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勇者の夢
勇者の夢

アルカナ合衆国 ワトソンDC

『ダメだ!ダメだ!危険過ぎる!!……第一にリスクが大き過ぎる。彼はクラーヴェの人工勇者のオリジナルだ。しかもRh OO型では無いか!……全体のおよそ22%……最も多くの人工勇者を生産した最強のオリジナル勇者なんだぞ!?暴走の危険もある。現にシャーロ共産連邦で保護したRh-BB型のオリジナルは暴走し、甚大な被害を出したと報告が上がっているではないか!』

ガヤガヤと騒がしい議会堂で大統領が声を張り上げている。現在の大統領は人間の男性だ。

『幸いにも……どの様な処置も受け付けずに眠り続けていると報告が上がっている。本来ならオリジナル勇者にS級戦犯を適用してもおかしくはない!我が合衆国並びに同盟国軍人間部隊や周辺国の民間人がどれだけ犠牲になったか……。仮に助けられたとしても高度な政治的判断を要求される。特にブリトニア連合王国とランドル・ファラン共和国、シャーロ共産連邦は黙っていないだろう。……大統領としてRh OOオリジナル勇者の存在を秘匿、厳重に魔導プロテクトを掛け、歴史的存在抹消後、封印しておくのが最善だと確信する!』

ガヤガヤ……ガヤガヤ……

『静粛に!……続いて、魔物娘共和党の代表者。反対答弁を。』

次に出てきたのはサキュバスの元老院議員だ。

『彼は先の戦争の被害者でもあるのです!……我々が救わなくてはなりません。もちろんリスクもあります。しかしそれが、世界を牽引するアルカナ合衆国の責任であると確信します。第一次人間大戦での戦勝国の過ちが、先だっての戦争に繋がったのです。また返すのですか?……今こそ寛容を!』

『……もし暴走を引き起こせば、それを機に主神教過激派のテロも起こるかも知れないのだぞ!その責任はどうするのだっ!!』

議論は平行線を辿っていた。その時……

『では……彼の勇者としての力を無力化出来れば良いのですね?』

議会堂の扉が開き、そこから子供の声が聞こえてきた。

『『国母様!!』』

国母と呼ばれた真っ白な悪魔の子供はゆっくりと議会堂の中央まで進み、優雅に一礼すると言葉をつづけた。

『人と魔物娘の虹の国に相応しい、人間と魔物娘の対等なる議論、嬉しく思います。やはり……この国を魔物娘主導の魔物国ではなく、人と魔物娘が対等たる人魔中立国にして良かった。心からそう思います。』

『先程、国母様は無力化と仰いましたが可能なのですか?』

『はい。本題に入りましょう。コホン……今回、人工勇者のオリジナルについて、わたくしのシークレットサービスが独自の情報網を使い調べ上げました。その報告によると、発見、保護された12人のオリジナル勇者の内、4人は暴走を引き起こしていません。4例共に家族や親しい友人、恋人がオリジナルを説得し、精神的なケアを行なっています。結果としてオリジナル勇者の暴走を引き起こす大きな要因の一つに、憎しみや怒り、悲しみ等の負の感情がトリガーになっている事がわかりました。』

『しかし、国母殿下。報告によれば件のオリジナル勇者の家族は……』

『はい。残念ながら彼の家族はクラーヴェ社会労働党によってアウシュヴァイツ・ユタ人収容所にて処分されていたようです。本当に……本当に残念です。が……彼の想い人と思しき幼馴染だった女性が戦前、我が国に亡命した記録があり、紆余曲折の後、魔物化処置を行い、移民として合衆国国籍を取得。43年8月から従軍医師としてアルカナ合衆国軍に従軍。現在ロストアンジェロ市にて市民として生活してる事がわかりました。』

『なんと……』

『彼女にオリジナル勇者の話を持ちかけた所……非常に協力的な態度を示して下さいました。しかも彼女はナイトメアになっていました。本当に奇跡的です。これで眠り続ける彼に何かしらのコンタクトを試みる事が可能です。』

『アルカナ様、質問をお許しください。……主神の加護は魔法や魔力の影響を殆ど受け付け無いのでは?いかにナイトメアでも対処は難しいと愚考します。』

『そちらも既に手を回してあります。現在、魔王軍サバト魔法技術開発研究局カルミナ国支部からお越し下さいました、バルフォア博士とキャサリン博士が対応中です。』

『では……彼を救えるのですね?』

幼い容姿の白い悪魔は首を縦に振った。

『まだ可能性の域は出ません。しかし、眠り姫ならぬ眠り勇者が親しい間柄の彼女の呼びかけに応えてくれる可能性は十分あると判断します。愛こそが世界を救うのです(キラッ!……魔王の娘、リリムたるわたくし、ロード・アルカナの名により、建国より3度目の合衆国憲法第0号……国母号を発動します。彼を救いましょう。見捨ててはなりません。……全責はわたくしにあります。証人をお願いします。』

