連載小説
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後編 2
もうすっかり日も暮れた。アネモネがつけてくれたのだろうか?紫の部屋には優しい紫の灯りが灯っていた。さっきまで静かだった家の外も、車の音で嘘の様に騒がしくなっている。
でも、僕にはそんな雑音は耳に入らなかった。今はただアネモネさえいればいい…。
アネモネも僕の気持ちに同意するように、大量の粘液を絡めてきた。僕はアネモネを掻き抱く。

「アネモネ。アネモネぇ…。」

夢中になって粘体を抱きしめ、甘える僕にアネモネも嬉しそうだ。

「よろしいのですよ。もっともっと甘えて可愛い旦那様になって下さいませ!」

顔を上げればアネモネは慈愛深く微笑んでいた。いつもの事だけれどアネモネの笑顔は素敵だ。
だが、アネモネは急に真面目な顔になる。よく見れば何か困った様な雰囲気だ。

「どうしたのアネモネ?」

気になって問いかける僕に、アネモネはためらいがちに言った。

「えっと…。あ、はい。旦那様。あの、大変申し上げにくいのですが…。」

「なにかあったの?気にしないで何でも言って!」

続きを促す僕にアネモネは言いにくそうに答えた

「あの、恥ずかしい話ですがお腹がすいてしまいまして…。旦那様のお情けを頂ければなあと…。」

「あ…。うん。」

僕たちはお互いに顔を赤らめた。今日はアネモネに色々してもらった。当然お腹もすくだろう。
風呂に入って、またいつもの様にバスタオルに出すか。そう思い僕は立ち上がろうとした。

「それじゃあいつもみたいにするから…。」

そそくさと風呂に行こうとする僕をアネモネは慌てて引き留めてきた。

「い、いえ。お待ちくださいませ!もうわたくしたちはこれまでとは違うのですから…。
あの、夫婦の、ち、契りを交わすという事に…いたしませんか?」

「っ………。そ、そうだよね………。」

アネモネは羞恥に悶える様に言葉を絞り出した。とんでもない事を言ってしまったとばかりに体をくねくねしている。僕も言葉を続けること無く黙り込んでしまった。今まで実質的にアネモネとセックスしていたとはいえ、やっぱり直接そういわれるのは恥ずかしい。

でも、アネモネと一緒になるという事は夫婦になるという事だ。今後は夫として精を捧げ続ける事になるのだ。咲姉の言葉を思い出した僕は、俯いているアネモネの両肩に手をやった。繊細な肩の感触が両手に伝わる。

「あっ…。旦那様ぁ。」

顔を上げたアネモネの眼差しは蕩けきっていた。これから起こる愉しい事が待ちきれないような、
欲望と期待に満ち溢れた眼差しでもあった。瑞々しい唇はわなないていた。アネモネは舌を出すと己の唇をちょっと舐めた。おいしいものを今すぐ食べたい。言外にそう言っているようだった。

アネモネが何を期待しているのか嫌というほどわかる。僕は今まで従順だったメイドに貪りつくされるのだ…。僕は覚悟を決めて生唾を飲み込んだ。

そうだ。
でも、これから何をすればいいんだろう?

思い至って僕は焦る。そもそも魔物娘との、しかもスライムとのセックスなんて全く経験がない…。いくらスライムでも強引に押し倒して、無理やりチンポぶち込む訳にはいかないだろう…。
え〜と。これはやばい。どうしよう…。僕はアネモネの両肩を掴みながら固まってしまった。
焦りと混乱が顔に出てしまったのだろうか。アネモネはいたわる様に語りかけてきてくれた。

「旦那様…。旦那様にご満足頂くのはメイドの務めでございます。どうかこのわたくしにお任せくださいませんか?」

アネモネは愛情あふれる笑顔を見せてくれた。こうして優しく気遣ってくれるのが嬉しい。
僕はほっとして頭を下げた。

「あ…むっ。っう!」

何も言う間もなかった。アネモネはたちまち距離を縮めると僕に口づけをしてきたからだ。
そのまま僕の両肩をしっかり抱いて固定すると、さらに熱烈にキスを繰り返した。

「むっ…。ちゅっ…。むぅっ…。むちゅっ…。」

当然彼女とキスをするのはこれが初めてだ。柔らかくぽってりしたアネモネの唇が何度も僕の唇に触れ、繰り返し優しく吸い続ける。最初は驚いた僕も接吻の心地よさを味わいたくて、自分からアネモネの口を吸い始めた。するとアネモネは嬉しそうに目を細めて、舌を僕の口の中に侵入させてきた。長く伸びるアネモネの舌は歯茎や上顎を丹念に刺激し始める。

「んんんっ!」

呻く僕の頭を抱いて動けないようにすると、アネモネの舌は僕の舌を絡め取った。
うごめくアネモネの舌は念入りに、愛情深く僕の舌を吸い始めた。僕の口の中はアネモネの味でいっぱいになる。アネモネの味は、先ほど食べたショゴスゼリーの味だった。
僕も夢中でアネモネの舌を吸い返し、アネモネの甘く濃い唾液を味わい続けた。

ぬるぬるのアネモネの舌がもたらす快感は、全く経験したことが無い強烈なものだった。
僕がうっとりしているのを見て取ったアネモネは、さらにしっかりと口づけする。
そして絡めあった舌から唾液を大量に注ぎ込んできた。
惜しみなく与えられる甘いショゴスゼリーの唾液。僕は夢中になって啜り続けた。

「ぷはぁっ…。」

一体どれだけの間アネモネと口づけを交わしあったのだろう。ようやく満足した僕たちは抱擁を解いた。互いの唇の間からアネモネの濃紺の粘液が糸を引いた。

「アネモネ…。すごく良かった。」

「わたくしもでございます…。」

お互いに求め合う深い口づけ。僕はアネモネと今まで以上に理解しあえたような気持ちだった。
アネモネも嬉しそうに笑顔を見せた。

「本当にようございました。旦那様がご覧になられていたリリラウネのDVD。旦那様はあのようにされるのがお好きなのかなあ。と思いご奉仕させて頂きましたが、ご満足いただけたようで嬉しいですっ!」

