連載小説
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後編
「いいわね。残る生涯、キミは私に身も心も捧げ尽くすのよ。喜びなさい。キミの献身には私の全身全霊の愛情をもって報いてあげるから。これはその誓いの儀式…。」

あれから少し休憩した後、堂々と宣言したお嬢様は俺を押し倒した。
ベッドに仰向けになった俺の上に跨り、飢えたような目で見下している。
そうだ。ここまで来たら何をされようとしているのか容易に想像がつく。

お嬢様は蠱惑的な笑みを見せると、優雅な動作で服をすべて脱いだ。
ああ………。思わず俺は息をのんだ。目の前に晒されたお嬢様の裸身。
完璧に均整のとれた肢体。みずみずしい褐色の肌。豊かな乳房。
ろくな女性経験が無い俺でも最高の体だと言う事は良く分かる。

柔らかそうな股間の割れ目は、男を食らいたいとでも言う様にひくひく蠢いている。
淫らな花のような秘部からは、今まで嗅いだ事も無い様な強い匂いが放たれている。
花弁からは蜜が大量に溢れ出て、しなやかな太ももにまで垂れている。
その情景は俺を魅了し、今すぐむしゃぶりつきたくなる衝動を抑えきれない。
すごいエロい…。いや。エロいなんてものじゃない。感動のあまり呆然と眺め続ける。

お嬢様は目をぎらつかせると、いつの間にか張りつめていた俺の肉棒を手に取る。
そして自分の割れ目に押し当て、ずぶっと挿入しようとした。そう。ゴムもつけないで…。
避妊薬でも飲んでいるのだろうか?でも…そうじゃないならまずい!慌てた俺は叫ぶ。

「待ってくださいお嬢様!」

「どうしたの?疲れが取れないならもう少し後にしてあげるわよ。」

「いえ。そうじゃないんです。」

「じゃあなんなのよ。こんな大事な時に。」

お嬢様は不審そうな表情で口を尖らせる。

「あの…避妊…は大丈夫ですか?」

俺の言葉を聞いたお嬢様は一瞬言葉を無くしたが、やがて呆れた様に大笑いした。

「もう!いやだわこの子ったら…。気を遣わなくていいわよ。魔物にとって、精は食べるものか子供を孕むものか、二つに一つだけなのよ。避妊なんて言葉は知らないわ!」

「えええっ!?お嬢様…。」

「だから安心して私に精を捧げなさい!ふふっ。この私を孕ませることが出来るのよ。嬉しいでしょう…。」

下僕が主に種付けできて嬉しいのは当然。なにも心配しないで子作りに励め。
そう言わんばかりのお嬢様。見下ろす眼差しは傲慢ともいえる自信に溢れたものだ。

でも。そうじゃない…。

こんな俺のような人間だ。自分の子孫を残す事はとっくの昔に諦めていた。
むしろ生まれてきた子供に恨まれるから、子作りなんかすべきでないとすら思っているのだ。
それが突然中出しセックスしろと言われて、嬉しさより困惑の方が大きい。
今の俺には心の準備も親になる覚悟も出来ていない…。自然とため息を付いてしまう。

「あの。お嬢様…。まだ俺には気持ちの整理というか、心の準備が出来ていないというか。急に子作りと言われても…困ると言うか…。」

「何を言っているの!子供の事もキミの事も、責任を持つのは主人である私の役目なのよ。キミが心配する事は無いわ。こんな事を言うようでは、まだ自分の立場をわかっていない様ね!」

ためらいがちに語る俺だったが、お嬢様は全く聞く耳持ってくれない…。
有無を言わせぬ言葉で叱責すると俺に馬乗りになる。そしてにっこり笑うとこう言った。

「私はキミの子供を孕むことに決めたのよ。毎日おま○こにたっぷり精を出してもらうわ。いいこと樹。これは主人である私の命令よ♥」

お嬢様は止める間もなく、怒張を自分の割れ目に押し当てた。
でもやっぱり良く分からない。なんで会ったばかりの奴の子を孕もうなんて…。
俺が勝ち組のエリートならまだわかる。だが、認めるのは悔しいが俺は相当の低スペックだ。
お嬢様は俺の事をとんでもなく買い被っているとしか思えない………

「お嬢様…。俺はダメな奴なんです…。誇れるものは全く何も無いし、女に相手にされた事も無いダメな奴なんです…。俺のような奴の子供なんか残したらいけないんですよ…。」

我が身を省みてあまりにも情けない。声を震わせて訴えてしまう。
お嬢様は憐れむような様な眼差しを向けた。と思った瞬間。両手がさっと伸びてきた。
そして俺の両頬をつまむとむにーっと引き延ばす。

「悪い子…。キミは自分で自分の事を傷つける悪い子よ。」

「ん〜。おじょうさまぁ…。なにをぉ…。」

悲しい顔で俺を見つめるお嬢様。頬を掴まれて言葉が出なくなった俺は呻くだけだった。
やがてお嬢様は小さなため息を付くと、俺に言い聞かせる様に語り始めた。

「私はカフェの外を歩いていて、すごくいい匂いがする事に気がついたわ。その匂いを辿って店の中に入れば、それがキミの匂いだったのよ。
匂いはいいけど味は?と思って精を頂いたらこれまた最高の美味。香りも味も素晴らしいものを持っているキミなのよ。生まれてくる子供も素晴らしくなるのは当然じゃないの。そんな悲しいことを言ってはダメ…。」

「そ、そういうものなんですか?」

「そういうものなの!それにね。私達ダークエルフの奴隷や下僕になれるのは、ごく限られた者だけなのよ。だからこそ絶対に過ちが無いように男を選ぶし、見る目も鍛えぬいているわ。
キミはこの私の眼鏡にかなった選ばれし男なのよ。堂々と、自信を持って私の下僕になりなさい!」

