読切小説
[TOP]
ほかほか♡ホワイトホーンさん

 冬の山登りというのは、ふとした拍子で遭難や重大な事故を起こす危険なもの。
 でも登りたくなっちゃうのが人間の馬鹿なところであった。

「で、吹雪で降りれなくなるなんてな……ハハ……」

 馬鹿でした。
 ちょうどよく山小屋があったのが幸いして、吹雪が視界を覆い尽くして立ち往生してしまう前に小屋の中へと避難することができた。
 だけど、この吹雪が続く限りは山を降りることすらできない。参った参った。

 山小屋の中には乾燥した薪と暖炉があって、いつでも避難して火を起こせるようにされていた。おかげで凍死する恐れはまずない。食料に関しても、手持ちのもの以外にも山小屋に置かれた保存食があれば二日は持つだろう。
 山の天気はころころ変わるというのは本当で、吹雪が止んですぐまた吹雪が吹いたりもする。なので、吹雪が止んだからと油断してすぐ降りるのは危ない。自分の命を大切にしたい時のベストな選択肢は、レンジャーが来て助けてくれるのを待つだけだったりする。
 見たところこの山小屋は頻繁に物資が補充されているようだし、あんまり絶望的でもなかった。だからといって安心できてるわけでもない。救助が来ることを祈るしかないわけだし。


 そうして火の面倒を見ながら山登りを反省していると、乱暴に扉が開かれ、

「遭難者は何人いますかっ!?」
「……おおう」

 吹き荒ぶ雪を背後に、美しい女性――いいや、魔物娘が室内へ声を張り上げた。
 上半身はもこもことした防寒具に身を包み、下半身は長毛でふかふかの有蹄類。いわゆる半人半獣というやつ。優しさと力強さが同居する毅然とした佇まいもそうだけど、何よりその顔立ちが美人そのものだった。すっと凛々しく冴えた目に蒼い瞳に、艶々として柔らかそうな唇が大人の色香を演出していて、寒さからか赤くなっている鼻が少し可愛らしい。さらさらの白いロングヘアに雪が絡まっていて、その上には立派な鹿角が構えていた。
 自分にも知識はある。彼女は魔物娘の中でも人間に友好的な、ホワイトホーンという種族だ。

「……お一人ですか?」

 そうしてじろじろ彼女を眺めていると、確認するように尋ねてきた。いかん、見惚れてて返事するの忘れてた。魔物娘はみんな美人揃いなせいでついつい目が奪われてしまう。
 一人です、と答えつつ外に出る支度を始める。というのも、

「なら、ささっと麓まで運んでいきます。お説教はその後でしますからね」

 彼女たちホワイトホーンはそれぞれ受け持ちの山小屋を巡回しているレンジャーなのだ。
 人間に友好的というのはこういうことで、ホワイトホーンはよく遭難した人間を救助している。反魔物思想の人間ですらホワイトホーンだけはお目こぼしするくらいに人間との関係が深い。
 中にはホワイトホーンと結婚する人間もいて、遭難者を救助するネットワークは広かったりする。そのせいで山登りは安全なレジャーだ、と誤解されることも。避難できる場所もなく遭難してしまうと死ぬ確率がかなり高いので、救助されやすくても危険なものは危険だ。いくら文明が発展しようとも山の危険さは変わらない、気がする。たぶん。

 火の始末をして山小屋に謝礼を残し、外に出てホワイトホーンさんの背中に乗せてもらう。
 視点が高くてなんかちょっと楽しい。……なんて考えてると両手を引っ張られて、がっしりとホワイトホーンさんのお腹を抱えさせられる。

「吹雪の中を突っ切ります。しっかり掴まってないと落ちますからね?ちゃんと防寒具全部着込んでますか?毛布があるならそれも羽織るべきです。帽子は破れてませんか?耳まですっぽり被って守ってください。それから、――――」
「は、はい」

 ……手慣れた様子で一つ一つ注意をしてくれる。お母さんかよ。
 言われた通りに防寒を完璧にして、改めてホワイトホーンさんのお腹に掴まる。
 これで帰れる。そう思うと、現金だがほっと安心してしまった。

「さあ、行きますよ。少々手荒になりますから、気を強く持ってください」
「安全運転!安全運転で!!」

 すっごい不穏なこと言ってるんだが!?


