屈服のベクトル
突然で申し訳ないが自己紹介をさせていただく。
ボクの名前は、セアリアス。大陸の北に位置する火山の麓にある村に暮らしていた。
普通に生まれたボクは普通に暮らし、普通に勉強し普通に遊び、そして16歳を迎え、その後も普通に育っていくのだろう、と思っていた。
あまかった、あまあまだった。友達の作るドーナツよりあまかった
唐突にボクはイケニエにされてしまったのだ。
イケニエ、サクリファイスでもいい、同じだから。
イケニエ、というのはもともとこの村にあった習慣ではない。しかし最近火山の方から恐ろしい遠吠えが聞こえてくるようになり、さらに、地面を焼き焦がしたような『足跡』がみつかったのだ。
村長はいった。この村に、魔物が来たのかもしれない、と……
魔物。大陸に広く分布する魔王が生み出した邪悪な生物。この辺りには生息していなかったので此処にたまにくる教団の騎士の話でしか聞いたことはないが……
『魔物はな、様々な種類のがいるが、一つとして例外なく醜悪で、残忍で、薄汚い。人間に対してなぶることしか考えてない野蛮な奴らだ』
と、教えられた。そんなやつらが村に降りてきたら、たまったものではない！
というわけで、また騎士が巡回に訪れる三ヶ月のあいだを凌ぐためイケニエを出すことになったのだ。
老若男女関係なく、全員が恐る恐るクジを引いた(なんとイケニエはくじ引きで決めたのだ！！)
そして、ボクは引いてしまった。先端が黒く塗られたあたりクジを。
「……はぁ」
ため息が無意識のうちに喉を這い出て吐き出される。
なにしろ今からイケニエとして貪り食われに行くのだ、楽しいはずがない。
「……おまけに、この山道だもんなぁ」
この火山には人の手がほとんど入っていない、従って歩くのは荒れ果てた獣道ということになる。
死にに行くために辛い道を進まなければならない、とことん貧乏くじだ。
「はぁ……」
ため息は際限なく出てくる。本当は今すぐにでも逃げ出したい。
しかし村にはボクが後戻りできないよう、武器を持った大人たちが見張っている。
かといって、この辺りに他の集落はなく、徒歩だと4日はかかるだろう。
よって他の村へ逃げることもできない。
「はああぁぁ……」
数えるのも億劫な溜息を吐きながらノロノロと山を登る。
傾斜がきつく、足がきつくなってきた。
「なんで、こんな辛い思いをしなきゃいけないんだ」
たった一度のくじ運でこんな悲惨な目にあうなど誰が予想できるのか。ボクはもう、泣き出してしまいたかった。
「でも、ここであきらめたりしないぞ」
しかし、前を向く。
生き残れる可能性は0ではないし、1日生き延びたら帰ってもいいと言われている。幸い水と簡単な食べ物だけはもらえたので、どこかに隠れて耐え凌げばいいんだ。
歩き続けてボクはようやく、身を隠すにちょうど良さそうな場所を見つけた。
「ここなら、大丈夫かな？」
岸壁にぽっかりと空いた洞穴。昔この山から鉱石を発掘していたらしいがその名残だろう。
崩落の心配も特になさそうだ。
「よしっ」
ボクは生き残るために、その洞窟の中へと足を進めた……
ガサ、と、背後から音が聞こえたために半ば逃げるように
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「今更、だけど……」
カツン、カツンと、なんとなく足音を忍ばせて歩くうち、僕は一つ嫌なことを考えてしまった。
「この洞窟にその魔物が住んでるって可能性は……」
冷や汗が頬を伝う。もう随分と奥にきてしまったがやはり引き返すべきか……
「いや、こうなったら腹をくくれ」
もうここまできたらヤケだ。流石にそこまで不幸は連続しないだろう。してたまるか！！！
歩く内に、ボクは洞窟の最奥部(恐らく)にたどり着いた。
そこまで大きなものではなかったらしく、僅かだが外の明かりがここまで届く。
「……ふぅ」
どさっと、腰を下ろした。岩肌の座り心地は悪いが気にしてはいられない。
一日中歩きっぱなしだった足は随分前から休ませろと叫んでいたのだ。
「……ぅ」
疲れでいよいよ眠気が襲ってきた。水筒の水を一口含み、飲み干す。そしてボクは体を横にした。
(ここなら、だいじょうぶだよね……)
不安を振り払い、睡魔に身を委ねる。願わくば、またこの瞳を開くことができますように……
