読切小説
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リッチさんが物思いにふけって、エロいことする話
数多くいる魔物の中でもアンデッドは比較的人間に近いと思われることが多い。
ラミアのように半身が異形というわけではなく、肌の色もオーガのように人間にありえない色彩をしているというわけではない。
ゴースト属だと体がおぼろげな場合もあるが、それとて人間と同じシルエットになるのは簡単だ。
例えばリッチである私なら、少し血色が良く見えるように化粧するだけで、正体を隠して人間の中に紛れ込めるだろう。
しかしアンデッドである私はそういった意見に異を唱える。
命あるラミアやオーガのほうがまだ人間に近いと。

アンデッドというのは死人が生き返ったわけではなく、死体が動いているだけなのだ。
非生物が動いているという点では、人間よりゴーレムの方に近いとさえ考えている。
確かにリッチは死体とはいえ人間と同程度の体温があり、五感も備わっていて、子を産むことさえできる。
だが生者と死者を隔てている境界線は踏み越えられないほどに大きい。

心臓は動いておらず、意識すればいつまでも呼吸を止めていられる。
食事をしても空腹感が消えるだけで、決して満ち足りることはない。
生まれる子供だって、胎の中にいるときから脈拍がないただの死体として出てくる。
どう言い繕おうともアンデッドは死人、生きてはいないのだ。

そしてだからこそ、私たち死者は男性を強く求める。
異性に対して愛情を抱き、ともに食事をとり、まぐわいを行う。
精の補給という魔物としての実務的な面もあるが、そういった人間の男女が行う日常の行為を果たすことで、錯覚でありながらもアンデッドは生きている感覚を味わえるのだ。

……ああ、いけない。
こんなことを考えていたら、またもや彼の温もりが恋しくなってしまった。
やはり実験の合間に余計なことを考えるのは良くない。
彼と交わるために作業を中断してしまうことになるのだから。



妻としての贔屓目かもしれないが、私の夫は文句のつけようがない男性だ。
死体である私に最初から嫌悪感や偏見をもたず接してくれたのだから。
どうせ死んでいるのだし、多少の猟奇趣味ぐらいは許容しようと私は考えていたが、
彼はそんな倒錯した性癖は持っておらず、普通の女性に対してするように優しく交わり愛してくれた。
そして私もそんな夫のことを心から愛し慕っている。
今の私たちはどこへ出しても恥ずかしくないほどに仲睦まじい夫婦だ。
だから私が突発的に交わりを求めてきても、彼は迷惑がりもせず一緒に寝室へ来てくれる。

「んっ…む……ちゅ…っ」
寝室のベッドに寝転がり、私と夫は全裸で互いの体をまさぐりながら口づけを交わす。
私の肉体は豊満な大人の女性というには難しい少女寄りの姿だが、胸はそれなりにあると自負している。
彼によって握られ、望むままに形を歪める私の乳房。
私たちの体温はさして変わらないのに、彼の手から伝わる温度は生者の熱を含んでいて、それがとても心地よい。
……ああ。もっと、もっと彼の熱が欲しい。

「ねえ、あなた……そろそろいいでしょう? 一つに、なりましょう?」
手で触れるだけ、肌を合わせるだけでは足りなくなった私は次に行きたいと夫にねだる。
優しい彼がそれを断るわけもなく、快く頷いてくれた。
私は彼の上に乗ると、膣液溢れる女性器を指で広げ、男性器をすぐにくわえ込んだ。

「んっ…! はぁ…っ。あなたのちんぽ、ドックンドックンって脈打ってる……」
夫の太く硬い男性器に浮き出た血管。その中を巡る血の流れさえも私は膣で感じ取れる。
しかしこのまま彼の鼓動に感じ入ったりはしない。
経箱の中に魂を納めていても抑え切れないほどの繁殖欲。
それが私の腰を動かし、彼との子作りを進めようとするのだ。

「あっ、んんっ…! はぁ、あなたのちんぽ、気持ちいいわ…!
 もっと、突き上げて…! 私も、もっとまんこ締めてあげるからっ…!」 
互いに腰を動かしぶつけ合うことで、夫の男性器は私の膣内をより激しくかき回す。
愛する夫との交わりで、流す意味のない汗が肌からにじみ、する必要のない呼吸が乱れる。心臓は一拍も打たないが、体は夫の生きた体温が伝導したかのように熱い。