お嬢様に叱られてしまった。そう。「怒る」じゃなくて「叱る」だ。
馬鹿な俺を優しく叱って、自信が持てるように励ましてくれる。
仮に俺を憐れんだからだとしても、お嬢様の言葉は泣きたくなるほど嬉しい。
でもお嬢様が言っている理由は、正直俺には良く分からないんだが…。
まあ、魔物からすれば意味があるんだろうけど…でも簡単に自信なんかもてるわけない。

「まだわかってくれないみたいね?いいわ!こうなったらキミがこれ以上傷つかないように、頭の中をとろとろにして幸せにしてあげるから!」

お嬢様は全然納得いかない俺の気持ちを見抜いたようだ。
愛情とSっ気が混ざったような魅惑の笑みを浮かべる。俺はその笑顔に見惚れる間もなかった。

ずっ……

お嬢様がなんのためらいもなく腰を下ろしたからだ。
俺のモノは彼女の濡れそぼった花弁に包み込まれてしまう。

「うぁっ!」

俺は知らぬ間にうめき声をあげていた。
膣内は熱く、ぬるぬるの粘液に満ちていた。ひだひだが蠢いてきゅうきゅうと一物を締め付ける。
今まで全く知らなかった快楽を与えられ、ささくれていた心が蕩けていく。

「おじょうさまあ…。」

「どうかしら?私のアソコは…。」

捕食者の眼差しで見据えながらもお嬢様は少し不安そうに言う。そんな姿がとても可愛い。
俺もあえぎながら心からの同意を込めてうなずいた。

「はい…とっても、き、きもちいいです…。」

お嬢様はほっとした様に表情を和らげると俺の体を抑え込んできた。
二の腕もしっかりと掴まれて動けなくなってしまう。
でも豊かな胸と、きめ細やかな肌が密着して温かい。心地よくてうっとりする。

「喜んでくれて嬉しいわ。キミをもっと楽しませてあげたいけど、私もう我慢できそうもないの…。さ。遠慮せずにたくさん出しなさい。」

耳元で濡れたような声を聞いたと思った瞬間、蠢く熱い肉洞が俺自身を責め立ててきた。
亀頭の先端にも柔らかいものが吸い付き激しく吸引する。
柔らかく熱く包み込まれ…。激しく吸われ…。ざらざらした膣内がとってもいい…。
お嬢様は腰を激しく動かして強烈な快楽を与え続ける。
俺は全然我慢できなかった。

「うああああっ!!」

快楽の叫び声をあげた俺は膣内に白濁液をぶちまけた。
どびゅっどびゅっどぴゅっ…。まるでそんな音が聞こえるかのような激しい射精が続く。
甘いうずきが下半身で爆発してガクガク腰が震える。

「いっ。いいっ!なにこれっ。さっき食べたのと全然違うわっ!」

あまりに気持ち良すぎて、ただひたすら射精する事だけを求めてしまう
目の前が真っ白になる様な快楽。お嬢様のよがり声が聞こえる。
俺は主人の胎内に延々と下僕の子種を放出し続けた。


















「すごい!下の口で食べるとこんなに美味しいのね。やっぱりいいわよキミ…。」

「あ……うっ。」

もう気持ち良くて何も考える気力も無い…。
すっかり無様に蕩けきった俺を見てお嬢様は瞳を輝かした。まるで俺を見下すようだ。
これってさっきお仕置きしていた時と同じ眼差しじゃないのか…。
嫌な予感が襲ってきたが、それはお嬢様の言葉で確信に変わった。

「嬉しいわぁ〜。たくさん出してくれて!で…。これでキミもパパになっちゃうわね♥」

嗜虐的なお嬢様の声。そうだった…。生であれだけ大量に出したのだ。妊娠しても当然だ。
気がついた俺は焦る。でも、魔物娘はなかなか妊娠しないはずだ…。きっと大丈夫では?
わずかにつないだ儚い希望は、お嬢様の追撃で打ち砕かれる。

「あははっ。キミ今、魔物は妊娠しにくい、って思ったでしょ?でも残念でした!さっき子宝宝樹の樹液を飲んだから間違いなく受精するわよ!」

「えっ!子宝宝樹ってあの…。」

「あら。よく知っているわね。そうよ。妊娠しにくい魔物娘でも飲めば確実に孕むことが出来る、超レアものの逸品よ!」

子宝宝樹。それは王魔界にあるといわれる伝説の樹だ。
そこから取れる樹液を飲んでセックスすれば絶対に妊娠できるという。
こちらの世界にも樹液が持ち込まれており、ごく少量だが流通している。
魔物娘は子供を欲しがるものだ。確実に孕めるこの品には当然プレミアが付いている。
大金を積んでも手に入れる事は困難と言われるこの樹液。なんでお嬢様が…。

「ふふっ。驚いたかしら…。わかる?キミは私に中出しして孕ませちゃったのよ♥」

獲物を前にした魔物の酷薄な瞳。お嬢様はいたぶるように笑った。

「だ、駄目ですよお嬢様!駄目ですからっ!許してくださいっ!」

「間違いなく素敵な女の子が産まれるはずなのに…。まだそんなこと言うのね!」

「やっぱり俺は父親になんかなってはいけないんですよ!だから勘弁してください!」

父親になれ。しかも今すぐになんて絶対に無理だ。
今後の人生地獄モード突入に等しい。到底クリアできるわけない…。
俺は必死にお嬢様にお願いする。何度も頭を下げる。
お嬢様は慌てふためく俺を見て眉をひそめた。

「ふ〜ん。ま…そこまで言うなら困らせるのはかわいそうね…。」

「お嬢様…。」

お嬢様は腰を上げて結合を解こうとした。助かった…。ほっとした瞬間だった。

「な〜んてねっ!キミが嫌だって言ってもパパにするに決まっているわ♥」

お嬢様は鋭い笑みを見せると叫ぶ。途端に上げかかっていた腰が俺の下半身にぶつかってきた。
ぶちゅりと下品な水音を立てて、二人の結合部から飛沫が飛び散る。

「ひいいいいっ!いくっ!」

子宮口が亀頭を食らう様に激しく擦りつけられた。
ぐりぐりした淫肉の感触が伝わり、キュウキュウと絞め付けてくる。
突然与えられた強烈な快感…。俺は絶叫して子宮の奥深くに射精するしかなかった。

