読切小説
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帰り道で
「ねぇ……」

学校帰りの帰宅途中に美雷が俯きながら美雷が蚊の鳴くような声で何かを言った。

いつもは明るくてお調子者で俺をからかってくる美雷が、最近は俺と二人っきりになると声は小さくなりこちらを向いてくれなくなってしまった。

正確には俺と美雷がちゃんと恋人同士になった時からだ。

「美雷ちょっといいか?」

「はっはい、なんでしょうか!?」

歩みを止めて、俺が話しかけると美雷は驚いたようで目を白黒させながら返事をした。なんだか美雷が俺に敬語を使うのは珍しくてなんだか少しおかしく感じる。

「手を繋いでもいいか?」

「えっいいの?」

「いいの?って俺が聞いてるんだからさ」

「あーうん、いいよボクも明と手を繋ぎたかったし」

そっと美雷の翼に手を重ねる、羽から伝わる体温が今の俺にはとても愛おしくて、多分こんな小さなことでも幸せなんだと思う。

そのまま再び歩き出すけれどお互いに何も言い出せなくて、なんだか手を繋いで隣にいるのに本当に近くにいるのだろうかと感じてしまう。





「あのさ」

沈黙をやぶり、美雷が何かを決意したように声を絞り出した。幼馴染でずっと一緒にいたからわかる些細な声の変化だ。

「明はボクが彼女でよかったの?」

美雷とは思えないような弱気な質問。でもそのおかげで何で二人きりだと美雷が変わってしまう理由が分かったかもしれない。

「なんだよ、いつもは俺のことを好きだよとか言って抱きついてくるくせに」

「だって、あれはボクからだから……」

美雷は多分怖いんだ。いつも自分がしてるようにからかわれてるんじゃないかって。

「俺は美雷が彼女でよかったと思うよ、むしろ美雷じゃないといやかな」

「本当に!?」

さっきまで俯いて怯えてたのが嘘のように美雷が笑顔をこちらを向けた。

「本当だって、それともお前が俺にいつも言ってる好きってのは嘘なのか?」

「そんなことないよ、ボクは明のこと大好きだもん。まぁ、からかったりする時にも言うけどさ、好きって事だけはいつも本当だから」

いつもの美雷に戻ってきた。憂いている美雷も新鮮で可愛かったけれど、やっぱり笑顔でいるのが一番似合う。

「だったらさ、ちょっと目を瞑っててくれないか」

「いいけど、ボクが目を瞑ってる間に先に帰るとかは無しだよ」

「分かってるよ、その証拠に手は繋いだままにするから」

俺がそう言うと安心したように美雷は目を瞑ってくれた。俺はそのまま美雷に近づいてそっとキスをした。

頬や額ではなく唇に。からかってるんじゃなくて本当に好きなんだという証に。

「な、なにするんだよ!!」

どうやら俺の行動は美雷にとっては予想外だったようで、繋いでいる俺の手にビリビリと電流が走る。

「抱きしめてくれるのかと思ったらいきなりキスするなんて」

「あれ?抱きしめたほうがよかった?」

今度は少しからかいながら言う。

「もう明なんて知らない」

美雷がそのまま歩き出す、でも繋いでる手と翼はお互いがどんなに痺れたって離しはしなかった。
14/09/17 08:41更新 / アンノウン

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