−−−そしてボクはねむりについた
スタ……スタ……
(なんの、おと、だ……？)
スタ……スタ……
(足音、か？こんなところに誰が……こんなところ？)
スタ……スタ……
(こんなところってなんだ、今ボクはどこにいるんだっけ……あぁそうだ洞窟だっけな。魔物から身を隠すため……)
(魔物？)
「っ！？」
それはもう一瞬で意識が覚醒した。ボク以外の足音がこの洞窟内でするということは……
(ほとんどなんの動物も住んでいないこの山では、魔物以外ありえないじゃないか……！！)
隅でうずくまり、息を殺す。こうなったら気配を消して耐えしのぐしかない、恐怖で心臓が張り裂けそうになる、足が震える。
ザッ……ザッ……
ザッ
「ん〜……」
薄眼を開けて暗闇に目を凝らす。目を閉じているのとほとんど変わらない暗闇の中に小さな明かりが見えた
「……おっ」
その明かりはボクにとって、絶望そのものであった。
闇にぽっかりと浮かぶ紅い輝き、それは奴の瞳が放つもの。
そして、奴の口から漏れる、赤い、焔を纏う吐息によって、空洞が、ひどく薄く照らされる。
黒い闇の中で判別がつきずらかったが、それはおよそヒトと同じような見かけで、しかししかしそのシルエットは人ではあり得ないものがいくつもある。
東部の、つの？耳？そして、腕や足に纏う棘のようなもの、そもそもとして、火炎のような息を吐く赤い瞳の人間など、いるはずもない。
そいつは真っ直ぐにこちらを見据えて、多分だけど、ニヤリと笑った。
「クク、やっと見つけたよ。お前が山に入ってから、ずーっとその匂いを辿ってきたんだ。」
「……匂いで、わかるんだ」
「イイ匂いだったからな、ククッ」
「……ハハッ」
なるほど、最初から逃げ切れる道理などなかったようだ、無力さに笑いすら漏れてくる。
「こんな御誂え向きなトコに篭ってくれて、ありがと、ここなら邪魔は入らない」
大きく一歩、そいつがこちらに近づいた。
終わりは、近い
「……なるべく痛くしないでよ」
「ククッ、頑張るよ……」
そいつがまた一つ大きく近づいてきて、ついにボクと奴の距離は歩幅一歩分まで縮まった。
「……ククククッ、じゃあ、いただきまーーす」
「ッ……！」
覆い被さってくる影に思わず目を閉じて、横たわったまま顔を背けた。
ばふっ
「んむっ？」
「んっ、はふっ……」
しかし、ボクの体を覆った感触は、予想とは随分と違うものだった。なんか、こう、ぬくい。もふもふでふかふかだ。
「スンッ、スンスン……ククッイイ匂いだ……お前すごくいい匂いだね……」
「え、あ？」
なにやらボクの首筋に顔を突っ込んでクンクンと匂いを嗅いでいるらしい。
まるで犬のような仕草だ。食べる前に匂いを楽しむタイプなのか？
「んくっ、ちょ、くすぐった……」
「クク、暴れるなよ……」
そしてその腕で体を抱え込まれ、奴とボクはぴったりと密着した。ふさふさとしたものに抱かれて、むねにはなにやら柔らかいものが押し当てられている。うなじにかかる生暖かい息に思わず震えが走る。
「ん、は……ぁ、ふふ、じゃ、そろそろ……んむっ」
「ひやっ！？」
突如として、首筋にぬちゃりとした感触が触れた。
奴がボクの首筋に吸い付き、舌で眠回しているのだ！
「ん、ふ、ん……」
「ひ、ぅ……！」
乱暴に吸い付かれ、抉るように舌で穿られる、まるで所有者の証を掘られているようだ。
そしてその大味な責め苦に、背筋が泡立ち身をよじるが、抱え込まれた体はピクリともうごかせない
「やめ、てぇ……！」
「可愛い声出さないでよ……熱くなっちゃうだろう」
奴の腕ももぞもぞと動き始めた。背中に回された腕は硬い指先ですっと背筋をつつきまわし、腰を深く抱かれより体同士が深く密着する。
やがて大きな掌は少しずつ下に降りてきて……
「ひゃうっ！？」
わしっと尻を掴まれた。そのまま乱雑に揉みしだかれる
「な、なにを、やめっ！」
「ククッ、女みたいな声を出して、本当にイイね、なぁ、名前教えてくれよ」
そのまま体をぐいっと抱え上げられ、奴はごろりと転がった。奴は仰向けで、ボクのはその上にうつぶせで寝転ぶような体勢になる。
腰を抱かれたせいで逃げ出すこともできず、首筋も未だに舐めしゃぶられている
「……い、いやだっ」
名前を教えることをボクは拒否した。
弄ぶかのように好き勝手に蹂躙され、まるで強姦されているようだ。