「いや。あれは…。」

おいおい。突然何を言い出すんだ。正直触れられたくないことなのに…。っていうか内容チェックしていたんだ…。困惑する僕をよそにアネモネは語り続ける。

「もし旦那様がお望みならば、あのDVDの様にわたくしの下の口から出るものもお召し上がりになられれば………」

「お願いアネモネ…。恥ずかしいからそれ以上は…。」

「えっ!?あ、これは大変失礼いたしましたっ!わたくしはてっきり…。」

羞恥心に耐え切れずに止める僕を見て、アネモネも申し訳なさそうに頭を下げる。
しばらくはお互いにばつが悪そうに俯きあっていた。でも、アネモネがしてくれるっていうんだ。
頼んでも本当に嫌がらないのなら。その時は…。頭の中に次々と妄想が湧き起こってきてしまう。

「旦那様。わたくしは旦那様がお望みならばいかなる事でも致しますので…。」

「うん。またその時はお願い…。」

アネモネは上目づかいで気遣うように言う。僕も自身の歪んだ好奇心を抑えきれずにうなずいた。

















気が付けば僕を取り巻く紫の壁は、まるで鼓動するように蠢いていた。僕はアネモネに全身を飲み込まれているも同然なのだ。改めてその事に気が付いて息をのむ。先ほどまでは穏やかだった紫の灯りも、今では妖艶な欲望の輝きを放っている。その灯りに照らされれば、いやが上にも気持ちが昂る。

「大丈夫ですよ旦那様…。」

アネモネは僕を落ち着かせるように微笑むと優しく抱きしめてくれた。だが、抱擁の心地よさを感じる間もなく僕をお暇様抱っこの様に抱きかかえる。突然の事に慌ててしまう。

「ちょっとアネモネっ。」

「ふふっ。このまま寝室までお運びいたしますね…。」

アネモネは動揺する僕にかまわす寝室に運んで行った。でも、彼女はとっても柔らかく良い匂い。
抱っこされると、知らぬ間に気持ちは安らいでくる。

「それでは失礼いたします…。」

大切な壊れ物を置くようにアネモネは僕をベッドに横たえた。

「うあっ…。」

その途端ベッドが僕を飲み込むようにずぶずぶと沈み始めた。柔らかく温かい感触が全身を包む。
もう隠す必要が無くなったからだろうか、生き物の様に蠢いているのがはっきりわかる。
優しく愛撫するかのような動きに僕は蕩けるようだ。

「アネモネ…。」

「はぁい。それでは服を脱ぎ脱ぎしましょうね…。」

アネモネは恍惚状態の僕の服を脱がし始めた。だが、いつもは着替えさせてくれるのだが、今日は僕を真っ裸にしたままだ。その状態でアネモネ自身も体を変化させ、見事な裸身を形作った。

「ご安心ください。すべてこのわたくしにお任せくださいね。」

アネモネは微笑んでいた。いつも僕をほっとさせてくれる優しい笑顔だった。
今日初めて見た裸身は完璧なプロポーションだ。豊満な胸にくびれた腰。すらりと伸びた足。
それが艶めかしい紫色で濡れている。綺麗だ…。だけどエロい…。僕は素っ裸になった恥ずかしさも忘れてアネモネに見入っていた。

「あの…。旦那様。あまり見つめられると恥ずかしいですよぉ…。」

見つめ続ける僕の視線を避けてアネモネは俯いた。困った様に指をいじっている仕草が愛らしい。

「だって。アネモネすごく綺麗だから…。」

「旦那様…。うれしゅうございますっ!」

僕の言葉を最後まで聞くことなく、アネモネは覆いかぶさってきた。僕も何のためらいも無くアネモネの裸体を掻き抱く。魔の肉体に誘惑されるように身を埋める。でも、何か違和感がある。
明らかに先ほどまでと何か違う。

「うふふ…。いかがなさいましたか旦那様?」

僕の困惑を見抜いたようにアネモネは問いかけてくるが、そこでようやく気が付いた。
手触りがきめ細やかでまるで人肌だ。撫でるともちもち手に吸い付くようだ。
豊かな胸に触ると張りと弾力感がある。思わず頭にも手をやるが感触がまるで本物の髪の様。
撫でると軽やかに揺れて、胸が切なくなるような良い匂いが漂う。

「アネモネ?」

質感。体温。密度。人間の女性を抱いているのと全く変わらない。違和感の原因に気が付いた僕にアネモネは言った。

「お気づきになられましたか?お気に入り頂ければよいのですが…。」

控えめにほほ笑むアネモネだが、きっと自身の細胞を変化させて人間女性の様にしたのだろう。
僕は柔らかく温かい肉体を抱きしめる。この状態のアネモネもとっても心地よい。
でもアネモネの好意は嬉しいが、必要以上に気を使わせるのは申し訳ない。

「とっても気持ちいけど、いつものアネモネでいいんだよ。無理はしないでね…。」

声をかける僕にアネモネは何度もかぶりを振った。

「お気遣いありがとうございます…。でも、旦那さまがお悦び頂ければわたくしは嬉しいのですよ…。」

アネモネは切なく笑うと口づけしてきた。唇舌は熱く淫らで先ほどとは異なる快感だ。
僕は当然の様に舌を吸いアネモネを味わう。すると僕を包み込んでいたベッドが異様な動きをし始めた。美味しいものを味わう舌のように蠢き、まるで僕の全身を舐めとるようだ。