その場にいた議員が次々と手を上げ、集計の結果、国母号は大統領とサキュバスの元老院議員を含む8割の賛成可決となったのだった。





アルカナ合衆国 某所 某研究所……





聖歴 ならびに 人魔歴 1945年、12月。第2次人間大戦で猛威を振るった敗戦国クラーヴェ第3帝国の人工勇者。その元となったオリジナルの1人がシルバブルグ市で見つかった。私の目の前にある大袈裟な生命維持装置の中、培養液に浮かぶのは勇者の少年だった。

人工勇者計画……戦闘能力が高い勇者の能力を加護を受けていない人間にコピーし、人為的に勇者を量産する狂った計画。

1938年以降、犯罪者や強制収容所に連行されたユタ人を使用し、あらゆる人体実験を繰り返し、最終的にオリジナル勇者の脊髄細胞を培養し、そうして作った人工の脊髄を対象に移植。不完全ながら勇者の能力を再現した。

立体軌道装置を身に纏い空を自由に駆り、恐るべき力で全てを破壊する死の天使達。

その代償は大きく、暴走、拒絶反応、遺伝子劣化……人工勇者達は力に命を吸われて滅んでいったが、不完全な量産勇者とて戦場では恐るべき脅威となったのだ。

『……死体にも見えますが、確かに生きています。主神の加護で死にたくても死ねません。どうやら彼は今年で19歳になるようですが、12歳前後で成長が止まっているのは、禁魔法術式で第2次成長に使われる膨大な生体エネルギーを生贄にして無理矢理魔力の底上げに回したからですね。』

研究員達が忙しなく動き回る中、白衣のリッチが淡々と説明する。

『……ひどい。』

勇者の少年の身体には沢山のコードが巻きついている。口元にはガスマスクの様な呼吸器が取り付けてあり、時折空気がゴポリと音を立てて浮かび上がった。

『……何人か人工勇者のオリジナルを見て来たのじゃが……こやつは目覚めんのじゃ。医学的には命に別状ないんじゃがのう……』

白衣のバフォメットが肩を落として溜息を吐いた。

『バルフォア博士のカルテから、覚醒しないのは心の問題があると推定して、あらゆる精神術式を試してみましたが……ご覧の通りです。』

博士の助手も心無しか気が重そうだ。

『まぁ、無理もないのじゃ。此奴はオリジナル勇者の中でもとびきり特別なOO型だからの。加護……いや、呪いの強さも桁違いなのじゃろう。』

『その……OO型って何の事ですか?』

『そのまま血液型の事じゃよ。AO型、AA型、BO型、BB型、AB型……そしてOO型じゃ。それぞれRh と-含めて12人。人工勇者はオリジナル勇者の脊髄細胞を培養し、そうして作った人工の脊髄を移植して、不完全ながら勇者の能力を再現した人間兵器じゃ。培養脊髄の移植には血液型が適合せねばならん。で……此奴はRh のAO型、BO型、OO型に移植適合する最も多くの人工勇者の元となったRh OO型のオリジナル勇者と言うわけじゃ。』

歩きまわりながら、助手はデータを解析していた。

『……この勇者の脳波を計測した結果、どうやら彼は夢を見ているようです。波長は深い眠りを示す深度ですが、こちらの精神波が揺れています。』

『深い眠り……で精神派が動いている。つまり、目覚めないほど深い眠りの中で夢を見ている……と言う事でしょうか?』

『あぁ、おそらく自ら望んでじゃな。だから無理矢理覚醒させると肉体と精神が解離してしまうのじゃ。そうなれば永遠に植物状態じゃのぅ……』

バルフォア博士はずり落ちたメガネをかけ直すとまた溜息を一つ吐いた。

『此奴はまだマシな方じゃ。オリジナル勇者は皆例外なく子供じゃった。第二次成長期を生贄に魔力を無理矢理底上げする禁魔法術式で同様の処置をされてな。……此奴らは主神の呪いを通してコピー先と繋がっているのじゃ。何百……いや、何千人のコピーの記憶、感覚、感情等の情報をその小さな胸で受け止め無ければならない。ある者は発狂しており……ある者は自我が崩壊しておった。この子は情報と感覚を切り離して夢に逃げる事で心を守ったのじゃろう。』

バルフォア博士は苦虫を噛み潰したような表情をそのメガネの奥に隠した。

『人間は……己の為に神の力すら利用するのです。私達魔物娘は先の戦争を、人間の狂気を止められませんでした。』

主神が本当に居るとして、主神は自身を利用しようとする彼等を利用していたのだろうか?それとも、ただ右往左往する人間や魔物娘を……世界を面白がって観ていただけなのだろうか……

『彼らはその加害者であると同時に被害者であり、であるからこそ我々が救わなくてはなりません。しかし……今回のは前例の無い特殊なケースなのです。あらゆる手を尽くしました。しかし、残念ながら我々だけでは解決出来そうにありません。……そこであなたを呼んだのです。ティマ・フユーゲル医師。』

