連載小説
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後篇

薄暗い部屋が一瞬だけ明るくなる。
煙草に着火した独特の香りが鼻孔を掠め、オイルライターの軽妙な金属音が室内に響く。彼女が咥えた煙草に火をつけたのだ。深呼吸するようにたっぷりと息を吸い込み、紫煙を吐き出しながら目の前に立つ魔物娘、栗原麗は不敵に微笑む。

「さて、と」
教室から引き摺られるようにして連れ出された清志は今、体育などで使用する用具を収納している倉庫にいる。夏だと言うのに倉庫内は温度が低く、乾燥していて埃っぽい。校舎から離れ、人通りもほとんどないこの場所は確かに尋問する場所としては最適だろう。彼女がわざわざ場所を移した理由がいやでもよくわかる。
「改めてお前さんが一体、私の大事な下着に何をしてくれたのか…話してもらおうか。」
「………。」
「おやあ〜?だんまりかい。いい度胸だ。くくく、ふぅ〜……」
「ぅっ…」
あまりの事に口を開く事が出来ない清志に紫煙が吐きかけられる。
両親は喫煙の習慣がなく、親類にも煙草を吸う人間がいない環境で育ったせいもあり、煙草を、しかも未成年の同級生が吸っているというだけで清志は情けなく委縮してしまった。麗は震える自分を奇妙なまなざしで舐めまわすように見つめ、くつくつと喉の奥で籠らせたような笑い声を上げたかと思うと、ポケットから下着を取り出して見せつけるように揺らめかせる。そしてさっと顔から笑みを消し、眉間に深い皺をよせて凄んだ。
「なあ、日野よぉ。お前さん、いくら転校生だからって言っても…アタシの噂くらいは周りの連中から聞いているんだろ?」
黙って頷くと、麗はいくらか機嫌を直したように続ける。

「だったらよぉ〜アタシの機嫌が悪くなる前に…素直に下着で何をしていたのか白状した方がいいってもんじゃないのかい?あんただって中退なんかしたくないだろ?こんなところで躓いて、大学にすらいけませんでしたなんてなったら…お前の両親、特に親父さんは悲しむだろうからなあ…」

その一言で本当に血の気が引いていった。
彼女の言う通り、栗原麗の噂は転校して一週間しか経たない清志の耳にもイヤというほど届いてきた。母親は警察にもコネがある政治家でありこの学校の理事にも名を連ねていて、それをいいことに彼女は好き放題していると言うのだ。恵まれた体格に加え人虎に鍛えられた腕力で他人に暴力をふるう、弱い者から平気でカツアゲをする、煙草のみならず法に触れる薬にまで手を出している、夜バイクに乗り暴走行為をしている姿を見ただのその噂の数とバラエティは想像以上だった。

「(ま、まさか…本当に…退学させることが?)」
そんな実しやかに噂される中で一番多く語られる話が、彼女が気にくわない生徒を親の権力を使って退学させているというものだった。彼女が入学して以来、彼女の怒りにふれた何人もの生徒が、突然理由を告げることなくこの学校を去っているらしい。そんな話を聞かせてくれた同級生に、清志はその時何の冗談なんだと笑い飛ばした。しかし、現に目の前にいる噂の張本人は真顔でこちらを真っ直ぐ見据え、その噂通りの内容を話している。その瞬間、嫌な汗と共に凄惨な自分の未来が脳裏に浮かぶ。ここまで育ててくれた両親が自分の退学を知ったらなんというだろう、父親の様になりたいと願って今まで頑張ってきた道も確実に閉ざされてしまうにちがいない、まさにどう考えてもお先真っ暗という状況しか見えてこなかった。麗は言葉を失い顔面蒼白になった清志を、どこか艶めかしい視線で射止めながら優しい声色で唆す。

「なあ、日野。状況を理解したか?私を怒らせたってなんのいいこともない。なら素直に白状した方がいい。そうだろ?」
「…うん。」
肯定の言葉をなんとか呟く。
「じゃあ日野…さっきお前は何をしてたんだ?言ってみろ。」
「……匂いを、嗅いでいました。」
「ほ〜う、どうやって?」
ただ答えるだけではダメだと言わんばかりに、麗は清志に詰め寄ってくる。
「栗原さんの…下着に、顔を…」
「顔を〜?」
「か、顔を埋めて匂いを嗅いでいました。」
恥ずかしさのあまり清志は真っ赤になった顔を下に向けてしまった。だが、麗の追及は終わらない。
「どうだった。」
「え?」
「アタシのパンツに顔を埋めて、あんなに鼻息荒く匂いを嗅いでたんだ。どうだったか感想を言えよ。」
「…その、甘い匂いがして…その匂いを吸い込む度にどんどん体が熱くなって、何度もこんなこと止めなきゃいけないと思ったけど、体が言うこと言うことをきかなくて、やめられなかったんだ。もっと嗅ぎたいって気持ちが抑えられなくて……」
最後は情けないほど声が尻すぼみになってしまう。

