連載小説
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第三十六話〜Active girl〜
固定概念とは恐ろしい物で、頭の中がそうと決め付けると他の何かが受け入れられなくなってしまう。
そんな状態は戦略的、戦術的にも大いなる悪影響を与えるので、指揮官は常に頭を柔軟に保たなければならない。これは姉さんの受け売りだけどな。
でもさ、いくら何でも原型を留めない程粉々にぶち壊す事はないんじゃないか?
え、それもありだって?ま、いいけどさ。

〜江戸崎冒険者ギルド支部 ロビー〜

翌日。俺達は依頼ボードに貼ってあったクエストを片っぱしから剥がしてちゃぶ台に並べ、誰がどれを受けるかを話し合っていた。
アーサーが自然と仕切る形になるのは一番の年長者だからだろうか。

「大別するのであれば、長時間拘束系、物資収集系、物資宅配系、標的討伐系、異変調査系だ。」

長時間拘束系のクエストは主に倉庫整理、要人警護など常に同じ場所にいるか、同じ人物の側にいるかというクエストだ。自然と掛け持ちが出来なくなる。

物資収集、宅配系は文字通り物を探し出したり、届けたりするクエスト。ダンジョンの探索などもこれに入る。情報も物資の一つだ。

標的討伐系は盗賊の征伐や、賞金首の捕縛、討滅など戦いがメインとなるクエストだ。
その性質上戦闘能力に長ける者が受けるにふさわしい。

で、異変調査系とは天変地異などが起こった場合にその原因を調査し、可能であれば排除する任務だ。
その性質上専門的な知識(魔術だったり気象学だったり呪術だったりと)が無いと遂行が難しい。
原因を調べて報告するだけでも任務完了となるのだが、解決できた時の報酬は中々に高い。

「ここにいる全員がそれなりに戦闘能力を持っているのは昨日のクエストで把握できている。問題は個々のスキルだ。」
「探索なら私が一番ね。エルフの目で見つけられない物はないわ。」

アイシャが名乗りを挙げる。確かにエルフであれば見つけられない物などほぼありはしないだろう。

「力仕事なら私とサクラさんが一番ですねぇ。持久力なら負けませんよぉ?」
こちらはリュシー。確かにオークとアカオニの腕力は特筆すべきものがある。

「私とアーサーは戦闘系ね。そこいらの雑兵なら目をつぶっていても倒せるわ。」
こちらはアーサーとエレミアのコンビ。この二人であれば相手がどんな手練であっても遅れを取る事はないだろう。

「で、アルテア。お前はどうなんだ?」
アーサーが俺に話を振る。

「うん、そうだな。戦闘の腕は昨日見せた通りだ。訓練も受けていたからそれなりに体力も筋力もあるし、注意力も高いから探索もできる。しかし……。」
俺は皆を見回す。

「探索能力もエルフに比べりゃ全然だし、力もオークに負ける。戦闘もデュラハンやリザードマンが本気を出したら俺なんて敵いっこない。」

つまり……

「器用貧乏だ。どこに出しても遜色はないが、活躍もしない。射撃は得意だが生憎武器がない。おまけに魔法も使えないぜ。」

自慢じゃないが、この一角特化型メンツにそれぞれの分野で勝てる自信がない。

「だから俺の采配は適当に決めてくれ。どこに置かれてもそれなりに役に立つと言っておく。」
「「「「「…………」」」」」

互いに顔を見合わせる。
ま、そりゃそうか。言いだしっぺがこれだもんな。

「そうか、ならばお前の配置はこちらで決めさせてもらおう。」

そう言うと、アーサーは依頼に目を通しながら紙を配り始めた。



それぞれがクエストを受け取り終わる。

「私とサクラさんは倉庫整理が3件ですねぇ。3日連続ですかぁ……。」

リュシーとサクラは商人からの倉庫整理依頼を3つずつ。

「酒蔵の運び出しか。頼み込めば一つぐらいは譲ってくれるかねぇ。」

こらそこのウワバミ。今からたかる気満々じゃねぇか。

「薬の材料探しね……。この薬草なら生えていそうな場所は知っているわ。」

アイシャは医者からの依頼で、足りなくなった薬草の収集。依頼は一つだけだが、集める物が結構多い。

「私は盗賊団の討伐で……アーサーが要人警護ね。適切な判断だと思うわ。」

元騎士のアーサーならば警護はお手の物だろう。縦横無尽に暴れ回るならばエレミアに丁度いい。

「……で、だ。」

しかし俺の受け取ったクエストは……。

「なんでこの初夏に大寒波を受けた村の調査なんだ?滅茶苦茶難易度高そうじゃないか。」

そこに書いてあった物は夏の初めに降りだした大雪の調査依頼だった。謎すぎる。

「これは物理的に仕方がない事だ。」
「なんでだよ。」

俺が疑問をぶつけると、彼女たちが口々に理由を話す。

「私は変温動物だし。そんな寒いところに言ったら冬眠が始まるわ。」
「私の鎧でそんな寒い中に出たらあっという間に体温が奪われて死ぬ。」
「寒冷じんま疹なんですぅ。」
「あたし冷え性なんだ。」
「雪の中じゃ手が震えて弓が撃てないわ。」
「あぁ、そう……。」
ガックリと項垂れる俺。

「それに一番防寒対策ができそうなお前が適任だろうということでな。」

確かにジャケットはそれなりに防寒能力あるけどさ。

「頑張りなさい。男の見せどころでしょ?」

アイシャが励ますが、その口元がこらえきれない笑いに歪んでいる。
にゃろう……腹の中では真っ黒な顔して笑っていやがるな。覚えてやがれ。

「わかった……やろうじゃないか。」

俺はクエストの受注用紙を持って受付へと向かった。
これは腹をくくるしかないだろう。
古今東西ハズレくじを引くのは決まって男だし、進んでハズレを引くのも男だからだ。
男が強いのは自分からハズレくじを引いて女を守るため……なんて言っていたのはどこの誰だったか。



〜クエスト開始〜
―異常気象の調査―
『もうすぐ夏が始まるというのに大雪が降ってきただぁ。領主様に陳情しても調査中と帰ってくるだけだで、冒険者様だけが頼りなんだぁ。                                    
そんな大層な報酬は用意できなんだども受けてくれんか?                        
                                                青松村代表 周作』

「よく来やがりましたねクソ野郎。」
「あんた初対面の相手に失礼すぎだろ!」

受付にはいつもの受付嬢ともう一人、カラステングが座っていた。
見た目は大体13,4ぐらいだろうか。まだ幼さが抜けきっていない。
そんな彼女が俺を鋭い目付きで睨みつけていた。

「あはは……彼女は元々このギルドで受付をしていました瑠璃ちゃんです。この間の誘拐事件が解決したときに戻ってきたんですよ。口は悪いですけれど許してあげてくださいね?」
「いやいや、許すも何も謂れの無い誹謗中傷受けて平然としている程俺は心が広くないぜ?」

「彼女は人の罪が見えるそうで。罪業を重ねた相手だと自然とこういう口調になってしまうそうです。」
「コイツに敬意なんて払う必要ありません。ウジ虫にはこの程度で十分です。」
「ねぇ、殴っていい?こいつ殴っていい?」

腕まくりをし始める俺を受付嬢が両手で制止する。
どいて!そいつ殴れない!