 ――で、そうしてホワイトホーンさんの背中で揺られながら下山し始めて。
 魔物娘なだけあって、雪や強風で足を取られるようなこともなくがしがしと降りていく。ルートは完璧に把握しているのか、吹雪の中では視界が全く効かないはずなのに歩みに迷いがない。人間や馬なら確実に疲労で動けなくなると予想できるハイペースさなのに、彼女に堪えた様子はすこしも窺えない。
 顔や身体は人間でも、基本的な部分は人間より遥かに強靭なんだ。たくさん防寒具を着込んでいる自分より、もこもこの防寒具一枚だけの彼女のほうが暖かそうに見える。
 まあ、そうか。自前で毛皮を持っているんだから。こういう場面では純粋に羨ましく思ってしまう。せめてものお礼にと彼女の肩や毛皮につもる雪を払ってやり、そうしてる最中にできた防寒具の隙間に差し込んでくる冷気で身震いする。

「寒いですか?」
「え?」
「吹雪の勢いが強くなっています。人間さんの基準で言えば寒いでしょう?もっとくっついてください、風よけになりますので」
「あ、ありがとうございます」

 ホワイトホーンさんも言ってるように、どうも吹雪がどんどん勢いを増しているようだった。今でもばしばしと吹き付けてくる雪で痛くて全身に青痣ができるんじゃないかというほどなのに。帽子越しに聞こえる風の音に不吉なものを感じて、またも身体がぶるっと震える。さっきの安心はどこへやら。
 お言葉に甘えて、ぐっと抱きしめて身体を彼女に預けてみる。

「……暖かい……」
「ふふっ」

 思わず漏らした言葉に、ホワイトホーンさんは微笑む。
 暖かい。これじゃまるで、彼女の身体が熱を放って……いや、まるで、じゃない。本当に彼女の身体が発熱している。防寒具越しにじわじわと染み入ってくる彼女の体温が、冷え切った手足や顔を柔らかく融かしてくる。
 そうして凍り付きそうだった血管が再度熱を持ったことで循環し始め、もっと体が暖かくなっていく。周囲全方位が雪まみれなのに、暖炉の前で寝っ転がっている気分だ。

「驚きましたか?これだけ発熱すれば人間さんも暖かいですよね。私たちホワイトホーンは遭難した人間さんを救助する魔物娘なので、こういうこともできるのです。下山する最中に凍死なんて、冗談じゃないでしょう?」

 わずかに首をこちらに向けて、紅潮した頬を緩ませて得意げにそう言う。
 余裕たっぷりのホワイトホーンという存在が心強すぎて、吹雪なんて危険な状況だというのに安堵の息を深く吐いてしまう。聞こえるのは風がびゅうびゅうと過ぎ去っていく音と、彼女が雪を踏みしめる蹄の音、そして二人分のどきどきという脈動。
 ……なんか、安心して余裕が出てきたせいで、今更この状況を意識し始めてしまう。

「ふっ……ふっ」

 山を歩くのはかなり重労働だ。山を下るとなれば、殊更に。加えてロケーションも最悪。ホワイトホーンさんであっても骨が折れるのか、少し息が荒くなってきた。唇から漏れる白い吐息は熱が篭っていて、その頬を伝っている汗もあって……色っぽさを感じる。
 それに、彼女のお腹に両腕を回しているせいで気になっているのが……腕の上に乗って弾んでいる、防寒具越しでも強調できる大きさのバスト。ホワイトホーンさんが足を進める度にぷるんぷるんと腕に柔らかさを伝えてきて、悶々としてしまう。
 いや、さすがにそれは……。と思いながら、しかし男はアホなものなのだ。腕についた雪を払いながら、偶然……そう、偶然。たまたま、ホワイトホーンさんの胸を下から持ち上げるように触ってしまう。

「ひゃあっ!?」
「す、すいません」

 なんて白々しい謝罪だと自分でも思う。やったぜ。
 彼女が驚いたためにすぐ手を離してしまったけれど、その一瞬でも彼女の胸は素晴らしかった。弛みや垂れがなく、柔らかいながらもしっかりと張りがある。防寒具越しなので十全にわかるわけではないが、それでも重さと大きさはかなりのものだ。片手では到底覆い尽くせないだろう。
 乳というのは古今東西の男の誰でもが好きなものであり、好みの大小はあれど嫌いなものは恐らくいないはずだ。男同士で乳の話をすれば、酒はいくらあっても足りなくなる。こんな美人の素敵な乳を一揉みできた事実だけで山に登った甲斐はあったというものだ。
 ……と、バカなことを考えながら気持ち悪い笑顔を浮かべていると。