せめて、精神だけでもこいつに屈したくない……！
「つれないこというなよ、かわいいやつだなぁ……んっ」
「んぐっ！？」
そして奴は、上に乗っかった僕の頭をひっつかみ、強引に口づけをしてきた。
強引に唇を割られ、熱い舌が蛇のように口の中で暴れまわる。焦げた砂糖のような甘さを味覚が感知する。
「んっ、ひゅ……！」
悔しさで涙が出る。そんなボクをこいつは真っ赤な瞳をニヤつかせながら、さらに深く舌を刺してくる。
ひっこんだボクの舌は奴の舌に引っ張り出され、唾液を染み込ませるようにぬちぬちと絡んでくる。
「んんっ……！」
その上こいつは、その腕を伸ばしてぼくの尻を揉んでくる。乱暴にほぐすかのような揉み方に、腰が思わずびくりと震えてしまう
「……ぷはっ」
そして、息苦しさを覚えてきた頃に口づけは終わった。焦げ臭い砂糖のような甘さと熱が口の中から抜けていく。それにかすかな寂しさを感じてしまう。
悔しい、悔しい……！
「な、ま、え」
「〜〜〜っ、ヤダ！」
こうなったら意地だ！こいつが飽きてボクを殺すまで、ココロだけでも屈指はしない！絶対に負けたくない！
「……ガンコな奴だな、じゃあしょうがないよな。」
するとこいつはゆったりと、僕を体に乗っけたまま上体を起こす。
こいつの足の間に自然とボクが収まる形になった。ボクの身長が低いこともあるが、やはりこいつはでかい、多分180センチはある。
「じゃあ、……」
また深く、腕ごと腰を抱かれた、顔が柔らかい肉に埋もれる。
なんとなく予想はついていたがこいつはメスの魔物らしい……今ボクの顔を挟んでいるのは女性の、その……あー、おっぱいなのだろう。なんかそう思うと急に恥ずかしく……ダメだダメだ！
「答えてくれるまで、たーっぷり、と」
「ひっ！」
と、煩悩にかられているあいだに、ヤツは空いた手でボクのズボンを無理やりずり下ろしてすでに硬くなっていた逸物を引っ張り出した。乱暴な手つきで揉まれてより硬さを増してしまう
「この、かた〜いチンポ……ぐちゅぐちゅ食べちゃうなぁ……♥」
「なっ……や、やめ！」
腰をがっしりと両手で掴まれた。こいつ、ボクを犯すつもりだ……！
「や、やめて！殺すなら、早く殺せよ！いつまで、いつまで弄ぶつもりなんだよぉ！」
「ん？ククッ……いつまで弄ぶって、そりゃ……ずーっと、かな？」
やがてそいつも体を浮かせ、ボクのソレを呑み込もうと、体をゆっくり下ろしてくる
「や、やだ、やだ、ヤダヤダヤダ……！」
首を振っても、脚をバタつかせても、意味などない。
「……ククッ捕まえたぁ……♥」
「うっ……」
そして、先端に滑る物が触れた……瞬間、奴は全体重をかけてその肉穴でボクのそれを飲み込んだ！
「んっ……！クク、は、入った、入ったぁ……ククク、ククククッ♥」
「っっ……ぁ、ぁ……！！」
声が出ないほどの、快感。
表現の仕方を知らないほどの熱い何かが体を内側から焼き尽くしてゆく。
その肉穴は、とにかく熱かった。
入り込んだボクの一物をぎゅっと締め付け、ヒダの一枚一枚がすりすりと、子種を強請るようにすりついてくる。
それをとてつもない熱を伴ってやってくる。
みるみるうちにボクのペニスは自分でも知らないほどの硬さとなってその穴の虜になってしまった
「はぁっ、ハァッハァッ……かた、くて、イイ……♥」
「や、やぁ……動かな……ひぃっ！」
対面座位の体制から、こいつはボクをギュッと抱きしめて押し倒した。そのまま腰だけを浮かして、叩きつけるように上下にストロークをし始めた
「はぁっ、いい！いい！すごくいいっ♥」
「あぅ！んひゃ、くぁっ、はあぁっ……！」
パンパンと、肉のぶつかり合う音が響く。
まるですり潰されるように、いやらしい水音を立てながら、肉穴にペニスが扱きたてられる。
幹はしごかれ、先端は吸い付かれ、傘は揉みほぐされ、そんな激烈な快楽に女を知らなかったボクでは耐えられなかった
「ヤダァ……出る、出ちゃう……！」
「はぁっ！ククッ、出してよ、出してぇ……♥」
するとそいつはギューっと抱きついてきて、少しの隙間も開かないほどに体を密着させてきた。
すると膣の中で変化が起こった。
深く突き刺さった肉棒の先端に何かがジュルッと吸い付いてきたのだ
「ふあっ……ああっ……！！」
「あっくぅ……！子宮で、チンポしゃぶっちゃってる……うぅ♥」