『……』

『あなたは大戦以前にクラーヴェから合衆国亡命して連合国従軍医師として活躍。特にシェルショック、前戦症候群やPTSD等の精神的なケアにおいて類い稀なる能力を持ち、何人もの人々を救い、戦後も活躍しています。』

『……そして最も重要な理由は、お主がオリジナル勇者の幼馴染と言う事実と、お主が魔物化処置でナイトメアになったと言う奇跡じゃ。……いゃ、これは最早運命と言うべきか。』

カプセルの識別プレートにはゲオルグ・フリードマンと書かれている。私の幼馴染の名前だ。

『久しぶり……ゲオルグ。』

そうして私は頭に特殊な器具を着けて、ゲオルグが入っている生命維持装置に繋がる。彼の頭にも同じ器具が着けてあった。

『なんですか?これ?』

『今から説明します。現在、彼を助けるにあたって問題が2つあります。1つ目に、主神の呪縛は外的な魔法や魔力の影響を殆ど受け付けません。ナイトメアやゴースト系魔物娘の使用するサイコメトリーも例外ではありません。リリムやバフォメットなどの魔物娘が持つ強大な魔力が有れば無理やり呪縛を解く事は可能ですが……無理にそれをするとリバウンドが起こり、最悪彼の生命に関わります。したがって、バイタルの確保は可能な限り科学的に行わなければならず、これにより彼を生命維持装置から出すことが出来ません。これが2つ目です。』

バルフォア博士がえっへん!……と胸を張った。

『そこで、このわしと助手のキャサリン博士とが独自の理論に基づいて作成したこの装置で直にオリジナル勇者とティマ医師の脳と神経を同期させ、ナイトメアの能力を媒体にしてティマ医師の精神を此奴の夢の世界に送る……と、そう言うわけじゃ。』

『……ティマさん、あなたも普段精神科の治療で行っていると思いますが、あなた方ナイトメアはある特殊な古代魔法術式によって自身の身体を魔力に変換して魔力アストラル体に……つまり質量の無い、意志を持つエネルギー体、言ってしまえば魔力の塊りになる事により対象の夢の世界に入ります。……ようはその現象を科学的に起こします。』

キャサリン博士と呼ばれた助手さんが少し呆れた様子で補足説明をしてくれた。バルフォア博士はうんうんとうなずいている。

『……夢の中とはマトリクス空間。つまりは異次元として認識できる。したがって、夢の中に入れさえすれば質量の無いエネルギー体である魔力は理論上使える筈じゃが、今回使用するこの方法は装置を使用する為に物資的な身体をこの世界に置いて、お主の精神だけを夢の世界に送る性質上、どうしても魔力アストラル体として夢の世界で使用できる魔力が少なくなってしまう。……しかし、もうこの方法しか考えられん。頼めるか?』

『はい……。ゲオルグの夢の中に入って彼を起こして来ます。それで、良いのですね?』

『そうじゃ。……この作戦はロード・アルカナ直々に国母号を発動しておる。アルカナ合衆国連邦政府とアルカナ合衆国軍機械化魔導兵器開発研究局、魔王軍サバト魔法技術開発研究局、並びに国際人魔錬金科学研究局は全力でティマ医師をバックアップする。しかし……リスクも大きい。最悪、あわや暴走と言う時は2人揃ってコールドスリープ後、合衆国軍の管理下の下……恐らく永久に封印される。もう一度確認する。本当にやるのじゃな?』

『はい。』

『良く言った!……では同意を。』

これはある種の誓いなのだろう。

『……私、ナイトメアのティマ・フユーゲルはオリジナル勇者を助ける為、この処置と作戦名オペレーション・ブレイブリーに完全に同意します。』

待っててね……ゲオルグ……。

『……証人完了。オペレーション・ブレイブリー直ぐに始めます。』

ヴゥンン…………

『シンクロ開始します……脳波安定……パターン、グリーン……セイフティー確認……神経接続開始…………から……まで…………52%…………率……上昇……………………』

彼女達の声が遠くなっていく中、私はゲオルグの夢の中へと旅立っていった。










夢の中……大聖堂……



目を開けると私は懐かしい2本の足で立っていて、懐かしい燻んだエプロンドレスを着ていた。

彼の夢の中、そこは光輝く大聖堂のような空間だった。虹色に輝く長い長い階段の両脇には、左右に12づつ24の大きなステンドグラスが浮かんでいて、右側には旧約聖典の聖者が、左側には新約聖典の聖者が描かれていた。

遠く長い虹色の階段の上には扉があって、その上には救い主や神の子と呼ばれた勇者の大きなステンドグラスとその両脇に聖女のステンドグラスが勇者を見つめるように並んでいた。