「わ〜!わ〜!受付は私がやりますから瑠璃ちゃんは下がっていてください!」

そう言うと彼女は瑠璃をギルドの奥へと引っ張って行った。
暫くすると彼女が肩で息をしながら戻ってくる。

「はぁ……はぁ……はぁ〜……お、お待たせいたしました。クエストの受注をしますので用紙を下さい。」

俺は彼女に受注用紙を渡す。印が押されて受注完了だ。

「受注完了いたしました。それでは頑張ってくださいね。」
「おう、行ってくる。」

旅の館の紹介状を受け取ってギルドを後にしようとすると、

「あ、待ってください。」

彼女に呼び止められた。

「これからは受付が二人になるので、私の名前も覚えてくれると助かります。私はプリシラです。」
「そうか、了解。」

そういえば今までこいつの名前を聞いたことが無かったな……何故だろうか。
若干の疑問を残しつつも、改めて俺はギルドを後にした。



「や…………ったぁぁぁああああ!36話にしてようやく私の名前を覚えてくれる人が!」
「煩いですよ、万年目立ちたがりメタ幼女。」
「………………」



〜工房『珠家』〜

仔鵺を受け取りにタマの所を訪ねると、彼女はお茶を啜っている所だった。
ちゃぶ台の上には仔鵺が置いてある。

「あぁ、いらっしゃい。注文の品はできてるよ。」

そう言うと彼女は俺に仔鵺を渡してくる。

「どう変わったんだ?」
「風精石っていうシルフの魔力が凝縮されている魔石をさらに圧縮して組み込んだんだ。問題はその制御方法なんだけどね……。」

彼女はやれやれといった感じで首を振る。
そんなに面倒な手順を踏まなければならないのだろうか。

「具体的なイメージが無いと上手く発動しないみたいなんだ。おまけに周囲の空気を取り込んでから使うから連発ができない。予め溜めておいた空気を撃ち出す……って訳にはいかないってこと。」

彼女は余った風精石の欠片を指先で弄びながら続ける。

「おまけにシルフの影響を受けているのかやたら気まぐれ。気に入らない相手には力を貸し与えないっていうおまけ付き。武器としては……下の下だねぇ。」

溜息をつくタマ。そこまで酷いのか。

「イメージねぇ……。何か試し撃ちができそうな物は無いか?」
「そこに立てかけてある鉄板を使いなよ。撃てたら、の話だけど。」

俺は工房の壁に立てかけてある鉄板に向きあって仔鵺を構える。

「(イメージか……。でもそれだけじゃなさそうだな。)」

意思を持つ武器との付き合い方の基本としては対話が重要になってくる。その点はラプラスで経験済みだ。

「(今日から俺とお前は相棒だ。もし、俺に力を貸す気があるのなら……応えてくれ。)」

すると、仔鵺の周囲にわずかながら空気の流れが発生したように感じた。

「(イメージするのは圧縮された空気。鋼のように硬く、弾丸のように高速で飛び出す空気の大砲……。)」

仔鵺の周囲の空気がさらに圧縮され、わずかに熱を持ち始める。
右腕を後ろに引き、虚空を殴りつけるように腕を振り抜く。

「ゲンブジャケット!」

圧縮された空気が砲弾のように飛び、鉄板に衝突。衝撃で鉄板がひしゃげ、立てかけてあった壁に衝撃が伝わって工房全体に揺れが走る。

「ふぅ……どうよ?」

俺がタマの方を向いて感想を求める。

「…………」

すんごい目がキラキラしているんですけど。

「凄いよ!武器と一体化している奴なんて初めて見た!」

彼女が飛び上がって俺に抱きついてくる。
胸が脇腹に押し付けられて柔らかい感触が……伝わってこない。悲しくなるほどに絶壁だ。

「あぁ……もう大損してもいいかも……。自分の作った物を使いこなしてもらえるのがこんなに嬉しいなんてねぇ……。」

彼女にとってこれは風精石を組み込んだ時から失敗作になっていたのだろう。
それを使いこなしたのだとしたら喜びもひとしおのはずだ。

「大丈夫だ。お前が作ったものに失敗作なんてない。俺が保証する。」

言ったとたん、彼女の動きがピタリと止まる。
ヤバい、これは地雷か?フラグか?

「……ねぇ。」

その声は冷たくも、無機質でも無かった。

「押し倒していい?」

ただ、熱がかなり篭っていたが。
フラグだった。

「ダメ、これから仕事。」




〜旅の館〜

「はい、モイライ冒険者ギルド支部所属アルテア=ブレイナー様……今は江戸崎冒険者ギルドに出向中ですね。今回はあちら側に旅の館が無いので、新サービスのカードポータルのご利用となります。」
「ん?向こうに旅の館が無いのに使えるのか?」

カードポータル……札?

「はい、つい最近始まった新システムです。例え旅の館が無い小さな村でも送り届けられるよう魔術師ギルドが新しく開発した転送方式です。そこに人が住んでいるのであれば転送可能になる画期的なシステムですね。」

詳しい仕組みは知らないほうがいいのだろうな。
重要なのは上半身か下半身、どちらかが置いてけぼりにならないかという事だけだ。

「帰りは転送時にお渡しするカードを発動させることで帰還が可能です。どんな寒村でも早急に冒険者が送れるため、開始して間もないにもかかわらず結構な人が利用しているんですよ?」

そこで一つ疑問が生じる。

「なぁ、もしかして最近の旅の館の不具合ってそれが原因なんじゃねぇか?」
「あはは……それに関しては現在調査中です。幸いこのカードポータルには不具合が認められていないので、安心してご利用下さい。」

俺は受付からカードを貰う。
俺はジャケットの内ポケットのカードを仕舞うと、カードポータル用の魔方陣へと向かう。

「行ってらっしゃいませ。よい旅を。」



〜清酒の里 青松村〜

視界が切り替わると、いつもより2,3メートル高い視界……2,3メートル!?

「どぉうわぁぁぁあああ!?」

落下して尻から着地。幸い下に雪が積もっていてさほど痛くはなかった。

「なるほど……確かに異常気象だな。」

暦で言えば7月、夏真っ盛りという時期である。雪なんぞよほど寒い―それこそツンドラとか極寒の地でなければ―場所でなければ積もることはおろか降ることすら無いだろう。

「確かに旅の館はいらないが……転送座標ズレ過ぎだろ……。」

尻についた雪を払って立ち上がる。
体感だからラプラスのように正確な温度は分からないが、体感温度はマイナス10度といったところだろう。

「さっむ……とりあえず村長の所に顔を出すか。」

そして俺は遠くに見える一際大きな家に向かって歩き出した。



〜青松村 村長の家〜
「おぉ、よぅきなすったなぁ。あんたが周作が頼んだ冒険者ギルドの冒険者さんかぇ。」
「アルテアだ。とある事情により今は江戸崎のギルドに身を置いている。」

俺は村長のじいさんと握手を交わす。

「異常気象ということだが……あれは一体何なんだ?もう夏なのになぜ雪が?」

「うむ。本来ならもう酒造り用の米の田植えが終わっている頃じゃが……突然の大雪で田植えはおろか苗作りまで進まん。これはおかしいと領主様に調査を依頼したのじゃ。」

「でも、何時まで経っても原因不明と。」
「うむ、仕方無しにこの村の若者を大きな街のギルドまで向かわせて依頼を出してきた次第ですじゃ。」

どこもお役所仕事というのは腰が重いということか。

「早速調査を……と言いたい所だが、この大雪の中じゃ村の中ですら遭難しかねん。何かいい方法は無いか?」
「それなら桔梗に頼めばいいじゃろ。あの子は雪女じゃからこの雪の中でも迷うことはないじゃろ。」

雪女か。確か図鑑で見た限りだと大和撫子然とした魔物だったな。
白い着物に腰あたりまである長い髪と白く抜けるような肌が特徴の美人な魔物だ。
そんな事を考えていると、戸口がガラガラと音を立てて開かれた。

