ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。

おねショタは数ある中でもかなり好きな嗜好なんですが、今まで書けてませんでしたね。
捨て魔物娘シリーズでは魔物娘ガチャ(もさきちさん作のついったの診断メーカーのことを指す)で決めたりしているのですが、ミノタウロスさんが出たときはおねショタしかねえ!と天啓を受けました。
もっとおねショタを書きたいんですが、大体ぼくが書く前に誰かがやってたりするので…。

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