「……あ、あの」
「は、はい!ごめんなさい!調子乗りました!事故なんです!!」
「いえ、それはわかってますから。そうではなくて……この先、少々やっかいな道を通ります。たぶん、お腹に掴まったままだと危ないので……」
「そ、そうですか。ですよね。なんとかふんばります」
「それはそうしてほしいんですが、その……腕、というか手をですね、……胸に、やっていただけませんか?」

 は?
 思考が停止する。

「は、はしたないのはわかっています!でも本当に危ないので、お腹に腕を絡めて掴まるよりも、私の胸を掴むほうがより安定すると思いますから……」

 ホワイトホーンさんは赤い顔から蒸気を出しながら、お願いするようにこちらへ目配せする。その瞳に、何か妙なものが宿っているような……。
 彼女の違和感に気づく前に俺の思考は雲の上を突破していた。胸を!?合法的に!?タダでお触りオーケーなんですか!?お天気は最悪のブリザードだが我が世に春が来たってくらい心が晴天太陽燦々である。バッカス様も思わずシラフでガッツポーズするレベル。山、最高。おっぱい、最高。
 世の女性に知られたら軽蔑されそうな心情を出さないように気をつけつつ、人生で一番か二番に入る決め顔をしながらホワイトホーンさんに語りかける。

「私は貴女に助けていただいた立場ですから、指示であればそうしましょう。貴女のような誇り高いレンジャーに斯様な失礼は心苦しいですが、どうぞ私のことは気にせずになさってください」
「まあ……。そんな、誇り高いだなんて……」

 両頬を抑えて赤面するホワイトホーンさん。元から赤面してたな。
 許可が下りたというわけで、お言葉に甘えてご自慢のお胸を拝領させていただく。おお……手が沈み込んでいく。ふかふかとした胸を形容するなら、融解を始めた雪の塊のよう。弾力も柔らかさも同居して存在させるこれは、揉むことにやみつきになる。

「んっ……あ、くぅ……っ。で、では、そのまま掴まっててくださいっ……」

 鼻にかかった息を漏らしながら、歩みが再開される。
 そこからの道は彼女の言ったように勾配が急で、日の当たる場所なのか一部が氷になっているところもあった。これもやはり人間では降りることすらままならないだろうが、魔物娘であるホワイトホーンにとっては楽なものらしい。
 ただ、彼女の胸にしがみつく必要があるのかと言われれば、どうなんだろうか。たぶんこれならさっきまでと同じく腹に手を回していれば問題なさそうだ。ここで落ちたら彼女でも回収が面倒なのかもしれないし、落馬しない安全策のためなんだろうか、と両手の中で変形するおっぱいを堪能しながら考える。手を離すつもりはないです。
 胸全体をまさぐったり、押し込んだり引っ張ったり、様々に弄くって楽しむ。そのたびに彼女の吐息が甘く切なそうに漏れて、肩をわずかに身動ぎさせる。先端にこりこりとした硬さのあるものを感じ取り、指の腹で執拗に擦るとホワイトホーンさんの口から熱い息が深く吐き出される。
 ……熱い。熱いのだ。彼女の体から発されている暖かさが、いつの間にか熱さへと変わっていた。

「はぁーっ……はあぁっ……♡ ふぅ、んく、んふぅーっ……♡」

 聞き間違えようもない。今や彼女には色が混じっている。歩くペースは早くなり、そわそわと落ち着かない素振りでこちらの腕を手袋越しに撫で、しきりにこちらの方へ視線をちらちらと向ける。その瞳の奥底に、魔物の魔力――桃色のハートが渦巻いていた。




「ちゅ、んぷっ……んぁ、はっ、ちゅく……じゅちゅっ」

 熱湯と化した唾液が彼女の口から舌を伝って流れ込んでくるのを、ひな鳥のように躍起になって飲み下す。喉が疼き、体が疼き、下半身が疼く。それが彼女の魔力の塊なのだとわかっていても、彼女と唇を重ね合い足を絡め合うのを拒否することができない。
 ホワイトホーン種族が寄り合って形成されたレンジャーの寄宿舎に連れ込まれ、余計な手間などは煩わしいとばかりに防寒具を脱ぎ捨て肌を晒した彼女。口を挟む前に抱きしめられキスさせられ、彼女の身体に宿った情欲が一瞬でこっちにも移った。
 知ってたさ。魔物の身体をみだりに触ればこうなるなんてことは。ただちょっとそれを思い出すのが山を下りてからだっただけで。結局は俺の責任だし、悪い気もしてなかった。
 斯くしてベッドの上で向かい合って座りやみくもに口づけを男性とホワイトホーン。馴鹿の半身を横に倒して、人間である上半身はこちらへとしなだれかかっているのだ。押しつけられた生胸にも頭がくらりとする。