「村長のおじいちゃん、誰か来たみたいだけどお客さん?」

そう、こんなクソ寒い中にタンクトップ+ホットパンツ+半指グローブのショートヘア女の訳がない。

「おぉ、桔梗かぇ。調度良かった、この冒険者さんに道案内を……。」
「嘘だ!」

思わず否定してしまった俺を許して欲しい。



〜霧矢峰登山道〜

彼女曰く、山が怪しいということなのでそこを探索する事になった。
俺としてはまず村の周辺から探したいところだったが、人の通りが思った以上に激しく、もし何か不審なものがあるのであれば第一に村人が発見しているであろう、ということで俺の意見は粉々に打ち砕かれた。チキショウ、さみぃ。

「このカンジキってのは歩きにくいな……。スノーモービルとか無いのか?」
「なにそれ、大陸の乗り物?」

桔梗はどこからどう見ても雪女には見えなかった。大陸の方の街中で道具屋の売り子でもしていたほうが似合いそうな女性。しかも大和撫子とは程遠いフランクな口調。このクソ寒いのに超絶薄着。こっちが寒くなってくる。

「何でもない。忘れろ。」
「ふ〜ん……。」

慣れないカンジキで雪山を登る。村長に蓑を貸してもらったが、大した防寒機能はない。
まぁ近代の防寒技術に比べればの話だが。

「ね、アルテアって大陸の人なんでしょ?」
「広い意味では大陸出身って事になるな。育てたのはジパングの人だが。」

それにしてもこいつのブーツはどうなっているんだ?積もって間もない新雪の上を埋まらずに歩いてやがる。

「大陸ってどんな物が流行っているの?綺麗な服とかある?」
「綺麗な服……ねぇ。」

正直自分の服装には無頓着だ。この世界で替えの服装を選ぶときもサイズぐらいしか見なかったし、これが流行だと言われてもピンと来ない。
しかし……。

「大陸に関する物には疎いが魔界のファッションはかなり前衛的だぞ。」

主に性的な意味で。

「それじゃあよく分からないよ……。」

彼女がポリポリと頬を掻く。まぁ俺もこれだけの情報じゃ何も推測できないし。

「え〜と……紐ビキニにボンテージスーツ、ほとんど透明のキャミソールなんてあったな。俺にはこのへんのセンスはわからん。」
「誰が着るのよそれぇ……。」
「俺に聞くな。」

彼女が辟易したような表情で溜息をつく。

「あとはそうだな……唐場げパンなんてあったな。」
「唐場げパン?唐揚げじゃなくて?」

そう言えば……なんだっけ?これ。

「唐場らしい。俺も食ったこと無いから知らん。」
「知らないのね……。」



「んで、俺らはどこへ向かっているんだ?」
「え?アルテアが行き先を決めているんじゃないの?」
「俺は前を歩くお前を追っていただけだ。何かこの異常気象に関する心当たりがあるんじゃないのか?」

しかし彼女は首を横に振る。

「まさかぁ。私が知っているなら自分で行って元凶を絶っているよ。私が出来るのは危ないところに近寄らせない事と帰りの道案内だけ。」
それって……。
「遭難か?」
「ううん、まだ遭難はしていないよ。帰り道はしっかり解っているから安心して。」
「そりゃ一安心だ。ついでに何かこの異常気象に心当たりがあれば教えてほしいね。」

彼女は暫く首を捻って、何かに思い当たったようだ。

「そう言えばちょくちょくこの山に領主の配下らしき人たちが入ってきているよ。」
「そりゃそうだろ。いくら役人の腰が重いと言ったって調査の格好をつけなきゃマズいだろうし。」