「ああっ!キミの熱い精で子宮が満たされるのがわかるわっ!これでパパになるのは確実ね♥」

「いいっ!ゆ、許して下さいお嬢様あ!」

「ほらっ!なるのよ。パパになるのよ!無理やり犯されてパパになっちゃいなさい♥」

俺を嬲るように責めたてるお嬢様。淫虐な姿に嫌でも興奮してしまう。
お嬢様が腰を振るたびに、下半身から頭の中に甘い閃光が走る。
魔性の熱い肉壺の奥にぴゅーぴゅー射精し続ける。
子宮口もぴとりと鈴口に吸いつき、子供を欲しがるように精を吸い続ける。
その心地よさに俺はさらに大量の精を膣内に漏らし続けた。

















「うふふっ。こーんなにたくさん出して…。嫌だ嫌だって言いながら、キミも私をママにしたかったんでしょう?」

あれから一体何回中出しし続けたのだろう。気持ち良すぎて途中で意識が飛んでいたようだ。
耳に絡みつく美声で目覚めた俺は、相変わらずお嬢様の下になって抑え込まれていた。
挿入されている肉棒は硬度を保ったままだ。牝肉も牡根を優しく刺激し続けている。
絶え間なく続く快楽で朦朧としながらも俺はお嬢様の名を呼ぶ。

「クレアおじょうさま…。」

「あらあら。とってもいい顔しちゃって…。本当に可愛いわね…。遠慮しなくてもキミの子供だったら何人でも孕んであげるわ…。」

お嬢様は軽口を叩くと自分のおなかを何度も撫でた。
俺をからかうようなお嬢様を見ていると、我に返って先ほどの事を思いだす。
そうだ…。俺はお嬢様に何度も何度も中出ししてしまったんだ…。しかも妊娠確実の危険日に…。
覚悟を決める時間も与えられずに、俺は否応無しに父親にならねばならない…。
きっと将来はダメな父親になって、なんで私を産んだのだと娘に罵られるに違いない…。

逆レイプされ、無理やり膣内射精させられ、種付けを強制させられる。
魔物娘モノの二次元エロでは定番の話。当然俺も大好きだった。
だが実際に自分の身に降りかかると、ショック以外のなにものでもない。
こんな境遇あまりにも惨めだ…。いつしか俺は目をそらせて黙り込んでしまった。

もう泣きたい…。
でも何度も格好悪い姿を見せられない。俺は必死に涙をこらえる。
お嬢様は押し黙る俺を母親か姉の様に温かく見つめていた。
やがてほうっと一息つくと、腕を回してそっと抱きしめてくれる。

「どうしたの?気分でも悪くなった?いいからなんでも話してごらんなさい…。キミをケアするのも主人である私の役目なのよ。だから、ね…。」

石の様に固まり続ける俺をお嬢様は温かく包み込む。優しく撫でて慰めてくれる。
何度も繰り返してくれる愛撫と、甘い労わりの声に俺の心も解けて行った。
顔を上げた俺の目の前にあったのは、慈愛深いお嬢様の眼差しだった。
大丈夫。きっと何を言ってもお嬢様は怒らない…。促されるように俺は口を開いた。

「クレアお嬢さま…。」

「なあに。樹?」

「あの…父親になれって言われてもあんまりに急な事で俺…。やっぱり自信なんか全然ないです…。何をどうしていいか全くわからないんですよ…。俺、これからどうなるんでしょう…。」

お嬢様は俺の悲しげな訴えをうなずきながら聞いてくれる。
だが、何とも困ったような表情を見せると目を落とした。

「ああ…その事。ええと…。あれは、嘘よ…。安心して。絶対に妊娠していないから…。」

「えっ?」

そうだったの…。信じられない言葉に放心状態になってしまう。

「子宝宝樹の樹液なんて貴重品、私だって手に入らないわ。ただキミの困る姿があんまり可愛かったものでつい…。」

「おじょうさま…。そんな…ひどいですよ…。」

俺はほっとして気が緩み、とうとう涙ぐんでしまった。
泣き顔は見せたくなくて、ついお嬢様に抱き着いて胸に顔を埋めてしまう。
いけない!衝動的に抱きついちゃったけど、こんな事して何言われるか…。
でもお嬢様はそんな俺に苦笑しただけで頭を撫でてくれた。

「ああもう…。何も泣く事ないじゃない…。大体さっき言ったでしょう?キミの事も子供の事も、責任を取るのは主人である私の役目だって。キミを困らせるような事は絶対にしないわ!だから安心して私を孕ませればいいのに…。なんで嫌がるのよ…。」

優しく言ってくれるお嬢様。でもそう言われてもやっぱりひどい…。あれだけ心配したのに…。
頭を撫でられる心地よさに浸りながらも、俺は不満げに口をへの字にする。
やばい!またこんな態度取ってしまったけど大丈夫だろうか…。
でもお嬢様は失礼な下僕に怒る訳でもなく言葉を続ける。

「大丈夫…。私にまかせなさい!キミが父親として自信を持てるようにしてあげる。少しずつ親になる自覚を持っていけばいいわ…。ちょうどその頃には子供も授かっているんじゃないかしら?」

お嬢様は何も心配ないと言わんばかりに胸を張ると朗らかに笑った。


















カッコ悪い所を見せてしまったけど、まあ、良かったかな…。
それにお嬢様の自信あふれる様子を見ていると、将来も決して暗いものでは無いように思える。
根拠のない自信でもいい。このひとと一緒なら大丈夫…。気持ちが落ち着いた俺も笑みを見せる。
だがお嬢様は油断した俺をまたまた抑え込んできた。

