読切小説
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北方の狩人の話
いやー、今日は珍しく快晴ねー♪
いまは寒冷期で海面も辺り一面真っ白、溶けて水没するって心配もなし
こんな日には毛皮を干すついでに日向ぼっこしかないわね〜♪


…おやすみなさい。



ざくっ…ざくっ…

むぅ…誰よこんな辺鄙なところで足音立てて私の睡眠を妨害する奴は。
ま、いいか。どうせ私が寝ている格好なんてはたから見たら気の抜けたアザラシにしか見えないだろうし無視されて終わりでしょ。


がっ!!

え、ちょ、ちょっと?
なんなの氷に何か突き刺さったような音…って動けない!?
うおぉ。うつ伏せになってるから周りがどうなっているかわからないし…


なに、なに! なんなのよー!

「魔物…か」

誰ッ!?

低い、男の声。
それきりつぶやくと私の被り物が持ってかれたわ。
瞬時に冷気が私を包み込み、はじかれるように飛び起きて声がしたほうを見てみる。


熊がいる。
熊が赤塗の銛を両手に担いでこちらを見ていた。寒い。
片方の銛の先には毛皮が刺さってくっついているし。寒い。寒い。
こいつがあの足音の原因みたいね…あぁ、寒い。寒くて寂しくなってきたし…


「…お前、この地でそんな恰好をしているのか?」

なんか男が言ってるけど寒さと寂しさで私の頭は働いてくれない。
両手で自分の肩を抱き、縮みこまるけど全然暖かくないの。


かえして

「む…」

小さくかすれた声しか出せなかった。寒い。寂しい。
それでも音がほとんどないここでは十分だったのだろう、熊は慣れた手つきで銛から私の毛皮を取り外した。寂しい。寂しい。
ひったくるように取り返し深く頭にかぶりこむ。さm


はふぅ…

奪われた暖かさが私を包み込み安心させてくれて、それと同時に熊を観察できる余裕もできる。
どうやら東洋風の服の上から熊の毛皮を頭からすっぽりかぶっているらしく、
熊の下あごがあった所から無精ひげとばつが悪そうにへの字に曲げている口が見えてる、目元は被り物のせいで見えないけど。
手足も熊の毛皮でしっかり防護しているし、暖かさなら私のといい勝負するんじゃないだろうか。
そう思うと無性に腹が立ってきた。


せっかくのお昼寝が台無しじゃない! どうしてくれるのよ!

「…すまん」

それきりいうと再びへの字に戻ってるし。
なんだか無愛想で感じも悪いが、さっさとこの場から立ち去ってもらおう。


まったく、次からは気を付けなさいよね!怪我でもしたら大変なんだ

言ってる途中で寒風が吹き、私は驚いた。
別に寒風が吹くこと自体はそう珍しいことではないよ?むしろ日常茶判事。
それから身を守るために目の前の男や私は毛皮を纏っているの、それなのにせっかくのぬくぬくが一気に奪い去られてしまう。


―――さむっ!?

なんで!? どうして!?
慌てて毛皮を確認するとひれの部分に見事に穴があいてた。
ここから寒気が流れ込み、私のぬくぬくを奪っていたのだ。
幸い奪われたぬくぬくは風がやむと同時に戻ってきたけど…吹けばまた寒くなるじゃない!


ちょっと、どうしてくれんのよこれ!穴が空いちゃってるじゃない!

私は熊に詰め寄る。
熊の中の口は一度唸ってへの字のまま。


これじゃせっかくのぬくぬくが―――ひゃぅっ!?

文句も言わせない寒風。

べんしょ――んぅっ!! …しなさ―――ひゃあ!?

ここぞとばかりに吹きすさぶ寒風。
神がいるとしたら自前の銛でつついてやる。


「… … …。」

などと考えているうちに今度は熊に毛皮を奪われた。
寒風どころの問題ではなくなってしまい再び縮こまる。
縮こまった私になにかが覆いかぶさった。


何事かと顔を上げれば熊の毛皮が私に覆いかぶさってた。私の毛皮ほどではないがぬくぬくが戻ってくる。

「…三日だ」

ふぇ?

「三日待て」

熊の毛皮がなくなっている分隠れていた男の顔が見れた。
頬にもまばらに無精ひげが生えて、黒い瞳は鋭い目つきで私を睨み、眉間には皺を寄せている。
片手には私の私の毛皮。
それきりいうと男は踵を返し去っていった。


あ、ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!うわ、前が見えない!?

慌てて追おうとしたけど思いのほか毛皮のサイズが大きくて視界を邪魔する。
なんでこんな大きいのよ…えぇっと、ここをこうして…そこを縛って…よし!
待ちなさ…見当たらなかった。


あーもう! なんなのよー!!

