連載小説
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君は逃げる

 「私、幸子さまに買い物を頼まれているんでした。申し訳ないのですがお先に幸子さまの所へ行ってください。それではまた」

「え、ちょ、あのー」

 お寺しかない方向へ走って行ってしまったエアリス、ただ一人残された幸人。向こうに新しいお店ができたのだろうか?しかし状況が状況だ、普通は逃げるためのウソであるのは間違いないだろう。追いかけることも少しは考えたが逃げた理由がわからないまま追いかけてもまた逃げられるだけなのは容易に想像できたので、とりあえず祖母の家に行き事情を話すという結論がでた。

「とりあえずばあちゃんちにいって事情を話すか」

 そこからまたしばらく歩いていると目的地である祖母の家に着いた、家からは煮物のいい匂いが漏れ出しており食欲を刺激する。

「ばあちゃん、いる〜」

「はあぃ、随分と遅かったがなにかあったのかい?」

 幸人が声をかけると台所からひょっこりと祖母が顔を出して答える。

「ばあちゃん、とりあえずご飯ある?まだ飯くってないからさ」

「はいはい、幸人は昔からご飯が好きだねぇ」

 祖母はそういいながら幸人の大好物である肉じゃがをお皿いっぱいに持ってきながら答えた。

「さっすがばあちゃん、俺の大好物作ってくれたんだ。早速もらっていい?」

「はいはい、慌てなくてもご飯は逃げませんよ」

「わかってるよ モグモグ パクパク やっぱばあちゃんの肉じゃがサイコー」

「そうかいそうかい、それはよかったよ。それより一ついいかい?」
 
 祖母は心配そうに尋ねた

「ん?」

「メイド服の女の子に迎えを頼んだはずなんだが会わなかったのかい?」

 それを聞いたて思い出した、そうだエアリスさんの事を言い忘れていた。

「ああ…その事なんだけど…お寺の方走ってちゃって…」

 それを聞いた祖母はほっとした様子である、どうやら心配はなさそうである。

「詩織ちゃんの所なら安心だね。幸人、エアリスちゃんに何かしたのかい?場合によってはおばあちゃん怒るからね」

後半おばあちゃんの言葉に少し怒気が混ざる。

「ち、違うって。エアリスさんが俺に思い人がいるかって聞いてきたと思ったら走ってっちゃったんだよ」

 そう言うと祖母はあっけらかんとした後に、笑って

「なんだい、そうゆう事かい。あの子はピュアな所が可愛いと思ったがそこまでとはね」

と、何かわかった様子だった。そのことについて聞こうとしても

「あんたは当事者なんだから直接聞き行って来たらどうだい?」

といって教えてくれなかった。

「さ、ご飯も食べ終わったならエアリスちゃんに会いに行ったらどう?。どうせまだ寺で詩織ちゃんに泣きついてるだろうし」

「うーん…俺は良いけどエアリスさんがどう思うかわかんないよ?」

「多分今頃詩織ちゃ…お寺の人につられて元気になってるだろうから大丈夫大丈夫。それでも心配なら…」

そう言うと祖母は台所から何かを持ってきた

「これ、エアリスちゃんの大好物だから。あげるとすっごい喜ぶの。もってって」

 そういって祖母がもってきたのは水ようかんだった。

「お寺の人の分と幸人の分もあるから。お寺の人とはこれから頻繁に会うと思うからちゃんと礼儀正しく挨拶するんだよ」

「はーい」

そうして水ようかんの入った袋を手に持ちお寺に向かうのであった。
22/05/29 00:09更新 / photon
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