「お嬢様…。何を。」

次は何をされるのか少し不安だけど、お嬢様の柔らかく温かい体は心地よい。
お嬢様は今度は蠱惑的に笑うと妙な事を聞いてきた。

「ね…樹。さっきから何も気がつかないの?」

「……といいますと?」

「私にとって大切なものをキミにあげたのだけれど?」

「大切なもの…ですか?」

全く見当もつかずに首を傾げる俺…。お嬢様はみるみる不満げな表情になる。

「もう…。自分の事ばかり気にして私の事何も考えていなかったんでしょ。私はキミに…あの…初めてを捧げたのよっ!」

お嬢様はそう叫んだ。褐色の頬がみるみる赤く染まっていく。
初めて?お嬢様って処女だったの?あれだけ余裕たっぷりに俺を調教したお嬢様が…。
どう見ても経験豊富な女王様じゃないか…。
あまりに意外な告白。信じられない俺はつい大声を出してしまった。

「えええっ!なんで!」

「なんでじゃないわよ。主人に生涯仕える事を誓った下僕のために、純潔の証を捧げるのは当然の事じゃないの!」

「そ、そうなんですか………。」

「ほら!これを見なさい!」

お嬢様は自分の手で自分のアソコを拭く。そしてあっけにとられている俺の目の前につきだした。

「どう。これが証拠よ!」

お嬢様の手はどろどろの粘液で濡れていた。ところどころに真紅の鮮血が交じっている。
そうだったのか…。でも、本当になんで俺みたいな奴の為に?
中出しさせてくれたり処女を捧げてくれたり子供を孕んでいいと言ってくれたり……
そんな事生涯経験する事など無いと思っていた。今でも信じられない。

俺に想いを向けてくれた事は素直に嬉しい。けれどやっぱり良く分からないのだ。
どう考えても俺はそこまでされるに値する人間じゃないのに………。
困惑して上目づかいでお嬢様を見る俺。その気持ちを見透かした様にお嬢様はむっとにらんだ。

「それなのにキミはずっと嫌がって、挙句の果てには泣き出しちゃって…。まだ自分で自分の事傷つけているみたいね?なんで自分を否定するの?主人の想いをなんで素直に受け取らないの?いけない下僕にはこうしてあげるわ!」

お嬢様が叫んだ瞬間。美そのものといってよい顔が目の前に近づいてくる。
一瞬悲しい表情を見たと思った瞬間、俺はお嬢様に口づけされた。
ぷるぷる柔らかく、みずみずしくしっとりとした唇の感触。

「むうっ。」

キスはさっきもしてくれたが、突然だったので驚き呻いてしまう。
だが、お嬢様はそれを無視して俺の頭を抱く。
たちまち舌をねじ込んでくると、歯茎を舐めまわしてくる。

「んちゅっ。ちゅっ。」

お嬢様との初めてのディープキス。誘う様な舌の動き。
気持ちがみるみる高まってきた俺も当然の様に舌を絡めた。

「ちゅっ。ちゅぱ。むちゅっ。」

お嬢様も俺の舌を受け入れてくれる。互いに舌を熱心に絡め合う。
ぬるぬるでざらざらした生き物のような舌。
気持ち良すぎて舌を吸おうと思ったら、逆にお嬢様が吸い付いてきた。

「むっ…。ちゅう。ちゅう。」

お嬢様は何度も俺の舌を吸い上げる。濃く、激しく、愛情深い舌でのセックス。
こんな事をされるのは今までに経験がない。
お嬢様は俺に初めての性技を色々経験させてくれる。嬉しくてたちまち夢中になる。
俺からも積極的にお嬢様の舌を吸うと、唾液がとろとろと注がれてきた。
避けようにも俺が下になっているので、キスし続けている以上延々とそれが続く。

「むうっ…。」

さすがに呻いて首を振ったら、お嬢様はしっかりと首を抱いて固定する。
意地悪な眼差しになったお嬢様は、唾液をますます大量に口中に注ぎ込む。

「む〜っ!」

俺がうめいてもお構いなし…。全く口を放してくれる気配はない…。
お嬢様のものとはいえさすがに涎を飲むのは抵抗ある。だが、このままでは口から溢れて顔を汚してしまう…。
仕方ない…。俺は口に溜まったお嬢様の唾液をいやいや飲み込んだ。

ごくん………

え?甘い?例えようもない不思議な甘さがある。それにさらさらしていて全く嫌な感じがしない。
知らぬ間に俺はもう一度飲み込んでいた。

ごくん………

なぜだろう?不快感も無ければ抵抗も無く飲める。何度でも飲みたくなる。
いつしか俺は頭がぼうっと熱くなり、憑かれたようにお嬢様の舌を吸っていた。
お嬢様も嬉しそうに目を細めると、さらに唾液を流し込む。
俺は親鳥に口移しで餌を与えてもらう雛みたいだった。
ただひたすらにお嬢様の舌を吸い、唾液を飲み続けた。





「ぷはあ…。」

お嬢様も満足したのだろう。嗜虐的な口づけからようやく解放してくれた。
人差し指を立てて優しく諭すように言う。

「わかった樹?今日はこれで許してあげるけど、また自分を苦しめるような事したらお仕置よ。次は私のおしっこ飲ませるわ。」

「ごめんなさいお嬢様…。」

「よしよし…。わかってくれればいいのよ。キミはとってもいい子。もっと自信持ちなさい!」

お嬢様は素直に謝る俺を胸に抱いてくれる。慰めるように何度も愛撫する。
安らぎと温かい抱擁に身を委ねる俺だったが、不意にお嬢様の言葉を思い出した。

おしっこ飲ますって言ってたな…。

そう言えばフーリーの嫁さんを持つ友人も、時々嫁のおしっこ飲むとか言っていた…。
たのむから人には絶対に言わないでくれ。奴からそう何度も念を押されたものだ。
あの時は平静を装っていたが、嫁とそこまで深くつながれて羨ましくもあった。

