読切小説
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日射しの中の聖域
 旅人の間では、いつもいろんな噂が飛び交っていた。
 あの国はそろそろ危ないぞ、その国は新しく出来た飯屋が美味い、そんな程度の噂。
 観光の目安となる情報や、危機回避の情報交換は、旅人にとっては必要なもの。
 その中でもまことしやかに噂されている妙な噂として、こんな話があった。

 旅に疲れを感じたら、一も二もなく座り込め。
 もしも無理して進み続け、歩きながら微睡んでしまったら、気をつけろ。
 そこは街道なんかじゃなく、「ボタンを掛け違えた世界」かもしれない――。


 ――それを、まさかその時になって思い出すとは。
 クラベルは後悔した。次の村が近いはずだと気をはやらせ、休憩を取らずに足を動かし続けたことを。早起きして距離を稼ごうとしたことを。歩きながら眠ってしまったことを。
 まだ年若い青年であるクラベルは、得体の知れない光景に怖じ気づいていた。
 無理もない。どれだけ経験・見識ある老人だろうと、困惑していたはずだから。

 足下には、遊び回ったり話し込んだり喧嘩したりしている雑草。
 空は青色や雲の白色ではなく、紫、黄色、茶色と気まぐれに絵の具を塗りつけているかのように変化し続ける。直視できないはずの太陽は、むしろ見せつけるように月といちゃついていた。
 左右を見れば、パイプを吹かしたり肩を組んで歌っていたり野球のようなことをしている木々がある。
 アリやキリギリスは彼ら植物のために枯れ葉や朽ち木などを運び、その褒美として木々に巣を作ったハチから強引に蜜を垂らしていた。不格好な化粧を施した女王バチがそれに怒ってブンブンと抗議をしている。ハチたちの間ではストライキが活発なようだ。

 初め、クラベルは夢を見ているのだと思った。
 しかしそれにしては色鮮やかで音もあり、よく動く。夢とはモノクロで無音の絵だった。
 だからこれは現実としか思えないし――不思議の国、と言うほかなかった。
 幸い、彼ら住民は基本的にクラベルには興味無い様子。
 クラベルはハッと我に返り、警戒しながら先に進むことにした。
 ここでこのまま突っ立っていては頭が変になると思ったからだ。

 少しずつ歩いていくと、無軌道に見えた住民たちにも決まった法則があることに気づく。
 彼らは自分の快楽を優先している。遊ぶこと、パイプを吹かすこと、使われることに幸せそうな顔を浮かべているのだ。自分のものを取られれば怒るのは当たり前だが。
 よく耳を澄ませてみれば、森のどこかしらから女の喘ぎ声のようなものも聞こえる。
 空がピンクに染まった時などは、周囲の草木や昆虫たちが一斉に盛り始める始末。
 いよいよ頭がおかしくなったか、もしくはそういう場所なのか。前者であってほしかった。
 年老いた木のがさがさした喘ぎを背に、クラベルは駆ける。せめて等身大の、言葉が通じる相手がいれば。

 しばらく走り続け、しかしいくら走っても全然森から抜け出せない。
 クラベルの不安がちな心中にどんどん焦りが膨らんでいく。
 同じところをぐるぐる回っているのでは。この木をさっきも見たような。
 悪態をついても、元の世界に戻れるわけではない。クラベルの心が折れるのが早いか、抜け出せるのが早いか。賭けの勝算は、クラベルにはない。
 まずその前に息が切れる。あの時大人しく休んでおけば良かったと何度も後悔を重ね続ける。

 ――そんなだから、視界が急に開けて明るくなった時には逆に驚いた。

 鳥の囁く鳴き声。青い空。揺れる木陰に、穏やかな草原。
 木にもたれて昼寝している人影も見えた。

「……助かった……?」

 思わずそう呟いてしまうクラベルを、誰が責められようか。
 だがまだ安心はできない。油断なく逃げられるように気を配りつつ、人影に近づく。
 よく見てみると魔物娘らしい。頭の上に丸い耳があり、寝間着を身につけていた。
 いつもの旅路であれば魔物娘は出会いたくない相手だが、あんな場所を味わった後ではクラベルにも魔物娘に対する親しみが沸く。理解できる存在だからだ。