「ふ〜ん、そうかい。しかし、日野よぉ。」
言質を取ったと言わんばかりにしたり顔を浮かべながら、麗はゆっくりと顔を近づけて耳元で囁く。
「お前がそうやって人のパンツで楽しんだのはいいけどよ…アタシに対してどういう落とし前をつけてくれるつもりなんだ?」
「……それは」
「男なら誠意ってもんを、見せて欲しい…」
だがここで、それまで挑発やあざけりの言葉をぶつけてきた彼女から思いもよらない提案がもたらされた。
「と言いたいところだが、アタシだって鬼じゃない。確かにあんたはアタシの下着で変態行為を働いた、その事実は変わらないだろうさ。でも、元はといえばパンツを”落としてしまった”アタシにだって非がある。そうでなきゃ真面目なお前さんが」
あんな変態みたいな真似をするわけないよなあ、そう言って麗に顎を掴まれ鼻と鼻がすりあうほど顔を近づけられる。

「だからな。アタシと一つ賭けをしてみないか?」

「賭け?」
「そうだ。あんたが勝てば、アタシは今日あったことをすっかり全部忘れてやる。今後どんなことがあっても決して口外しない。逆にアタシが勝てば、お前さんの処遇を自由にできる。勿論命の危険があるようなことはさせないから安心しな。悪くない条件だろう?なあに、気負う事はない…ちょっとしたゲームだよ。」

それは悪魔との取引に似たものだった。
確かに自分がその賭けに勝てば今まで通り安穏とした高校生活を送ることができるだろう。それは清志にとって願ってもないことだ。動揺し、混乱した頭はすぐにその甘い罠が最良の答えであるように錯覚した。
「さあ、どうする。この賭けに乗るかい?それとも何もせずにこの学校からいなくなりたいか?…どうなんだい?」
どうあがいたってイニシアティブは彼女が握っているし、現状を打破する道はこれしか残されていないと、そういうふうにしか考える事が出来なくなっていた。だから清志は何とか体に力を込め彼女の提案を…承諾した。
「分かった。賭けに乗るよ。」
「おっ男を魅せるねえ〜そうこなくっちゃ面白くない。」
清志の言葉を聞いて、初めて麗は嬉しそうに笑顔を綻ばせた。
だが、彼女のそんな様子を見ていると途端に清志の中で不安が膨らんできた。もしかしたら自分はとんでもない不利な条件をのんでしまったのではないだろうか。
「それで、賭けって何をするの?」
「そう身構えなくていいさ、簡単な賭けだよ。」
そう言ってマンティコアは自身の尻尾を引き寄せつつ、大きな獣の手で清志の股間を撫でまわしながら賭けの全貌を明かした。

「お前さんのチンポをこのアタシの尻尾に突っ込んで、20分以内に五回射精させることができたらアタシの勝ち。射精せずに時間内こられきれば日野の勝ち。なあ、シンプルでいいだろ?」

「そ、そんな!!」
想像もしなかった賭けの内容に抗議の声を上げようとするが、有無を言わさない鋭い麗の声によって遮られる。
「お前さんは、さっきこの賭けに“のる”といった。内容を聞こうと思えばそうするだけの機会があったのに、賭けの方法を聞きもしないでそう決断したお前に責任がある。そうだろ?」
「………。」
「そういうことだ、観念しな。さあ、早速始めよう。服を脱がせるから抵抗するなよ〜」
清志を罠にはめ、確実に冷静さを奪い自分通りにコントロールしたことで満足そうに微笑む麗を見て、改めて自分が墓穴を掘ってしまったことを悟るが、完全にそれは後の祭り。彼女によって器用に、大切な着せ替え人形をそうするようにゆっくりと制服を脱がされていく間、なすすべなく立ちつくす他なかった。