「ん、ちゅ、ちゅぅ……はぁ、脱いで、はやくぅ……♡」

 上気して蕩けた表情で、額を擦り合わせるほどの距離で甘く囁いてくる。
 着込んだ防寒具の下では汗がねっとりと肌を湿らせていて、若干ながら気持ち悪い。手早く一枚二枚三枚と脱いでいくたびに、部屋の中の熱量が上がっていく。それも彼女のせいだ。彼女の発情が強くなるごとに、彼女の熱が高まっていく。

「あぁっ……すごい……♡ なんて濃厚なオスの臭い……♡ はやく、はやくっ……!」

 俺が脱いだ服を受け取って鼻をこすりつけて深呼吸する、発情した美人。変態チックな振る舞いも美人がすれば妖艶で、それにいい臭いだというのは彼女だってそうだ。脂肪によってメリハリがついた白磁の肌を上から下へ流れる玉の汗。熱を放っているせいで汗をかいているのだろう。汗が霧散して凝縮されたメスの臭いがこっちの身体中を纏わり付いて本能を刺激してくる。
 最後の一枚まで躊躇いなく脱衣すれば、すでに血液が集まって堅くそそり立った雄棒が彼女の薄く引き締まった腹に身を預ける。小さく歓喜の声を上げる彼女の視線は、一も二もなく釘付けだった。

「も、もう、いいよね……挿入れていいですよねっ……? お互い裸でっ、発情してるんだから……レイプじゃない、合意、合意セックス……っ!」

 口の端からよだれを垂らし、人間部分の下半身の割れ目はぐちゃぐちゃに濡れそぼり、息も短く荒い。もはや交わることしか考えられない、なんて表情だ。視界の端では馴鹿のスリットからも粘性の強い体液が溢れ出していて、獣性をそそらせる。
 細くて日焼けの見られない白樺のような指がぐるりと男根を愛おしそうに撫で掴み、股の間へ誘い込む。指の一つ一つすらもが弱火ほどに熱を持って、炙られている気分になる。指で、だ。指でさえこれだというのなら、彼女の体内は。期待で喉が鳴り、頬が歪む。
 魔物はどの種族だって様々な方法で男を愉しませるのだが、膣は特に男を悦ばせるものだと聞く。それをこれから味わえるわけだ。しかも膣穴は二つあるわけで。やったことなんて山を登っただけなのにいいのだろうかと罪悪感さえ芽生えそうだ。
 亀頭が縦筋をかき分け、赤く腫れたその部分に鈴口を割り込ませる。

「こ、このまま押し込んでください……乱暴にお願いします……♡」
「経験あるんですか……? 処女ならゆっくりのほうが……」
「いいんですよ♡ もう身体中がうずうずしてて、はぁ、それに痛いくらいの方が気持ちいいはずですからぁ……♡ んちゅ、ちゅっちゅぅっ」

 寸前で働かせた、処女そうな割れ目から生じさせた彼女への気遣いは、甘えねだり縋り付いてきた彼女の口づけによって燃焼する。
 それがお望みならそうしてやろうとも。こっちももうセックスのことしか頭になくなってるんだ。このメスに男を突き立てたいという本能に灼かれ、彼女の身体を抱きしめながら腰を埋めていく。
 ずぐずぐと愛液で湿潤した初物の狭い洞を、赤熱した肉の鏃で無理に押し広げ沈める。

「ああぁぁあっ♡ 入って、はっ、はぁぁぁあああ♡♡ 深いぃっ♡」

 快感に犯されたメスの声をこぼしながらがくがくと小さな痙攣を起こし、しがみついてくる彼女。なにも気持ちいいのは彼女ばかりではなく、こちらだってそうだ。予想していた通り、いいやそれ以上に膣内の熱は凄絶だ。肉棒すべてを消化してしまうんじゃないかと錯覚する熱。火でも太陽でも編み出すことのできない、肉体を蕩けさせる独特な熱だ。それが棒の先から根元まで全てに絡ませて包み込んでくる。
 歯を食いしばって、精液を溢れさせないように堪える。総毛立つほどに気持ちいいものをここで終わらせたくはない。快感過ぎて恐怖を覚えるなんて、きっと魔物でしか味わえない快楽だ。
 それに、堪能したいと考えているのは俺だけじゃない。