これだ。これなのだ。現在進行形で男性と子作りをしているという事実。
その事実が何よりも私に生きている錯覚を与え、まぐわいによって生じる快感を極限まで増幅してくれる。
さらにもうすぐ夫が注いでくれるであろう精液。
生命の凝縮されたエキスを膣内で受け止めて得られる快感は、死人である私が生き返るかのようだ。

ああ早く欲しい、彼の精液が。
でも彼にはできるかぎり気持ち良くなってもらって、最高の瞬間に射精してもらいたい。
私だけの都合で家畜のように精液を搾り取るなど、許されるわけがないのだから。
だから早く限界に達して、あなた。
お漏らしを我慢できなくなった子供のような顔で、私の胎内を真っ白に汚して。

「あはっ! そろそろ限界みたいね、あなたっ!
 いいわ、いつもみたいに、たっぷりまんこに出してちょうだい!
 私ももうすぐ……ひゃっ!」
夫はブルッと身震いすると、射精を始めた。
男性器の先端から勢いよく噴出する精液は、それこそ小便のように私の膣内に打ち付けられ弾けていく。
とても熱いその液体は何よりも私の肉体に馴染んで精を補給し、満腹感を与えてくれた。
そして命のエキスを女性器というとても繊細な場所にぶつけられた私は、
抜いてあるはずの魂が口から飛び出してしまいそうなほどの快感に襲われる。

「あっ、あっ、出てるわっ! あなたのちんぽが暴れて精液吐き出してるっ!
 勢い強すぎて、子宮の中まで入ってきてるわっ! 
 もっと、ちょうだいっ! あなたの命を感じさせてぇっ!」
インキュバスになりつつある夫の射精量と時間は人間だった頃の比ではなく、
少女の膣内に収まるわけもない。
男性器で入口が塞がれていて出られない精液は、高まった圧力で子宮口をこじ開け、その中まで入り込む。
彼の体内で生成された白くて粘つく生命の元。
それが子宮の奥まで満ち満ちて、命の無い屍肉の元と混ざり合うのを私は幻視する。
これは私の願望が作り出した一瞬の妄想なのだろうけど、本当にそうなってほしいと私は思った。

「あ……はぁ…。好きよ、あなた………んっ」
夫の射精を全て受け止めた私は、繋がったまま彼に抱き付いてキスをした。
彼の胸板に私の体重で潰れた乳房があたり、肌の接触を通じて彼の心臓が強く脈打っているのを感じる。
もしいま彼の胸にナイフを刺したなら、天井まで深紅の血しぶきが飛ぶことだろう。
しかし私の胸では死んだ血液がドロドロと零れ落ちるだけで、勢いなど全くないに違いない。
そんなことをするつもりなど毛頭ないが、彼の鼓動を感じただけで、私は死んでいるのだと思い知らされる。
今はまだ彼の熱が私の中に残っているが、体が冷めてしまえばこの生きている錯覚も完全に消えてしまうことだろう。
別にどうということはない、いつものこと。
だけどその錯覚を失うのが惜しくて、私は今回も愛おしい夫の胸に顔を埋めるのだった。



同じ人間と比べれば確率は低いが、魔物であっても妊娠し子を産むことはできる。
運が悪ければ数十年、数百年かかってもできないものだが、私は幸運に恵まれたらしく、夫のインキュバス化がまだ完了していないにもかかわらず、子を宿すことができた。
妊娠を告げられた夫は予想外のことで驚いたがすぐに喜んでくれた。
そして私もとても嬉しい。

小さくはないが、巨乳と表現するほどでもない二つの乳房。
それは時間をかけて肥大化していき、やがて乳首から母乳を滴らせるようになった。
本来飲ませる相手はまだ胎の中なので、夫に飲んでもらったところ、美味しいと言ってくれた。
食事の時は私がコップに搾っているが、交わりの時など彼は積極的に胸に吸い付いてくる。
そのさまはまるで大きい子供のようで、とても微笑ましい。
彼があまりに可愛いので、子供が成長しても永続的に出せないかと、噴乳の研究を始めてしまったほどだ。