「おお、なかなかいいい体してるじゃあないか。」
「あんまり、じろじろ…見ないで。」
「いいじゃないか、減るもんじゃないし」
「そ、そんな…」
パンツ以外の衣服をはぎ取られ、あらわになる肢体を舐めまわすように視姦される。
「それにそんなこと言って、ちゃんと興奮してるじゃないか〜日野君よぉ。」
パンツ越しに掌を押し付けるようにして股間を愛撫される。
「あぅ…やめて」
彼女の言う通り、既に男根は八割方勃起していた。
「準備もそこまで必要ないみたいだし、早速始めようかね。」
そう言うと有無を言わさず清志の下着を下し、彼女の尻尾がゆっくりと獲物を定めるようにしながら迫ってきた。
にちぃ…ぶちゅ
そして天を突くように固く勃起するペニスの前で動きを止めたかと思うと、まるで花弁が開くように尻尾の先が割れ、透明で粘り気のある体液を吐きだしながら尻尾の口が開いていった。中に覘く肉襞は薄暗い室内でもはっきりと分かるほど綺麗なピンク色で、透明で粘度の高い液体をじゅぶじゅぶと吐き出しながら蠢いている。それだけではなく彼女の搾精器官があらわになった瞬間、さきほどパンツから漂っていた匂いをさらに濃厚に凝縮したような香りがむわっと立ち込める。その香りをかいだだけで、ペニスがびくびくと震え、先走り液が鈴口から滲みでてしまう。この肉の洞にペニスを飲みこまれたら…それはどれほど気持ちがいいのだろう。そんな事ばかりが頭に浮かんでは消えた。
「じゃあ、今から20分間…精々あがいてみな、変態さんよ〜」
脳内にピンク色の靄がかかっていく清志を可笑しそうに見つめつつ、麗はそのグロテスクな尻尾でまるで見せつけるようにしてペニスを飲みこんでいった。清志は必死に気を引き締め直し、襲いかかってくる衝撃に身構えた。



「……うわっぁ!!ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
グロテスクな尻尾に自分の体の一部が消えていく。
亀頭からゆっくりと飲みこまれていき、ねっとりと吸いつきながらペニスの根元まで麗の尻尾が到達した。それだけ、ただ挿入されただけで想像を絶する衝撃が清志の体を貫いた。
ぐにゅぐにゅ…うにょうにょ…ねちょねちょ…
尻尾にたっぷりと詰まっている淫猥な肉襞が、ぬるま湯の様な暖かさを保ちつつ不規則に蠢いている。
「あぁッ!あ!!ああっ!!!」
ドクッドクン…ドクン…
経験のした事の無い、まるで自分の男根が溶かされてしまっているような刺激にたまらず、清志は麗の人外の尻尾の中で盛大に精液を吐きだした。

「おお!?なんだ、もういっちまったのか…。まだ入れて30秒と経っていやしないじゃないか。情けねえなあ〜。」
その身で男を嬲ることにとても興奮したのか、麗は額に薄っすらと汗を滲ませ、瞳に熱と情欲を浮かべている。想像を絶する射精の気持ちよさに焦点の合わない清志の目に、その姿には先程までにはない美しさがあるように見えた。
「だって…こんなすごいなんて…思いもしなかったんだ…」
「お前なあ」
「?」
「アタシはまだ尻尾の中を動かしてすらいないんだ。こんなのはまだまだ序の口だぞ?」
「…え!?」
ペニスを嬲る彼女の淫肉が、未だに動いていないという事実に清志は打ちのめされる。
「何を驚いてんだ。今からたっぷり搾ってやるから…その身でしっかり味わいな♡」