鬱憤晴らしにあげた声が氷原にむなしく響いた。

…かえろう。


・・


翌日。

むにゃ…朝ね…。
この物件。朝日がベットまで届いていい目覚ましになるのよね…でも今の時間から起きてもなぁ…。
よし、二度寝しよ。
そう決め込むと毛皮をすっぽり被りこむ。
まだ眠いし、外は寒い。


 … … …。

クッサぁっ!!??

飛び起きた。
嗅いだことのない臭いがする!昨日まではこんな寝起きが台無しになるような臭いはしなかったのに…
思わず纏っている毛皮を取り払って思い出した。
いつものはあの男に持ち去られていたんだっけ。
代わりに寄越されたのは男が使っていた熊の毛皮だったけど、…獣臭い。それに汗臭い。あと微かに血生臭い。
昨日、帰ってからこの臭いが気になってしかたない。
とりあえずにおい消しなどで対策を試みたけど効果はなく、
鼻になにか詰めて我慢しようとしたけど乙女の一線で踏みとどまった。


でもこれがないと寒すぎて何もできないし…
臭いさえ我慢すれば私の毛皮と同じくらい暖かいのだし…うーん…。
そう思いながら私は鼻先に毛皮の裾を持っていく。


すんすん。

ほんとどうやったらこんな臭いになるのだろう。
手入れをきちんとすれば毛皮だって臭わなくなるのに…


すんすん、すんすん。

嗅ぎながらそんなことを思う、
汗臭いのはきっと着込んでいたからなんだろうけど…
それにしたって限度が…


すんすん、すんすん。
すんすん、すんすん。

きっとあの男は銛も持ってたし、この辺の村の住民なのかな?
そういえばグラキエスの縄張りの近くに狩猟民族の村があるんだっけ?


すんすん、すんすん。
すぅ――っ、すぅ――っ。

あれ?

私、なんでこんなに臭いを気にしているんだろう?

すぅ――っ、すぅ――っ。
すぅ――っ、はぁ――っ!!

やだ…臭い嗅ぐの…止まらない…っ
だんだん…癖になってきちゃった…♥

嗅いでると…お腹の下が熱く…なって…きてぇ…♥

すぅ――っ、はぁ――っ!
すぅ――っ、はぁ――っ!!

頭も…♥ポーってしてくるしぃ…♥
も、もうやめなきゃぁ…♥♥

すぅ――っ、はぁ――っ!
すぅ――っ、はぁ――っ!!
すぅ――っ、はぁ――っ!!!
すぅ――っ、はぁ――っ!!!!

で、でも…♥手が♥かってにぃ…♥♥

ぬちゅ♥♥

あぁん♥こんなに濡れちゃってるぅ…♥
下の毛皮も脱いじゃお♥

あぁ♥寒いぃ〜♥早く熊のほうに包まらなきゃぁ…♥

すぅ――っ、はぁ――っ!
すぅ――っ、はぁ――っ!!
すぅ―はぁ、すぅ―はぁ―っ
すぅ―はぁ、すぅ―はぁ―っ

手がぁ♥とまらないよぉ♥

ぬちゅ♥くち♥
ぐちゅ♥くちょ♥

すぅ―はぁ、すぅ―はぁ―っ
すぅ―はぁ、すぅ―はぁ―っ!!

あぁ、背筋ぃ♥ ぴりぴり♥ってぇ♥
も、もう…いっちゃぁぁ―――z___ッ!!!!

ビクンッ!! ビクッ! プシッ…♥

はぁ…♥ はぁ…♥ すごぉ…♥♥
いつもより全然…気持ちいぃ♥♥♥
もっ、もう一回…しても…いいよね?


・・・


風の吹き荒ぶ音で私は再び目がさめた。いつの間にか寝ちゃってたみたい。
途端にむせ返るようなメスの臭いが私の鼻を直撃する。
これ私のせいだよね?
うわぁ、アソコもどろどろになっちゃてるし、私の愛液で熊の毛皮も更に強烈な匂いになってるし…。


これどうしよ…

外で干したらマシになるかな…?
岩屋の入口から首を出してみる。外は猛吹雪。日も遮られ薄暗い。
これはとても干すなんて状況じゃない。


再び奥に引っ込んで、まだご飯を食べてないことに気付く。
この天候じゃ海中も大荒れだろうし、なにより熊の毛皮じゃ防寒は出来ても海中までは無理よね。


私達の毛皮は魔力で保温性を大幅に強化しているから魔力がこもっていない熊の毛皮じゃ普通なら比べ物にならない。
陸上で私達セルキーの毛皮と同じくらいの保温性を持っていることはスゴイことだけど…
それに加えて、海中でも活動できるように防水性にも優れている。
だから、たまに悪い人間が私達の毛皮を目当てに仲間が襲われることがあるけど、大抵は返り討ちにあって海中の他の魔物娘の餌食ね。


