読切小説
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モテぬなら 努力をしよう ホトトギス
ジュボッという音とともにライターに火が点く、ジジッという音とともにタバコに火を点ける。タバコを吸い、俺の頭の中に浮かぶのはあの台詞。

「ごめんなさい、お友達でいましょう」

振られるのはこれで何回目だろう?数えたくないから数えない、でも結構な数だった気がする。

ピンポーンと玄関チャイムの音がした、俺は来訪者を迎えるためにタバコを咥えながら玄関まで出向く。

「あー、またタバコ吸ってる。……さてはまた振られたな?」

来訪者は俺の幼馴染で自称TKD(タバコを止めさせるために 恋人を作る 努力をさせよう)の会、会長の忍音 時鳥(しのびね ときと)がいた。いや、いたって表現は違うか俺が呼んだんだからな。ちなみにTKDの会員は時鳥以外に聞いた事がない。

「なぁ時鳥、お前って俺に嫌味しか言えないの?失恋した幼馴染に優しい言葉をかけるとかさぁ」

「優しい言葉をかけるのは三回目で飽きましたー」

時鳥はさっさとリビングまで入っていく、なれた光景だ。

「はーい、第六回目TKD反省会やります」

時鳥はソファーに座ってTKD反省会とやらを開く、要するに今回の俺の反省点を見直して次の恋に生かそうって訳だ。

「えーボクがハルちゃんがタバコを吸ってるのを知って三ヶ月になるわけですけども、ハイペース過ぎるよ三ヶ月に六人に振られるって、このままじゃ禁煙できないよ」

ハルちゃんとは俺の名前が松岡 晴彦(まつおか はるひこ)だからという安直な理由で時鳥が俺に付けたニックネームだ、正直な所俺はハルちゃんは女の子っぽくて嫌なのだが、時鳥は直す気はないらしい。

「んなもん分かってるっての、でも恋人できないの。あとハルちゃん言うな」

「あんねー告白するまでの期間短いよ、もっとお互いを知る期間設けないと駄目。ではそれを踏まえて今回の自分で問題と思う点を上げてみよー」

なんか同じ恋人がいない時鳥に説教されるのは非常にムカつくがここは堪えておこう。

「今回は結構よさげだったんだけどなぁ、ミスった記憶もないし」

「タバコは彼女の前で吸ったりした?」

「いや、してない」

「じゃあ何もミスしてないって事?」

「あぁ、そうだな」

「でしたら、診断結果を発表します。振られた原因は付き合いが短いことと、欠点がないように見えたことだと思われます」

「欠点が無いってのは悪いことなのかよ!?」

「一概に悪いこととは言えないんだけど、だってハルちゃんはこの三ヶ月でその人以外に五人に告白しちゃってるでしょ、それなのに欠点が無いフリしてたら怪しいし」

少し納得した、五人に告白してたら女性なら誰でもいいとか悪い噂も流れてるよな俺。

「それに多少は欠点があるほうが女性から見ると守ってあげたくなっちゃう、なんて母性本能もくすぐられちゃうんですよ、少なくともボクはそうですし」

「そうなのか、所謂ギャップ萌えってのは女性にもある、と」

「ちょっと違うけどそう考えてくれればいいかな、あと鈍感な男性はあれだね振り向かせたいって闘争本能に火をつけたりもするから結構モテたりするね」

「俺関係ないやんそれ、モテてる前提だし鈍感な男性って」

「案外そうでもなかったりするかもよ。まぁ、しばらくほとぼりが冷めるまで告白するの止めといたほうがいいんじゃないかな?」

「って事はあれか時鳥の恋人を作るレッスンはしばらくお預けって事だな?」

「ボクがそんなに甘いと思ってたのか?ハルちゃんは半年間ボクと疑似恋人体験をしてもらいます」

「なにそれ、ふざけてるの?」

おもわず、思ったことを口にしてしまう。なんで腐れ縁なだけの時鳥とそんなことしなきゃならんのだ。

「恋人体験してたほうが実際に恋人ができたときに役に立つでしょ?ついでに駄目な部分指摘できるしね」

「なんだよ、お前は自分の恋事情は良いのかよ。お前にだって好きな人が一人くらいいるんじゃないのか?そんなことしてたら誤解されるぞ?」

「残念ながらボクには現在好きな人がいませんのでご安心ください、ばっちりサポートできるね」

どうやら俺の苦難は始まったばっかりのようである。
14/09/17 08:42更新 / アンノウン

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