俺もお嬢様が絶対に人には見せない痴態を拝めて、それ以上の事もしてくれるかも…。
アブノーマルな思いに囚われると、俺の下半身がむくむくと反応し始めてしまった。
あ…ヤバい。そう思う間も無かった。
お嬢様は張りつめた一物を目ざとく見つけて、意地悪く問いかけてきた。

「変態っ。どうやらおしっこは罰じゃなくてご褒美になっちゃうみたいね…。」

にやにやと笑うお嬢様に俺は顔を真っ赤にする。

「いや…あの…だから、その…。」

「うふふっ。別に恥ずかしがらないでいいのよ!下僕の劣情を受け入れるのも主人の務めだわ。
いいわよ…。今度ご褒美として お し っ こ あげるわね!」

わざわざおしっこの部分を強調したお嬢様は鈴のような笑い声をもらした。
恥かしさのあまり俺は俯いて、お嬢様の胸に顔を埋めるだけだった。

















「お疲れさま!今日は頑張ってくれて嬉しいわ。」

「おじょうさま…。あれでよかったんですか?」

「もちろんじゃないの!私の想像以上に素晴らしかったわ。だから…ご褒美にキミの好きな事していいわよ…。」

散々搾り取られてすっかり疲れきってしまった。お嬢様は俺に限界がきたのを察したようだ。
先ほどの栄養ドリンクを口移しで飲ませると、ぎゅっと抱きしめて憩わせてくれた。
お嬢様の優しいねぎらいの言葉が嬉しい。温かく柔らかい体に抱きしめられて夢心地…。
このまま眠らせて下さいと言おうとしたが、せっかくのお嬢様の好意。それももったいない。
俺は少し思案してからこう言った。

「あの、本当にいいんですか?」

「ええ!もちろん!」

「じゃあ、あの…。耳…をさわっていいですか?」

「そんな事でいいの?もちろんいいわよ!好きなだけ触りなさい…。」

お嬢様の長いエルフ耳が気になっていて、出来れば触ったり色々したかった。
恐る恐るお願いする俺にお嬢様は満面の笑みでうなずいてくれる。
そっと手を伸ばして耳に触れるとお嬢様はぴくりと震えた。

「あっ…。」

「お嬢様大丈夫ですか?」

「大丈夫…。気にしないでもっと触っていいわよ。」

俺は夢中で耳を触る。優しくつまむとぷにぷにと柔らかく弾力性がある。
尖った耳先も指でくりくりする。つややかな褐色の耳はとても手触りがいい。
触るたびにぴくぴく震える反応も楽しい。

輝く銀髪も美しく、思わず触れて手で梳いてしまう。
しまったと思い様子を伺ったが、お嬢様は気持ちよさそうに受け入れてくれていた。
ロングの銀髪は信じられないぐらいさらさらで、胸が切なくなるような良い匂いだ。

「あっ…。っ…。も、もうダメ!くすぐったいからダメ」

脇目も振らずに耳を弄っていた俺だが、お嬢様はくすぐったいのが我慢できなくなったようだ。
甘い嬌声をあげると、俺を無理やり腕の中に抱え込んだ。自然と胸の谷間に顔が挟まる。

「ふふっ。もうこれでおしまい!」

悪戯っぽく宣言するお嬢様だ。これで終わりにしようと思ったが…
でもお嬢様は何でもしていいと言ってた。嫌がられないなら次はこうしよう。
俺はしなやかな腕の中で体を入れ替え、温かい胸の谷間から顏を脱出させる。
そして豊満な胸の真ん中にある桜色の突起…乳首を咥えるとちゅっと吸ってみた。

「あっ!もうっ。樹ったら…。」

文句は言うがお嬢様に止められることは無かった。許可を得られた俺は夢中になって乳首を吸う。
なぜだろう。母乳が出る訳では無いのに不思議と甘い味がする。俺はますます夢中になる。

「ふふっ…。よしよし。甘えん坊の樹、とっても可愛いわよ。」

少しからかうようだけど愛情あふれる声だ。お嬢様は俺の頭を抱いて何度も撫でてくれる。
温かい体と愛情に包まれた俺は、赤ん坊の様に乳首をちゅっちゅと吸い続ける。
俺は良い匂いと温かさに包まれ胸を弄り続ける。とても安らかな気分…。
お嬢様も労わるように俺を抱いてくれている。このままずっといられればいいのに………。

でも、こういう事なのか?

悦楽の海で溺れながら俺はふと気がついた。
俺はお嬢様の下僕…奴隷同然の身分にされたのではなかったのか?
それなのにさっきからしている事と言えば、子作りセックスしたり、ぎゅってされたり、
いちゃいちゃしたり…。どうみても仲良しの夫婦か、恋人たちがすることではないのか?
まあ、ろくに女と付き合った事が無い俺だ。詳しく知っている訳では無いんだが…。

もちろん最初お嬢様に捕まった時は、脅されて縛られて何度も鞭打ちされた…。
でも、あれだって怪我したり苦痛を感じた訳じゃ無いし…。逆にとっても気持ち良かったし…。
すごく怖かったけど、そもそもお嬢様を裏切るような事をしたのは俺だし…。
なんのかんのと言いながらも笑って許してくれたし…。
それに俺が自信を持てるように、色々と力づけて励ましてくれたし…。

Sっ気が相当強い事は間違いないと思うけど…。でもこの人がいい人だという事はわかる。
俺は本当にお嬢様の奴隷や下僕になったのか?ダークエルフの下僕って一体なんだ?
モヤモヤした気持ちが抑えきれない俺に、お嬢様は呆れた様なため息を付いた。