しかし、彼女は首を振って否定する。

「そうじゃないんだ。何も見つからなくても満足そうに帰っていくし……これって怪しくない?」
「なるほど……。」

確かにそれは怪しい。普通落胆もしくは不満気に帰っていくだろうに、成果なしで満足というのはありえない。

「そいつの入っていった道はわかるか?」
「それなら。こっちだよ。」

彼女は登山道から外れて林の中を進み始める。
俺は雪に足を取られながらも、なんとか追跡した。



「ここだよ。いつもこの辺で見失うんだ。」

辿り着いたのは少し開けた円形の広場のような場所。
こういう時にラプラスがいれば何があるかあっという間に分かるのだが……。

「雪の下に何かある……という線は薄いだろうな。」

何かの目的の度にこの雪を掘り返していたら手間がかかってしょうがないだろう。

「見失った時には別に雪を掘り返していた形跡は無かったんだろ?」
「うん。なんとかここまで付いてきたんだけどこの広場に入った所でいなくなるんだ。」

いなくなる、か。転送魔法でも使っているのだろうか。
俺は広場の周りの木を調べ始める。

「(……ん?)」

その内の1本1本に漢数字が掘り込んである。

「(七……?)」

隣にも同じように漢数字が彫ってある。
ツールからペイントを起動。木の配置と彫ってある数字を書き込んでいく。

「何しているの?」
「お絵かきだよ。」

一周して木の配置と数字を書き終える。

「(樹木の配置はほぼ等間隔。一を起点に線を引いていくと……)」

ペイントで線を引き、一から順繰りに線を引いていき、最後の数字から一に戻る。

「(こいつは……魔方陣か?)」

引き終わるとそこには幾何学模様の魔方陣が現れた。

「桔梗。お前雪を降らせる魔法とか使えないか?」
「魔法じゃなくて妖術だけどね。何に使うの?」

俺は自分の足跡の付いた広場を見渡す。

「一回足跡を消したい。できるか?」
「任せてよ。これでも雪女なんだから。」

彼女は広場の中心まで行くと、両手を広げて目を閉じた。
すると彼女の周囲のみ雪がしんしんと降りだす。

「(あぁして見ると雪女なんだがなぁ……いかんせんイメージとのギャップが酷い。)」

暫くすると足跡が消えてなくなる。

「消したよ〜。」

彼女がこちらへと歩いて来る。足跡は……付いていない。

「オーケー。それじゃ、試してみますか。」

一と書いてある木から、ペイント通りに歩いて足跡を付けていく。
最後の数字から一に戻ると、足跡が光り始めた。

「わ、何!?これ!」
「似たような陣を旅の館で見たな。多分転送用の魔方陣だろう。」

足跡に沿って陣の中心へと近づく。中心へと辿り着いたとき、浮遊感と同時に別の場所へと降り立っていた。



〜地下研究施設〜

「ビンゴだ。どうやらあの魔方陣は別の場所への転送陣だったみたいだな。」

石造りの薄暗い地下室。天井にはぼんやりと光を放つ石が埋め込まれている。

「うわぁ……どこ?ここ。」
「さぁな。魔力を持った奴じゃなくても発動出来る所を見るとさほど離れた場所でもなさそうだがな。」

あの魔方陣の下にしこたま魔力を持った魔石でもばらまいておけば陣を描くだけで魔石が反応して魔力供給を行うだろう。

「とりあえず奥へ進むぞ。その領主の手下とやらが何かをしているのならばここには何かがあるはずだ。」

この施設は病院……というより何かの研究所だったようだ。
通路から見える小部屋には魔方陣や魔術に使うような物品が所狭しと並べられている。

「な〜んだか不気味だねぇ。お化けでも出てきそう。」
「それをお前が言うか?雪山のお化けが。」

俺が茶化すと、彼女が頬を膨らませて抗議する。

「アタシ達は別にお化けじゃないよ。少し寒いところに住んでいる妖怪。人を凍らせて死なせるなんておばあちゃんの代でもやってないんだから。」

別にそこまで説明を求めている訳ではないのだが。

<ガシャガシャガシャ>

「……今何か聞こえたよな?」
「ナ、ナニモキコエテナイヨー?」

<ガシャガシャガシャ>

「今明らかに何か聞こえただろ。」
「し、知らない知らない知らない!」

<ガシャガシャガシャ>

「むしろ近付いているだろこれ。」
「言わないでってば!必死に現実逃避しているんだから!」

そして、その足音の正体が曲がり角から姿を現した。
そいつは……

「で、出たあぁあぁあぁぁぁぁあああ!?!?!?!?」
「鎧兜……?しかし人特有の気配がしない……?」

日本の鎧武者が着るような具足をまとった何者かだった。
鞘から刀を抜き放ち、俺達の方へと静かに歩み寄ってくる。

「こ、こっちこないでぇぇ…」

桔梗はすでに半べそ。役に立ちそうもない。
俺は仔鵺を抜き放ち、戦闘態勢に入る。

「ま、お前のミスはただ一つ。一気に間合いを詰めなかったことだ。」

空気の砲弾をイメージする。仔鵺の周囲に空気が流れ始め、それが圧縮、硬質化される。

「ゲンブゥ……」

腰だめに仔鵺を構え、腰を落とす。

「ジャケットォ!」

強力な右足の震脚と共に右ストレートを繰りだすと、仔鵺の周囲の空気砲が鎧に直撃。バラバラに砕け散る。

「バラバラ死体になったぁぁぁああああああ!」
「いや、お前お化けだとか言ってただろうが。」

近寄ってみると、人体のパーツが見当たらない。それどころか……。

「こいつ……魔物でも人でもないぞ。からくりだ。」

木の歯車や、糸など古来日本でからくりに使われていたパーツが辺りに散乱していた。

「へ、からくり?お化けじゃなくて?」
「こんなもんが出てくるお化けがいたら見てみたいぜ。」

俺は歯車の一つを桔梗に放ってやる。彼女はそれを拾い上げると一言呟いた。

「付喪神とかじゃないよね?」
「さぁな。調べてみるか?」

ナイフを展開して鎧の紐を切り、取り外す。
中には光る石が収められていた。

「こいつは……何だ?魔石の一種か?」

取り出してみると未だにガタガタ動き続けていたからくりがピタリと停止する。
どうやらこれが動力になっていたようだ。

「(ギルドに解析を依頼してみるか……。尤も、江戸崎のギルドじゃ何が分かるかなんてたかが知れているけどな。)」

俺はバックパックにその石を仕舞う。からくりが動かなくなったのを確認すると、桔梗がこちらへと近づいてきた。

「結局なんだったの?これ。」
「何だろうな。ゴーレムっぽいけどなんか違う気がする。さしずめからくりガーディアンって所か。」

少なくとも魔物のゴーレムの一種じゃ無いだろう。

「お化けじゃない?」
「少なくともお化けじゃないな。からくり人形と対して変わらん。」

そいつの残骸を蹴り飛ばし、通路の端に寄せる。ガラガラと音を立てながら廊下を滑って壁に激突し、停止した。

「な?大して怖くない。これだったら生身の人間の方がよっぽど怖いね。」

またガシャガシャという音がして、通路の奥の暗がりからガーディアンが3体こちらへ近づいてくる。

「全く……数配置すりゃあ良いってもんじゃ……」

仔鵺を構えようとしたその時、俺の隣を風が通り抜けた。
一瞬でガーディアンに肉薄したのは、あの桔梗だった。

「お化けじゃないなら!」

振り下ろした刀を回避し、からくりの肩を拳で打ち据える。すると、ヒットした所が凍りつき始めた。

「何も怖くはない!」

掌底、ボディブロー、裏拳、回し蹴りと連続で叩きつけるたびにガーディアンが凍りついていく。
もう二体が彼女に刀を振り下ろしたが、彼女はそれを両手で握り締め、受け止める。

「はぁぁぁぁあああ!」

あまりの冷気に刀が砕け散る。
後ろへたたらを踏んだガーディアンに肘打ちからの裏拳で追撃し、ショルダータックルを近距離でぶち当てる。
吹っ飛ぶ前にそのガーディアンを掴みとり、もう一方のガーディアンへと投げつける。壁に叩き付けられたガーディアンが拳の乱打で氷漬けになる。

「っと、見とれている場合じゃねぇな。」

仔鵺を構えて砲弾をイメージ。

「上手く避けろよ!」

俺の叫びを聞き取り、彼女が上へと飛び上がる。両足を開いて足の底で壁に留まる。

「ゲンブジャケットォ!」

右腕を突き出し、空気砲を発射。氷漬けになっていたガーディアン3体を纏めてブチ抜く。
バラバラになったガーディアンのコア(正式名称がわからないので一応こう呼ぶことに)を引きぬいて機能を停止させる。

「お前意外とやるのな。」
「当然。いまどきの女の子は自分の身を護れるぐらいじゃないとね。」

降りてきた桔梗が得意げに胸を張る。

「所で俺の中の雪女像が音を立てて崩れ去っていくのだがこれはどうしてくれる?」
「その幻想をぶち壊す!」
だめだこいつ。



配備されていたガーディアンはあれで最後だったのか、特にこれといった妨害も無く奥へと進む事ができた。
最奥と思われる扉を開くと、中にはぼんやりと薄青い光を放つ巨大な丸い石が台座に置かれている。

「寒……この部屋だけ異様に気温が低いな……。」

石畳には霜が付いており、息が白くなっている。

「これ、なんだろ?本?」

桔梗がこの部屋の机に置かれていた紙束を見つける。

「大陸の言葉かなぁ……あたしには読めないや。」

それを受け取ってざっと目を通す。
翻訳されない部分はおそらく魔術の式のような物。翻訳される部分だけ読み解いていく。

「気象制御装置……ね。」

そこに書いてあったのは、自然界のマナを利用して自在に天候を操る魔道具の一種だった。
その挿絵には、台座の上の物と同じ丸い石が書いてある。

「多分大雪の正体はこれだな。このあたり一帯の気温を下げて強制的に冬にしているんだろ。」

しかし、肝心の制御法の部分が翻訳されない。つまり、魔法による制御ということか。

「てことはこれを壊せば雪が止まるの?」
「壊せばというか機能を停止させれば……」

俺が彼女の方を向くと、彼女はグルグルと腕を振り回して制御装置を殴ろうとしているところだった。

「ちょ、待て!迂闊に衝撃を与えたら……」
「えぇぇぇえええい!」

制止が間に合わず、彼女の拳が制御装置にぶち当たる。
途端、室内に暴風が吹き荒れ、俺達は室外に吹き飛ばされる。

「おいぃ!何勝手にぶっ壊しちゃってんの!?あぁいう制御装置ってのはデリケートなんだから下手な衝撃与えちゃだめだろ!?」
「そんなの知らないよ!普通壊せば止まると思うでしょ!?」

言い合いをしている間にも室内の風は強くなる。

「っく……完全に破壊するしかないか……!」

いくら制御装置といえど、完全に壊してしまえば作動しない。電子機器に例えるのであれば作動中にハンマーか何かでぶっこわすような物だが、何もしなければもっとまずいことになる。
仔鵺を取り出して、ゲンブジャケットを放つ。しかし……