にゅるにゅる、ぬちゅぬちゅ、ぎちゅぎちゅ
「な、なんだこれ…!?あぁ、あああああ!!!」
みっちりと詰まった肉襞が、突然一斉に動き出し、射精後に震えるペニスに襲いかかってきた。亀頭を優しく磨きあげられ、鈴口を押し広げ少しでも奥を刺激するように揉みしだかれ、血管が浮き出る固い幹に自身の愛液をしみこませるように纏わりつく。清志は驚愕してしまう。彼女の言葉は本当だった。先程まで感じていた快感は、まだ動いてすらいない、何もしていない状態で与えられた快感だった。それなのに自分はたまらず降伏してしまった…。自分はこれからこの強烈な刺激を耐えなければいけない。その事実が、恐ろしかった。
「こ、これ…は!?」
「な?これがちゃんと、動かした状態だよ。わかったかい?」
尻尾の中は驚くべきねちっこさで清志の分身を責め立てているのに、麗はどこ吹く風と言った具合に涼しい顔をする。
「さ、そろそろ我慢もできなくなってくるころだろうし…二回目の射精をいただくとしようか♡」
「が、あぁ!!中が、うぅあ!?」
麗がペニスにまぶりついた襞の動きをより一層活性化させた。
一段と動きが激しくなり、その動きに遊びが無い事が分かる。ただの愛撫から本格的に精を搾る動きへと変貌していた。やみくもに絡みついていた淫肉が根元から亀頭へ向かって乳牛の乳を搾るように男根を弄ぶ。意思を持った蠕動運動には、まるで容赦というものはない。
どぴゅっぴゅぐ…ぴゅぅ
まずい、そう思う間もなく清志は射精してしまっていた。
搾精器官である尻尾は、先端でがっつりと股間に食いつき、麗の体へと続くホース状の部分を喜んでいるかのようにびくびくと震わせながら大量に吐き出された精液を飲みこんでいく。ペニスに絡みつく柔らかい襞も、まるで先走り、精液の一滴でも逃さないと言わんばかりに陰茎全体をゆっくり扱きあげるようにして搾り上げた。

「はぁ…は、うぅ」
「はい、二回目もたっぷり美味しい精液が出ましたね〜っと。なあ、分かってるか?」
荒い息を吐き、俯く清志の顎を掴んで顔を上げさせ、目を合わせて麗がからかう。
「まだ二分と経っていないのに、もう二回も射精してるんだぞ、日野君よぉ。それともなんだ、もしかして端から賭けに勝つ気なんてなかったのか?」
「そ、んな事…あるわけ」
「いいねえ、まだそういう目が出来るあんたが素敵だよ。」
精一杯、なんとか気力を奮い起して麗を睨み言い返すが、意地悪なマンティコアはそれをむしろ面白そうに受け止め、視線と声色にたっぷりと嗜虐の色を籠めて言い放つ。

「だからこそ、そんな表情のお前を……アタシの体で堕としてやりたいねぇ」

ぎゅ、ぎゅぅ…ぎにぃぎにぃ…
「あ、ああ……くぅぅっ!!」
彼女が自身の欲望を言い終えると同時に、尻尾の中で再び淫肉が動き始める。
それまではあくまで優しく、包み込むように愛撫していた状態が一変し、文字通り搾り上げる様な動きで射精を促される。亀頭、鈴口、竿、根元とパーツごとに細かく動いていた襞が、まるで一つの壁になったかのようにまとまり絞り上げてくる。時に吸い上げるように、時にねじり上げるように、その動きは変幻自在だった。乱暴で力強い愛撫から齎される刺激の強さに思わず言葉を無くし、奥歯を噛み絞めてなんとか堪える。すると今度は経験したこともない様な短時間で二度も射精していることや、今までの様に動きが分散していないことも幸いしてなんとか射精を我慢する事が出来た。
「おぉ?なんだい、今度は中々我慢強いじゃあないかい。さっきまであんなに私の尻尾で気持ちよさそうに楽しんでたのに。」
「ぅう…楽しんでなんかいないっ!!」
「なんとも勇ましいねぇ〜それじゃあ、これからもっと激しく動くから、それもしっかり耐えてアタシを楽しませてくれよ?」
「へ?」

じゅぷ、じゅぷ…ぐゅっぎちゅ…
「うわぁっ、激しいっ!!」
根元まで陰茎を咥えこんだ麗の尻尾が、突然ピストン運動を開始した。
ペニスを締め付ける内部の圧力はそのままに、激しくこすり上げる。たっぷりと吐き出される粘液の御蔭で摩擦や痛みは一切なく、恐ろしいまでに快楽しか清志は感じる事が出来なかった。しかも尻尾の動きは変幻自在で、スピードに強弱をつけたり、抽送する際に回転を加えたり、焦らすように亀頭だけを咥えこんで咀嚼するなどして、必死に耐えようとする清志を翻弄する。
「あ、があ、んぐぅ…」
「ふふ〜。さっきまでの威勢はどうしたのさ。顔が真っ赤になってるぞ。」
気を抜けば射精してしまいそうな清志とは対照的に、麗はどこまでも余裕綽綽といった様子。
「動きを激しくした途端にそんなに感じるなんて、お前さん…もしかしてマゾなのか?ははは!!」
「ち、違う!!」
「そう言う台詞は、しっかりと射精を我慢してから言いましょうね…清志君?今回はよく頑張ったけど、そろそろ終わりみたいだね。もう亀頭が可愛そうなくらいびくびく震えてるし、腰もがくがくしてるじゃあないか。」
そう言って彼女は陰茎がぎりぎり抜けるまで尻尾をひいたかと思うと、両手で清志の顔をがっちりとロックし、それを見下ろすようにして言い放つ。
「出して楽になっちまえよ♡」
「うああああああああああぁっ!!!」
一気にペニスが飲みこまれ、空気に触れていたペニスが暖かい襞で締め付けられる。
びゅ、びゅぅ…びゅぐぅ
限界だった。
ペニスが苦しげに震え、大量の精子がぶちまけられる。今まで経験した事の無い長い射精が続いた。