「軽くイっちゃいましたぁ……♡」
「……始まったばかりですよ」
「はいぃ……っ♡ お願いします、人間さん……♡ このたくましいもので、がつがつきてください♡ 壊れるくらい、激しく♡ めちゃくちゃに突き上げてください……♡♡」

 なんて甘美なささやき。
 もちろん彼女のお望み通りに、腰に力を込めて抜き差しを開始する。
 まるごと抜けそうなほどに腰を引き、カリ首が膣口に引っかかるのを契機にして、反転力一杯に押し込む。

「んぎぃっ♡ はああああっ♡ 子宮ぅ、んはぁああっ♡ 子宮、潰れちゃいますっ♡」

 ばちゅんっ、ずちゅん、と肉と肉がぶつかり合う音に負けないくらいの恍惚とした嬌声。襲い来る雷のような快楽を振り払うように腰を引き絞って打ち付けてもいや増していく快楽に唸るような声しか出せないというのに、魔物娘だからか余裕そうだ。
 だがそれもいい。相手が余裕なほどにこちらが貪っている感覚も強くなる。力関係などは元から相手のほうが強い。今はこちらがその女体を好きにしている、というのが精神的に重要だ。互いに気持ちよければなんでもいいしな。
 肉棒で膣をかき分け愛液と先走りのシェイクを製造しながら、眼前でたゆたゆと弾む二つの丘に唇で食らいつく。

「ち、くびぃっ♡ んふぅっ、いいですよぉ♡ 吸い付いて、舐めて、噛んでもっ♡ はぁ、あああ♡ 気持ちいい、すごく気持ちいいです人間さんっ♡♡」

 がむしゃらに、熱に浮かされるままに、生殖という本能をぶつけ合う。血が滾り、脳が沸騰し、神経が焼け焦げ、世界の大きさがベッド上に集約される。
 ただ目の前のメスに自分の子どもを宿させたいという根源欲望。単純が故に、動きも浅ましくなる。腰を引けば埋めたくなり、腰を埋めれば腰を引きたくなる。大きな胸を乱暴したければそのようにし、キスを求めれば相手の唇と擦り合わせる。
 彼女の持つホワイトホーンという身体によって放出された魔力を含む熱のせいだとしても、それが悪いものだとでもいうのだろうか。たとえ自分が魔物にされたって構いやしない。昂ぶった熱量は余計な理性を焼却し本能のみを焼成するのだから。

「んちゅううっ、ふぅぅ♡ もっと、もっと突き刺してくださいっ♡ 身体の熱いのが止まらないんです♡ 求めすぎて、あああぁぁ♡ 小っちゃいの、止まんないんですよぉっ♡♡」

 小刻みな収縮を繰り返し、膣内を構成する細胞のすべてが独自に意思を持っているかのように無作為なうねりを発現させ、さらに本能を熱で精錬させようとしてくる。
 どんどん上り詰めていく白濁は今か今かと主張してきて、限界は寸前だった。ストロークはすでに長く深いものから短く浅いものに変化し、小さくごつごつと子宮の口を押し広げようと穂先で突いている。
 肌に纏わり付く汗の一粒ですら快楽になり、一秒が十秒に、一分が十分に感じられる。挿入してから二分か三分程度しか経っていないだろうに、彼女からもたらされる熱によって時間の感覚も弾け飛ぶ。
 意味のある言葉を口にすることだって放棄した。獣のような唸りが荒い息と合わさって、人間性が損なわれていく。半身が獣である彼女は、

「イキそうですか♡ イキそうですよねっ♡♡ 子宮が切なくてっ、もう膣内射精し以外は許せなくなってるんです♡♡ 出してっ、出してぇっ♡♡ あああ、ひぁぅ♡」

 いいや、結局彼女もメスの本能に染まっていた。余裕だってあるだろうが、孕みたいという欲望も同じくある。そう察して、思いっきり腰を引き、初めと似通った最後の一突きを放つ。
 子宮に叩きつけられる攻城槌。えぐりこむ鈴口。それによって、堰を切った射精が雪崩のごとくにぶちまけられる。