「え?これって?」

僕は突然の事に目を丸くする。

「ああ…。旦那様の匂いと汗が美味しゅうございます…。なんと豊潤で香しい事でしょう…。」

匂いと汗だって?虚ろな目で悦ぶアネモネを見て僕は思い当たった。
さっきは風呂に入ろうと思ったら、なし崩し的にアネモネと交わることになったのだ…。
僕はまだ体を洗ってすらいない…。いくらなんでもこれはまずい。

「ごめんアネモネ!すぐにシャワー浴びてくるから。」

慌てて身を起こして風呂場に向かおうとした。だが、スライムベッドは僕の体を包み込んだまま放そうとしない。アネモネは僕を落ち着かせるように頭を抱いてくれた。

「ご安心ください…。恥ずかしい事を告白しますが、わたくしは、あの…旦那様の汗も大好物でして…。いつもお風呂に入る前の旦那様を見るたびに…むしゃぶりつきたくなるのを必死に抑えておりまして…。」

アネモネは羞恥心が抑えきれないとばかりに視線を逸らす。僕はアネモネの告白を聞いて驚きと興奮を同時に味わっていた。清楚なアネモネは汗まみれの僕なんかを見て、ずっと欲望を滾らせていたのかと…。

「ですので旦那様。これからはわたくしが毎日お清めしますのでどうかご遠慮なく!」

気持ちを抑えきれなくなったかのようにアネモネは叫ぶ。僕にのしかかると首筋に口づけし舌を這わせ始めた。

「ひいっ!」

熱いぬめりを首筋に感じた僕は、女の子のように喘いでしまった。アネモネは何度も何度も首筋にキスを繰り返す。獣の様に蠢く舌は容赦なく汗を舐りとる。僕を拘束している粘液も、体に巻きつき吸い付きしゃぶりつくす。その動きはまるで触手のようだ。知ってか知らずか粘液の動きは、僕を性的に興奮させるように淫らに蠕動している。

「ダメだよアネモネ…。」

「とってもきれいになられましたね旦那様…。では、一番汚れている所を清めて差し上げますね!」

快楽にあえぐ僕を見てアネモネはとろける様に笑う。たちまち僕の股間を責めていた粘液の形が変形する。まるで熱く柔らかい肉の筒の様になった粘液は、僕の一物を包んで吸引しだした。
淫靡な肉に襲われた僕の股間に甘い痺れが満ちはじめる。

「ま、まってよアネモネぇ…。それはダメだから…。本当にダメだよ…。」

僕は襲いくる悦楽から逃れる様に首を振る。アネモネは淫らな笑みをますます強烈なものにした。

「あら!申し訳ありません旦那様。お口の中を清めるのを忘れておりました。」

まるでからかう様なアネモネは、吐息をつく僕の口にキスをしてふさいだ。粘液状にぬめる舌は僕の舌と絡み合う。すぐに口いっぱいに広がるショゴスゼリーの…アネモネの甘い味。
僕は無意識のうちに何度も飲み込んだ。

「そうそう!ここも念入りにきれいに致しますねっ!」

僕を淫らに責め続ける粘体は、尻の穴をくすぐる様にいじり出す。その未知の感触にうめき声を上げてしまった。

「んっ!んんんん〜〜っ!」

だがアネモネは妖艶な笑みを顔に張り付けたままだった。まるで何かのスイッチが入ってしまったかのように快楽奉仕を続ける。僕はたちまち絶頂に突き進んでいった。
このままでは出してしまう…。でもいいんだ…。何も考えずに身を任せよう…。
僕の脳内が快楽で埋め尽くされそうになった時だった。不意にアネモネは粘液の蠢きを止めた。

「あっ!なんで…。」

絶頂を寸前で止められて思わず悲痛な声が出てしまう。アネモネは僕を見おろしてうなずいた。
よく見れば優越感溢れる眼差し。まるで彼女のほうが主人になったかのような威圧感だ。
こんなアネモネ今まで見たことが無い。僕は知らぬ間に新しいご主人様に哀願していた。

「お願いアネモネ…。」

「いかがなさいましたか旦那様?わたくしは愚か者ですのでよくわかりませんが…」

優しいアネモネからは想像もつかない嘲笑するような声音。気持ちが昂った僕は恥ずかしさを忘れてお願いを続ける。

「あの…もう我慢できないんだ。出したいよ…。」

「ですから何をお出しになりたいのでしょうか?もっと詳しくおっしゃって下さいませ。」

「しゃ、射精したいよアネモネっ…。」

懇願する僕を眺めてアネモネは薄く笑った。

「承知いたしました。では自由にして差し上げますので旦那様ご自身の手でなさいますか?」

「そんな…。アネモネの、アネモネの中に射精したいよ…。」

僕に何度もおねだりさせたアネモネは、十分満足したように勝利の笑みを浮かべた。

「いけませんねぇ旦那様。清めている最中に発情されるなんて…。仕方ありません。出されるのならここにお願いいたしますね!」

アネモネは僕に股間を見せつける様に体を起こす。そして自分の秘所を両手でぐいっと押し広げた。毒々しい濃紺色の花が開くと花蜜がだらだらこぼれ落ちる。僕の体を蜜の紫色に染めた。

にちゃあ、とか、くぱぁ、といった擬音がするのではないかと思う下品で淫らな仕草。
花弁からは強く濃い淫臭が漂ってくる。僕が知っている甘酸っぱいアネモネの香りとは全く違う。
相変わらず鋭い笑みを顔に張り付けている。主の僕はメイドの彼女に食べられる。否応なしに実感させられる捕食者の笑顔だ。

でも、そんなエロく嗜虐的なアネモネが素敵だ。日ごろの清楚で可愛いアネモネの知らなかった一面を見られたのだ。僕はますます獣欲が高まっていった。あ…。そういえば以前アネモネに責められる妄想をした事があった。気のいい彼女の事、僕の性癖を見抜いてご奉仕してくれたのだろうか?

