連載小説
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Pink maid diary No.1
某日

   ミデア従者専門学院を卒業し、十数年ぶりにお父様とお母様の居る世界に戻ってきて早数週間。『ロミ・ケーキ』7号店に配属になり、仕えたいと思う方が来られるまでバックヤードで働く生活にも大分慣れてきた今日この頃です。
   お恥ずかしい限りですが、依然として気持ちが一歩も進まず、来てくださったお客様が『ご主人様』になりえるかどうかすら観察出来ない有様。私のように、学院で『メイドのメ、はメロウのメ』とからかわれていた、キキーモラ失格者などが奉仕出来るのか、と考えると、どうしても不安で一杯になってしまいます。
   一体いつになったら、お父様とお母様のような、幸せな主従関係を築く事が出来るのでしょうか。自分の、曾お祖母様譲りの桃色の髪を少々恨めしく弄りつつ、ため息を付かざるを得ません。別に曾お祖母様を恨んでいる訳ではなく、性欲をコントロール出来ない自分が恨めしいのです。
   それはそうと、今日は魔界から持ち込んだ魔界短編集の『ある日の朝』を読み、あまりの素敵な奉仕に思わず自己投影してしまい。机の角に擦り付けて自らを慰めてしまいました。それなりに気持ちは良かったのですが、やはり切ない気持ちになってしまいます……。

某日+1week

   ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様!!!
   ……はっ!? あまりの事態に我を忘れてしまいました。ですがそうなるのもきっと無理はありません。何故なら、今日はお客様の対応に出る事が出来たのです!
   その方は同僚の付き合いでしょうか、数名グループの中にいらっしゃいました。何だか『ヤバイヤバイ帰りたい』という負のオーラをダダ漏れにしていて、私が本能に従って襲ってしまえばたちまち泣き出してしまいそうな雰囲気の方でした。
   それなのに、理由はよくわからないのですが、私はその方の前へ歩いて行けました。自分でも驚くくらい自然に、『私がご奉仕します』と、チーフのフランソワさんに言えたのです。
   そのお客様と話をしてみて、彼は内面に、女性に対する物凄い不安と恐怖を抱えてらっしゃる事に気付きました。どんな経験をなされたのかまでは教えていただけませんでしたが、少なくとも彼が私と同じく、『コンプレックスを持つが故に自分に自信が持てない』という性質をお持ちでらっしゃる事を知りました。きっと、私が彼の応対が出来たのは、きっとその部分が共鳴したのではないかと思います。
   ですが、彼の中には、間違いなく惹かれるものがありました。きっと、自身を嫌っている彼はそう申しても納得なされないのでしょうが、私にはしっかりと理解できました。
   また、お越しになっていただけるでしょうか。今度は私自身が食事を振る舞わなければならないでしょう。満足していただけるよう、今から研究しなければなりません。
   むしろ、食事よりも私を召し上がっていただくというのもまた、……あぁ、ダメです……! そんな、生クリームをそんな所に、あ、あぁ……っ!

某日+2week

   ついに言ってしまいました。そして、受けて下さいました。
   言った瞬間は、あまりにも私自身に似た自己否定の思考に対し、『あなた様はあなた様が卑下してらっしゃるような駄目な方ではありません』と伝えたくなってしまい勢いで言ってしまったのですが、雇用宣言というのは私達キキーモラにとっては愛の告白にも近い行為なので、こう、何と言いますか、物凄く恥ずかしかったです。
   ですが、後悔はしてません! これで、あの方のお側に居られる事を考えると、今からお股が

(ここで文章が途切れてしまっている)

某日+3week

ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様

(ページ一杯に同じ単語がぎっしりと書かれている)

某日+3week+1day

   き、昨日は幸せ一杯夢一杯過ぎて暴走してしまいました。
   女性恐怖症を抱えてらっしゃるご主人様が、勇気を出して私をお茶に誘ってくださったのです。その結果はまあどうあれ、お声を掛けてくださった時のご主人様は物凄く素敵で、往来で無ければ思わず股を濡らしていたことでしょう。といいますか結構濡れてました。速乾性のシートを下着に仕込んで居なければ大変な事になっていたでしょう。人間の技術も侮れません。
   紆余曲折あって、私の家にお呼びしたのですが、ご主人様はお疲れの様子でしたので、ベッドの方に運ばせていただきました。魔物の私にとっては、人の身体は家具より軽いので簡単に持ち上げる事が出来るのです。むしろ、すぐ側で寝息を立てるご主人様を襲いそうになる自分を抑えるのが大変でした。
   その後、お目覚めになられたご主人様に『ミデア流マッサージ術・ノーザンスター』を用いていると、恥ずかしながら、あまりにも無防備なご主人様につい本能が鎌首をもたげてしまい、ズボンのベルトとチャックを外してしまいました。
   すると、中から出てきたのは臨戦態勢の肉棒。そこからはもう、従者失格とは思っていても我慢が出来ませんでした。ご奉仕しているんです、とか、ご主人様の溜まっている性欲を発散させる為とか、そういう言い訳を自分にしながら、手淫を務めさせていただいてしまいました。
   それだけでなく、抱き寄せてくださったご主人様に対し、ただ単に自分が気持ち良くなりたいだけなのに自分が動きます、と進言してしまい、私達の初めてを自慰のように行ってしまいました。
   その結果、中途半端な吸収により、一時的な精の欠乏症になってしまい、私本来の姿をご主人様に晒してしまいました。それと同時に、自分のやってしまった事に直面し、ついに犯してはならない事を犯してしまった、と自己嫌悪に陥りました。
   ですがそんな、従者としては論外の私を、ご主人様は好きだと、愛していると仰ってくださったのです。自分を抑えられない私を、必要としてくださったのです。
   その告白があまりにも嬉しかったのでしょう。私の身体は、生まれて初めて、性欲以外のものに包まれたのです。
   何度も、何度も。ご主人様が満足なされるまで抱いていただいて、私は思いました。
   この方に、私の全てを捧げようと。
   従者としては不出来な私で申し訳ないのですが、ご主人様が私を欲してくださる限り、この身を尽くして応えようと。

   ご主人様へ
   私も、あなた様の事を心より愛しています♥︎
14/09/23 14:32更新 / イブシャケ
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■作者メッセージ
ちょっと時間が作れたんで、こんな話をば。
どうも、イブシャケです。火曜っていう中途半端なタイミングで投稿とか、もうね。

何となく、フィネアというキャラクターを掘り下げてみたくなったと言いますかね。
まあ、ちょっとした気晴らしですよ。気晴らし。

てか、何ですか投票数80越えって。私そんなに評価頂ける物書きじゃないですよ何間違って投票ボタン押してるんですか本当にありがとうございます。ビクンビクンしながら次の構成練ってます。

そういえば過去作読んでて気付いたんですが、何か私の作品ってパターン化してませんかね。もーちょっと奇想天外人生山あり谷ありな、先の読めない文を書けるようにならねば。
つーかこの作品にしたって、ネタタグ入れてる癖にあんまりネタネタしてな(ry

とまあ、心機一転。職場も作品に対する考えも改めながら、しょーもない妄想を練っていきますかねー。
ではでは。

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