『これがアナタの信仰なのね……』

サンクトゥス……サンクトゥス……サンクトゥス・オ・ドミヌス・デゥス・サボゥフ……

プレニ・スント・クレゥニ・エト・テェッラ・グローリア・トゥア……………

何処からか酷く美しい造花の歌が聴こえてくる。

ホサナ・ィン・エクセシィス……

ベネディクトゥス・クゥイ・ヴェニ・ィン・ノミネ・ドミニィ…………

ホサナ・ィン・エクセシィス……アーメン……

サンクトゥス……サンクトゥス……


彼が好きだった聖歌だ。


美しい信仰……天国のような理想の世界。でも……世界とステンドグラスは所々ひび割れていて、繰り返し聴こえてくる聖歌も擦り切れたレコードが奏でる蓄音機の音ように掠れている。

私には世界が壊れかけて見えた。

私は2本の足で階段を一歩ずつ歩いていく。人間の身体はこれ程に疲れるのかと懐かしい感覚を感じる。

そうして歩いて行くと扉の前についた。

"……あなたは誰ですか?"

声がした。懐かしい昔のままの彼の声だ。

『ゲオルグ!ゲオルグなのね!?……ティマよ!私はティマ!アナタを助けに来たの!』

"……帰りなさい。あなたにできる事はありません。帰りなさい……"

声も聖歌も止んでしまった。

『それでも……私は…………』

私は目の前の大きな扉を開けた。










夢の中……鏡の世界……


大聖堂の扉を開くとそこは鏡の世界だった。

私は道かどうかもわからない道を歩いていく。

何千何万の鏡。私の姿を歪めて映したり、さまざまな角度の私が写っている。

普通なら、夢の中の世界は一つだけだ。

バルフォア博士の言葉が頭を過ぎる。

彼は心を切り分けてずっとずっと耐えてきたのだろう。

すると、沢山の鏡の沢山の私の中で1人だけ違う動きをしている私を見つけた。

鏡の中のその私は、私に気づくと鏡と鏡を跨いで奥へ奥へと逃げていく。



私は私を追って鏡の世界を進んでいく。まるで道化師を追っているみたいだ。

そして、いつからか鏡に映されているものが私ではなくなった。



幼い頃の私とゲオルグの笑顔……

"将来、大人になったらお姉ちゃんを僕のお嫁さんにするんだ!"

"そっか……うん!嬉しい!……でも、その前に泣き虫を治さないとね!"

他愛もない幼い日の約束。

そこの鏡の中では泣いている幼いゲオルグを私が抱きしめている……

その隣の鏡の中で彼はおじさん、おばさんに手を引かれて市場を歩いている……

写されていたのはキラキラした美しい思い出たちだ。





私は私を追って進む。鏡の中はどんどん変わっていく。





行進する機械のような黒い軍服の兵士達……

鳴り響く行進曲……

演説をする独裁者……

"今、有史以来、人類の歴史において、その天上に至らんとする我が国家とゲルマ民族の発展に、その栄光に、私は震えている。我々の科学力が遍く世界を!宇宙を照らすのだ!!……永遠なれ!ゲルマ民族よ!!永遠なれ!クラーヴェ第三帝国よ!!!"

拍手と歓声……

"ハイル・アドラー!ハイル・アドラー!!"

次々と掲げられる民衆の右手…………

"ジーク・ハイル!!ジーク・ハイル!!!"

紅と黒の社会労働党の旗、旗、旗…………

戦争の熱と人々の狂気……

"ユタ人がいたぞーーっ!!!"

秘密警察に逮捕されるゲオルグの家族……

"……この子には勇者の適性がある。"

恐れるゲオルグの表情……

"お前はユタ人だが、勇者の適性がある。それも特別な。お前の協力次第でお前の家族は助かるかもしれない。"

冷たい鉄の扉……

白衣の研究者達……

謎の機械……沢山のコード……ゲオルグの呻き声……

"成功だ!!……これぞ新しい兵器だ!!我々は遂に神の力を手に入れたのだ!!……名前はどうするか……人工勇者……そうだ!人工勇者だ!それが良い!!"

"残るオリジナルの適合者を探しましょう……この子の実験結果を基にすれば……"

笑う白衣の研究者達……





私は私を追って進む。鏡の中はどんどん変わっていく。




燃える街……

壊れて崩れる家々……

空を掛ける人工勇者……

なす術なく倒れていくファランとブリトニアの兵士……

破壊の限りを尽くす人工勇者……

略奪を行うクラーヴェの兵士達……

殺される男や老人…

犯される女……

瓦礫の山……

逃げ惑う人々……

母親を呼び、泣き叫ぶ子供……

腕の千切れたぬいぐるみ……


『これは……ナニ!?』

(主神の呪いを通してコピー先と繋がっているのじゃ。何百……いや、何千人のコピーの記憶、感覚、感情等の情報をその小さな胸で受け止め無ければならない。)

バルフォア博士……そう言う事なのですね。

これは、ゲオルグの力をコピーした人工勇者達の記憶……。





私は私を追って進む…………。





朽ちていく身体……

勇者の力と主神を欺いた代償……

"兵器として使えれば問題ない。代わりは幾らでもいる。"

そうのたまう高官の男……

戦場で倒れる彼ら……

痛みの記憶……

怒り……

"神よ!!何故だ!……クソ!クソ!クソっ!!"

