読切小説
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おやすみなさい
「そろそろ起きなさい」

俺はベッドでぐっすりと眠り込んでいる女の子に声をかける。

「んー、おはよー」

彼女は間延びをした返事をするが、一向に起きる気配はない。彼女が眠っていると欲望に身を任せ襲い掛かりたくなる、起こそうとして一緒に眠るなんて過ちを二度と繰り返さないためにも、ここはさっさと起こさないといけない。

「毎朝恒例の早口言葉の時間です、赤パジャマ黄パジャマ茶パジャマ」
「ボクのパジャマはピンクだよー」
「違う、そうじゃない。パジャマの色を聞いたんじゃなくて、俺の言ったことを早口で繰り返して欲しいの」
「んー、赤パジャマ黄パダ……舌噛んだー」

まぶたを擦りながらようやく彼女が起きる、それでもまだボーっとベッドに座り込んでいて目の焦点も合わさっていない。
しっかり起こすにはやっぱり眠り姫を起こす定番のアレをするべきなのか?
そう考えると俺は彼女にキスをしてみた、彼女のやわらかい唇が俺の唇に触れるとなんだか恥ずかしくなってくる。

「起きたか?」
「……うん、ダーリンにキスされちゃったから」

お互い顔を赤くしながら、なんともいえない空気に包まれる。

「そうだ、買い物しようと思ってお前を起こしたんだよ」

一度彼女が眠っている間に朝ごはんを作ろうとしたことがあるが、俺が朝ごはんを作ろうとしているときにいつもは自分から起きないはずの彼女が半べそになって俺を探しに来た。どうやら彼女は俺が少しでも離れると夢のなかでも俺がいなくなって、とてつもなく不安になるらしい。
それ以来、俺はなるべく彼女からひと時も離れないようにしている。妻を不安にさせないのも夫の役割だろうし。

「わかった、じゃあボクを抱っこして連れてって」
「流石に歩けるでしょ」
「だって抱っこの方がダーリンの体温が感じられて、ボクがいい夢をみれるんだもん」

寝ることは前提なんだ、まぁ歩きながら寝て色んなところにフラフラとぶつかるのよりはいいかもしれない。

「おっけ、こっちきな」
「やったぁ、ダーリンとお出かけ嬉しいな」

俺が手を伸ばすとすぐに彼女は抱きついてくる、こういう無邪気で可愛いところはマウス種らしい。

「お布団よりもずっと温かい、これならボクぐっすり眠れちゃうね」
「眠られたらそのまま襲っちゃいそうなんだけど」
「いいよ、そしたら夢の中でもボクとダーリンがラブラブな所を他の人に見せてあげられるもん」
「それはそれで買い物が出来なくなるから困るんだけどなぁ、そうすると材料がなくてご飯が作れなくなるし」
「むぅー、ダーリンのご飯が食べれないのは嫌だ」
「だったら頑張って起きててください」

不思議の国だと街中でヤり始めるのは珍しくない、だから俺が心配しているのはそっちに夢中になって買い物のことを忘れてしまうからだ。

「これからもダーリンはボクとずっと一緒だからね」

彼女を抱っこして出かけようとしたときに彼女は囁いた。

「はいはい、わかってますよ」

俺の大事な眠り姫は今日も自由気ままに眠るのであった。
14/09/17 08:38更新 / アンノウン

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