「当たらないか……!」

暴風が吹き荒れている所に空気砲を放ったとしても荒れ狂う風で狙いが定まらず、あらぬ方向へ飛んでしまう。

「どうするの!?近寄ることも出来ないよ!」
「だったら遠距離から破壊するしかないだろうが!」

しかし、ゲンブジャケットでは狙いが定まらない。
虎牙鎚ではまっすぐ飛ぶものの、威力不足だろう。
しかし……。

「(大事なのはイメージだ……。)」

虎牙鎚を引き抜き、仔鵺と同時に構える。

「(ゲンブジャケットじゃ届かない……虎牙鎚では威力が足りない……。ならば!)」

仔鵺で圧縮した空気の中に虎牙鎚の魔力弾を練り合わせていく。

「(二つの特性を混ぜ合わせる!)」

無色の空気の塊と薄青いエネルギーが混ざり、バスケットボール程度の塊が出来上がる。

「即興奥技!」

足を踏ん張って衝撃に備える。狙いを定め、虎牙鎚のトリガーを離す。

「タイグレスハウル!」

空気と魔力の集合体は暴風の中を突き進み、制御装置へと喰らいつく。
硬質化した空気に魔力の牙が合わさり、制御装置をガリガリと削っていく。
制御装置の半ばまで達した頃に全体にヒビが入り、それは砕け散った。
みるみる内に暴走が収まっていく。

「ぶっつけ本番は慣れているんでね。」

虎牙鎚と仔鵺を回転させてホルスターに仕舞う。

「うし、帰るぞ。」

俺は尻餅をついている桔梗へ手を差し出す。

「立てるよな?特に怪我はないだろうし。」
「う、うん……」

彼女が俺の手を取って立ち上がる。

「あとは雪が降らなければ依頼完了だが……もしかしたら暫くは余波でおさまらないかもしれないな。」
「…………」

妙に静かだ。結構活発な子だと思っていたのだが。

「どうかしたのか?」
「へ!?あ、ううん。何でもないよ?」

彼女は我に返ったように首を振る。

「ここにはもう用は無い。行くぞ。」

俺達は元来た通路を歩き出す。


―気象制御装置の取り扱い説明書を手に入れました―


〜霧矢峰〜

外に出た途端、視界が真っ白に塗りつぶされた。

「な、なにごぉぶぅ!」

口を開けば冷たいものが口の中になだれ込んでくる。
外は……猛では済まないほどの吹雪になっていた。おそらくは、制御装置破壊の余波だ。
あまりの強風にぶっ倒れる。
その上に容赦なく雪が降り積もっていく。

「(やべ……俺、死ぬのか……?)」

体温が急激に奪われ、意識が朦朧としていく。薄れ行く意識の中、何かに引っ張られるような感じがした。



〜霧矢峰山中 山小屋〜

<パチ……パチ……>

目が覚めると、薄暗い小屋の中だった。体は毛布に包まれ、温められている。

「気が付いた?」
頭の後ろから声が聞こえて来る。

「あたしより体温が下がるなんて……危なかったよ。」

この声は恐らく桔梗だろう。腕が俺の前へと回されている。
口の中が何故か少し甘い。

「一応何か食べさせなきゃならなかったから君の背嚢の中から食べ物を貰って口移しさせてもらったよ。」
「そうか。済まないな。」

この甘さは携帯食料のものか。
まぁ今更キスぐらいでどうこう言うほどウブじゃ……

「実はあたしのファーストキスだったりして。」
「ぶふぅ!?」

想像斜め上でしたとさ。

「責任取っちゃう〜?♪」
「まぁ、初めてだったのは悪かったが。そこで責任問題になるほどじゃないだろ。」
「え〜?女の子にとって結構重要な意味なんだよ?これ。」

この空気は、ヤバい。

「あ、立たないほうがいいよ。服脱がして全裸だから。」

天井には吊り下げられた俺の服と、彼女の服。

「お前もまっぱかい。」
「温め合うなら人肌が一番ってね♪」
「お前平均体温低いだろうが。」

今はむしろ体温を奪われている気がするぞ。

「ねぇ、動いたほうが体温上がるって言うよね?」
「そうだな。俺はこのまま少し寝たいのだが。」

こら、下半身に手を伸ばすな。

「寝たら死んじゃうよ〜?というか私が死なせる。」
「物騒だなあんた!?」

思わず起き上がって彼女を睨みつける。
真っ白な肌と、形のよい乳房が炎の光で照らされる。

「いやん♪」

前の方を両腕で隠す彼女。しかし、隠す気ゼロだ。

「はぁ……寝る。」

彼女に背を向けて再び体を横たえる。
これ以上相手にしたらもっとマズい事になりそうだ。

「何言ってるの?寝かせないよ?」

そう言うと俺を仰向けにして上にのしかかって来た。

「寝たら死ぬぞー!なんてね♪」
「凍え死ぬのと吸い殺されるのはどっちが先だ?」
「どっちでしょ〜?ん……」

いたずらっぽく笑みを浮かべて口付けをされる。少し冷たいが、そこから体が火照ってくる。

「というか女の子がそんなに簡単に体を明け渡すものじゃありません。はしたないぞ?」
「なにぃ?ビビってるの〜?」

頬を両手で引き伸ばされる。なんだかチャルニ寄りの奴だなぁ。

「別に体を動かして温める方法は情事じゃなくてもいいだろうに。」
「へぇ、例えば?」

俺は彼女の両脇に腕を通して後ろで手を組む。

「寝技の練習とか。」
「結局はえっちぃ事じゃあって痛い痛いほんとうに痛い!」

ベアハッグ炸裂。ギリギリと絞めつけてやる。

「アホな事言ってないでこのままでいいだろ。それに体力消耗したくない。」
「う〜……それじゃあ収まりがつかないんだってば……。」

彼女がもぞもぞと身を捩らせる。

「じゃあせめて体勢変えてよ。これじゃ自由に動けないし。」

組んだ腕を解くと、上腕の部分に彼女の頭を乗せて抱き込んでやる。

「んふふ……胸板おっきぃ〜♪」

額をぐりぐりと押し付けてくる彼女。

「くすぐったいからヤメレ。」

腕で頭を締め上げて動きを固定する。

「うげ、ギブギブ!」

肩をタップしてきたので離してやる。

「なんだか扱いが慣れてない〜?ドキドキしているくせに表情も態度も変わらないぞ〜?」
「似たようなことしてくる奴がいるからな。そのあたりで学習済みだ。」
「む〜……こういう時に別の女の子の話をするのはズルいぞ〜」

鎖骨あたりに吸い付かれ、軽く噛み付かれる。
彼女が口を離した後には丸く赤い噛痕がついていた。

「にへへ……マーキングしちゃった♪」
「お前という奴は……」

照れ隠しに頭をぐしゃぐしゃと撫で回す。短く、さらさらとした手触りが癖になりそうだ。

「こら〜!そうやってすぐ雰囲気壊す〜!」
「そう簡単に変な雰囲気にしてたまるか。大人しくしてろ。」

きつすぎないように彼女を抱きしめて動きを止める。

「…………」

ようやく大人しくなったようだ。外からは轟々と吹雪の音が鳴り響き、焚き火からは薪が爆ぜる静かな音が聞こえて来る。

「…………っ」
「それにしても……いつ止むんだ?この吹雪は。」

寒いのだろうか。彼女が時々震えている。
少し抱きしめる腕に力を込める。

「ん…………っ」

しかし、どこか様子がおかしい……

<くちゅ>

「…………おいコラ。」
「あはぁ……バレた?」

こいつ、自慰してやがった。毛布の中からは小さな水音が絶え間なく聞こえて来る。

「こんなに濃い男の人の匂いを嗅いでいたら我慢できないよ……」

密着しているが故に見えないが、それが余計にやらしい。

「別に触って欲しいとか言わないからさぁ……イくまではこうしててよ……。」

彼女が顔を俺の胸に押し付けてくる。その感触に、濡れたものが混じっていた。

「まぁ別にかまわ……ん?」

<ゴゴゴゴゴゴ>

何か地鳴りのような音が聞こえて来る。
雪山、新雪、地鳴り……まさか!