恐怖……

"死にたくない!死にたくない!!"

後悔……

"なぜこんな事に……聞いていないぞ!"

憎しみ……

"憎いっ!俺をこんな目に合わせた全てが憎い!"

悲しみ……

"あぁ……いやだ……朽ちるのは嫌だ……"

助けて

タスケテ

たすけて

タスケテ

助けて

タすケテ

助ケテ

たすケテ

タスけテ

助けテ

たスケて

誰か

ダレカ

だれか

ダレか

だレカ

誰カ


数え切れない何千、何万の鏡そのひとつひとつにはゲオルグから力を受け継ぎ、その重過ぎる代償として身を滅ぼした人工勇者達の顔が映し出されていた。 




それはまるで人間の業そのものだった。




私はなおも私を追った。

鏡はもう真っ暗で私が追っている私以外には何も映っていない。

(……帰りなさい。あなたにできる事はありません。帰りなさい……)

ゲオルグは大聖堂でそう言ったけど、本当は助けを望んでいる筈だ。

人工勇者とオリジナルは主神の呪縛で繋がっている。さっきの人工勇者達の言葉は……他ならないゲオルグ自身の言葉だ。


私は私を追う……

涙が止まらない……


そうして鏡の世界の果てまで来るとそこには小さな扉があって、真っ暗な影みたいな私が指を刺して、そして儚く消えていった。

根拠のないただの思い込みかも知れない。でも、この扉の向こうにゲオルグがいる。……そんな確信がある。


私は目の前の小さな扉を開けた。











夢の中……荒れ野……


鏡の世界を抜けると、そこは荒れ果てた平原だった。私が出てきた小さな扉はもう消えてしまった。

私は当ても無く荒れ野を歩き出した。遠くに微かに聖堂が見える。紅く綺麗な夕焼けで、でも私には悲しい景色に見えたのだ。

しばらく歩くと、痩せこけた小さな男の子が膝を抱えて泣いているのが見えた。

私は走り出した。

『ゲオルグ……!』

『…………だあれ?』

『ティマよ……私はティマ。アナタを迎えに来たの。アナタを助けに来たの。』

ゲオルグは顔を上げた。目は虚ろで濁っていて、頬は涙の跡でひび割れていて、疲れ果てて擦り切れたようだった。

『……お姉ちゃん…………。』

『さぁ…………帰ろ?』

私はゲオルグの肩に手を伸ばした。

『だめ……』

触れようとした瞬間、ゲオルグが拒絶したのだ。

『どうしたの?』

彼は自身の手を私に見せた。

『………見て…………』

その両手は血でべったりと汚れていて、それはゲオルグの身体を紅く汚していった。

『もう……僕は、お姉ちゃんに触れちゃいけない。こんな手で触れられない。……汚れちゃった……汚れちゃったよ……。』

そしてとうとう首から下が血で濡れてしまった。

『僕の力で、いっぱい、いっぱい殺した。……僕のせいで、いっぱい、いっぱい死んでいった。……それなのに……助けてなんて言えない…………言えないよ…………。』

ぎゅ…………

『ゲオルグ……独りで頑張ったね。えらいね。……辛かったね……。』

私はゲオルグを抱きしめた。抱きしめずにはいられなかった。2人とも真っ赤になってしまった。

『あっ………………』

『ここに来るまでに全部見たよ……。寂しかったね。……暗かったね。……寒かったね。……痛かったね。……苦しかったね。……悲しかったね……。』

『……お姉ちゃん……お姉ちゃん…………』

ゲオルグが血に汚れたなら……私も汚れよう。

もし、ゲオルグの存在そのものが罪だとしたら私もその罪を一緒に背負おう。クラーヴェを捨てた時、もう二度と泣き虫なゲオルグには逢ないと思った。でもこうして大好きなゲオルグもう一度逢えたのだから。

『……お姉ちゃん……寂しかった……暗かった……寒かった……痛かった……苦しかった……悲しかった……お姉ちゃん……わぁぁあああん!!』

ゲオルグが大粒の涙を流しながら泣いている。

その涙は宝石の様にキラキラと輝いて夕焼けの荒野の中を風に乗ってタンポポの綿毛の様に飛んでいった。

『よしよし……。頑張ったんだね。』

私はゲオルグが泣き止むまでそのままそうして彼を抱きしめた。

『……ゲオルグ。帰ろう?……帰ったらスープを作ってあげる。』

『……うん。』

その時…………。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………

ピキピキピキピキ……ガシャン!!

『な、何!?ゲオルグ?』

『僕にもわからない!!』

突如として夢の世界が壊れ始めたのだ。

"……ティマ医師!ティマ医師!"

