読切小説
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恋の道に障害無し
「やぁ、よく来てくれたね。外は寒かっただろう、ホットチョコレートミルクティーなんてどうかな?」

何も言わずに、俺は絹江に差し出されたティーカップを受け取り一口飲んでみる。
すっきりとしたココアみたいな味でなかなか美味しいな。

「どうかな? ボクとしてはこういう紅茶もいいと思うんだけど」
「俺は紅茶について詳しくないが美味いとは思うぞ、体も温まるし外が寒かったから丁度温かいものが飲みたかった」
「そうか、それはよかった」
「で、なんでここに生徒会長のお前と副会長の俺以外いないんだ」

ここはキッチンやら冷蔵庫やらがそろっているせいで通称『茶会室』なんて呼ばれてはいるが生徒会室のはずだ。
そして、俺は生徒会として呼び出されたはずなのに今はこの部屋に俺と絹江以外の役員が居ない。それについての説明を俺は絹江に求める。

「それなら、キミ以外呼んでないからね居ないのは当然さ」
「ちょっと待て、なんで俺だけ呼んだんだよ」
「キミは副だろ? それに他の子達は今日は忙しいだろうし」
「俺だって好きで副になったわけじゃないんだけど」

この学校の生徒会長にはパートナーである副会長を指名する権利がある。俺は絹江が生徒会長として当選してしまったが故に強制的に副会長にされてしまった。

「文句を言わないでくれよ、ボクだって寒いなか学校まで来たんだからさ」
「まぁいいや、仕事は? さっさと終わらせて帰ろうぜ」

来てしまったからには仕事を終わらせてしまおう、家に帰れば布団が俺の帰りを待っている。

「それならボク一人で終わらせといたよ」
「はぁ?……俺も呼んだ理由は?」
「キミが一人で家でぬくぬくしてるのが許せなかったからね」
「ふざけんな」

こっちは仕事があるからしょうがなく来たってのに、そう思って俺が帰ろうとしていると制服の裾を絹江に掴まれた。

「それと、ボクがキミと少しでも一緒にいたかったから……じゃあダメかな?」

これは反則だ。上目使いでそんな事を言われたら許さずを得ないだろ。

「分かった。分かったから上目使いは止めてくれ、変な気分になりそう」
「変な気分ってどんな気分なのかな?」

絹江はあと少しでキスしてしまうんじゃないかという距離まで顔を近づけてくるとそう言った。

「ふふ、冗談だよ。キミがちゃんとボクの気持ちを受け止めてくれるまでは、無理やりなんてことはしないからね」
「お前さ、分かってて言ってるんだろ。俺だって鈍感じゃないんだから、お前が俺をどう想ってるのかぐらい分かるぞ」
「何のことかな? ちゃんと言葉にして言ってもらわないと分からないな」
「俺は絹江のことが好きだ……これで良いか?」

正直、面と向かって言うのは恥ずかしいから言いたくなかったのに。

「キミは大胆だね、いきなりそんなこと言うなんて」
「お前が言わせたんだろ」
「やっぱり嬉しいものだね、好きだなんて言われると」
「うるせえ」
「あれ、恥ずかしがってるのかな? でも、ボクはキミのそんなところも好きだよ」

まあ確かに好きって言われると嬉しいかな。

「さて、ボクがキミに言わせたいことも言わせることが出来たしそろそろ帰ろうか」
「そうだな、外は寒いし手でも繋いで帰るか?」
「なんだ、キミにも案外ロマンチックなとこあるじゃないボクはそういうのも好きだよ」
「勝手に言ってろ」
「そうだね、勝手に言ってようかな。これからもずっとキミの隣で」
14/09/17 08:37更新 / アンノウン

■作者メッセージ
「ところで、ホットチョコレートミルクティーだっけ? あれは、やっぱり今日のイベント関係あるのか?」
「さあね、でもキミの思っている通りだと考えていいよ♪」
「そうか……だったら、もうちょっとゆっくり飲んでもよかったかな」
「キミが望むならボクがいつでも作ってあげるから悩むことでもないさ」

そんな帰り道の小さな会話。

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