「もう入れたいよ…。」

「うれしゅうございます。旦那様にそこまで求めて頂いてメイド冥利につきます。存分にお楽しみくださいね!」

僕は体も動けないのに何とかアネモネに挿入しようとする。必死な姿を見てアネモネは表情を和らげた。僕に馬乗りになると一物を己の花弁にあてがう。腰を下ろすとぶちゅっという水音が響き、濃い色の粘液が飛び散った。

「うっ!」

うめき声をあげた僕のモノは、アネモネの魔の胎内にくわえ込まれてしまった。
その途端、熱く蕩けるように柔らかい粘膜が肉竿に絡みついてきた。粘膜は亀頭にもまとわりつくと、生き物の様に変形し鈴口を責めはじめた。想像以上の快楽を与えられて思わず叫ぶ。

「アネモネっ!」

「ようやく旦那様とつながれました…。ふつつかものですがこれからもよろしくお願いします…。」

アネモネは心からの至福の表情を浮かべていた。僕と目が合うと蕩ける様な、それでいて愛情深く笑ってくれた。もっと気持ち良くなりたい…。もっとアネモネを気持ちよくしたい…。
オスの欲望が抑えきれなくなった僕は、いつしか夢中になって腰を突き上げていた。

「いっ…いいっ!うぁあっ!だんなさまあ!それ気持ちいですよぉ…。」

甘い美声で叫んでくれるアネモネ。僕はさらに何度も何度も律動を繰り返す。

「本当にこれでいいの?アネモネ気持ちいいの?」

「はいっ!だんなさまのおちんぽがわたくしのお○んこごりごりしてぇ…。最高ですよお!」

だらしなく口を開けて、虚ろに濁った眼でアネモネはよがっている。男としての情欲を満たしてくれる素敵な姿だ。僕の想いも高まっていった。アネモネの膣内は熱かった。熱いゼリーが猛った僕の分身を包み込む。妖しくうねり責め立てる。精をねだるように亀頭を吸われ、僕は激しい快楽に呻いた。

「アネモネっ。アネモネっ!」

僕は何度もアネモネの名を呼び、ひたすら腰を突き上げ続けた。下半身の甘い痺れが脳内に伝わり、いつしか快楽以外は考えられなくなった。

「ぐうっ!」

「ひぎっ!」

「あぐっ!」

僕の腰の動きに合わせてアネモネは獣じみた叫び声を上げる。初めて見る淫乱な姿に僕も我を忘れて腰を打ちつける。そして、とうとう限界が訪れた。

「アネモネっ!もう出しちゃうよ!」

「だ、だんなさまあ…。下さいっ。わたくしに甘い精をたくさん下さいっ!わたくしのおま○こにたっぷり注いでくださいませっ!」

アネモネの哀願するような絶叫が耳に響いた瞬間、僕は達した。湧き上がってきた絶頂感が下半身で爆発する。これが最後とばかりに腰を突き上げると、ぬかるむ粘液の中で熱い汁をぶちまけた。
僕は愛する人の中に射精する喜びと、全身を包む快楽に身を任せ続ける。

「ああぁっ。温かい…。出されていますぅ…。せーえきが…。旦那様がおいしいですぅ…。」

アネモネはうわごとの様につぶやき続けた。淫らな膣は一物をきゅうきゅう締め付け、命の素を搾り取る。こらえきれない僕は、肉棒を咀嚼し続ける胎内に大量に吐精し続けた。























無限に続くと思われた絶頂もいつしか収まった。僕は一息つく。アネモネは相変わらず僕にまたがっていたが優しく口づけしてくれた。熱い舌が絡められて甘いゼリーの唾液が注ぎ込まれる。
僕も当然の様にこくこくと飲み干した。やがてアネモネのみずみずしい唇が離れると、気遣うように問いかけてきた。

「旦那様。ご気分はいかがでしょうか?痛いとか苦しいとかありませんか?」

「ううん。全然。すごく気持ちよかった…。」

僕たちは見つめあうと微笑み合った。互いに無くてはならないものになった信頼感が心地よい。
部屋を染める紫色の灯りもなぜか温かく感じる。そんな甘い空気の中、ふと気が付いた。
不思議な事に全く萎えない。全然タフでは無い僕は、一度射精すれば回復するのに時間がかかる。それなのに次の交わりを期待して股間ははちきれんばかりだ。

僕が疑問に思う間も無かった。アネモネは再び僕のモノを、己のぬめる割れ目の中に押し入れてきたのだ。アネモネは優しく射精を促すように腰を上下し始めた。ゼリーのようなぬかるむ快感に僕はたまらず達した。もう玉袋の中の精液は全て出し尽したはずなのに、なぜか大量に射精し続ける。

全然射精は収まらない。壊れた蛇口の様に僕の尿道口からは精があふれ続ける。
でもそれは先ほどのように、頭の中が焼けつく様な激しい快楽ではなかった。
穏やかで、温かい。ぬるま湯にでも使っている様な心地よさだった。

いくら気持ち良いからといっても、異常なまでの射精量には困惑してしまう。
不安を見て取ったのだろう。アネモネは僕を抱きしめると、安心させる様に何度も愛撫してくれた。

「よしよし。大丈夫ですよ〜。何にも怖い事はございませんからね〜。」

「でも、さっきから全然止まらないんだよ…。」

「旦那様には先ほどから、わたくしのゼリーをたっぷり飲んだり食べたりして頂いております。
それを旦那様の精巣に誘導して貯めて射精して頂いているのですよ。」

アネモネはさも当然とばかりにうなずいた。でも、あまりにも常識を超える言葉だ。
僕の口から知らぬ間に驚きの声が出ていた。

「ええっ!?そんな事出来るの?」

不信感を隠さない僕にアネモネは朗らかに笑った。

「はいっ!不肖このわたくしもショゴスにございます。この程度の事はたやすい事なのですよ。
旦那様には保護の魔法をかけてあります。悪影響は一切ございませんのでご安心下さいねっ!」