天井からバルフォア博士の声が降ってきたのだ。

『バルフォア博士?』

"今、ワシはお主の身体に直接触れて声を送っておる!魔力体にワシの魔力を送り込む一方通信じゃから、語りかける事しか出来ない。だから良く聞くんじゃ!解析した脳波から恐らくオリジナル勇者と何らかのコンタクトを取れたと確信する!良くやった!……じゃが想定外の問題が発生した。精神派はそのままに脳波だけが覚醒に向かっておる!このままじゃと肉体と精神が解離してしまうのじゃ!!マトリクス中のお主の座標を元にこちらでゲートを作る!!今キャサリン博士が大急ぎで対応中じゃ!可能であればオリジナルの精神と一緒に脱出するのじゃ!!以上ー!!"

すると、遠くに見える聖堂の扉が淡く光った。

きっとあそこだ。

『ゲオルグ!走るわよ!』

私はゲオルグの手を掴んで走り出した。

夢の世界はまるで古びたガラスの様に崩れて行く。

私達は走って走って……躓きながら前に進んで行った。

でもゲートまであと少し……

『もう少し!……きゃっ!!』

『お姉ちゃん!!』

金色に輝く手の生えた触手のような鞭の様なものに手を掴まれてしまった。

『離して!お姉ちゃんを離して!』

ズリュッ!!

ゲオルグがその辺りに散らばる砕けたガラスの様な夢の一部でそれを切るとまた2人で走り出す。

世界はどんどん無くなっていく。

聖堂の扉に出来たゲートへの道も手前で崩れてしまっていた。

『ゲオルグ!……飛ぶよ!』

その時……

ガッ!!ヒタヒタヒタヒタヒタヒタ……

何本もの金色の触手が私とゲオルグを捕まえた。

『お姉ちゃん……ごめん!!』

ゲオルグは私をゲートに向かって投げ飛ばしたのだ。

『……夢の中でも、力は使えるんだね。』

『ゲオルグ?』

『この金色のヤツは……たぶん主神様のお力じゃないかな?僕は全部が嫌になって、逃げ出して、望んで此処に閉じこもった。勇者の力を使って。だから……此処には僕が居ないと。』

そうか……この夢はゲオルグが望んで出来た世界……ゲオルグの勇者の力で出来ているんだ。だから、彼を此処に留めようとするんだ。

でも……

でも……でも……っ!

『いや!嫌だよ!!……スープ作るって!食べてくれるって約束したじゃない!!』

『お姉ちゃん……ごめんね。逢えて嬉しかった……』

『ゲオルグ!ゲオルグーーー!!!』


…………バタン!!











現実世界……アルカナ合衆国 某所 某研究所……


『ティ……師……ィマ医……ティマ医師!ティマ医師!』

目を開けるとそこは研究所で、私の顔を覗き込むバルフォア博士とキャサリン博士がいた。

どうしよう……涙が止まらない。

『バルフォア博士!……彼は?ゲオルグは?』

『依然として身体は目覚めようとしておる。コールドスリープを準備中じゃ。一体何があった?』

私は夢の中の事を話した。

『そうか……そんな事が……。』

『バルフォア博士!私をもう一度……彼の夢の世界に!!』

『ならん!!……残念じゃが、もうワシらに出来る事は無いのじゃ……。』

『博士……コールドスリープの準備が出来ました。これで現状を保存。もう一度オリジナル勇者を眠らせる事が出来ます。』

キャサリン博士が淡々と告げる。

コールドスリープ……?

そうか、それだ!

『……自体は一刻を争う。直ぐに……』

『バルフォア博士!……コールドスリープをすればゲオルグの精神と身体は解離しないのですか!?』

『?そうじゃが……』

『では……コールドスリープでバイタルを確保……現状を保存出来ますか!?』

『……可能じゃ。』

『最後の質問です。……博士の魔力で主神の呪縛を無理矢理破壊出来ますか??』

『もちろん可能じゃ。……!?……お主、一体何を考えておる!?まさか……』

『はい。……博士の魔力で主神の呪縛を無理矢理破壊した後、私がゲオルグの夢の中へ。その後直ぐにコールドスリープを発動させて下さい!!』

もう、これしかない。

『……そうなればオリジナル勇者の身体は眠ったままじゃ!お主も夢から出られないぞ!?失敗する危険もある!!』

『もとより覚悟の上です。……彼とならずっと夢の中でも構いません。……彼を……ゲオルグを愛しています。』

『は……ははっ……はははははは!!!小娘が言いよるわい!!その掛け乗った!!!キャサリン!直ぐに準備じゃ!!』

博士の号令で、白衣の研究員達が一斉に動き出した。

『博士……良いのですか?』

『……今は、合衆国憲法代0号発動中じゃ。アルカナ殿下より直々に "良きに計らえ" と言われておる。それに、ああも真っ直ぐと愛してると言われてはのぅ。……ワシも早くお兄ちゃんが欲しいのぅ。』

『……わかりました。』

そうして、数分も経たない内に準備が出来た。

『チャンスは一度切りじゃ!良いな!?』

『はい!!』

『面倒じゃが、法は法じゃ。……同意を!』

『……私、ナイトメアのティマ・フユーゲルはオリジナル勇者を助ける為、この処置と作戦に完全に同意します。』

待っててね……ゲオルグ!