「おーい、ちょっといいかな」
「ん……」

 とりあえず声を掛けてみるが、しかし寝ているところを無理に起こすのも悪い。そう思って、クラベルは小声で魔物娘に呼びかける。けっこう熟睡しているようで、起きる様子はない。
 だがその反応で、ますますクラベルは安心した。快晴に過ごしやすい気温と、素晴らしい小春日和だ。爆睡も当然だし、その当然はクラベルにとって望ましいものだった。
 魔物娘の隣に腰掛け、一息を付ける。彼女の見た目はまだまだ幼い少女で、昼寝している姿はなんとも微笑ましい。魔物娘らしく露出の多い格好をしているが、色気のカケラもない寸胴体型だ。間違いを起こすこともないだろう。
 特徴からしてラージマウスのようだが、ラージマウスにしては周囲に群れの姿が見えない。独りだろうか。
 あどけない寝顔に、クラベルの心が安らぐ。あくびまで出てしまう。

「……ふあ。俺も昼寝させてもらおうかな」
「んん……どーぞ」
「っ!? お、起きてるのか?」
「……すぴぴ」
「……ね、寝言かよ……」

 もしも、さっきまでの不思議の国であったなら、寝ながらにして会話する者だっているだろう。
 だが、きっと脱出できたはずなのだ。クラベルはほっと胸をなで下ろした。
 しかしそう思うと、こうしてのんきに寝てる魔物娘の少女がなんだか腹立たしくなってきた。
 クラベルは夢をひっくり返したような世界から息せき切って逃げてきたというのに、この子はそんなこともつゆ知らず、日だまりの中で気持ちよさそうに夢の中。
 すぐに、クラベルの頭に「いたずらしたい」という感情が湧く。
 どうせラージマウスだ。一匹程度、起きても自分なら撃退できる。
 そう考え、青年の手が少女へと伸びていく。

 ――手始めは、ただこしょぐるだけ。
 寝息交じりに笑い声を漏らす魔物娘を見て、クラベルも思わずにやけてしまう。
 だがそれでも起きない少女に、どこまですれば起きないのか、彼は試してみたくなった。
 少女の小さな手をそれぞれ両手で持ち、その肌の若さと柔らかさに感心しながら揉み込む。起きない。
 もふもふとした毛皮に指を通し、その手触りを楽しむ。起きない。
 足裏をこしょぐる。起きない。少女の腕とふとももを比較する。起きない。ふとももの方が太い。胸はぺったんこだというのに、下半身のほうがむっちりしている。
 幼い少女に特有のぽっこりとしたイカ腹を撫で、臓器があることを意識する。起きない。

「んん……ふ。すぅ……すぅ……」

 ここまでやってしまうと、もうクラベルは意地になってしまった。
 彼は旅人であるため、教団や一般市民よりも魔物娘に対する認識は正確だ。
 魔物娘たちは人間の男性を襲って自らの夫とし、子どもを作る。
 もしくは人間の女性を襲って自らと同じ種族の一員として、伴侶作りを後押しする。
 だが、彼の目の前にいるこの少女も男性を性的に襲うのだろうか。とてもそんな色艶は窺えない。
 だからこれはただのいたずらのつもりで、――少女のドロワーズに指を掛けた。

「ん、……あ、っ……」

 ドロワーズの内部に両手の指を通し、もっちりとした尻を支えつつ徐々にずり下げていく。
 下半身を指が撫でるごとに、ぴくり、と少女の肩が震える。少女であっても魔物娘であるということか、例え寝ていたとしても些細な性的刺激すら見逃さないのであろうか。
 股下まで下げると、縦にぴっちりと閉じられた一本のすじが現れる。男にはあって、女にはない。クラベルはそのことに実感を覚え、つい目が奪われる。
 この少女は下半身の肉付きがいい。太ももも尻も、大変柔らかかった。そしてそれは、今目の前にある幼い膣にも同じ事が言える。
 傷口と言うにも当然であると居座る姿からして形容できないか。割れ目という言葉がいかに正確かをよくよく思い知らせてくる。これは正しく女性の神秘だった。
 クラベルは少女を窺いながら、しっとりとした無垢な割れ目に指を滑らせる。