そして胎児が育つ子宮。
中にいるのは私と同じリッチ…つまり死体であるわけだが、
それでも日に日に大きくなっていく腹は母親としての実感を与えてくれる。
もちろん臨月となり大きく膨れ上がった腹部に手を当てても、命の鼓動など欠片も感じられない。それでも自分の胎内で子供が育っていくという現象には、生者のごとき錯覚を味わえるのだ。
きっとこの子が産まれて、母乳を飲ませるときも同じような感覚を得ることだろう。



妊娠中だからといって交わりを控える魔物など存在しない。
アンデッドは外見こそ人間女性そのままだが、魔物の頑丈さは十分に備えている。
胎児のいる子宮をどれほど激しくかき回そうが、流産するようなことは決してないのだ。
最初から死んでいるという観点からすれば、どうやっても死産になると考えてもいいかもしれない。
そういうわけで、私と夫は子供が産まれそうになっても交わりを続けている。

すでに破水して結合部から羊水が漏れているが、私は気にせず彼に膣を突いてもらう。
産気づいたからといって夫を不完全燃焼のまま終わらせるのは、妻の矜持が許さないのだ。彼が射精するまで、私はどうあっても交わることを止めない。
及び腰だった夫も私の意志の硬さを思い知り、急いで終わらせようと腰を早く動かす。
できればもっと私の肉体を味わってほしいところだが、出産においては女よりも男の方が心配性らしいので、彼の意向を優先しよう。

「ふふっ、赤ちゃんの道をご馳走で飾ってくれるなんて、とても良い父親ね。
 この子も喜んで…ああん、そんな顔しないであなた。
 私たちの子はこの程度でどうにかなるほど、ヤワじゃないわ」
精液がこびり付いた膣というのは魔物の胎児にとって最高の歓迎だと思うのだが、まだ人間の感覚を引きずっている彼はそう思わないようだ。
まあいい、二人目を産むころにはその価値観も変わっているだろう。
それよりも今は胎児のことだ。
男性器が抜けたおかげで、子宮口から頭を出そうとしている。
さて、私も息んで娘となる死体を排出しなければ。

「ぐっ…! う…う……んんっ! あっ…子宮口、開いてる…わっ!」
子宮全体が収縮して狭くなり、胎児を膣の方へと押しやっている。
夫の男性器より大きい頭部によって、子宮口はアゴが外れそうなほど広がり、
それが今まで感じたことがないほどに巨大な快感となって脳に届いた。
先ほどまで夫を受け入れていた膣は子が通るための産道となり、
外へ向かう筋肉の蠕動によって私の血を引いた死体はゆっくりと胎内を進んでいく。

「う、う…っ! まんこっ…ギチギチに、伸びてるっ…!
 すごい…のよっ、あなた…! 気持ちよすぎて……おかしくなりそうっ…!」
ガバガバという表現では済まないほどに拡張された私の産道。
吐き気を催すほどの快感を私に与えながら、その中を娘は進んでいく。
夫はすぐ隣で心配そうに見ているが、男性器が屹立しているのは隠せない。
私の出産を目にして彼は欲情しているのだ。
……ああ、これはいい傾向だ。
これならそう遠くないうちに魔物の価値観に染まり切ってくれることだろう。

「く、うっ…頭、出てきそう…! あっ、あっ、まんこ、裏返っちゃうっ…!」
胎児の中で一番大きい頭部が、外に顔を見せ始めたのが分かる。
きっと膣口周辺の肉はめくれ返って、内部の桃色を見せているはずだ。
頭さえ出てしまえば、細い胴体など簡単に抜けてしまうだろう。
死体が死体を産むという、教団員が聞けば冒涜の極みと評すに違いない生者の真似事。
それがもうすぐ終わってしまうなんて、何とも名残惜しい。
せめて夫には余すところなく最後まで見届けてもらおう。