『よう言った!!いくぞーーっ!!』

バルフォア博士から魔力が解き放たれて、ゲオルグの身体を包むと何かが破れるような音が聞こえて来た。

『ティマ医師!いまじゃ!!』

私はナイトメアの古い魔法で彼の夢の中に飛び込んだ。今度は身体ごと魔力になって。

『キャサリン!!』

『コールドスリープ機動します。』









『…………行ったか。そっちはどうじゃ?』

『安定しています。……どうやら成功したようです。』

『ふぅ……そうか。良かったわい。……あとは頑張るんじゃぞ?ティマ医師……』









夢の世界……虚無の空間……


真っ暗で何も無い世界。

ゲオルグはそこに浮かんでいた。

『ゲオルグ……ゲオルグ……!!』

『お姉ちゃん……なの?……その身体は……』

今の私は半人半馬の身体だ。

『昔いろいろあってね……ナイトメアと言う魔物娘になったの。』

『なんで?どうして戻って来たの?せっかく……』

『戻って来た……アナタが好きだから……愛しているから……。』

もう一度、私はゲオルグを抱きしめた。

『お姉ちゃん……ありがとう。……でも、もう何も無いんだ。』

何処を見ても暗い暗い無間の世界が広がっていた。こんな世界でも……ゲオルグと一緒なら私は幸せだ。

あれ?彼の右手には何かキラキラとしたものが握られている。

『ゲオルグ……それはなあに?』

『これは……あの時の……ほら、金ピカの手みたいなやつを切った時に拾った、カケラだよ。』

あの時の夢の世界のカケラ……。

そうか……此処は彼の夢の世界。

そして、今は私の夢の世界。

だったら……彼と私が望めば……。

『夢のカケラ?……ねぇゲオルグ。こんな世界は嫌?』

『うん……暗いのは嫌かな。』

『じゃあ……小さい頃の約束覚えてる?私をお嫁さんにするって……。』

『う……うん……。覚えてる…………。』

暗くてもゲオルグが照れてるのがわかる。かわいい。

『じゃあ、お嫁さんの私とどんな所に住みたい?』

『……言わなきゃだめ?』

『ダメ。』

『……わ、わかったよ。……草原の緑がやさしい小高い丘の小さな白い家。大きな木があって……近くに森があって……遠くに教会が見えて……湖があるといいな……』

予想以上に乙女な回答が返って来た。聞いた私の方が恥ずかしくなってしまう。

でもその瞬間、ゲオルグが持っていた夢のカケラが輝いて、私達が居る所が太陽が眩しく、青空の広がる緑の草原に変わったのだ。小高い丘があって、大きなブナの木がある小さな白い家に、近くには森が。遠く教会と湖が見える。

『これは!?……どういう?』

『ゲオルグ……此処はアナタの夢の中。そして、私の夢の世界。だから、ふたりが望めば何でも叶うの。ほら……私も。』

私の着ている服も真っ白なウェディングドレスに変わった。下半身は馬のままだけど。

『わぁ……すごい。本当に僕の夢だ……。』

『そう……本当にアナタの夢。だからアナタも……ちゃんと正装しないと……。私を……その……も、貰ってくれるんでしょ!?』

『うん!!』

そうしてタキシード姿になったゲオルグを背中に乗せて湖の小さな教会に行った。

『僕、ゲオルグ・フリードマンは……健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみのときも、試練の時も、富める時も、貧しき時も、これを愛し、敬い、慰め、助け、命ある限り、まごころを尽くす事を誓います。』

『私……ティマ・フユーゲルは、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみのときも、試練の時も、富める時も、貧しき時も、これを愛し、敬い、慰め、助け、命ある限り、まごころを尽くす事を誓います。』

そこで2人きりの結婚式を挙げた。

誰もいない教会の鐘が独りでになるけど此処は夢の世界だ。

そして……

『お姉ちゃん……。』

『どう……かな?……私……変じゃない?』

『……すごく綺麗。』

私とゲオルグは丘の上の小さな家の中で生まれたままの姿で向き合っていた。

身長に差があるから、馬の脚を折り曲げて屈んで彼と抱き合う。記憶のままの幼い顔。すこし骨張った身体。愛おしくてたまらない。

ちゅ……ちゅ……ん……ん、ん……

何処からとも唇を合わせ、それは舌を絡ませ合うものとなった。甘くて甘くて。幸せで頭が蕩けていく。まるで麻薬のようだ。

ちゅ……くちゅっ……ちゃ……ん……ぴちゃ……

彼の分身が私のヘソの辺りをつつく。今から私は永遠に彼のモノになるんだ。そして彼は永遠に私のモノに。そう思うと、お腹の下の方が切なくなる。身体があつい。心臓が早鐘のようにうるさい。