「うぁ…もう、ダメ…」
まるで射精まで完全にコントロールされている様な気がして悔しくて、確実に自分の惨憺たる未来が近づいている恐怖から思わず弱音が出てしまう。
「はい三回目ってありゃ?」
吐き出される白濁液の味を噛み締めていた麗が何かに気がついたように目線を清志の股間へと走らせる。
「まだ私の尻尾の中だってのに…ちょっと萎んでる?」
その通りだった。
ただの人間である清志にとって、こんな短時間に三回もこれまでしたことのないような長く強い射精をしたのだ。いくら魔物娘と交わっているとはいえ、いつまでもペニスを固く勃起させるのは難しい。しかもそれに加え、賭けに負けた際の不安が清志の心中に大きく膨らみ拍車をかけていた。
「あれまあ、やりすぎちゃったかね〜。」
その様子を少し申し訳なさそうに見ている彼女を見て、もしかしてこれはチャンスなのではと清志が思い始めたその時だった。

ブスリ…
「え…」
突然右足の付け根、太い血管やリンパ腺が集中する辺りに何かが突き刺さった。
「まあ、それもアタシにとっちゃ想定内の出来事なんだけどな。」
刺さっていたのは、彼女の尻尾にたくさん生えている“棘”だった。
「な、んだ…これ、あぐぁ!?」
効果はすぐにあらわれた。
刺さった場所がじくじくと鈍い熱を帯び始め、すぐに体全体が熱に浮かされる。そしてなによりも顕著に変化が表れたのは局部だった。柔らかくなっていたペニスは全く射精していない時よりも勃起しているのではないかと思うほどぱんぱんに充血し、軽くなったはずの精巣はまるで狂ったように稼働を始め精子を蓄える。ただただ呆然とする清志の体に大きな獣の指でのの字を書きながら、可愛らしい声でわざとらしく麗がとぼける。
「あらぁ〜?元気がなくなったように感じたのはアタシの勘違いだったみたい。だってこんなに固くおちんちんを勃起させているもの。やっぱり逞しい殿方って素敵♡」
「ま、まさか、これって…」
確か、彼女達マンティコアの尻尾には毒が…強烈な催淫効果のある毒があるのだと聞いた事がある。と言う事は自分の体の変調も、全てはこの棘のせいだろう。今まで忘れていた彼女達の特徴を思い出し、あわてて体に刺さった棘を引き抜こうと手をのばすが、麗はそれをめざとく見ていた。そしてそれを見逃すはずはなかった。

「まあ、そう遠慮せずにもう一本どうぞ?」
「え?」
ブスリ…
今度は反対側の、左足の付け根に棘が差し込まれた。
一本目の毒が全身に回っているせいか、二本目の毒はそれ以上に強く清志の体をむしばんだ。快楽すら感じるその毒によって限界を迎えたペニスから、まるで熟れすぎた果実がそうなるように成すすべなくザーメンを噴き出てしまう。
びゅる、ぶりゅぐぅ、ドクッ
「あひっ、だめ…ダメなのに、出ちゃうぅ…!!!」
「はーい、四回目ごちそうさま。元気で美味しい精液をたっぷりとどうも♡」
すっかりかぶっていた猫を取り去り、調子を元に戻したマンティコアがまるで他人事のようにカウントをする。
「これ、は…ずるい、よ…」
「ずるいだって?この賭けを始める前に、マンティコアの毒を使うなって制約でもしたかい?アタシだって遊びでやってんじゃないんだから、使えるモノは何でも使うさ。よくいうだろ、百獣の王は狩りをする時には例えどんな相手でも決して手を抜かないってね。だから私もあんたから精液を搾るのに手加減は一切しない。最後の五回目、精々頑張って耐えてくれよな?」