「キミって本当は泣き虫で甘えんぼの可愛い子なのに…。さっきは何であんな無茶なことしたの?途中で逃げ出したくなるほど私が信用できなかったの………。」

お嬢様の最後の言葉は罪の意識すら感じさせる寂しげな響きだった。
逆に申し訳なくなってしまった俺は慌てて詫びていた。

「ごめんなさい!あんな事してしまって本当に何と言っていいか…。」

「大丈夫!違うのよ。もう何も怒っていないから。ただ、私はキミの主人として知りたいだけなの…。」

動揺を隠せない俺を落ち着かせる低めの美声。俺はお嬢様の声に聞き惚れながら言葉を待つ。

「私はキミにとって良い主人でありたいと思っているわ。毎日安心して楽しく過ごしてほしいの。だから聞かせてほしい。キミが心に溜め込んでいる色々なもの、それを全部吐きだしてほしいのよ。」

今まで命令口調だった言葉使いが微妙に変化している…。
埋めていた胸から顔を上げた俺は、お嬢様の温かい視線に気がついた。
思わずほっとするような眼差しを受けて、知らぬ間に言葉が出ていた。
大丈夫。お嬢様はよっぽどのことが無い限り話はちゃんと聞いてくれる。

「クレアお嬢さま…。」

「なあに。樹?」

「あの…お嬢様が本当はいい人だと言う事はわかったんですけど、でもやっぱり奴隷とか下僕とか嫌なんです…。罰として痛い事や苦しい事されるのは嫌なんです…。
俺とっても不器用だから、多分お嬢様に言われた事全然出来ません。出来ないことで毎日お仕置きされるなんて思うとつらくて…」

思いのたけをぶちまけたが、お嬢様は優しくうなずいて聞いてくれた

「どうして?大切な下僕に酷い事なんかする訳無いわ。樹が私を裏切ったりしない限り、痛い事も苦しい事も絶対にしないわよ。
それにキミが不器用だからこそ私の下僕にして護るのよ…。で、本当はやっぱり私の事が嫌なの?今みたいなことを言うようでは…。」

お嬢様は俺に言い聞かせるように穏やかに語ってくれる。
けれどなんでお嬢様自身の事が嫌だと言う事になるのだろう。どうも良く分からない。
それに大切な下僕、下僕にして護る、なんてどういう事だろう…。

「お嬢様。俺はお嬢様の事は嫌だなんて全然思いません。ただ下僕にされるのは嫌だと言う事で。」

「だからそれが私だと嫌だということになるのよ?」

どういうこと?話がいまいちかみ合わない。
お嬢様もその事に気がついたようで目を見合す。

「………。」

「………。」

暫く互いの目を見つめあっていたが、お嬢様は何かに気がついたようにぽんと手を打った。

「ねえ樹。キミは奴隷とか下僕とかに、一体どういった印象を持っているのかしら?」

「ええと。印象ですか?そうですね…。鎖で繋がれて拘束される。ほとんど食い物も与えらない。毎日死ぬような重労働。主人にいつも鞭うたれて虐待されて…。と、こんな所でしょうか。」

「ああ〜。やっぱりそうだったのね…。」

いったいどういう事だろう?訝しく思いながらも俺は答えた。
だが、それを聞いた途端お嬢様は深いため息を付いた。
しばし俯いて沈黙していたが、やがて吶々と話し出す。なにか深い後悔を感じさせる表情だ。

「あのね樹…。私達ダークエルフにとって奴隷になれって言うのは…結婚してほしい、と言う事と同じ意味なのよ…。もちろん下僕も同じ事よ…。キミたちが言う意味とは違うの。」

「えっ………。」

一体お嬢様は何を言っているのだろう…。俺は言葉を無くして目を丸くする。
という事は、下僕=お嬢様の婿って事か?いや。なんでそうなるの。悪い冗談にしか思えない。
こんな俺と結婚して欲しいなんて、奴隷になれって言われる以上に理解不能だ…。

「………。」

異様な感動と衝撃に打たれて愕然とする。
そんな…。カフェであった時、お嬢様は俺に求婚していたと言う事か?
その事に気がつかないで俺は反発してしまったって事か…
だが、お嬢様は俺に初めてを捧げてくれて、子供まで欲しいと言ってくれたのだ。
こう考えればすべてつじつまがあう。

「あの。お嬢様。何でそれを最初に…。」

「ええ。そうね…。魔物カフェに来るぐらいだから、キミは魔物について色々知っていると思ったのよ…。だから言わなくてもいいかなって…。」

俺の問いにお嬢様は相変らず俯いてぼそぼそとしゃべる。
でも、もし「奴隷=婿」という事実を知っていたら俺はどうしたんだろう?
素直にお嬢様の言う事を受け入れていたんだろうか?
そうすればお互いにとって最悪の出会いは避けることが出来たのだろうか………

無意味な問いに悶々とする俺を見て、お嬢様もとても申し訳なさそうにしている。
しばらくは何か言いたそうにじっと俺を見ていた。
だが、少し目をそらして長い髪を掻き上げたと思った瞬間、がらりと表情を変えてきた。
輝く銀髪が舞い、眼差しは何かを決意した強い意志を感じる。
そう。少し前までの勝ち気で自信にあふれながらも、思いやり深いお嬢様の姿で。

「樹…。言い訳はしないわ!これからのキミとの生活で、私が最高の主人であることを証明するだけよっ。だから安心して私に仕えなさい!下僕を護り、慈しむのは主人の当然の務めだから。何も思い悩む事は無いわよ!」

威丈高にそう言ったお嬢様だったが、何か違うと言った様に顔をしかめた。

「う〜ん…。違うわね。こうじゃないわね。そう、こうよ!」

なにやらぶつぶつ言っていたが、お嬢様は突然俺の手を取り表情を和らげる。

「ええと…樹。私はキミに一目ぼれしたわ。だから私と結婚しなさい!何も苦労させないから、心配しないで私の所に婿に来るといいわ…。当然だけどキミに拒否権は無いわよ!」

輝く様にお嬢様は笑ってくれた。優しく握ってくれる手が温かい。
今までの人生で凍えきった心も溶ける様な、そんな優しい温かさで。
感極まった俺は涙声になってしまうのが抑えきれなかった。

「あの…お嬢様。でも本当にこんな俺で…。」

お嬢様は仕方ないなあという様にため息を付いた。
そして言いかけた俺の頬をさっきみたいにむに〜っとつまんでくる。

「また自分を卑下する様なこと言って…。『こんな』じゃないわよ。キミでなければだめなのよ!」

「ご、ごめんなふぁい…。」

「自虐的な事言ったら本当はおしおきだけど…いいわ!特別に許してあげる!だから、ね。…もう一度言って!」

顔をぷーっと膨らませながらもお嬢様は楽しそうだ。歓喜している様子がここまで伝わってくる。
見ていると俺も楽しくなってきて、下僕として喜んでご奉仕したくなる。
そう。当然俺もこう言うしかないじゃないか!