「んっ、ん……ぅ」

 ……僅かに頬を染めている。起きている様子は、まだない。
 やはり身体は敏感なようだ。縦すじの間に指を割り込ませると、吸い付くように肉が指をしゃぶって、少々驚く。ああ、これは唇に似ているのか。クラベルは感心しきりだ。
 気をよくした彼は、陰唇を弄くり続ける。挟まれた状態で指を上に持っていけば割れ目も上に引っ張られ、その割れ目を指で開けば淡いピンク色が顔を出す。クラベルは口内も赤いことを想起した。口内に唾が溜まり、ごくっと飲み込む。
 不意に、じわり、と透明な液体が溢れ始めていることに気づく。
 それはどこからと見てみれば、膣内の奥だ。これが俗に言う愛液か。女性を相手したことがないクラベルにとって、今日は妙に人生経験の多い日になりそうだった。
 かつてどこぞの街で知り合った旅人に教えられた、女の扱い方とやらを思い出す。
 この愛液や、潤滑が足りなければ唾液も使って、まずは膣内をほぐすこと。
 それを真に受けて指先で愛液を掬い、まずは満遍なく肉唇を潤わせていく。

「あ、んんっ……ぁ、あ、う」

 苦しそうな、それでいて色のある吐息が少女から漏れ出す。
 この少女も自慰をするのだろうか。そんな知識があるかもわからない。
 ぐちゃぐちゃに濡れ、少し泡立ったすじから甘ったるい匂いが立つ。小便臭さは薄い。
 それは正しく女であることを示し男を扇情する匂いだ。彼の下半身で血が滾り始める。全身が火照り始め、心臓の鼓動が激しさを帯び始める。血脈に満ちる欲望のエネルギー。
 反して、クラベルの頭は鈍器で殴られたみたいな目眩を感じていた。若い男子にとって眼前の光景は毒でしかない。興奮によって神経が膨らみ、耳鳴りが響く。これらが魔物娘から放たれる濃密な魔力によるものだということは、彼には知るよしもない。

「あぁ、ん……んんう……」

 あまつさえ少女は身をくねらせて、クラベルの指に粘膜を擦り付けておねだりし始めた。すりすりと擦りつけるような、自慰にも似た動き。無垢な幼子の外見からは想像もつかないほどに淫らな、はしたない腰使い。男を誘うためのものだ。
 こうなるともう青年の若い性欲を止められはしない。クラベルは無意識にズボンを下ろし、外気へと雄臭を放ってようやくペニスを取り出したことに気づく始末。
 むせるくらいの精臭を少女も吸い込んだらしく、小さく呻くと同時にますます愛液の分泌が活発になっていく。指先を伝って、ぼろりぼろりと土にシミを残す。

「――先っぽだけ。先っぽだけでも、入れれば、童貞じゃない……先っぽだけ……」
「んん、ふぅ……っ。はやくぅ……」
「は、はは……これでもまだ寝てる。すごいな、魔物娘」

 つま先から頭の上まで、魔物娘は淫らに浸る存在。そんな相手とセックスすれば。
 期待に身体を震わせながら、クラベルは魔物娘を引き寄せて自身の腰を少女の股とくっつけ、ペニスに愛液をまぶすように擦り付けた。それだけでも射精感が登ってきそうだった。
 クラベルは女性経験もなく、本当に性欲に困ったときはなんとか自慰で性欲を処理していた。けれどこれからは、亀頭が未成熟のすじを割ってぬるぬると蹂躙するこの絵面だけでも、しばらく自慰には困らないだろう。楽しむ余地が生まれたと言える。
 だけど今は、セックスすることしか頭にない。
 これまで善い振る舞いを心がけて生きてきたために、娼館を利用することや強姦などは絶対にあり得なかった。それが今は眠りこける魔物娘の罠にかかり、初体験を少女の幼い膣で非合意に果たそうとしている。悍ましい背徳感が脊髄を迸った。
 やがて亀頭が愛液の根源を探り当て、吸い込まれるような未知の細径を予感すると、もはや微塵の我慢すら捨て去って、体重をかけて一息にペニスを突き入れた。

「お、ぉ……っ!」
「んっ!ふぁ、はっ」

 獣のような声を上げてしまうほどに、青年が味わう幼膣は甘美すぎた。
 小柄な身体らしく、その穴も小さく狭く短いもの。だがひとたびペニスの侵入を受け入れると、粘土よりも柔軟に、しかしぎちぎちに抱擁してくる。愛液という潤滑油がなければ肉棒と肉穴が癒着してしまいそうなほどだ。
 無理やりに押し込んだとはいえ、それにしてはあっさりと全てを受け入れる矮穴。これも魔物娘でなければなし得ない肉体構造ってわけだろう。現に、少女の薄い腹を内部から凸起させてしまっている。だというのに少女は眠りつつも快楽に喜悦していた。
 ともかく童貞を捨てることに成功したクラベルは、すぐに凄まじい射精欲求に苛まれる。
 ここから少しでも動いてしまえば射精してしまいそうなほどに気持ちが良い。そのまま何発でも少女の子宮に精液を流し込みたい。彼の思考は本能に塗りつぶされていた。