「けど。アネモネ…。」

僕はなおも尻込みするがアネモネはそれを無視して言葉を続ける。

「ですので何もお気になさらず気持ちよくなってくださいませ!メイドとして旦那様には最高の射精をご堪能いただきますので…。」

「ちょとアネモネっ…むぅ。」

アネモネは制止する僕の言葉に耳を貸さずに唇を奪った。柔らかい唇を感じるとたちまち舌を絡められ、アネモネの唾液が口中に満ちる。動けないよう頭をしっかり抱いて固定すると、さらに延々とショゴスゼリーを与え続けられた。僕が拒むように喉をすぼめると、アネモネの舌は驚くほど伸びて喉奥に侵入する。そしてもっと食べてと言わんばかりに直接食道からゼリーを注がれ続けた。

不思議と全く苦しさはなく、僕はただアネモネに喉を犯されるに任され続けた。ゼリーが通過すると喉から胃にかけて熱い心地よさに満ちる。だが、気持ちよさに浸る間もなかった。
アネモネは僕の尻を包んでいた粘液を変化させた。肛門から押し入れようとぐりぐり刺激しはじめる。驚いた僕は拘束から逃れて叫び声をあげた。

「ちょ、ちょっとアネモネっ!一体何やってるの!」

「直腸から補給すると大変に吸収が良いのですよ。そこからも旦那様の大事な場所にゼリーを誘導できます。気持ち良さは保証致しますので、心配なさらないでくださいね!」

アネモネは慰めるように笑ったが、笑顔とは裏腹に僕が動けないように抱きしめられる。僕を包み込んでいたスライムの粘体にも、巻きつくように拘束されてしまった。

「アネモ…あっー!」

肛門からは何とも言えない異物が侵入してきて、腸の奥で蠢きはじめた。声を上げようとした僕の口はアネモネの唇にふさがれてしまった。とっさの事で思わず肛門をぎゅっと閉じてしまう。だが、肛門の隙間から侵入するように、アネモネの粘液は浸潤し続けた。僕は上下の口を延々と侵され、魔の液汁を詰め込まれ続けた。腹が徐々に膨れ始め、とうとう僕の中はアネモネ自身によって満ちてしまった。

だが、それは今まで体験したことも無い心地良さだった。

僕は以前健康診断で引っかかり、胃と大腸の内視鏡、両方の検査を経験していた。
それらの苦しさと異物感、不快感とは全くの無縁のものだった。粘液が僕の内臓を犯し進むすたびに甘い快感が走り、不思議な安らぎに溺れてしまうのだ。お腹に溜まったものは優しく温かく、
なぜか気持ちを落ち着かせる。

いつしか僕は緊張で強張っていた体を弛緩させていた。甘える様にアネモネに身を寄せて預けていた。そうだ。アネモネが僕に酷い事なんかするわけがない…。安心してすべてを任せればいい…。まるで全身の細胞に染み渡るような、穏やかな悦楽に溺れていった。

アネモネは強制的に栄養補給していた深すぎる口づけを解いた。喜ぶように目を細めると、僕の頭を抱いて労わるように愛撫してくれる。そして耳元で濡れた声でささやいた。

「素敵ですよ旦那様…。とっても気持ち良くして差し上げますからね…。」

「うあぅ…。あねもねっ!」

喘いだ途端、僕の中に満ちていたアネモネ自身が動き始めた。ねっとりと体の中を進み尿道に達すると、絶頂感が僕の股間からほとばしる。猛った肉竿を包み込んでいたアネモネは、吐き出した液を喜んで吸引し始める。僕を温かく締め付けるアネモネの胎内。頭の中が溶解するような快楽だ。

気持ち良さは全く止まらない…。僕は延々と精を漏らし続ける。まるで永久に続くおしっこのよう。
だが遥かに温かい心地よさが、僕の脳内を甘く蕩けさせる。さらに全身の穴という穴から、
くすぐったい快感が生み出される。尿道口だけではなく、さらに体中の穴から欲望を放出しているようだ。なおもアネモネは熱に浮かされたように射精を促している。

「おっ…おま○こに旦那様の熱いものがたっぷりですぅ…。もっと旦那様の濃いのでわたくしのまん○孕ませてくださいませっ…。」

気のせいだろうか。徐々にアネモネと一体化するような妄想に囚われはじめた。アネモネが僕の全身から染み渡っていき、優しく穏やかに溶かしていくのだ。そんな気さえする。アネモネを僕の体のすみずみまで吸収し、アネモネを全身の穴から排泄する。僕たちは一つになる。永久にこの安らぎと快楽に溺れればいい。

「アネモネ…。アネモネ…。アネモネ…。あねもね…。あねもね…。」 

いつしか僕はうわごとのようにアネモネの名を呼んでいた。気持ち良さは表皮から内臓まで浸透し続ける。ひたすら続く快楽奉仕に、目の前は灰色に澱んでいた。魔の淫楽に犯され正気を失っていた僕を、アネモネはしっかりと抱きしめてくれた。

「よしよし…。安心してくださいね。旦那様の事はいつでもわたくしがお護りしておりますから…。はいっ!ぎゅーってして差し上げますね。」

「ああ…あねもねぇ…。」

僕は幼児に帰った様にアネモネにすがりつく。まるで本当の子供をなだめる様に、アネモネは僕の背中をぽんぽんし、額に優しいキスを繰り返す。顔を上げた僕の目に映ったのは、アネモネの慈愛に満ちた笑顔だった。ああ。まるで昔の母さんのような優しい笑顔。

アネモネに母を感じた僕は異様な感動に襲われていた。恍惚とする僕を見てアネモネは相好を崩した。

「も〜っ。やっぱり旦那様はとっても可愛いですっ…。いいんですよっ。何も遠慮しないでママの中に気持ちいいおしっこしましょうねっ!わたくしは旦那様のお母様がわりなのですから…。」