思わず目を見開き背筋がそるほどの激感！
そしてついにボクは限界を迎えた……
「あっ、ぐあっ……ーーー！」
「んくっ……ク、ククッ……だし、たな……」
魂が吸い取られていると錯覚するほどの快楽、目がチカチカして体が震える。ボクは限界をはるかに超えるほどの量の精液を、そいつの中に叩きつけた。
「ひうっ、や、やら、やぁぁ……！」
「まだ、でてる……！」
吸い付いた子宮の中に直接注ぎ込むという人外のセックスに、ボクの肉棒は長い間精液を解き放ち続けた……
「……ククッたくさん出しちゃったな……♥」
「……うっ」
「ん？」
「……うぅっ……ふぇ、ふぇぇ……」
「なっ！？」
ボクは、情けなさのあまりに、泣き始めてしまった。
望まぬ生贄に選ばれ、絶対に逃げきれない魔物に捕まり、さらに散々に慰み者にされて、そして今から殺される……
そしてそんな魔物に屈して絶頂を迎えてしまったことがたまらなく悔しかった
「な、なんで泣いてるんだ？」
「うるさい……うるざぁぁい……バカァァァ……！！」
悔しくて、自分でも涙の止め方がわからなくて、こいつから離れたくて、でも力の入らない体ではのしかかってくるこいつを押しのけることもできなくて、余計に悔しくて……
「泣くなよ、なくなって……んっ」
「ひゃっ……？」
するとそいつは、ボクの頬を伝う涙をペロペロと舐め始めた。
優しく体を抱きしめ、ペロペロと顔を舐めてくるそいつに、なんとなく僕は友達が飼っていた人懐こい犬を思い出した。転んで泣いたボクを慰めるように、ペロペロと舐めてきたものだ。
「ん、しょっぱい……れろ、れろ……」
「……」
それを思い出した途端、なんとなくこいつは怖い存在じゃないのかもしれない、と思った。
必死に僕の涙を舐めとっているこいつが、邪悪な魔物とは思えなくなってきたのだ。
「……なぁ」
「ん？どうした？もう泣かないか？」
「お前は、ボクを殺さないのか」
「殺すわけない、お前は、オレの大切なオスだ」
「ん、そっか……」
なんだか、毒気が抜かれてしまった……
どのみち逃げることはできないのだ、こいつに、身を委ねてみてもいいかもしれない
ボクは疲れた体をそいつに預け、顔に当たる柔らかい乳房に埋めた
「お？」
「セアリアス……ボクの名前」
「……セアリアス……ククッ、セアリアス」
ボクの頭を撫でながら名前を呼ぶ魔物。
あぁ、他はどうか知らないけど、こいつはきっと、優しい魔物なんだな……
「じゃあセアリアス。お前の名前もわかったことだし、もっとセックスしよう」
「え？ボクもう出ない……」
「なにいってんだ、オレが出させてやるよ……ククッ」
「や、ひゃっ、や、やぁぁぉ！！」
ただ、別ベクトルでは凶暴な魔物だった
そして時は飛んで、三ヶ月ほど先……
「アリスッアリス……ッ！」
「フェル……いく、いっちゃうぅ……」
「出して、いいぞ、アリスッ！」
ぎゅうっと、体を抱きしめられて、彼女の中でボクはイッた。ドクッドクッと、強く脈動するペニスから放たれる精液は、以前とは比べ物にならない量になった
あれからボクは、ヘルハウンドというらしい魔物のフェルに、『オス』として選ばれて、毎日毎日えっちなことをし続ける日々を送っていた。
フェルは、ボクの名前は長いからと、アリスという渾名で呼ぶようになった。
そして今日もボクはフェルの上で散々に搾り取られた。
そう、上なのである。小柄なボクをフェルはまるでお人形のように抱え上げるフェルは。自分が寝転がって、その上に僕を抱えてセックスするのが好きなのだ。
ボクとしては幾ら何でも恥ずかしいのであまり好きではないのだけど、フェルがやりたいと言ったら聞かないのだ。
「ククッ、アリスは可愛いなぁ……♥」
「んっ……フェル、恥ずかしいから……撫でないでよ……」
あの日出会った火山から少し離れた、人気のない森で、ボクらは今暮らしている。
誰の邪魔も入らない静かな森で、フェルが一生懸命整えてくれた寝床で、毎日毎日フェルに侵され続ける日々……
まぁ、そこに至るまでの過程はともかくとして、今はまあまあ、幸せ、かな？
「ククッ、じゃあアリス、次はオレがお前を抱え上げて犯してやる」
「え、それは本当に止めて、なんかただでさえなけなしのプライドが余計に」
「だーめだ♥ククッ……」
……うん、まぁ、しあわせ、かな……？