「うぅ、くそ!味わえ、魔物めっ……!」

 僅かに腰を引いてすぐさま腰を叩きつけると、砕けそうなほどの快楽が陰茎全体を刻みつけて、それを引き金に鈴口から濃厚な精液が塊になって噴流し、彼の脳がだんだん快楽信号を処理しきれなくなっていく。
 手足の末端が赤熱した痛みを訴えかけ、それすらも快楽で、ただクラベルはぎこちなく少女の膣に射精しているペニスをぶち込み続ける。岩よりも硬く膨らんだカリ首が愛液と精液のカクテルを膣からこそぎだし、また押し込むことでごぽごぽと泡立ちながら次から次へと溢れ出ていく。不思議な、夢のような心地だった。
 そのいちいちを、熟睡したままの少女は喘ぎ悶えつつ受け入れる。夢の中でも現実と同じように交わっているのだろうか、クラベルからもたらされる精液の調子に合わせて腰をくねらせたり揺らしたり、精子の一つ残らず注いでもらうためのまるきり恋人同士のセックスだった。傍から見れば、誰も青年が少女を犯しているとは思わない。
 気づけば吐精も打ち止めになり、彼は荒い息をしながらぐっと腰を密着させる。浅ましくも少女を独占しようと、甘味を隠す子どもみたいな行動。
 甘く、甘ったるく、甘すぎる。青年は蕩けそうに錯覚する。
 精液を放ったあともなお、ぎゅうぎゅうと幼穴全体でしがみついてくるせいで、冒涜的な欲望が続きを催促してしまう。少女を相手にした、許されぬ行為の続きを。
 人間が魔物娘が、などという些事はクラベルから抜け落ちていた。根付いてしまう業なのか、この膣穴でなければ今後満足することはできない、という甘美な恐怖を確信する。
 ならば舐め尽くすまで。濃密な射精をした直後だというのに硬度を失わせることなく、再度絶頂を迎えるためにクラベルは少女の粘膜を蹂躙する。

「ひぐっ、ひぃっ、んんぅっ!」

 少女の喘ぎは起きていてもおかしくない声量になっていたが、焦点のぼやけた声質と固く引き結ばれた瞼が眠り続けていることを現していた。まともな精神の持ち主であれば、起きたらまず自分の身に何が起こっているか確認しようとするだろう。
 膣内では陰茎を脈動めいた等間隔でぐっぐっと引き絞り、それとは別に少女の無意識が腰を動かして早くも次の射精を媚びていた。
 可憐な少女であろうとも、魔物娘である以上は精ねだりをする。お腹の奥で受け止める、暖かいものがじんわりと広がっていく感覚こそが、彼女たちを充足させる。
 飲み込むことすら忘れ、口端からだらしなく唾液を垂らしながらがむしゃらに腰を打ち付ける青年。一往復のたびに少女の滑らかな膣襞がペニスにかみつき、カリ首が鍬代わりとなって少しずつ幼膣を大人へと耕していく。

「くそっ……! かわいい寝顔してるくせにド淫乱か……! なんで起きないんだ、このっ」
「はぁうっ、んんぁ、ふうう〜〜〜っ、はっ、あぁっ」

 少女に覆い被さり、より動きやすく、より気持ちよくハマる体勢を探るクラベル。
 必然的に互いの顔が近づき、彼の鼻孔が少女の甘酸っぱい汗の匂いと砂糖菓子しか食べてないんじゃないかと思ってしまうほど甘い吐息を吸い込む。それすらも快楽。
 その甘さをもっともっと求めてしまう。貪欲さがどこまでへもクラベルを少女の幼い雌穴へと突き落としていく。後戻りのできない幸福、あるいは恋心。
 少女の頭を片手で支え、角度を調節しながら少女の小さくあどけない唇にむしゃぶりつく。これも粘膜だ。青年の唇は即座にじんわりと緩やかな痺れを発現させ、身体をぞわぞわと粟立たせた。
 それだけで終わるはずもない。半開きになった少女の口内に舌を蛇のように這わせ、少女の唾や短小な舌や小指の爪ほどの歯を舐め尽くしていく。一方的な陵辱。
 であっても少女の身体はそれを熱烈な求愛行動と認識し、彼の愛撫をもてなす。
 舌を絡ませ、唇で吸い合い、青年の唾液を啜る。そうして小さく絶頂する。
 これが魔物娘であるからなのか、はたまた少女が被虐嗜好なのか、もう誰にも分からない。