ずっと優しく絞ってきたアネモネの胎内だったが、突然激しく肉棒を締め付け始める。
亀頭にも熱く柔らかい粘体が張り付くと執拗に吸引する。鈴口を刺激していたアネモネは、尿道の奥深くにまで何かを侵入させてきた。それは精を欲しがり尿道を刺激するように前後する。
異様な快楽を強制された僕はたちまち絶頂した。

「い゛っ…。アネモネそれだめだよぉ!」

アネモネの中に粘液を吐き出しながら僕は哀願する。アネモネは驚いたように責めを弱めたが、なおも胎内は甘く蠢き吸引し続けた。

「あ………申し訳ありません!大丈夫ですよ。なにも怖がらないでくださいませ…。はい。嫌なものは全部ママの中にお漏らししちゃいましょうねぇ。ぴゅー…。ぴゅー…。ぴゅー……。」

「あぅ…。アネモネぇ…。ままぁ…。」

アネモネは僕の頭を抱いて耳元でささやき続けた。その甘く濡れた声はまるで射精のリズムを取るようだ。声に合わせる様に僕も欲望の液を垂れ流し続ける。粘液も僕の全身を包み込んで優しく慰める。アネモネにすべてを犯された僕はいつしか意識を失っていった。



















「ほんっとうに申し訳ありません旦那様っ!つい我を忘れてしまいまして…。」

「う…ううん。とっても良かったから。もう謝らないでいいって…。」

あれから意識が目覚めた僕にアネモネはずっと謝り続けている。罪の意識溢れる様子に文句を言う気も無くしてしまう。というか実際アネモネは、今まで知る事すらなかった究極のセックスを体験させてくれた。心優しいメイドの最高のご奉仕だ。ケチをつけるなんて真似は馬鹿げている。

「もういいんだよ。ほんとうに最高だった。こちらこそありがとう。」

なおもすまなそうな眼差しのアネモネだ。僕はさっき彼女がしてくれていたように優しく抱きしめた。
アネモネの温かい粘体の感触と優しい匂いを感じる。

「そうおっしゃって頂いて救われます…。」

アネモネも目を伏せるとそっと僕に身を預けてくれた。そのまま抱きってお互いに言葉も無い。
部屋の外もずっと静寂に包まれている。今はもう何時なのだろう。というかあれから一体何日過ぎたのだろう。

僕はまとまらない考えを弄ぶ。沈黙の時間が続いているがそれがまた心地よい。僕たちは言葉がなくても分かり合える関係になったのだ。アネモネの柔らかさに浸っていると、不意に彼女は顔を上げてきた。

「あの…。旦那様。申し訳ないついでと言いましょうか…。これは愚かなメイドのお願い…いいえ!
言葉を口にするだけでも許していただきたいのですが…。」

先ほどまでの淫らで、嗜虐的で、恍惚と蕩けていたアネモネとは打って変わった遠慮がちな様子。
柔らかい紫の灯りに照らされ続けるアネモネを見た僕は、なぜか背筋が引き締まった。

「どうしたのアネモネ?僕たちの間にもう遠慮は無しだよ。」

穏やかに促す僕にアネモネは逡巡したが、やがて決意を固めたように話し出した。

「はい…。わたくしは旦那様を応援すると申し上げました。その気持ちには変わりございません。でも、それ以上に旦那様と一つになっていたいのです…。ずっとずっと一つでいたいのです…。」

「アネモネ…。」

さっきまでずっと一つになっていたじゃないか。そんな下ネタが浮かんだがすぐに消えた。
アネモネの眼差しは濁っていた。いつもの澄んだ月光の眼差しに雲がかかる様な虚ろさ。
言葉を無くす僕にアネモネは続けた。

「わたくしと一つになれば何不自由させません。旦那様を困らせたり苦しめたりするものは、わたくしが全部やっつけます。旦那様には毎日笑って過ごして頂く事が出来ます。ずっと幸せに生きて行けます。いかがでございましょうか?」

僕は沈黙を続ける。アネモネは笑顔だった。眼差しは相変わらず曇っている。いや…。
曇っているとか濁っているとかのレベルじゃない。なぜか怖い。体に寒気すら感じる。
僕にアネモネ自身の体を食わせるときに見た。あの時なぜか感じた狂気。それに近いものだ。
いつしかアネモネも僕を抱きしめていた。彼女の体から粘液が大量に流れて僕を包み込む。

アネモネはさきほどのような、文字通り溶けるような快楽と安らぎを与えてくれるのだろう。
無限ともいえる時間を。この紫の部屋の中で…。なぜかその事に思い当たる。
紫色の体液はあふれ続ける。このままではアネモネに飲み込まてしまう…。
アネモネは僕の肩をしっかりつかむ。暗い声で同じことを何度も繰り返した。

「いかがでございましょうか?旦那様。いかがでございましょうか?旦那様。」

アネモネの狂気あふれる眼差しは、僕をじっと捉えつづけている。だが、僕は比較的冷静だった。
かつではそうなることを望んでいたのだから。魔物娘の奴隷として囚われる事を、一瞬でも願っていたのだから。

それがアネモネに気に入られ、夫として迎え入れられる。しかもずっと幸せな日々まで約束してくれて。最高のハッピーエンドと言わずしてなんと言おう。

でも、なぜだろう?