ボクの名前は、セアリアス。大陸の北に位置する火山の麓にある村に暮らしていた。
普通に生まれたボクは普通に暮らし、普通に勉強し普通に遊び、そして16歳を迎え、その後も普通に育っていくのだろう、と思っていた。
あまかった、あまあまだった。友達の作るドーナツよりあまかった
唐突にボクはイケニエにされてしまったのだ。
イケニエ、サクリファイスでもいい、同じだから。
イケニエ、というのはもともとこの村にあった習慣ではない。しかし最近火山の方から恐ろしい遠吠えが聞こえてくるようになり、さらに、地面を焼き焦がしたような『足跡』がみつかったのだ。
村長はいった。この村に、魔物が来たのかもしれない、と……
魔物。大陸に広く分布する魔王が生み出した邪悪な生物。この辺りには生息していなかったので此処にたまにくる教団の騎士の話でしか聞いたことはないが……
『魔物はな、様々な種類のがいるが、一つとして例外なく醜悪で、残忍で、薄汚い。人間に対してなぶることしか考えてない野蛮な奴らだ』
と、教えられた。そんなやつらが村に降りてきたら、たまったものではない！
というわけで、また騎士が巡回に訪れる三ヶ月のあいだを凌ぐためイケニエを出すことになったのだ。
老若男女関係なく、全員が恐る恐るクジを引いた(なんとイケニエはくじ引きで決めたのだ！！)
そして、ボクは引いてしまった。先端が黒く塗られたあたりクジを。
「……はぁ」
ため息が無意識のうちに喉を這い出て吐き出される。
なにしろ今からイケニエとして貪り食われに行くのだ、楽しいはずがない。
「……おまけに、この山道だもんなぁ」
この火山には人の手がほとんど入っていない、従って歩くのは荒れ果てた獣道ということになる。
死にに行くために辛い道を進まなければならない、とことん貧乏くじだ。
「はぁ……」
ため息は際限なく出てくる。本当は今すぐにでも逃げ出したい。
しかし村にはボクが後戻りできないよう、武器を持った大人たちが見張っている。
かといって、この辺りに他の集落はなく、徒歩だと4日はかかるだろう。
よって他の村へ逃げることもできない。
「はああぁぁ……」
数えるのも億劫な溜息を吐きながらノロノロと山を登る。
傾斜がきつく、足がきつくなってきた。
「なんで、こんな辛い思いをしなきゃいけないんだ」
たった一度のくじ運でこんな悲惨な目にあうなど誰が予想できるのか。ボクはもう、泣き出してしまいたかった。
「でも、ここであきらめたりしないぞ」
しかし、前を向く。
生き残れる可能性は0ではないし、1日生き延びたら帰ってもいいと言われている。幸い水と簡単な食べ物だけはもらえたので、どこかに隠れて耐え凌げばいいんだ。
歩き続けてボクはようやく、身を隠すにちょうど良さそうな場所を見つけた。
「ここなら、大丈夫かな？」
岸壁にぽっかりと空いた洞穴。昔この山から鉱石を発掘していたらしいがその名残だろう。
崩落の心配も特になさそうだ。
「よしっ」
ボクは生き残るために、その洞窟の中へと足を進めた……
ガサ、と、背後から音が聞こえたために半ば逃げるように
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「今更、だけど……」
カツン、カツンと、なんとなく足音を忍ばせて歩くうち、僕は一つ嫌なことを考えてしまった。
「この洞窟にその魔物が住んでるって可能性は……」
冷や汗が頬を伝う。もう随分と奥にきてしまったがやはり引き返すべきか……
「いや、こうなったら腹をくくれ」
もうここまできたらヤケだ。流石にそこまで不幸は連続しないだろう。してたまるか！！！
歩く内に、ボクは洞窟の最奥部(恐らく)にたどり着いた。
そこまで大きなものではなかったらしく、僅かだが外の明かりがここまで届く。
「……ふぅ」
どさっと、腰を下ろした。岩肌の座り心地は悪いが気にしてはいられない。
一日中歩きっぱなしだった足は随分前から休ませろと叫んでいたのだ。
「……ぅ」
疲れでいよいよ眠気が襲ってきた。水筒の水を一口含み、飲み干す。そしてボクは体を横にした。
(ここなら、だいじょうぶだよね……)
不安を振り払い、睡魔に身を委ねる。願わくば、またこの瞳を開くことができますように……
−−−そしてボクはねむりについた
スタ……スタ……