「はい…。あの…これからよろしくお願いします。お嬢様を幸せに出来るよう頑張ります!」

決意を固めて緊張した様な怖い様な…俺はそんな顔になっていたのだろう。
お嬢様は苦笑すると愛情を込めて抱きしめてくれた。

「そんな悲壮な顔しないの!無理をしてはダメ!キミを護るのも幸せにするのも主人である私の務め。そういったでしょう?だから安心してずっと私のそばにいなさい。」

温かくしっとりとした肌と、長い銀髪の良い匂いに包まれる。俺もお嬢様を抱きしめ返す。
お嬢様は額にちゅっとキスするとこう言った。

「これは命令よ…。お返事は?」

「はい…。お嬢様…。」

「よしよし。いい子ね…。」

返事をする俺をお嬢様は愛撫し、胸にぎゅっと押し付けてくれた。
俺はただお嬢様が与える安らぎの中に溺れて行った………。

















今日もようやく仕事が終わった。夕暮れ時の喧騒を抜け、急いで帰宅した俺はドアを開く。

「ただいまクレア!」

すぐにぱたぱたと足音がしてお嬢様が来てくれた。
いつもの様に輝く銀髪と美しい褐色の肌、素敵な笑顔で俺を迎えてくれる。

「おかえりなさい樹。お仕事お疲れさま!」

毎日見ているが全く見飽きる事無い笑顔。俺が見惚れる間もなくお嬢様は声をかけてきた。

「ご飯もお風呂も準備できてるけど…。」

「まず一番最初はクレアがいい!」

最後まで言葉を聞くことなく俺はお嬢様を抱きしめる。温かくふんわりとした匂い。
愛する妻であるお嬢様の匂いと体温に包まれてほっとする。
お嬢様も甘える俺を穏やかに受け入れると頭を撫でてくれた。

「よしよし。どうしたの樹?」

「だって…クレアと一日離れていたら寂しくて仕方ないんだ…。」

苦笑するお嬢様の胸に抱かれて俺はただ安らぐ………。

お嬢様に堕とされた日。その日から俺はお嬢様と夫婦生活を営むようになった。
結局お嬢さまは『お嬢様』と言われ続けるのは落ち着かなかったらしい。
普段はタメ口で接してくれていいと言ってくれた。
ただし同族と会うときは面目もあるので、丁寧な態度に改めて欲しいと言う事だ。

でも、俺にとっては愛するお嬢様だ。俺を澱んだ日々から救ってくれた恩人でもある。
だからダークエルフ以外の人たちにも当然の様に「お嬢様」と言っている。
会社でも当然そうしているのだが、魔物娘やインキュバスの同僚達は普通に接してくれる。
だが例の二次オタの同僚。奴だけは俺に憐れみと同情が混じったような目を向けやがるのだ…

全くふざけた奴だ。いつも俺を愛情深く包んでくれる人をお嬢様と言って何が悪い。
ま…こう思うこと自体、お嬢様に徹底的に調教されてしまった証なんだろうけれど…。

ちなみに夜の夫婦「性」活の時もお嬢様と呼ぶのはルールみたいなものだ。
なんでもダークエルフにとってはプレイの時間は特別なものらしい。
だからこの時も態度に気を付けて欲しいようだ。

夜のプレイのひと時。お嬢様は俺にいつも性の愉しみと悦びを与えてくれる。
貧弱なセックスしか知らなかった俺にとっては毎日が夢のような時間だ。
当然というべきか…。今まで知らなかった性癖も色々開発されてしまった。
俺はただ快楽にあえぐだけなのだ。お嬢様はそんな俺を慈母の包容力で受け入れてくれる。
あ、おしっこと浣腸についてはノーコメントで…。

「そう言ってくれるのは嬉しいわよ。だから言っているでしょ。片時も私から離れずに仕えなさいって…。お金の事は全然心配しなくていいのよ。」

半ば恍惚状態になっていた俺にお嬢様はそっと勧めてくる。
早い話お嬢様が全部面倒見るからヒモになれと言う事らしい。
でも、さすがにそれはプライドが許さないしお嬢様に申し訳ない。俺は首を横に振る。

「ごめん。ちょっとそれは許してほしいな…。」

お嬢様はやれやれと言いたそうな表情を見せた。

「そう言うと思ったわ。まあ、この事は考えておきなさい。私はいつでもいいんだから。」

「うん…。あ、そろそろお腹空いちゃったかな。」

お嬢様は空腹を訴える俺に母親のように笑ってくれた。

「ああ。そうね!それじゃあごはんにしましょうね。キミの好きなもの一杯作ったから!」

「ありがとうクレア!」

食卓に着いた俺を待っていたのは、お嬢様の心尽くしの手料理。
仕事から帰ってくると、お嬢様はいつも食事を作って待っていてくれる。
温かいご飯に、豆腐と油揚げの味噌汁。ほうれんそうのおひたしに、魔界豚の生姜焼き。
その他全部俺が大好きなものだ。当然夢中になって頬張る。

「やっぱりクレアの料理は美味しいね。」

「嬉しいわ。キミはいつもそう言ってくれるから…。」

素直に美味しいと言うと、お嬢様は少しはにかんだ様子で下を向いた。
最近ではこういった可愛らしい様子も見せてくれるようになった。
とっても嬉しいけど、でも、逆に俺が料理を作った事はほとんど無い。
俺も料理を覚えてお嬢様に喜んでもらいたい。