心の奥底の、人としての何かがそれでいいの?と問いかけていた。その生き方は人間としていいの?と語りかけていた。魔物娘の存在はあたりまえになったが、人と魔物は異なるという事実は変えられない。永遠の快楽と安らぎは魔物にとっては理想だが、人間の本能では拒むものなのかもしれない。短い生を急ぐ、人としての悲しい定めなのだろうけど…。

なにか言わねばならないが言葉が出ない。僕はやむなく沈黙を続けた。
やがてアネモネも落ち着いたのだろうか。その眼差しは雲が晴れる様に澄んだ光を取り戻していった。

「たびたび申し訳ありません。旦那様を何度も困らせてしまうなんて本当にメイド失格ですね…。
今の話は馬鹿なメイドの妄想としてお忘れ頂ければありがたいのですが…。」

アネモネは粘液から僕を解放した。ため息をつくと頭を下げてそのまま俯き続ける。
悲しげな様子は憐みと庇護欲を誘ってしまう。いつもの事なのだがこんなアネモネもとっても可愛い。僕の口から自然と言葉があふれてきた。

「すぐに決められなくてごめん。でも、今の話は前向きに考えさせて欲しいな。僕も君と一つになりたいから。」

「旦那様…。」

アネモネは目を潤ませた。僕が彼女のふるえる肩をそっと抱くと、腕の中に身を預けてくれた。まあ、この分ではすぐにでも一つにされてしまいそうだ。アネモネを抱きしめながらやれやれと思う。
でもこの大切な人とならば、一緒にどこにでも堕ちて行けばいい。そうすれば間違いない。
なぜかその確信は絶対的だ。

「こんな定型文みたいなことしか言えなくてかっこ悪いなあ…。」。

「そんな事ございません!わたくしなぞにとっては最高のお言葉です。では、旦那様にもっと前向きになっていただくようにもっともっとご奉仕いたしますねっ!」

「ええと…。アネモネさん?」

照れ隠しの言葉にアネモネは華やかな笑顔になると、たちまち僕を押し倒した。瞳には抑えきれない情欲が浮かんでいる。ちょっとまってくれ。さっきあれほど絞られたのに…。それなのにまた?
僕は躊躇して身をよじる。

「ちょっとまってよアネモネ!すぐには無理だって。」

「大丈夫ですよ〜。安心してこのわたくしにお任せくださいませ…。」

アネモネは抵抗する僕を意に反さず口づけをする。たちまち甘いゼリーを注ぎ込まれた僕は悦楽に溺れて行った。

















「あ…。旦那様目が覚められましたか?」

「ぅん…。」

僕は温かさを感じながら目を開けた。先ほどまでアネモネと文字通り一つになっていたが、今は実体を取り戻している。彼女は僕と添い寝してくれていた。ふかふかの紫色の掛布団が僕たちを包み込んでいる。全身を包む温かさが心地よくて僕はアネモネを抱きしめる。

「ん〜っ。アネモネぇ…。」

「よしよし旦那様…。いつもたっぷり頂いてしまって申し訳ありません。」

最近では当たり前の事なのだが、アネモネと一つに蕩けながら僕は散々搾り取られたのだ。
アネモネは心配そうに僕を見つめると、優しく頭を抱いてくれた。労わるように撫でる手の心地よさを感じるのも、これまた当たり前の事だ。

「ふふっ…。可愛らしいお方…。先ほどまでお眠りになっていらっしゃった時も、とっても可愛らしい寝顔でございましたよ。」

澄んだアネモネの声を聴いて、僕は恥ずかしそうに返した。

「ずっと…君の夢を見ていたんだ。君と初めて出会ったときからのね…。」

「まあまあ!とっても嬉しいです。ありがとうございます。旦那様!」

悪戯っぽく、それでいて喜びに溢れるようにアネモネは笑った。

アネモネに想いを伝え、受け入れられた僕は、彼女と一緒に暮らすようになった。当然夫婦としてだ。うちの両親にはどう伝えようと思ったが、以前言った通りに咲姉が色々とりなしてくれた。
そのおかげで僕とアネモネの仲は認められて、一応は結婚も祝ってくれた。
今は両親との関係も改善して、以前の親子関係を取り戻している。咲姉には本当に感謝だ。

当然アネモネの御両親にも、お二人が住まわれる混沌の世界までご挨拶に伺った。
だが、魔界屈指の秘境でもある混沌の世界だ。僕の想像を絶する体験ばかりだったのだが、それを語るのは別の機会に譲ろう。

「そういえば旦那様。明日はアルバイトでございますが…。」

心地よい時間を終わらすようなアネモネの言葉だ。僕の表情は曇る。一応建前では僕の夢は休止中という形だ。社会復帰のためもあり短期のアルバイトをはじめているのだ。

「そうだったね…。ところでアネモネ。そろそろ正社員の仕事を探そうかなと思うんだけれど…。」

おずおずと問いかける僕にアネモネは鷹揚にうなずいた。

「それはようございます!わたくしはいつでも旦那様を応援いたしますからね!でも…こんなに暑いとお体に障ります。もう少し気候が良くなったら動き始めませんか?いかがでしょう?」

アネモネは気遣うような表情で僕を見つめている。

「そ…。そうだね。もう少し。あともう少しだけ涼しくなったら仕事探そうかな…。」

優しい誘惑の言葉に僕は逆らう事が出来ない。でも、こんなやりとりは一体何度目だろう。
冬になればもう少し温かくなるまで、夏になればもう少し涼しくなるまでの繰り返しだ。
気候が良くなってもアネモネと一つになる安らぎに溺れてしまう。ろくに働く気力は持てない。
なにが人間の本能では永遠の安らぎを拒むだよ…。僕はかつての自分を思い出し自嘲する。

「いかがなさいましたか旦那様…。」

その様子を見たアネモネは心配そうに問いかけてきた。
僕はこのままアネモネと溶け合い続ける。多分…いや、夢は絶対にかなわなくなってしまった。
でも、それ以上に大切なものを手に入れることができた。僕は笑顔を見せてかぶりを振る。