「んぶ、ぐ、んふ〜〜っ、むぅぅーっ、んじゅじゅぅ」

 口での交わりによって疎かになったピストンを、少女から膣をうねらせることで催促してみせる。
 それに対して青年は少女の尻を鷲掴みすることで答え、おぼつかない腰使いを再開する。この尻もリンゴ二個分程度の大きさしかないというのに柔らかさに満ち、女性経験のないクラベルの興奮材料へと変わる。自分本位の拙いピストンに拍車が掛かる。
 とはいえ、クラベルも段々どう動かせばいいか把握してきていた。ついでとばかりに、少女が特に感じてしまうらしきポイントも。
 この辺りを擦れば膣を締める。奥を叩けばよがる。それは少女を喜ばせるためなんかではなく、ただ射精に導くための独りよがりなものであったが、少女の身体は悦べればそれでいい様子だった。結果として、二人の間では双方向的な交わりとなる。

「あうっ、うっ、んんっ! んふっ、んうぅんっ」

 青年にとっては、精液をコキ捨てるためのロリ穴。
 少女にとっては、夢心地の甘い純愛らぶらぶえっち。
 酷く悍ましい行為をしているという実感が背徳感を生産し、青年の子種が濃厚に煮詰まっていく。この少女は子どもを作れる身体になっているのだろうか、などともう一歩踏み込んだ恐ろしい想像をすら重ねてしまう。
 夢の中にある性質を持つ魔物娘の少女が見るのは、眠り姫に白昼堂々と口づけをした上で種付けまでしてくれるかっこいい王子様の夢。魔物娘という価値観において、少女が考えるこれ以上ない幸せの理想。それに、かわいいって褒めてくれた。

「はぁ、んひぁっ! くふ、うぅぅぅっ、いひぅ! んぅっ……!」

 奥部を抉りほじる肉厚の亀頭とカリが、敏感な無垢粘膜を蕩けさせる。
 分泌される本気汁が先程の精液と混ざり合い、ひどい性臭を発散させながら淫らな粘水音を奏でていた。肉と肉がぶつかり合う拍手のような炸裂音も木立に響く。
 無遠慮で容赦がない大人の本気種付けセックス。だが魔物娘は少女であっても頑丈であり、セックスに特化した生命だ。体重を預けるように覆い被さられていること、叩きつけるように貪られていること、そのどれもが少女の被虐快感を煽り立てる程度でしかない。
 そういう意味であれば、雄肉が少女の薄い腹筋を内側から押し上げるなんて乱暴で頭がおかしくなってしまいそうな快楽と絶頂が少女を襲ってはいるが、狂わされているのはクラベルのほうだろう。射精欲求のみが脳を支配していた。
 不意に、青年の腰の奥からなにかがこみ上げる陶酔感が訪れる。同時に凶悪なカリが肉傘を開き、生理が来てるか疑わしい無垢子宮の眼前で錨を下ろそうとする。
 二発目とはいえ、魔物娘の搾精器官を相手にかなり善戦をしたと言っていい。ただでさえ窮屈な少女の肉径は、度重なる絶頂で波打つように蠕動し、更には健気にも青年に気持ちよくなってもらおうと腰使いを合わせてすらもいた。
 孕ませたい。目の前の少女に、子どもを産ませたい。
 生命の原始的な渇望に満たされて、青年の口から熱に浮かされた言葉が発される。