にちゅにちゅぅ、ずずずずず、ぬちゅ、ぐちょぐちょぐちょ…
言葉を言い終えたその刹那、彼女の淫肉が凄まじい動きでのたうち始める。
様々な搾精行動を駆使し、ただ男を射精させるという目的のためだけに動くそれは、容赦なく亀頭、カリ首、竿に襲いかかる。彼女も全力なのだ。その快感は実に、実に壮絶だった。
「ああぁッ…ぐうううぅぅぅぅ……!!」
清志は少しでも快楽をごまかす為に唇を噛み締める。
同時に強く瞑った目の端からうっすらと涙が滲む。出してしまったら、全てが終わってしまう。脳裏に父や母の顔が浮かぶ。心が快楽に折れてしまえば向かう先は最悪の結果。震える腰を抑えつけ、なんとしても射精しないように堪える。








ブスリ…



どぷぅ!!どくっどくぅどぴゅどぴゅ…!!!

「あぁああぁあぁぁ…うあぁぁぁぁぁぁ…!!!」
しかし、健気に耐え忍ぶ清志の体に無情にも三本目の棘が前立腺付近に放たれ…あっけなくその時は訪れた。

清志は射精と共にまるで魂を吐きだしたように呻いた。
体が弛緩し、立っていられずその場に崩れ落ちる。もはや体を支えるだけの気力は残っていなかった。全ての感情、恐怖や不安さえも麗がもたらす快感に淘汰されてしまった。
「五回目、だな。…アタシの勝ちだ。」
賭けに勝利した麗は、勝利の余韻に酔っているのか顔を真っ赤に染めながら倒れた清志を介抱する。
「ダメ…だった…」
分かってはいるが、改めて言われると言葉で言い表せない感情が清志を支配する。
最後に人前で泣いたのが何時のことだか分からないが、涙が一筋頬を伝った。その様子をじっくり見ながら、麗は清志に話しかける。
「ああ、そうだ。お前さんは賭けに負けた。その意味が分かるよな?」
「……。」
「沈黙は了承と受け取るよ。」
清志はその身をぐったりと横たえながら、次に彼女がいう台詞を想像した。
最後の情けで優しくこの学校を去れと言ってくれるだろうか、それともトラウマになる様な言動で自分をこの学校から追い出すのだろうか、それとも追い出すだけではすまず一生いいように自分から全てを搾取することを宣言するのか…そんなネガティブな妄想が頭一杯に展開した。





だが、麗の台詞はそのどれとも違っていた。



「賭けに負けたお前、日野清志はこれからアタシだけのオスとして共に生きて貰う。分かったか?」



「………はあ?」
「おい、なんだその失礼なリアクションは。」
「いや、あの…退学の話しは…どうなったの?」
「…あんなの全部嘘っぱちさ。」
「はあ!?」
それまでぐったりとしていた体に嘘のように力が沸いた。驚きの声を上げ、麗にしがみつく。この時ばかりは快感も吹き飛んだ。
「あのなあ、よく考えても見ろよ。」
それを適当にいなしながら、麗は正論を口にする。

「確かにアタシの母親は政治家でこの学校の理事だ。他の保護者よりかだいぶ特殊だろうさ。だけどな、アタシはただの学生だぞ。しかも教師から全く信頼されていない不良だ。そんな奴が勝手に生徒を退学になんて出来る訳もないだろ。」
「え、じゃああの噂は…」
「あんなのデマに決まってる。」
彼女の一言に再び全身の力が抜けた。
「清志の様に突然の転校だったり、不思議の国や万魔殿にいっちまう奴が結構いる。なんせ元々生徒の数が多いからな。だが本人たちはそれでいいだろうが、残された周りの人間はそういうわけにはいかない。真否は別としてなにか理由が欲しくなる。だから自分たちが納得するために、そういう曖昧な状態でいなくなった連中のために作り上げた虚構こそが『不良のアタシに消された』ってわけだ。そんなふざけた理由で馬鹿な噂を流されてるんだ、それを利用したって別にいいだろ?」
「………。」
「ま、こっちの想像以上にお前さんに効いたみたいだから、アタシも少しはその噂に感謝しなきゃいけないのかもしれないな。なんてったって恐怖を堪えつつ快楽に震えたあんなに可愛い清志の顔を見る事ができたんだからなぁ〜♡ははははは!!」
豪快に笑う彼女になんと言ったらいいのか分からず、清志は無言でその身を倉庫の床に横たえた。
「それにな。こんだけ魔物娘が沢山いる世界で、パンツに顔を埋めて興奮してましたなんて噂が流れて、色めき立つことはあっても、変態行為を働いた奴を糾弾しようなんて流れになると思うか?」
確かに、麗の言う通りかもしれない。一体、自分は何にあれだけ脅えていたのだろうか。
「そんな訳でお前さんは絶対に退学なんて憂き目には会わないから安心するといいよ。」
「はあ……」