「大丈夫。なんでもないよ!悪いけど明日は早く起こして欲しいな。」

「はい!承知いたしました旦那様っ!」

アネモネは朗らかに笑った。




















「アネモネただいまっ!」

「お帰りなさいませ旦那様…。って、いかがなさいましたか?そんなに慌てたご様子で…。」

バイト帰りの僕は息せき切って紫の部屋に駆け込む。部屋には当然アネモネが待ってくれていた。夏真っ盛りの昼下がり。外は灼熱の暑さだが部屋の中は涼しい空気が流れている。窓から差し込む陽光もなぜか穏やかに感じる。

「はっ…。はっ…。あー。疲れたあ〜。」

座り込んで荒い息をつく僕をみてアネモネは苦笑する。

「うふふっ。旦那様お疲れ様でした!はい!ドリンクをどうぞ!」

アネモネはグラスに注がれている濃い紫色の液体を差し出してきた。いつものショゴスゼリーだ。
喉がカラカラな僕は喉を鳴らしながら飲む。どろりと濃くねっとり甘い感触が喉を通っていく。
だが、飲み干すとすぐに乾きは収まり、安堵感がお腹の中から全身に伝わっていった。

「ごちそうさま。」

「よかった。落ち着かれたようですね旦那様…。」

礼を言ってグラスを返すとアネモネも安心したように一息ついた。冷たい輝きを放っていたグラスは蕩ける様に形を崩し、アネモネの中に消えて行った。

「それはそうといかがなさったのですか?いつもこれほど慌てて帰られる事はございませんでしたのに?」

何事かと問うアネモネに僕も大切な用件を思い出した。僕は懐から綺麗な小箱を取り出すと、アネモネの前に差し出す。

「旦那様。これは一体?」

アネモネは怪訝な様子で小箱を眺めている。僕は緊張をほぐすように深呼吸したのち、一、二度咳払いした。

「アネモネ。これを受け取ってほしいんだ。君と結婚した時。僕は何もできなかったよね。だから…。」

「旦那様…。」

「中…見てほしいな。気に入ってくれると嬉しいんだけど。」

「あっ…。は、はい!早速拝見させていただきます。」

突然の事にぽかんとしていたアネモネだったが、僕が促すと慌てて小箱を開けた。

「旦那様…これはっ!?」

中に入っていたのは二つの指輪だった。白銀のリングと黄色に輝く宝石が、陽光を浴びて煌めいた。アネモネは震える声で問いかけてきた。

「これはシトリン…黄水晶ですか?」

「うん…。」

僕がアネモネと一緒になった時は失業中だった。大切な人の為に僕は何も贈る事が出来なかった。それ以後もアネモネにはずっと世話になりっぱなしだ。アネモネはお互い様です。私こそ旦那様には迷惑をかけている。と言ってくれる。でも、それでは僕の気持ちがおさまらなかった。
いつも面倒を見てくれる僕だけのメイドさん。心優しいアネモネになにかしたかったのだ。

僕がバイトをはじめたのも、正直社会復帰などのためではなかった。あの時贈れなかった結婚指輪をアネモネに捧げたかったのだ。最初は魔宝石のリングに互いの精と魔力を込めあおうと思った。だが、ジュエリーショップでのとんでもない値段を見て、あきらめざるを得なかったのだ。

その時目に入ったのがシトリンの…黄水晶のリングだった。アネモネの瞳の様な優しい黄色の宝石に、僕はたちまち引き付けられた。黄水晶は幸運と希望を呼ぶという。人生に半ば失望していた僕に、生きる希望を与えてくれたアネモネにはふさわしい…。勝手にそう思って黄水晶に決めてしまったのだが。アネモネは気に入ってくれるだろうか?

僕は不安げにアネモネを見つめる。彼女はリングにじっと目をやりながら佇んでいた。
俯いているその表情は何ともうかがえない。もしかして…。これはだめだったかな…。
僕は後悔の念を抑えきれずに頭を下げた。

「これぐらいしかできなくてごめん…。気に入ってくれるかなって………」

「だんなさまあっ!」

最後まで言葉を続けられなかった。アネモネは突然僕にしがみついてきて、しっかりと抱きしめられてしまった。彼女からこぼれる粘液も、はじけるように広がって僕を覆い尽くす。
僕は念入りにアネモネに包み込まれてしまった。

「ありがとうございますだんなさまっ!嬉しいですよぉ…。」

僕を包み込むアネモネはいつも以上に心地よくて良い匂いだ。彼女の突然の歓喜に驚きながらも、僕の心に嬉しさがあふれてきた。

「そ、それじゃあこれで良かったの!?」

「もちろんでございます!旦那様から誓いの指輪を頂けるなんて、天にも昇る心持でございますっ!ああっ。なんと喜ばしい事でございましょうかっ!」

アネモネは感情を爆発させてはしゃいでいる。本当に良かった…。
ただの自己満足にすぎないのかもしれない。でも大好きなひとが喜ぶのを見ていると僕も嬉しい。この気持ちだけは疑えない。

「ねえ…。いかがでしょうか旦那様?こんな感じなのですが…。」

アネモネは指輪をつけて恥じらいながら僕に見せてくれた。美人のアネモネだ。何をつけても似合う事はわかっていた。でも、神秘的とすらいえるその姿に僕は目を見張った。

濃紫のアネモネの体に映える、穏やかな黄色のリング。まるで夜闇を照らす月光の様に…。

「うん、似合っているよ。とっても素敵だ…。」

陶然として言葉を発する僕を見つめて、アネモネは照れくさそうに微笑む。
彼女の瞳も優しい月の輝きだった。












16/10/14 23:11更新 / 近藤無内
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■作者メッセージ
これを書き始めたのはショゴスさんの粘液に浸かってひんやりしたいなあ。という季節でした。
それがいつしかショゴス風呂に入って温まりたいなあ、という季節に移ろうとしています。
ようやく秋らしくなったこの時期に完結を迎えられて、心からほっとしております。
どうか皆さんのもとに優しく世話焼きのショゴスさんが訪れますように…

今回もご覧いただきありがとうございます。

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