連載小説
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#2:「私を愛してくれますか?」
「問い合わせてみたら、あの天使たちは『エンジェルクレイドル』っていう機械化された聖典で、選ばれた天使がデータとして保存されていた、ということだ。
 その天使たちは、聖典を起動させた人に遣えるそうだ」
 天使パワー−エイクスとの戦闘を終えた俺たちは、蒼井さんの話を大人しく聞いていた。
「しかし、目的は不明。
 別次元で起きた『闇の書事件』とほぼ同じ状況だが、それとこれでは話が違うからな……。
 結局、来るなら迎撃するしかない」
「……やっぱり、そうなるんですか」
「うむ。ただ、管理局はその天使たちを狩るのではなく、戦闘続行不可能にまで状態を持っていき、エンジェルクレイドルのマスターの確保。そして、エンジェルクレイドルを教団に返還したいそうだ。
 そこに封印された天使たちを元に戻した状態でな」
「それなら、出来ないこともないわね。……ジパング地方にいる魔物娘たちに被害を及ぼす、という可能性はないですよね、蒼井さん?」
「ああ。クレイドルの天使たちは、マスターの敵を討ち取るのが主目的であり、命令されない限りはそういうことは起きないだろう」
 愛莉さんの問いに蒼井さんはそう答えた。
「では、エンジェルクレイドルの対策会議はこれで終わりとする。祐樹、お前は家に帰ってもいいぞ」
「あ、はい」

 ◇

 家に戻ったのは、日が昇ってからだった。
『……まずは、シャワー浴びてひと眠りしたいな』
 俺はソルブレイドを脱衣所に置き、シャワーを浴びていた。
『エンジェルクレイドル……。教団の機械化された聖典……。悪魔召喚師が使うCOMPと呼ばれるようなものか?』
「――祐樹さん?」
 風呂場の扉越しに恵玲奈の声が聞こえた。
「ン、どうした?」
「背中、流そうかなと思ってきたんですけど……」
「えっ……? どうして?」
 そう言った後、風呂場の扉が開き、恵玲奈が入ってきた。……全裸で。
「お、おい、恵玲奈!?」
「……ごめんなさい。こういう方法しか知らなくて……」
 俺が驚いたのはそっちじゃなくて、せめてスク水つけろと思ったのだが。
 使わない姉さんの水着があったはずなのに。
「――いや、それはそれでいいけどさ……」
「それなら……」
 ……と、なし崩しに恵玲奈に背中を流してもらう。かなりご都合主義的だが。
 しかし、姉さんは俺の性癖をよく理解していらっしゃる。鏡越しに見た恵玲奈の身体を見た。
 大きすぎず小さすぎない胸のふくらみ。くびれもあるし、足が細い。
 生殖技術が発達して、いくら女性同士で子供を作れるといえど、遠い昔からの繋がりだけは廃れちゃいけないと思う。
 そう考えると、人間を作った主神は凄いよな、なんて思ってしまう。
「終わりましたよ、祐樹さん」
「お、そうか。ありがとう。……それじゃ、上がるかな」


 そして日付を見ると、12月31日。大晦日だった。
「家族揃っての年越しか……」
「そうだね、ユウくん。家族揃っての年越しが一番だよ」と姉さん。
 テレビは大晦日の出来事を知らせている。
 そして、天気予報になり明日の予想気温が映し出された。
「明日の初詣は行くにしても凄く寒いみたいだよ」
「うぅっ……。ちょっと嫌だなァ……」
「それじゃ……?」
「でも、行くわ。毎年恒例だし」
 ……聞くだけ無駄だってか。
「勿論、俺もですよね?」
「当然。恵玲奈ちゃんもつれていくわよ」
 マジですか、姉さん。
 そして、俺たちは年越しそばを食べて、大晦日の特番を見ていた。