「ねえクレア。今度俺にも料理教えてよ!」

「それはいいけど…。急にどうしたの?」

怪訝な様子のお嬢様に俺は思いを打ち明ける。

「ほら。だって俺はクレアの下僕じゃないか。料理も出来るようになって食べてもらいたいから。」

お嬢様はそれを聞くと華やかに笑ってくれた。
よかった…。お嬢様が喜んでくれれば俺も嬉しい。

「本当に嬉しい事ばかり言ってくれるじゃないの!それじゃあ今度教えてあげるから、一緒に作りましょうね!さ!お代りもあるからどうぞ。キミには夜も頑張って欲しいわ。だから、ね♥」

「もう。クレアったら。」

超強力な精力増強作用がある魔界豚が夕食のメニューだ。
夜のプレイも激しくなるな…。妖艶な眼差しのお嬢様に、俺は期待で胸をふくらましてしまう。

お嬢様も俺と一緒にご飯を食べている。ごく当たり前の穏やかな光景だ。
でも、いつからだろう。こうして一緒にいる事が俺にとっての愉しみになったのは…。

最初はどんな夫婦生活になるか少し不安だった。一応俺は下僕でもあるし、あんな最悪といっていいほどの馴れ初めだ。
でも、お嬢様は世話焼きでしっかりもののお姉さんの様に、いつも優しく護ってくれた。
お嬢様と一緒に暮らす様になって、誰かが家で待ってくれている安らぎを初めて知った。
平和で優しい日常。何よりも大切なものを与えられた俺はすっかり溺れてしまっている。
『調教』というならば、これが絶対的に俺の心を縛り付けているのだ。どんな快楽以上に…。

















つい物思いにふけってしまった。気がついた俺は我に返る。
いつしかお嬢様も押し黙ってご飯を食べていた。でも、珍しい事もあるものだ。
いつもは俺が会社でやっていけているのか心配で、色々と聞いてくると言うのに…。
心配になった俺はお嬢様に問いかけた。

「ね。クレア。どうしたの?何かあった?」

はっとして俺を見つめるお嬢様は、かっこ悪いところを見られてしまったと微笑んだ。

「ああ…。大丈夫よ。ちょっとアネットの事が気になって…。今日も電話が来て色々話したんだけれど………」

アネットとはお嬢様の妹さんの事だ。この妹さん。いまだに独身なのでお嬢様も色々心配している。
お嬢様も気の良いダークエルフなのだが、妹のアネットさんはそれに輪をかけて良い性格だ。
おっとりぽわぽわで温厚。大変おとなしいので自分から積極的に男を探せないのだ。
早い話ダークエルフらしくない。と言えばいいのだろうか。

「いいかげんアネットも勇気をだして下僕を見つけないと…。もちろんあの子がまだ男はいらないって言うならいいけど、いつも男が欲しい欲しい…って電話してきては泣いているから。」

お嬢様は深いため息を付くと、何気ない様子で問いかけてきた。

「樹の知り合いで誰か独身のいい男いないかしら…。いるのなら紹介してよ。」

「独身男ねえ…。」

俺もそう言ってしばらく考えるが…。
あ。そうだった…。
あいつがいるじゃないか!
例の二次オタの同僚。あいつに生身の女の彼女がいるなんて聞いた事も無い。
よし!あいつとアネットさんをくっつけるか…。俺は思わぬ計画に顔をほころばせた。

「クレア。そう言えば一人いるよ。独身の男が!」

「えっ!本当に?」

目を輝かせたお嬢様はぐいっと俺の方に身を寄せてきた。
お嬢様がいつも興奮したときに漂う甘ったるい匂いが俺を包む。

「森宮佑人って言うんだけど、会社の同僚で仲良くしている奴なんだ。」

「それは朗報ね…。ちなみにどんな子なの?性格とかは?」

お嬢様も興味深々といった様子で聞いてくる。

「性格は俺に似ているってよく言われるけど。」

それを聞いたお嬢様はなぜかにやりと笑った

「へえ…キミに似ているの。じゃあ心配ねえ。またテロでも起こされたら困るわ!」

透き通るような声で意地悪く言うお嬢様…。俺は古傷に触れられて顔を赤くした。

「その話は勘弁してよ…。でもあいつは俺より素直だから大丈夫だとおもうよ…。」

俺はお嬢さまとの馴れ初めを思いだしてへこんでしまう。
だが、しょぼんとなった俺をお嬢様は優しく慰めてくれた。
ぎゅっと抱きしめて頭を撫でてくれる。愛情あふれる眼差しに沈んだ気も晴れた。

「うそうそ。冗談よ!キミに似た子なら大歓迎に決まっているじゃないのよ!きっと良い下僕になるでしょうね。」

「ほんとうに?」

「もちろんよ!じゃあ早速はじめるわよ。樹はその森宮君の都合のいい日聞いて!私はアネットと話を付けるわ!独身男なんていつ手が付くかわからないのよ…。すぐにお見合いさせるわ!」

俺を抱きしめながらはしゃぐお嬢様。すっかり当たり前になった俺の素敵な日常だ。
森宮とは日頃仲良くしている。幸せのおすそわけをするのも悪くないだろう…。
かつての俺の様に一人寂しく生きている奴には、この温かさをぜひ知ってもらいたい。

お嬢様と俺は楽しい計画を思って笑いあった。












24/01/02 22:44更新 / 近藤無内
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■作者メッセージ
本作はこれにて終わりになります。

最初は明後日の女神さんや、サボテンさんの描かれたようなダークエルフ。
心優しくて温厚なダークエルフを書きたいと言うのがそもそものきっかけでした。
それがなぜ?どうしてこうなったのでしょうか…。
自分でも良く分かりませんが、書き終わった今ではこれで良かったと思います。
ご覧の皆さんに気に入って頂けるダークエルフお姉さまである事を心から願っています。

今回もご覧頂きありがとうございます。

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