ぷぁ……はぁ……はぁ……

ふたりとも息を忘れてしまっていた。彼は目をトロンと蕩けさせていて、すこし細めた目の端から滴一粒。彼の桜色の頬を濡らした。

でもゲオルグの身体は全てを理解しているようで、彼の剣は私を征服する為に掲げられていた。

『ゲオルグ……』

私は背を向けて、馬の身体のお尻を突き出して彼の名前を呼んだ。それだけで十分だった。

くちゅっ……

『あぁ……!!』『ーー!!』

今までで経験した事のない多幸感が私を支配した。

『お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!』

『ゲオルグ!!ゲオルグ!!』

気付いた時には私は彼の名前を、彼は私の名前を叫びながら互いの身体を撃ち付けていた。渇いた音と粘膜が擦れる卑猥な音がなっている。

それは次第に速くなって、お互い汗でずぶ濡れになっていた。

『気持ちいい!!気持ちいいよぉ!!』

ゲオルグの分身が大きくなる。彼の声がだんだんと切迫詰まったものになっていって、私の子宮は降り切っていて、彼の全てを受け入れようと自ら彼に差していた。

『『ーーーーーーーー❤❤❤❤❤』』

彼が私に力強くしがみつくと、彼は思考を焼き尽くすような快楽の濁流を私に流し込んだ。目はパチパチと光が弾けるようで、全てを

ゲオルグは私の背中にしがみついたままキスの雨を私の背中に降らして、私はと言うと彼の全てを逃すまいと浅ましく快楽を貪っている。

そうして私とゲオルグは何度も何度も何度も……

……………

…………

………

……



『お姉ちゃん?』

『どうしたの?』

ある日、ある昼下がり。彼と肩を寄せ合いながら座って湖を見ていると、彼が私の名を呼んだ。

『お姉ちゃんは……幸せ?』

『うん……幸せ…………。』

『僕も…………。』

そして私達はまた唇を重ねて湖を見つめる。

此処は彼の夢の中。彼と私の夢の世界。

ヒトは仮初の世界と言うかもしれない。

でも、私達にとってこれは本物の幸せで、私達にとって此処は本物の世界で、この胸の中にある愛は紛れもない真実なのだ。











アルカナ合衆国 某所 某研究所……


『……と言う訳で現在、コールドスリープ中のRh OO型オリジナル勇者、個体識別名称ゲオルグ・フリードマンの中には、魔力アストラル体となったナイトメアのティマ・フユーゲル医師が入っておりますのじゃ。』

『つまり、平たく言うとひとつの身体にふたつの魂が混ざり合っている若くは同居している状況と言う事でしょうか?』

『はいですじゃ。ゲオルグの身体の中ではティマ医師とゲオルグの魔力と精神が混ざり合って、ひとつのエーテル体として永久機関のようにエネルギーを循環させており、ひとつの世界(夢世界)を構築、共有していると推測できますのじゃ。……平たく言えば、それまで夢世界を維持しておった主神の力が魔物娘の魔力にとって変わったと言う事ですのじゃ。』

『……この後の処置は如何するのですか?』

『既にゲオルグはコールドスリープの影響下で通常の約50分の1程のごくゆっくりとではあるのじゃが、確実にインキュバスに近づいておりますのじゃ。今はもう勇者では無く普通の人間。コールドスリープは医学的な安全ラインの確保であり、それもティマ医師の魔物娘の魔力が時間を経て解決すると判断できますのじゃ。前例が無いので未だ机上の空論ではあるのじゃが、彼がインキュバスになればコールドスリープの必要は無くなる筈じゃ。そうなれば、ゲオルグとティマ医師は現実世界に帰って来れるようになる……はずじゃ。』

『……わかりました。バルフォア博士、もう一つ聞いても良いでしょうか?』

『はいですじゃ、アルカナ嬢。』

『彼らは幸せになりましたか?』

『……きっとそうに違いありません。そう確信しておるのじゃ。』

『それは何故ですか?』

『アルカナ嬢、その答えはそこで眠る彼の顔に書いてあるのじゃ。』

『ふふふ……そうね。眠っているのに、とっても幸せそうだこと。』



end
20/02/28 20:22更新 / francois

■作者メッセージ
お読み頂きありがとうございます。
これにてひとまずは、『ばふぉー軍曹のブートキャンプ』から始まる第2次人間大戦のお話しが終了しました。
随分前から練っていた構想をやっと全部形に出来ましたー。
因みに、鏡の世界でティマ医師を案内したのは、ゲオルグくんの記憶の中のティマ医師です。

感想罵詈雑言はお気軽に!

ではまた!

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