「孕めっ……! 母親になっちまえ……ッ!」
「くぁ、うぅぅーっ! すきっ……! こどもぉ、ほしっ……! あぁぅ!」

 プロポーズに他ならぬ一言。眠ったままの少女は、こくんと頷く。
 そうして、――限界の堤防は崩落し、一度目よりも濃密な精が溢れ出す。

「うおぉっ……! 蕩けるっ……」
「あはぁぁぁぁ……っ。っ、は、あぁぁぁ……!」

 尿道から脈々とゼリー状の白濁精液が快楽と共に排泄され、男の全身に至福の絶頂が駆け上っていく。放出感、征服感、生殖欲求。暗い欲望が満ちる。
 それを少女は肯定する。瞑った眦を嬉し涙にふやけさせて、心底気持ちよさそうなふにゃふにゃの微笑みを頬に表せて、ちまっこい子宮がどろっどろの熱々特濃精液を飲み干していく。ぷにぷにした少女の両足が青年の腰を挟み、射精し切るまで逃さないつもりだ。
 互いが互いに与える、極上の絶頂快楽。青年は激しい射精快楽に、少女は充たされる子宮快楽に。密着する二人分の肉の上に浮かぶ汗は、どれがどちらのものかわからない。
 蕩け合い、混ざり合い、睦み合い。眠りの魔物娘――ドーマウスにとって、こんな激しい性交と孕ませる宣言のもとになされた射精は、彼女を目覚めさせるに充分で。
 二十秒経っても三十秒経っても射精が終わらない、全身を引っこ抜かれそうな寂寞感めいた快楽に耽る青年は、彼女が目を開いたことにも気づかない。

「ぐおっ、まだ出るっ……!」
「はぁぁーっ……。あったかいよぉ……っ。きもちいい、すき、だいすきっ」

 むにゃむにゃと寝ぼけたような舌っ足らずの言葉でも、その内にある想いはぼやけていない。自らに子種を撃ち込む男性を――夫を、魔物娘は愛おしまずにいられない。
 止めどなく溢れ出る射精も、徐々に勢いを失っていき、それでも最後の一つまで欲しがる卑しい雌の本能がロリ膣を蠢かせ、がんばれがんばれと応援するように搾り取ろうとしてくる。青年の口から心地よさそうなため息が漏れ、少女は嬉しく微笑む。

「ぜんぶ、ぜんぶ出してっ……。びゅるるーってするの、かっこいいよ……」

 青年の耳元で紡がれる、少女の愛に満ちた囁き。
 純粋な褒め言葉は男の自尊心を満足させる。最後まで気持ちよく射精してもらいたいがためでもあり、先程かわいいなんて褒められたお返しでもあり、どちらにせよ少女自身の健気さが鈴を転がすような声に含まれているのに変わりはない。
 青年は腰から下が溶けてしまいそうな感覚に陥っていて、だけどそんな浅ましさを少女は受け止め許しを与えるものだから、背徳感にも増して愛着が湧いてしまう。
 卵が先か鶏が先か――そんなことは些事だろう。結果として鶏たる少女を愛すようになれば、卵を孕ませるのが先であっても、少女はそれで幸せなのだから。
 やがて射精は止まり、肉と肉の隙間から泡立ったなにともわからぬ白い液体が音を立ててこぼれ落ちる。青年の肩が荒く上下に動く。

「ん、あ……。おなか、ぽこってしてる……。いっぱい、出たね」

 はっきりと意識のある、聖母めいた慈愛の言葉が青年の耳を震わせる。
 そこでようやく、青年は少女が起きていることに気づく。だが青年がなにかを言うよりも先に、ほっそりとした少女のちいさな両手が青年の頬を捉え、そっと口づけを交わす。

「ちゅっ……。ふ、えへへ」

 お遊びのような、決して淫欲の含まれないキス。
 突然頬を包まれて目を白黒させた青年も、優しい唇とふわふわした笑顔の少女を見下ろせば、毒気を抜かれてなにも言えなくなってしまった。
 いい夢を見ていたような、とても爽やかで清々しい気分。それが青年の心にある。けれど夢なんかではなくて、身動ぎするとじんわりした尾を引く快楽が下腹部から伝わる。それが現実であることの証左だ。あるいは現実が夢に溶けたのかもしれない。
 揺れる木漏れ日の下で、ドーマウスは子猫みたいに頭を青年の胸へすりつける。
 青年はもはや不思議の国から抜け出すことなど叶わなかった。



――――――――――――



 ――ティーポットの揺りかごに、二人は変わらず肌を重ねる。

「ん、んぅ……。あぅ、んくぅっ」

 目を瞑って、互いの熱を確かめて。漫然とした交わりは、ただ肉体だけのもの。二人の世界はここにはあらず、互いが互いに夢を見る。夢中で交わるだけだとしても。
 空からさんさんと注ぐ麗らかな春の日射しは小さな草原を美しく輝かせ、その真ん中で陣取る不思議な陶製ティーポットはじっくりと甘さを煮詰められていく。互いが互いに味わうために。啜り、舐め取り、口付けるために。
 ここは日射しの中の聖域。昼下がりの木陰でまた会いましょう。
18/02/10 07:17更新 / 鍵山白煙

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