「すぐにここを出るぞ!このままじゃマズい!」
「へ!?何!?」

俺は彼女を引っ張り起こしてすぐに服を着ると、外へと飛び出す。

「やっべぇ……!」

吹雪はだいぶおさまっていたが、山頂の方へ視線を向け、愕然とする。巨大な白い波がこちらへと迫ってくる。雪崩だ。
桔梗も服を着て外へと出てきて、同じように雪崩を見て真っ青になる。

「あわわ……あたしはともかく君があんなのに巻き込まれたら死んじゃうよ!」

歩いて下山してもまず間に合わない。何か雪の上を滑るように移動できるものが……。

「桔梗、今から俺の言う物を氷で作れるか?」



「急ごしらえだから強度には期待しないでよ?」
「十分!さっさと滑り降りるぞ!」

彼女に作ってもらったのは氷でできたスノーボードだ。上面と足を氷で接着して固定させ、下面を常に溶けるよう調整したものだ。

「掴まれ!一気に滑り降りるぞ!」

彼女は俺の後ろに飛び乗り、俺の肩を掴む。斜面と平行にするようにボードを動かし、滑走を始める。

「うわ!早!早すぎて怖!」

木々を縫うようにして斜面を滑り降りる。背後からは雪崩が迫ってくる。残りは1000メートル程度だろうか。
前方に若干盛り上がっている場所を発見。迂回している暇は……無い!

「しっかり掴まってろよ!飛ぶぞ!」
「うぇゑ!?と、飛ぶって!?」

そのまま斜面を駆け上がり、跳躍。

「ダブル・バック・フリップだ!」
「飛ばな……きゃぁぁぁあああああ!」

背面宙返り2回転。着地もうまく決まった。

「イーヤッハァァァァアアアア!」
「うぅ………………」

森林地帯を抜け、広いゲレンデ状の場所へと出る。麓の村はもうすぐだ。
乱立する樹木に進行を阻まれ、雪崩はすっかりその勢いをなくしていた。

「よーし!あとは滑り降りるだけだ!」
「ちょっと……チビったかも……。」



〜清酒の里 青松村〜
ボードを進行方向と垂直にしてブレーキを掛ける。雪の飛沫を飛ばしながら、停止した。

「とうちゃ〜く!なかなかスリリングだったな?」
「死ぬかと思った……。」

彼女の股間が何故か濡れている。

「お前滑りながら興奮してたのかよ。度し難い変態だな。」
「これはおもらし!本当に怖かったんだからね!?」

辺りを沈黙が支配する。降雪が収まり、屋根の上の雪を下ろそうと家から出てきた人もちらほらと見かける中、彼女の叫びが村の中に反響した。

「怖かったのはわかるが恐ろしく恥ずかしい事をカミングアウトしているぞ?お前。」
「……ぁ”」

色白の彼女の顔からさらに血の気が引いていき、数瞬のうちに真っ赤になる。

「この…………」

彼女が顔を伏せてプルプルと震えている。何かマズイ予感が……。

「馬鹿ぁぁぁぁああああ!」

<ドゴォォオオオオ!>

彼女のアッパーカットで俺は3メートルほど宙を舞い、集めてあった雪の中に頭から突っ込んだ。



〜青松村 村長の家〜
「へぇっくし!」

あの後、村人の手によって(桔梗はそのままどこかへと行ってしまった)救出された俺は村長の家で暖をとっていた。
村長は俺達が帰ってきた時の為に村名物の酒粕汁(酒粕をいれた味噌味の鍋)をこしらえていてくれた。
俺はそれをすすりながら今回の顛末を報告する。

「あの役人様がのぉ……にわかには信じられんのじゃが……」
「まぁそう言うだろうと思ってな。その天候制御装置の説明書だ。」

俺はバックパックから例の取説を出して村長に渡す。大陸の言語だが、挿絵で大体のことはわかるはずだ。

「大陸の文字は読めんが……なんとなくこれが原因だというのは分かる気がするの……。挿絵にも大雪やら干ばつやらの絵が書かれておるしの。」

村長は俺へ説明書を渡すと、納得がいったように頷いた。

「それじゃ、この依頼は達成って事でいいな。報酬はここでか?」
「うむ。これが報酬の金銭と……。」

村長は引き戸の中から巾着―おそらく村人同士で出し合ったのだろう―と、酒瓶を出した。

「この村名産の清酒『雪解け』じゃ。領主様にも献上する銘酒じゃよ。」

透明なガラスの瓶に入っているそれは透き通るような無色透明。サクラあたりが喜びそうだな。やらないけど。

「ありがたく頂戴しよう。ところで……今回の事件は領主も絡んでいそうなんだがその辺はどうするんだ?」
「そうですな……わしらが直訴をしても取り合ってもらえんじゃろう。この件に関しては誰かを都に向かわせて領主様の身辺調査を頼んでみるつもりですじゃ。」

これなら先に仕事が取り付けられそうだ。

「ここの領主ってのは誰なんだ?近いなら潜入が得意そうな奴に頼んでみるけど……。」
「ここはまだ江戸崎領の中ですじゃ。江戸崎永之助氏が領主ですな。」
「……なんだって?」

事態は予想以上に複雑に入り組んでいるようだ。
領主の命令でここへ来た役人と名乗る魔術師。
研究所の中のガーディアンと天候制御装置。
帰ったらもう少し状況を整理する必要がありそうだ。



帰るために村長の家から出ると、桔梗が外で待っていた。
着替えてきたのか、彼女は着物姿だった。

「似合っているじゃないか。さっきの格好よりずっといいぜ?」
「……」

しかし彼女はブスっとして頬をふくらませている。

「からかったことがそんなに腹が立ったのか?そりゃ悪かった。ごめんよ。」

しかし彼女の機嫌は直らない。
尚も恨みがましい目でこちらを睨みつけてくる。

「あ〜……うん、本当に済まなかった。本気で怖がらせたならあやま

話している途中で桔梗に襟首を掴まれてぐいぐいと引っ張られる。

「お、おい……」
「…………っ!」

研究所でも分かっていた事だが、彼女は意外と腕力が強い。
当然人の身である俺が抗える筈もなく、ずるずるとどこかに引き摺られていく。



〜桔梗の家〜

引き摺られてきたのは一軒の家だった。
表札に氷川と書かれていた気がする。

「おい、桔梗。一体何を……」

またも何かを言いかけた所で無理矢理唇を奪われる。
しかも今度は触れ合う程度ではなく貪られるようにだ。

「んぐっ!?む、うぶっ!ひ、ひひょうぐっ!」
「じゅ、んぶ!じゅる!」

そのまま床に押し倒されるなり彼女は俺の衣服を剥ぎ取り始めた。
まさかこの展開は……

「ちょ、ま、落ち着けって!」
「やだ!このまま離したら君どこかへ帰っちゃう!」

そう言うと彼女は俺のモノを掴んで乱暴にしごき始めた。
当然痛いだけで立つはずなどなく……

「桔梗!」
「っ!」

彼女の体を抱きしめて無理矢理動きを止める。
まったく……何を焦っていると言うんだ。

「落ち着け、な?夕方まではここにいてやるから。」
「……うん。」



「何でこんな事を?」
「…………あたし、そんなに魅力無いかな。」

そう言うと彼女はぽつぽつと話し出した。
かなり声が小さいのでよく耳を済ませないと聞こえないぐらいだ。

「山小屋の時さ、あたし本当にドキドキしてたんだよ。アタシが気付かないような事にも気づいて、怖いもの知らずで、危険な状況も簡単に乗り越えちゃう。そんな君がヒーローみたいに見えて。」

「そんな人があたしの物凄く近くにいてさ。無防備に寝ていて、正直何度寝込みを襲おうかと考えたかわからないよ。なのに君は……あたしに大して何もすることなく、どぎまぎもせずにいなしているだけだった……。」