「ああっ、出るわっ! 私たちの子供がもう産まれるっ!
 お願い、見てっ! 見ていてあなたっ! 
 私のまんこが裏返って、死体を吐き出すのを目に焼き付けてぇぇっ!」
息んで腹に力を入れた瞬間、ズルッと頭が抜け、その勢いで胴体まで外に飛び出した。
その瞬間の快楽に、私は陸に揚げられた魚のように体を跳ねさせてしまう。
さらにその動きで爪先までもが抜けてしまい、膣内には私と娘をつないでいるへその緒だけが残された。

「はぁっ…ふぅっ、はっ、はっ、ふぅーっ……。
 ……ちゃんと見てくれた? 私が子供を産むところ」
まぐわう時と同じように乱れていた呼吸を整えながら私は夫に訊く。
彼はすっかり見とれていたのか、ハッと気を取り戻したようにうなずいた。
そしてへこんでしまった私の腹の向こう側にいる娘を優しくペタペタとさわる。
元から死んでいる娘にそんなことをしても健康状態が分かるはずもないと思うが、彼がそうしたいのならさせてあげよう。
私には死体の健康チェックよりも先にやらなければならないことがあるのだから。

「コレどうする? 私が抜きましょうか? それともあなたが抜きたい?」
身を起こした私は、股間から伸びるへその緒をクイッと引っ張り彼に示す。
私の胎内から出た以上、娘にとってコレはもう不要の長物だ。
引っ張って奥にある胎盤ごと剥ぎ取らなければならない。
私はどちらでもいいのだが、もし夫がやりたいと言うなら任せる。さあ、どっち?

「ん、わかったわ。じゃあお願いするわね」
夫は自分がやると言ったので、彼にへその緒を握って引きずり出してもらった。
私の膣口から伸びている肉の管はズリズリと引き出され、ある程度の所でピンと張って止まる。『どうするのか』と顔を見る夫に、力づくで剥がしていいと私は言う。
人間女性ならば乱暴すぎるかもしれないが、私は死体で痛みには鈍いし、
そもそも出産で苦痛を感じるなど魔物としてあり得ない。
だからベリッという音がして肉の袋が引きずり出されても、痛くもかゆくもなかった。

「終わったわね。これで私も本格的に母親か……」
私は夫が差し出してきた娘を受け取って胸に抱いた。
まだ肺の中に羊水が残っているのか、口から液体が零れてくるけど何も心配はしない。
アンデッドにとって、呼吸などほとんど意味はないのだから。
吐き出した水に胸を濡らすまま、よしよしと娘を揺らしてあやす。

私と夫の愛の結晶。それを胸に抱いても生の実感はやはり得られない。
しかし母親として夫と同じように愛しさが胸に湧きあがる。
ああ、可愛い。なんて可愛いんだろうこの子は。
血を引いた娘がこんなに愛しく思えるだなんて、早くも二人目三人目が欲しくなる。

「……ねえ、この子はこんなに大人しくしてることだし、もっと愛し合いましょうよ」
今日は一回目で出産が始まってしまったので、たいして交わりができていないのだ。
体力も回復したことだし、再開しない理由がない。
むしろ子宮が空になったことで再び妊娠できるようになったのだから、積極的に行うべきだろう。
彼は私が抱いている娘のことを気にするが、父と母が仲睦まじくしている姿を見せるのは悪いことではないはずだ。

そのように私が説得すると、夫は少し悩んだ様子を見せつつも提案を受け入れてくれた。
結局のところ、彼だって一度きりの交わりでは満足できないのだ。
私は妹を作るところがよく見えるよう、ベッドの枕元に娘を寝かせる。
赤子の潤んだ瞳は私たちを興味深げに映していて、これから始まる行為に期待しているかのようだった。

よしよし、こんなに早く交わりに興味を示すとは、なんていい子なんだ。
誕生祝いにお母さんとお父さんが愛し合っているところをたくさん見せてあげよう。
この子が大きく育ったら、家族皆でまぐわうのもいいかもしれない。

私はそんなことを考えながら、二人目の子供を宿すために夫を受け入れた。
18/02/17 20:04更新 / 古い目覚まし

■作者メッセージ
またもや魔物がネガティブすぎたかもしれません。



ここまで読んでくださってありがとうございました。

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