読切小説
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ワンダーワームさんを吸う


「嗅ぎタバコ!嗅ぎタバコですよ!」

「ボクの知っている嗅ぎタバコとはちょっと違うかなぁ……」

「シャツに付いているタバコの香りに、
 ノーブラで蒸れた谷間から漏れるフレーバーが極上の相性!
 微かに存在するミルクの芳香もたまらなく嬉しい!」

「……本当に嬉しそうだねぇ…」

「なにより喫煙具(おっぱい)の手に吸い付くフィット性と重量!
 叶うことなら一日中肌身離さず持っていたい使用感!」

「……ん〜…すでにキミは一日中、ボクの胸を触ってる気がするよ?」

「そうでした」

「……ところで、質問なんだけど
……君がやってる行為はタバコを吸うということに該当するのかな?」

「正直言うと適当に理由つけて、
 煙まみれで匂いが染みついてエロタバコになってる君の体を
 余すことなくむしゃぶりつくしたい!」

「………どうやら理性が飛びすぎているようだ」

「飛んで行ってしまうような理性なんて、不思議の国では最初から必要ないのさ」

「……キミは不思議の国に来る前からそんな感じだったって話だね」

「だからここにいるわけでして。
 さて、次は入門用からステップアップして通好みの逸品にいってみよう!」

「……ふぅ…キミが満足するまで付き合うさ」

「そのまえに一つ聞きたいんだけど、君ってお風呂入ってるの?」

「……キミは芋虫が水浴びしてるのを見たことがあるかい?」

「あ、なるほど、



 スゥゥゥゥゥゥ…

 ゴホッ

 ハァァァァァァ…


 


 …なるほど」


「……どうしてボクの腋を嗅いで納得している?」

「強烈、芳醇、混沌、

 香水を作る際にあえて混ぜ込む悪戯心。陰と陽のお互いが混然一体となった調和。
 慈悲と暴力が両立し、執着と忌避が同時に去来する…」

「……キミが何を言ってるのかさっぱりわからないよ…」

「ではシンプルに…



 スゥゥゥゥゥ…



 くっっっさ!

 スンスンスン…

 やば…やば…ホント臭……♥
 タバコの香りもするけど、それ以上になんていったらいいのかわからない臭いがする。
 酸味を感じる、脳みそに直接来る。


 でも、やめらんない!
 こんな綺麗でクールな顔してるのに、えげつない匂いしてるのマジ反則」
 
「…………煙が目に染みるよ」

「こっちはこっちで中毒性ある。たぶん腋に臭角の名残りがあるんだと思う」

「……それボクの頭についてるやつ」

「…………さて、
 もう何カ所か嗅ぎたいところがあるけれど、
 またの機会にして、次のタバコを試してみたいと思います」

「……これ以上触れないのはキミのやさしさということにしておくよ」

「紙巻きタバコ、いわゆるシガレットというやつですね」

「……へぇ〜…紙で巻くのか」

「本当は草を刻んで乾燥させたものを使うんだけど、
 今回は乾燥させたキノコの粉末を使います」

「……それを紙で巻いて完成というわけだね」

「そうそう、さっそく一本吸ってみよう」シュボッ

「……フーーー…なるほど、同じキノコでも水タバコとは喫味がずいぶん変わってくるね」

「…………」

「……どうしたんだい?」

「ただのタバコすぎてつまらん」

「……一体何を求めているんだキミは」

「…君の服の後ろの裾、かなーり長いよね」

「……まあ、普通の人間サイズと比べれば長いかもしれないけど、それがどうしたの?」

「ちょっともらってもいいですか?」

「………ふぅ…どうせ時間が経てば戻るからいいけれど、何か嫌な予感がするよ…」

「紙の代わりに服の裾でタバコを包んで葉巻を作ろう!」

「……もう2、3本タバコを吸ってもいいかな、心を落ち着かせたいんだ」

「どうぞどうぞ、葉巻は一時間くらい燃えるそうなんでゆっくり吸ってください」

「……ボクの服でタバコを吸ってるのを見ると複雑な気分だよ」

「ぷわっ……
 キノコと君の香りが混ざって、さっきの紙巻きタバコよりもこっちのほうが好き」

「……フフッ、なんというかキミが葉巻を吸ってると…
 貫禄が出るというか、ふてぶてしさが出てくるね」

「これは誰が吸ってもそういう雰囲気になるんですよ
 そういう君だって慣れない紙タバコじゃ…
 いや、似合ってるな。多分キセルやパイプも様になるわ。
 ちょっと葉巻もためしてみてください」

「……ふっ、そう言われると悪い気はしないな…

 こうかい?」

「んぶふっ!…あ、ありがとうございます…くっくくく…」

「……どうして服を切り取られた挙句、笑われなければならないのかな…」

「くくくっ…すいません…ちょっとあんまりミスマッチだったから」

「……まったく、失礼だね…」

「これと同じ要領で、パンツの代わりの前張りをタバコの巻き紙に使うのもあり…?

 いや、それだと湿りすぎてて火が着かないか」

「……不思議の国で『狂人』は珍しくはないけど、ここまで酷いのはいないと思うよ…」

「いやいや、不思議の国は広いですよ。俺があった中で一番ヤバかったのは、
 女体化した後にマッドハッターの帽子を被ってキノコの胞子キメてるやつですね。
 すぐに普通の帽子になりますが、一瞬キノコの方もバグって胞子出しちゃうみたい」

「………ふぅ、私もバグを起こしそうだよ」

「虫だけに?」

「……もう一本葉巻を吸っていいから、
 もう少し気の利いたセリフを考えてくれないかい?」

「メンタル強度は狂人じゃなくて常人レベルだから優しくして…」

「……冗談だよ、さて次は何を飲むんだい?」

「次は飲むタバコじゃなくて口に含んで噛むのをやってみようかと」

「……あぁ、噛みタバコってやつだね。聞いたことはあるよ」

「そういうわけでして、おっぱいだしてください」

「……どういうわけだい」

「乳首噛みたい」

「……言葉を話せる赤ん坊がいたらこんな感じなんだろうね」

「タバコ吸うよりおっぱい吸っていたい」

「……今回の企画全否定だね。
 ……まあいいよ。おいで♥」

「わぁい!!」カプッ

「……んっ…」

「ちょっとだけタバコの香りがするけど、
それよりも君の汗や魔力が口の中を満たしていって幸福に包まれる…
 もっと味わおうと甘噛みするたび、少し跳ねる君の体がたまらなく愛おしい

 ここがワンダーランドだ…」

「……そこはボクの胸だよ」


 ーーーーーー

「一通り試したけど、どれも最高でしたね…」

「……キミが満足したみたいでよかったよ」

「君も何か俺の体でやってみる?

 そうだ!ちんちん吸う?ちんちん」



「……ふーーっ…それも良いけど…



 チュッ



 
 今がこれで十分かな♥」






「こんなクサいことやられてキュンキュンしてしまう自分が悔しい…」

「……フフッ、今日は振り回されっぱなしだったからね、お返しさ」

「もう!臭いのは腋だけにしてくださいよ!


 なーんて…







 あ、やべっ」













 後日、吸い殻のようになった男性と水浴びをするワンダーワームが発見された。
20/07/10 17:19更新 / ヤルダケヤル

■作者メッセージ
最近お会いしましたばかりですが、お久しぶりです。今回も読んでいただきありがとうございます。

あの胸で一日たばこ吸ってほとんど動かずに生活してたら多分匂うはず(歪んだ願望)

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