「さて、それはいいとして…まだ私のプロポーズに対する答えを聞いていない」
「プロポーズ…」
「まあ、嫌だと言ってもこれだけ濃い精液をたっぷりと出してくれたんだ。責任は取ってくれるよな?」
「………。」
これだけ、酷い事をされたのに…こっぴどく騙されたと言うのに…不思議と目の前で笑う意地悪なマンティコアを嫌いになることは出来なかった。それは教室で彼女の甘い香りに惑わされた時点で既に彼女の存在に屈していたということだろうか。それとも既に自分が完全に彼女の性技によって骨抜きにされているからなのだろうか。現在のぼやけた清志の頭ではそれを判断することは出来ない。でも、今はそれでいいような気がした。
「どうなんだ?」
「……僕で、よければ」
だからか弱いけれど、しっかりと彼女に届くよう自分の意思を口にする。
「そうか、嬉しいよ。本当に…嬉しい」
清志の答えを聞いた麗は、その顔に純真な笑みを浮かべた。その笑顔が、とても綺麗だった。






ぐちゅ、ちゅっく
「え?」
だがしかし、そんな彼女の笑顔に見とれる暇もなく、彼女の尻尾が行動を開始する。
「それじゃあめでたく両想いになった祝いに…ここからは時間も回数も気にすることなく、たっぷりと気持ちよくなるとするか♡」
「そ、そんな…これ以上は無理…」
「安心しろよ、また萎んできたらすぐにアタシが毒を盛ってやるから。」
「これ以上やったら…壊れちゃうよ!!」
「壊れるぅ?」
必死の訴えを聞いた麗は、口をこれ以上なく釣り上げ、目を爛々とさせた。



「うふふふ…なら、アタシがお前を壊してやるよ。」


「アタシを見るだけで勃起しちまうように、アタシにしか射精出来ないように徹底的に日野を…いや、清志を壊してやる♡ん、ちゅぅ…」
抵抗の意思を示そうとする清志の口を麗が強引に塞ぐ。
初めてのキスとは思えないほど大胆で、ディープなキスを交わしたっぷりとお互いの舌を絡めあう。そうしてキスに気を取られている間に、四本、五本目の棘が清志の体にうちこまれ、再び清志の体は無理矢理欲情させられていった。


「っぷはぁ…覚悟してくれよ、清志。これからずっとアタシが愛し尽くしてやるからな♡」










…………………………………………










それからどれほど身を重ね、麗の体内に射精したのかはっきりと分からない。

清志は射精する度に彼女の深みに嵌まっていった。

それはもう後戻りなど考えられないほどに、どっぷりと。

こうして日野清志は身も心も“不良のマンティコア”に陥落したのだった。









14/07/01 00:25更新 / 松崎 ノス
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■作者メッセージ
というわけで麗さんによってたっぷりと搾り取られ、相思相愛のハッピーエンドと相成りました。

前作の白蛇さんが実にほのぼのとした、のんびりとした家族ものだっただけに、その反動でこういうテイストになったのかもしれません (笑)。

前篇のあとがきにも書きましたが、初めてマンティコアさんのイラストを見て思いついたストーリーの一つを、時間がかかってしまいましたがなんとか形にすることができてよかったです。

実は構想を練っていたころ、麗さんは極道さんの一人娘という設定でした(笑)。でも何度考えても魔物娘が悪さをするというシチュエーションがしっくりこなくて、麗さんは周りから見れば不良高校生という役どころに落ち着きました。

本編はここで終わりですが、あと少しおまけを書いていこうかなと思っています。もう少しお付き合い頂けると嬉しいです!!

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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33