(なんの、おと、だ……？)
スタ……スタ……
(足音、か？こんなところに誰が……こんなところ？)
スタ……スタ……
(こんなところってなんだ、今ボクはどこにいるんだっけ……あぁそうだ洞窟だっけな。魔物から身を隠すため……)
(魔物？)
「っ！？」
それはもう一瞬で意識が覚醒した。ボク以外の足音がこの洞窟内でするということは……
(ほとんどなんの動物も住んでいないこの山では、魔物以外ありえないじゃないか……！！)
隅でうずくまり、息を殺す。こうなったら気配を消して耐えしのぐしかない、恐怖で心臓が張り裂けそうになる、足が震える。
ザッ……ザッ……
ザッ
「ん〜……」
薄眼を開けて暗闇に目を凝らす。目を閉じているのとほとんど変わらない暗闇の中に小さな明かりが見えた
「……おっ」
その明かりはボクにとって、絶望そのものであった。
闇にぽっかりと浮かぶ紅い輝き、それは奴の瞳が放つもの。
そして、奴の口から漏れる、赤い、焔を纏う吐息によって、空洞が、ひどく薄く照らされる。
黒い闇の中で判別がつきずらかったが、それはおよそヒトと同じような見かけで、しかししかしそのシルエットは人ではあり得ないものがいくつもある。
東部の、つの？耳？そして、腕や足に纏う棘のようなもの、そもそもとして、火炎のような息を吐く赤い瞳の人間など、いるはずもない。
そいつは真っ直ぐにこちらを見据えて、多分だけど、ニヤリと笑った。
「クク、やっと見つけたよ。お前が山に入ってから、ずーっとその匂いを辿ってきたんだ。」
「……匂いで、わかるんだ」
「イイ匂いだったからな、ククッ」
「……ハハッ」
なるほど、最初から逃げ切れる道理などなかったようだ、無力さに笑いすら漏れてくる。
「こんな御誂え向きなトコに篭ってくれて、ありがと、ここなら邪魔は入らない」
大きく一歩、そいつがこちらに近づいた。
終わりは、近い
「……なるべく痛くしないでよ」
「ククッ、頑張るよ……」
そいつがまた一つ大きく近づいてきて、ついにボクと奴の距離は歩幅一歩分まで縮まった。
「……ククククッ、じゃあ、いただきまーーす」
「ッ……！」
覆い被さってくる影に思わず目を閉じて、横たわったまま顔を背けた。
ばふっ
「んむっ？」
「んっ、はふっ……」
しかし、ボクの体を覆った感触は、予想とは随分と違うものだった。なんか、こう、ぬくい。もふもふでふかふかだ。
「スンッ、スンスン……ククッイイ匂いだ……お前すごくいい匂いだね……」
「え、あ？」
なにやらボクの首筋に顔を突っ込んでクンクンと匂いを嗅いでいるらしい。
まるで犬のような仕草だ。食べる前に匂いを楽しむタイプなのか？
「んくっ、ちょ、くすぐった……」
「クク、暴れるなよ……」
そしてその腕で体を抱え込まれ、奴とボクはぴったりと密着した。ふさふさとしたものに抱かれて、むねにはなにやら柔らかいものが押し当てられている。うなじにかかる生暖かい息に思わず震えが走る。
「ん、は……ぁ、ふふ、じゃ、そろそろ……んむっ」
「ひやっ！？」
突如として、首筋にぬちゃりとした感触が触れた。
奴がボクの首筋に吸い付き、舌で眠回しているのだ！
「ん、ふ、ん……」
「ひ、ぅ……！」
乱暴に吸い付かれ、抉るように舌で穿られる、まるで所有者の証を掘られているようだ。
そしてその大味な責め苦に、背筋が泡立ち身をよじるが、抱え込まれた体はピクリともうごかせない
「やめ、てぇ……！」
「可愛い声出さないでよ……熱くなっちゃうだろう」
奴の腕ももぞもぞと動き始めた。背中に回された腕は硬い指先ですっと背筋をつつきまわし、腰を深く抱かれより体同士が深く密着する。
やがて大きな掌は少しずつ下に降りてきて……
「ひゃうっ！？」
わしっと尻を掴まれた。そのまま乱雑に揉みしだかれる
「な、なにを、やめっ！」
「ククッ、女みたいな声を出して、本当にイイね、なぁ、名前教えてくれよ」
そのまま体をぐいっと抱え上げられ、奴はごろりと転がった。奴は仰向けで、ボクのはその上にうつぶせで寝転ぶような体勢になる。
腰を抱かれたせいで逃げ出すこともできず、首筋も未だに舐めしゃぶられている
「……い、いやだっ」
名前を教えることをボクは拒否した。
弄ぶかのように好き勝手に蹂躙され、まるで強姦されているようだ。
せめて、精神だけでもこいつに屈したくない……！