「悔しかったよ……寂しかったよ……こんなにぬくもりが近くにあるのに、届かない。いくら人肌の温かさを感じても心が寒いままだった。」

彼女は俺の目を真っ直ぐ見据えてくる。逸らすことなどできない。ここで目を逸らすのは、逃げだ。

「もし、さ。あたしに少しでも魅力を感じているなら、抱いてよ。凄く……凄く寒いよ……」

俺が出来る返答なんて一つぐらいしか無かったのだ。
何も言わずに、俺は彼女の唇を塞いだ。



「んっ……ふ……ちゅ、んん……」

彼女を仰向けに寝かせ、唇を塞ぎながら首、鎖骨、胸元へと手を撫で付けていく。
張りのあるお椀型の乳房を優しく揉むと、彼女はピクリと身を震わせた。

「少し……冷たいな。大丈夫か?」
「大丈夫。でも、もっと温めて欲しいな……」

胸の先端に舌をゆっくりと這わせる。硬く尖ったそれは舌が触れるたびにヒクヒクと小さく震えていた。

「ぁ、は……いいよぉ……もっとちょうだい……」

唇で挟んで軽く押し潰す。それだけで彼女は甘い声を漏らした。
気を良くして今度は彼女の下の割れ目に指を添わせる。
手に当たる感触に、ふさふさとした毛の感触は無い。

「……生えてないのか。」
「あぅ……こういうの、嫌い?」

返事とばかりに僅かな湿り気を帯びた秘裂をなぞり上げる。
かなり敏感な方らしく、おとがいを逸らして彼女の肢体が震えた

「ぁぁぁぁ……♪」

すべすべとしたお腹にキスの雨を降らせる。
唇が触れるたびに彼女が体をくねらせる。

「綺麗な肌だ。いつまでも触っていたくなるな。」
「だったらこの村に永住……っしちゃえば?いつでも触らせてあげるよ。」
「魅力的な提案だが、遠慮しておく。生憎と一所に留まれない理由があるからな。」

俺の返答が気に入らなかったらしく、彼女は可愛く唇を尖らせる。
ご機嫌斜めの氷姫の機嫌を直すべく深く口付けを交わす。

「ズルイよ……」
「あぁ、自覚はしているつもりだ。」

軽く触れ続けている秘裂が十分な粘性を帯びてきた。
おそらく準備は整っただろう。

「そろそろ大丈夫そうだな。」
「大丈夫って何が……ぁ……」

ジーンズから取り出したソレを見て彼女の頬に赤みが差す。
少し辛いくらい張り詰めた俺のモノは天に向かってそびえ立っていた。
……まぁ、そびえ立つ程無いかもしれないけどさ。

「あ、あのさ、あたし初めてだからその」
「大丈夫だ、任せておけ。」

やはり初めては不安な物なのだろう。
その不安を和らげるべく彼女の髪を撫でながらモノを片手で支えつつ、彼女の中に沈めて行く。
入って少しの所に柔らかな抵抗を感じてそこで止める。

「行くぞ。」
「う、うん……」

力を込めて一気に突き破る。
プツリという感覚と共にさらに彼女の奥へと進んでいった。

「っ……!いた……!」

ぬるりという感触が肉棒の周りに纏わり付く。
おそらくは愛液だけではなく、血も付いているのだろう。

「一応……これで全部入った。大丈夫か?」
「うん……まだ少しジンジンするけど……平気。」

彼女の中は不思議な感覚だった。
燃えるように熱い感じなのに、伝わってくる感覚はひんやりとしている。
なんだか頭が混乱しそうだ。

「少し動くぞ。力を抜いてろ。」
「えぇ?力を抜くって……これでいて結構辛いものがあるんだけど……」
「深呼吸してみろ。少しはマシになるはずだ。」

彼女は言われた通りに深呼吸をする。
噛み潰すような締め付けが少し緩み、若干動かしやすくなった。
ゆっくりとピストン運動を開始する。

「ぁ……か……ぅ……」
「っ……!もう少し我慢だ。直に……慣れる。」

少しずつ動きがスムーズになってきた。ゆっくりと、しかし流れるような動作で前後に動く。
いきなり変な動きをすると圧迫感を感じるだけだろうから、特別な動きはしない。

「ん……は……ぁん……」

彼女の声に甘さが混じり始めた。元々感度が高いほうなのが幸いしたのか慣れるのが早い。
当てなく彷徨っていた彼女の手を取って握りしめると、彼女がうっすらと微笑んだ。

「ん……んく……ふふ……♪」
「どうした?」

握り合わせた手を自分の頬まで持ってくるとそれに頬ずりをする。
物凄く幸せそうだ。

「暖かくて……気持よくて……幸せ……」
「……そうか。」

人の命を何の躊躇いもなく奪えるような俺が、一人の少女に幸せを与えているのか、と軽く自虐的な思考が頭を過ぎる。
まぁ今はそういう事を考えるべき場面では無いだろう。
今は目の前の少女に精一杯の愛情を注いでやるだけだ。

「……桔梗……っ!」
「はぁ……んっ……何……?」
「どうしても……俺から離れたくないなら……っは……追いかけて来い……!」
「追いかけてって……」
「きちんと訓練を……っ……積んで……冒険者になって……俺の所まで登ってこい……」
「…………」

今の彼女は寄る辺が無く、偶然知り合った俺にそれを見い出しているに過ぎない。
ならば、その想いを昇華させてやる。

「俺には……帰らなけりゃならない場所があるが……はぁ……はぁ……そこに帰るまでは待ってやる。だから……追いついて来い!」
「うん……うん……!絶対、絶対に追いついてみせるから!」

ピストンの速度を極限まで早くする。
ぶつかり合う音が家の中に響き渡り、冷たいはずの彼女と俺が熱気に包まれる。

「イクぞ……桔梗……!受け止めろ……!」
「うん、来て……!熱いの、一杯ちょうだい……!」

熱く溜まった滾りを彼女の中で爆発させる。
ビクビクと痙攣しながら彼女の中に精を流し込む。

「ぁ……は……熱い……きもちいい……♪」
「っ……く……!」

全て撃ち尽くし、彼女の脇へと倒れ込む。
そんな俺に彼女は愛おしげに擦り寄ってきた。

「待ってて……必ず追いつくから。」
「おう、さっさと追いついて来い。待ってるぜ。」







〜華の都 江戸崎〜
辺りの景色が歪んだ数瞬後、俺は江戸崎の旅の館の中に転送されていた。

「さて……報告が終わったらタマの所に寄っておくか。」

受付にポータルカードを返却し、ギルドでひと通り報告した後に鍛冶屋通りのタマの工房へと向かった。

〜工房『珠家』〜

「戻ったぞ〜!」

工房の戸を開けると中は……

「おう〜、おかえりぃ〜」

宴会場になっていた。
座敷には酒瓶がいくつも転がり、ちゃぶ台の上には肴が食い散らかされている。
サクラやアーサー、リュシーやアイシャ、エレミアにサフィアまでいる。

「お前らこんな所で何やってんだ?」
「いやぁ〜……材料の仕入れの帰りにちょっと酒場に寄ったら意気投合しちゃってねぇ。そのまま二次会〜。にゃははは」

どうやらこいつらも仕事の後に酒場で一杯やってたらしい。
そこでタマも混ざっていい感じになってしまったと。

「これは……メンテナンス頼んでも大丈夫なのか?」
「へいきらってぇ〜。ほらこっちによこしなぁ〜。」

ものすごく不安だ。

「よう。仕事の首尾はどうだった?」
「滞り無く終わったぞ。特に主だった襲撃もなく平和そのものだった。」

アーサーが大まかにクエストの成否を教えてくれた。
サクラとリュシーはなかなか歓迎されていたこと、アーサーは特に剣を振ることもなくて暇だった事。エレミアは剣を使うまでもなくて不完全燃焼だった事などだ。
アイシャはというと……。