 ◇

「今年の紅白はお終い、っとな」
 見たかったアイドルを見終えた俺は、紅白から特番に切り替えた。
 ちなみに、俺の部屋にもテレビが有り(勿論、姉さんが稼いだ金で買ったものだが)、それで見ることが出来たのだ。
『……しかし、今年は面白く感じないな……』
 起動させていたパソコンでツイッターを見ると、くだらないと切り捨てているユーザーがいた。
 やっぱり、そうか……。
 そして時間を見ると、新年が明けるまで数分だった。
 その時、ソルブレイドがアラーム音を鳴らした。
「……敵か!?」
『エレナ・シキドウがいつもより強い魔力を放ちながら、こちらに近づいています』
「なんだ、敵じゃないのか……。それじゃソルブレイド、お前の危惧していたことが?」
「Yes,Master.」
「ふぅん……。それならそれでいいさ」
『いいのですか?』
「構わないさ。いろいろと我慢できなくなったんだろう? ご都合主義ならそれでいいさ」
『言っている意味があまり理解出来ませんが、そういうコトなんでしょう』
 俺はソルブレイドを起動しない状態にした後で、恵玲奈がドアをノックして入ってきた。
「……祐樹さん」
「――来いよ。お前、新年開けると同時にキスしたいとか思ったんだろう?」
「な、なんで分かったんですか?」
「俺のデバイスが教えてくれたんだよ。いつもより強い魔力を発している、ってね」
 そして恵玲奈は俺の隣に座って、その通りですと言った。
「……ほら、早くしないと年が明けちまうぞ?」
「は、ハイッ……」
 テレビでは、人気のアーティストがカウントダウンをしていた。
 ゆっくりと近づく恵玲奈の唇。そして、ゼロというテレビの音と同時に唇が重なった。
「………。こんなことをした後で言うのも、どうかなと思ったんですけど……。
 こんな私でも愛してくれますか……?」
「――何いってるのさ……」
 恵玲奈を抱きしめる俺。
「キスされて告白されて断るほど、俺は薄情じゃないしそんな根性もない。
 勿論だとも。……でも、限度ってモノは知っておいてくれよ?」
 それにうなづく恵玲奈。
 そして、俺は恵玲奈をベッドに押し倒した。
「……いいよな?」
「うん……。いいよ、お兄ちゃんなら……」
「恵玲奈……」
 そう言って、彼女と口付けを交わす。
「お兄ちゃん、大好きだよ……」
 ……情けない話だが、これ以上は恵玲奈を愛することで頭が一杯で、細かいことは覚えていない。
 ただ、姫始めであることと、恵玲奈が稲荷としての姿としてセックスしてくれたことは覚えていた……。

 ◇

 ――元旦の朝を迎えた。
 気がつくと、右腕に柔らかい感触があった。
 勿論、恵玲奈の谷間に腕が挟まっている、ということであるが。
『ちょっと、ソルブレイドを起動してみよう』と思い、ソルブレイドを動かした。
「ソルブレイド、俺のエーテル量はどうなっている?」
『以前計測した時より、増幅しています。稲荷のエーテルをも取り込んだと思われます』
「増幅、か……。男女の交わりをしたから、か?」
『多分、そうかと思われます。ただ取り込みすぎると、日常生活に影響を及ぼす可能性があるので用心してください』
 ありがとう、とソルブレイドに告げ、机の上に置いた。
「……お兄ちゃん……?」
「あぁ、起きたのか、恵玲奈。明けましておめでとう」
「えっ? あっ。……明けましておめでとうございます」
 腕から離れて、恵玲奈は言った。
「……稲荷状態は解除か」
「うん。あの状態でいたら、お兄ちゃんに負担かけちゃうから……」
 恵玲奈は黒髪の人間に戻っていた。
「そっか……」
「――必要なら、現場に連れて行って。少しでも役に立ちたいから」
「ああ。無論だ」
 そう言って微笑む。
「この幸せが続けばいいのにね……」
「そうだな」
 今、起きている問題を解決すれば、恵玲奈とイチャイチャ出来る。
 それまでは長そうだが……。
10/01/05 13:31更新 / ヘイズル
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■作者メッセージ
ご都合主義過ぎかもしれませんが……。

次の話はエロありです。いろんな意味でご注意ください

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