「つれないこというなよ、かわいいやつだなぁ……んっ」
「んぐっ！？」
そして奴は、上に乗っかった僕の頭をひっつかみ、強引に口づけをしてきた。
強引に唇を割られ、熱い舌が蛇のように口の中で暴れまわる。焦げた砂糖のような甘さを味覚が感知する。
「んっ、ひゅ……！」
悔しさで涙が出る。そんなボクをこいつは真っ赤な瞳をニヤつかせながら、さらに深く舌を刺してくる。
ひっこんだボクの舌は奴の舌に引っ張り出され、唾液を染み込ませるようにぬちぬちと絡んでくる。
「んんっ……！」
その上こいつは、その腕を伸ばしてぼくの尻を揉んでくる。乱暴にほぐすかのような揉み方に、腰が思わずびくりと震えてしまう
「……ぷはっ」
そして、息苦しさを覚えてきた頃に口づけは終わった。焦げ臭い砂糖のような甘さと熱が口の中から抜けていく。それにかすかな寂しさを感じてしまう。
悔しい、悔しい……！
「な、ま、え」
「〜〜〜っ、ヤダ！」
こうなったら意地だ！こいつが飽きてボクを殺すまで、ココロだけでも屈指はしない！絶対に負けたくない！
「……ガンコな奴だな、じゃあしょうがないよな。」
するとこいつはゆったりと、僕を体に乗っけたまま上体を起こす。
こいつの足の間に自然とボクが収まる形になった。ボクの身長が低いこともあるが、やはりこいつはでかい、多分180センチはある。
「じゃあ、……」
また深く、腕ごと腰を抱かれた、顔が柔らかい肉に埋もれる。
なんとなく予想はついていたがこいつはメスの魔物らしい……今ボクの顔を挟んでいるのは女性の、その……あー、おっぱいなのだろう。なんかそう思うと急に恥ずかしく……ダメだダメだ！
「答えてくれるまで、たーっぷり、と」
「ひっ！」
と、煩悩にかられているあいだに、ヤツは空いた手でボクのズボンを無理やりずり下ろしてすでに硬くなっていた逸物を引っ張り出した。乱暴な手つきで揉まれてより硬さを増してしまう
「この、かた〜いチンポ……ぐちゅぐちゅ食べちゃうなぁ……♥」
「なっ……や、やめ！」
腰をがっしりと両手で掴まれた。こいつ、ボクを犯すつもりだ……！
「や、やめて！殺すなら、早く殺せよ！いつまで、いつまで弄ぶつもりなんだよぉ！」
「ん？ククッ……いつまで弄ぶって、そりゃ……ずーっと、かな？」
やがてそいつも体を浮かせ、ボクのソレを呑み込もうと、体をゆっくり下ろしてくる
「や、やだ、やだ、ヤダヤダヤダ……！」
首を振っても、脚をバタつかせても、意味などない。
「……ククッ捕まえたぁ……♥」
「うっ……」
そして、先端に滑る物が触れた……瞬間、奴は全体重をかけてその肉穴でボクのそれを飲み込んだ！
「んっ……！クク、は、入った、入ったぁ……ククク、ククククッ♥」
「っっ……ぁ、ぁ……！！」
声が出ないほどの、快感。
表現の仕方を知らないほどの熱い何かが体を内側から焼き尽くしてゆく。
その肉穴は、とにかく熱かった。
入り込んだボクの一物をぎゅっと締め付け、ヒダの一枚一枚がすりすりと、子種を強請るようにすりついてくる。
それをとてつもない熱を伴ってやってくる。
みるみるうちにボクのペニスは自分でも知らないほどの硬さとなってその穴の虜になってしまった
「はぁっ、ハァッハァッ……かた、くて、イイ……♥」
「や、やぁ……動かな……ひぃっ！」
対面座位の体制から、こいつはボクをギュッと抱きしめて押し倒した。そのまま腰だけを浮かして、叩きつけるように上下にストロークをし始めた
「はぁっ、いい！いい！すごくいいっ♥」
「あぅ！んひゃ、くぁっ、はあぁっ……！」
パンパンと、肉のぶつかり合う音が響く。
まるですり潰されるように、いやらしい水音を立てながら、肉穴にペニスが扱きたてられる。
幹はしごかれ、先端は吸い付かれ、傘は揉みほぐされ、そんな激烈な快楽に女を知らなかったボクでは耐えられなかった
「ヤダァ……出る、出ちゃう……！」
「はぁっ！ククッ、出してよ、出してぇ……♥」
するとそいつはギューっと抱きついてきて、少しの隙間も開かないほどに体を密着させてきた。
すると膣の中で変化が起こった。
深く突き刺さった肉棒の先端に何かがジュルッと吸い付いてきたのだ
「ふあっ……ああっ……！！」
「あっくぅ……！子宮で、チンポしゃぶっちゃってる……うぅ♥」
思わず目を見開き背筋がそるほどの激感！