「なかなか払いが良かったわ。持っていった物の質が良かったみたい。」

ずっしりと中身が詰まった革袋をちゃぶ台の上に乗せた。

「一番危険な目にあったのは俺かい……。」
「何があったんだい?」

俺は掻い摘んで青松村での出来事を報告した。



「と、言うわけだ。」

役人もどきの事、ガーディアンと気象制御装置をひと通り話し、帰りのスノーボードの下りの事を話す頃には全員が絶句していた。

「何で生きてるの?」
「何で死んで当然みたいな話になってるんだよ!?」

アイシャのあんまりな発言に俺が憤る。まぁ確かに自分でも生きているのが不思議なくらいだが。

「それより問題は公職の者が何かの実験のようなものを行っていたという事だ。その施設のガーディアンとやらも気になる。」

唯一まともな受け答えができるアーサーが疑問点を整理する。
さすがリーダー役だ。

「ゴーレムの類ではなかったのだな?」
「あぁ。少なくとも動力は全く別物だった。」

バックパックからガーディアンに搭載されていた石を取り出す。
今もうす青く発光しているそれはまるで放射性物質か何かのようであった。

「こいつが何なのかはまだ分からない。これで動いていたってことは間違いない筈だけどな。」
「なんだかうっすらと魔力みたいな気配を感じますねぇ〜……なんでしょ〜?」

サフィアが俺の後ろからのしかかって覗き込む。
あぁ、サフィアさん。何か当たってますよ。というかこいつは酔うと誰彼構わず絡むのか。

「しかし現魔王の魔力とは波長が違う……というより全く別物だな。色が無いというのが一番しっくりと来る感じだ。」

石をコツコツと指先でつつき回しながら思案顔になるアーサー。
やはりこの不可思議物質が気になるようだ。

「やはりわからん。専門家に見せたほうが早そうだ。」
「気になる事と言えば領主の動きが遅かった事もあるわね。確か行動が早いって事で有名な筈だけど。」

そう、現江戸崎城の領主である江戸崎栄之助氏は大陸文化をいち早く取り込み、親魔物派宣言をした人物だ。
その御蔭で冒険者ギルドやシーフギルド、旅の館なども設置されている。
庶民からも名君と名高い筈なのだが……。

「んな事より今は呑もうぜぇ?仕事が終わってからも仕事の話なんてしたかぁないよ。」

真っ赤な顔で―いや、元から赤かったか―アーサーに絡むサクラ。
その矛先が今度は俺へと向く。

「それよかお前さんの荷物からいい匂いがするんだが……何貰ってきたんだよ?」

まずい。このウワバミに見つかったらあっという間に無くなる。

「な、なにも持って――」
「うを!?『雪解け』じゃねーか!?こんないい酒をしまっておくなんて勿体無い!俺が飲む!」

あぁ、ひと足遅かった。
憐れ銘酒よ、お前の生命は今晩限りだ。合掌。

「なんですか〜?おいしいおさけ〜?」

ベロンベロンに酔っ払ったリュシーの目が怪しく光る。おまえもか。

「俺が貰ってきたんだから一口ぐらいは飲ませろよ……ってもう無いし!?お前らどんだけ早く飲んだんだよ!?」
「「うめ〜!」」
「タマー!タマー!仔鵺と虎牙鎚よこせ!こいつらブチのめす!」
「お〜やれやれ〜」

タマが虎牙鎚と仔鵺をこちらに放り投げたのでキャッチ。

「てめぇらそこに直りやが……なんじゃこりゃぁぁぁぁああああ!?」

虎牙鎚と仔鵺が造花の装飾だらけになってやがる!

「仔鵺&虎牙鎚まーくつー!フローラルバージョーン!にゃははは!」
「それでも武器には代わりねぇ!少し痛い目を見てもらう!」

虎牙鎚をサクラに向けて発砲。鬼ならこの程度じゃ痛くもかゆくも……

<ポンッポンッポンッ>

出てきたのはなぜか薔薇の造花。

「お〜!宴会芸か!気がきくねぇあんちゃん!」
「タマァァァアアアアアアアア!」
「にゃはははははははは!」

酔いどれ共の夜は過ぎていく……


エレミアはどうしたかって?
「───────────」
完全に酔いつぶれてハナからノックダウンしていたよ。
13/02/25 23:31更新 / テラー
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■作者メッセージ
〜あとがき〜
まずは一言。 なげぇ!
まさかここまで長くなるとは思いませんでした。なんと堂々の二万文字超え。
二百字詰め原稿用紙100枚。学校の反省文ですらこんなに書かないぞ。

実はこのジパング編、雪女を出したかったが故に書いた物だったりします。
ジパングの魔物(妖怪)の出演が少ないのもこのへんが起因しています。
あとは伏線をちょろちょろと散りばめておいて後で回収したり……。

現代風の雪女って多分こんな感じなのだろうなぁ、というのが桔梗です。
都会に憧れる田舎娘をイメージ。でも戦い方はFFのティファ。
彼女のグローブは氷龍の皮から作られた物です。故に量産品の刀程度では切り裂くことが出来ない……という設定。しかし冷気で刀を砕くというのはやり過ぎた気がしなくもない。

アルテアの新技『ゲンブジャケット』でピンと来た人も多いはず。そう、『玄武甲弾』です。
尤も腕を飛ばすわけにもいきませんから圧縮された空気を飛ばす大砲という扱いにしてあります。
『タイグレスハウル』も同じく『白虎咬』から。妙にAのあの人的な武器です。

恒例の感想返信。この場を借りて謝辞を申し上げます。

>>おいちゃん
不気味、ギャグ、ホラーを混ぜあわせたモブキャラを出そう!
となったら人間じゃなくなってしまった件。どうしてこうなったし。
旦那の無双はアレだ。愛だよ、愛。

>>銀さん
おたふくの出演はこれでおしまい。あまり出し過ぎるとアルテアが過労で倒れます故……。
これ以上ロリに手を出すと戻れないところまで行ってしまいそうなので自粛。少し危ないけど。

>>ネームレスさん
彼女の登場は桃姫的なポジションです。拐われるだけでなく天然男殺しでアルテアを苦しめますが……ま、いいか。

>>『エックス』さん
出したはいいけれどジパングと大陸産の魔物の比率がおかしいことに……ジパングの筈なのに……
彼女は現在ジパングへ行くための方策をミミック達と相談中。
合流はもう少し先……?

「讃岐という言葉はないが釜揚げぶっかけうどんはあったな。……食いたくないけど。」
「魔物用のメニューでケフィア(婉曲表現)がかかっていたそうです。匂いで何も食べられなくなったとか……」

>>黒チビさん
まさかのラプラスファンの方でしたか。
しかし江戸崎編の終盤近くまで登場予定が……スミマセン

>>通りすがりの鯛焼き屋さん
お初です〜。気に入っていただけた様でなによりです。
確かにしぶといですけど前述した通り登場はおしまいです。流石に魔物でもないものを何度も出すことはできんので……w
仕事人の5人も出ませんよwもしかしたら……どこかにいるかもしれませんけどね。

>>???さん
古来より便利な言葉がありまして、それさえあれば例え少しばかり無茶な展開になっても「まぁしかたないな」程度で済ませられるものがあります。
『ご都合主義』
そう、江戸崎編ではE-クリーチャーは出てきません。あしからず。

次回はいつも通り来週の土曜日です。
ツンデレかぁいいよぉ!おもちかえりぃ!な予感。

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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33