「はああああああああああああああっ♡♡ うぁあ、ふあああああああああっ♡♡」

 オスとメスの二つの絶頂。オスは精液を流し込み、メスはそれを受け止めるだけでなく膣の蠕動で残滓一つも許さない。膣全体で尿道を吸い上げている。
 吐精による快楽が背筋から脳へ落下し下半身を硬直させる。確実にメスを種付けするための密着状態、という考えじゃない。ただそうしたほうが気持ちいいから。至極単純で浅薄で本能的だけど、もはや頭の中にはそういったものしか残されていなかった。
 数度の痙攣では射精はまだまだ終わらない。魔物の魔力がそうさせるのか、精を吐き出すそばから睾丸内に精液が作り出されそれもまた射精しそうしてる間にまた精液が作り出される。
 止まらない。溢れ出すものが止まらずに、腰の動きが再度ストロークを始める。

「あっ、んんぁぁあっ!? すごっ、出てるのにぃっ♡ 出てるのに動いてるぅ♡♡」

 熱はすぐに冷めやらない。
 互いの欲望をまたもぶつけ合い出し、愛液と精液がベッドに飛散する。彼女の角を両手で掴み固定して唇を重ねる。番となった――そう、子作りを交わして番と認め合ったこれからの性交は、子どもを成すためではなく愛を交わすためのものとなる。
 愛おしさという熱が身体中を灼いている。目の前の汗にまみれた蕩け顔のホワイトホーン。雲のように白い髪と雪のようになめらかな肌の、最高のメス。蒼い瞳にハート型の情欲の炎を燃やしている、美しい妻。
 自らが手に入れたものを確かめようと、両手で彼女の身体中を撫で摩る。返すように彼女の手もこちらを確かめてきて、それがまたぞわぞわと快楽に成り代わる。

「……好きです……♡ 好き、好き……♡」

 自らの感情を慈しむように呟き、こちらの頬へと唇で啄んでくる。そんないじらしい様子もまた愛おしくて、彼女の汗で湿った後頭部を梳くように撫でてやる。いつの間にやら止まった射精で、腰の動きも落ち着きを取り戻していた。

 そうしてただ、互いの身体を重ねて抱きしめる。二つの心音が静かな室内を支配して、じんわりとした熱が周囲でとぐろを巻く。
 深く息を吐いて、彼女と共に横に寝転がる。つながったままのペニスが僅かに切ない響きを送ってくることに苦笑しながら、じっとこっちに目を向けてくる彼女へキスする。

「ちゅ……ふふ、もしかして山に登ったのはこういうのが狙いだったんですか?」
「うーん……もしかしたらそうなのかもしれない」

 特に理由なんてないことは、あとから理由を付け足したっていい。だいたいそういうものなのだ。

「じゃあ、おっぱいを触ったのは……」
「あれは純粋に触りたかったからです……」
「ふふふ、やっぱりそうですよね」

 お恥ずかしい。
 と思っていたら、

「……実は、私もなんですよ」
「え?」
「私も、触ってほしくて……あんな嘘をつきました」

 恥ずかしさを誤魔化すように苦笑して、ごめんなさいと小さく謝る彼女。
 結局俺のせいじゃねーか!とは思いつつ、そんな彼女がまた愛おしくて抱きしめる。

「あ、もう……えへ、そういえばまだ名前も自己紹介もしてませんよね」
「……そういえば。麓に戻ってからって雰囲気だったのに、ずっと忘れてた」

 お互いのことはまだなにも知らないというのに夫婦になってしまったわけだ。でも、だからといって不安は覚えていなかった。

「改めまして……これからよろしくお願いします、あなた♡」
「……うん。これからよろしく」

 なにかがあったとしても、その問題すべてを二人分の熱で溶かしてやればいい。
 少なくとも、互いの熱の温度は知っているのだから。


17/02/08 19:09更新 / 鍵山白煙

■作者メッセージ
ちょっと聞きたいんですが、「セックスは一回だけに注力してそのあとピロートークで終わり」っていう流れが個人的に好きなんですけど、「一回ごとは薄くてもいいから何度もセックスする」っていうのが見たいって人はどれくらいいるんでしょうか?参考にするので、お気軽に教えてくださると嬉しいです。

あと最近行き詰まりまくってるのでお題箱に軽めのなにかてきとーなの投げていただきたいです。無茶なやつじゃない限り消化します。
http://odaibako.net/u/WhGeMSMK

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33