そしてついにボクは限界を迎えた……
「あっ、ぐあっ……ーーー！」
「んくっ……ク、ククッ……だし、たな……」
魂が吸い取られていると錯覚するほどの快楽、目がチカチカして体が震える。ボクは限界をはるかに超えるほどの量の精液を、そいつの中に叩きつけた。
「ひうっ、や、やら、やぁぁ……！」
「まだ、でてる……！」
吸い付いた子宮の中に直接注ぎ込むという人外のセックスに、ボクの肉棒は長い間精液を解き放ち続けた……
「……ククッたくさん出しちゃったな……♥」
「……うっ」
「ん？」
「……うぅっ……ふぇ、ふぇぇ……」
「なっ！？」
ボクは、情けなさのあまりに、泣き始めてしまった。
望まぬ生贄に選ばれ、絶対に逃げきれない魔物に捕まり、さらに散々に慰み者にされて、そして今から殺される……
そしてそんな魔物に屈して絶頂を迎えてしまったことがたまらなく悔しかった
「な、なんで泣いてるんだ？」
「うるさい……うるざぁぁい……バカァァァ……！！」
悔しくて、自分でも涙の止め方がわからなくて、こいつから離れたくて、でも力の入らない体ではのしかかってくるこいつを押しのけることもできなくて、余計に悔しくて……
「泣くなよ、なくなって……んっ」
「ひゃっ……？」
するとそいつは、ボクの頬を伝う涙をペロペロと舐め始めた。
優しく体を抱きしめ、ペロペロと顔を舐めてくるそいつに、なんとなく僕は友達が飼っていた人懐こい犬を思い出した。転んで泣いたボクを慰めるように、ペロペロと舐めてきたものだ。
「ん、しょっぱい……れろ、れろ……」
「……」
それを思い出した途端、なんとなくこいつは怖い存在じゃないのかもしれない、と思った。
必死に僕の涙を舐めとっているこいつが、邪悪な魔物とは思えなくなってきたのだ。
「……なぁ」
「ん？どうした？もう泣かないか？」
「お前は、ボクを殺さないのか」
「殺すわけない、お前は、オレの大切なオスだ」
「ん、そっか……」
なんだか、毒気が抜かれてしまった……
どのみち逃げることはできないのだ、こいつに、身を委ねてみてもいいかもしれない
ボクは疲れた体をそいつに預け、顔に当たる柔らかい乳房に埋めた
「お？」
「セアリアス……ボクの名前」
「……セアリアス……ククッ、セアリアス」
ボクの頭を撫でながら名前を呼ぶ魔物。
あぁ、他はどうか知らないけど、こいつはきっと、優しい魔物なんだな……
「じゃあセアリアス。お前の名前もわかったことだし、もっとセックスしよう」
「え？ボクもう出ない……」
「なにいってんだ、オレが出させてやるよ……ククッ」
「や、ひゃっ、や、やぁぁぉ！！」
ただ、別ベクトルでは凶暴な魔物だった
そして時は飛んで、三ヶ月ほど先……
「アリスッアリス……ッ！」
「フェル……いく、いっちゃうぅ……」
「出して、いいぞ、アリスッ！」
ぎゅうっと、体を抱きしめられて、彼女の中でボクはイッた。ドクッドクッと、強く脈動するペニスから放たれる精液は、以前とは比べ物にならない量になった
あれからボクは、ヘルハウンドというらしい魔物のフェルに、『オス』として選ばれて、毎日毎日えっちなことをし続ける日々を送っていた。
フェルは、ボクの名前は長いからと、アリスという渾名で呼ぶようになった。
そして今日もボクはフェルの上で散々に搾り取られた。
そう、上なのである。小柄なボクをフェルはまるでお人形のように抱え上げるフェルは。自分が寝転がって、その上に僕を抱えてセックスするのが好きなのだ。
ボクとしては幾ら何でも恥ずかしいのであまり好きではないのだけど、フェルがやりたいと言ったら聞かないのだ。
「ククッ、アリスは可愛いなぁ……♥」
「んっ……フェル、恥ずかしいから……撫でないでよ……」
あの日出会った火山から少し離れた、人気のない森で、ボクらは今暮らしている。
誰の邪魔も入らない静かな森で、フェルが一生懸命整えてくれた寝床で、毎日毎日フェルに侵され続ける日々……
まぁ、そこに至るまでの過程はともかくとして、今はまあまあ、幸せ、かな？
「ククッ、じゃあアリス、次はオレがお前を抱え上げて犯してやる」
「え、それは本当に止めて、なんかただでさえなけなしのプライドが余計に」
「だーめだ♥ククッ……」
……うん、まぁ、しあわせ、かな……？
14/12/29 03:13更新 / ゆらぎ