ぐぅ…。

…お腹が鳴ってしまった。仕方ないので保存食の缶詰を食べることにする。
以前、海中で友人達から貰ったもので、そんなにおいしくもないけど捨てるほどでもないものなのでとっておいたものだ。


むぐもぐ。

やっぱりそんなおいしくはない。
お腹がふくれた所で日課の毛皮の手入れをする。今日はやることが半分だけど…
下半身を包んでいる毛皮を丹念に毛づくろいする。
魔物娘だって身嗜みくらいはしっかりしたい。


♪〜♪♪

手馴れているからあっという間に終わってしまった。
綺麗になったばかりのを再び着込んで、ジッパーを上げる。
うん、バッチリ。さて、次は…


「…借り物だし、綺麗にしておいたほうがいいよね?」

包まっている熊の毛皮を脱ぐ。ちょっと寒いが我慢する。
とりあえず大きく広げてみた。…予想以上に大きい。
手足の部分は切り取られているけど胴体と頭を合わせて大の大人をゆうに超えるほどの体長だった。
毛をブラシで綺麗にしていく。しっかりとした毛並みがブラシを通して伝わってくる。
この熊は相当大物だったのだろう。
そしてそれを身に纏うあの男はどれだけ強いのだろうか?


考え事をしているうちに毛皮が綺麗になった。
それに再び身に纏う。
匂いは…依然として鼻に来る。恐る恐る嗅いでみる。
やっぱり頭がぽーってする♥


でも昨日と違う。昨日ほど熱中できない。
昨日したときはもっと匂いが濃かった気がする。


すんすん。

えっちな気分にはなるけど…

すんすん。

これじゃ物足りない。
うーん。ほかにやることもないしなぁ。今日はもう寝ちゃおうか。


おやすみなさい。

…すやぁ。

・・・・

「おい」

むにゃ…?男の声がして私は目が覚めた。声をしたほうを見ると岩屋の入口にあの男が立っていた。
あった時と変わらずに熊の毛皮、不機嫌そうな口元に無精ひげ。
銛が見当たらなかったけど、代わりに私の毛皮を手に持ってた。


「お前の毛皮。返す」

私の被り物を投げて寄越した。山なりの軌道を描いて私の胸元に飛んでくる。

「早く着ろ。そして俺の毛皮を返せ」

ぶっきらぼうにつぶやくとそれきり黙りこむ。

私は返してもらった毛皮を着込む。
穴の開いた箇所が別のアザラシの毛でしっかり塞がってる。
これなら風が入り込むこともないだろう。
これで一安心できる…けど…なんか…寒い。


この熊の毛皮、ありがと。おかげで凍えずに済んだわ。

熊の毛皮を差し出す。男が岩屋の中に入ってきてそれを受け取る。
すぐそばに男の手。なんだか暖かそう…♥


毛皮。ちゃんと手入れしなさいよ、匂いが凄かったし、第一勝手に持ち帰らないでよね。
なくなったら私が困るんだから…。

「…すまんな」

それとなく男の手を掴んでみた。やっぱり暖かい♪
それに男の纏っている毛皮…ううん、この男自体が…暖かそう♥あぁ、すごく飛びつきたい♥♥


「おい、そろそろ離せ。俺はもう行く」

、もういっちゃうの?あぁ、手が離れちゃう…
逃がさない♥一気に引き込んでベットに押し倒しちゃおう。
この男が狩猟民族だからって魔物娘のほうが大抵は力が強いし、…ほら♪うまくいった♪
私が上で男が下♪邪魔な上着を脱いでっと…うひゃあん♥寒い♥♥早く暖まらせて♪


んちゅ…♪ ちゅ…♪ ぷはぁ♥

「お、おい」

ついばむようなキスをしていたら男が何か言いたそうなので顔を見る。
倒れた衝撃で熊の頭が脱げて、困惑している男の顔が見れた。
あのぶっきらぼうな顔が変わっているのが確認できただけで私の下腹が疼いちゃう♥♥
感極まってそのまま男の胸元に顔をうずめてみた♪


えへへ〜♪

「待て。なに発情してる」

男が私の肩を掴んで顔を上げさせらちゃった♪むぅ、寒いのに…
うずめた顔で男の顔を見る。きっと私の顔、凄くえっちな顔なんだろうなぁ♥♥


私ね?いますごぉく寒いの♥

「じゃあ早く着ろ。寒いなら脱ぐな」

むぅ、またぶっきらぼうな顔に戻っちゃった。

今の毛皮じゃ寒いの。心が凍えちゃうの!寒いし寂しいの!!

「知らん」

うぅ…なんか無性に腹が立ってきた。

だからぁ! 私と繋がって一緒に温めてほしいのよ!! この分からず屋!

それだけ言うと再び男の口を奪う。
今度は体も密着させるようにして…口づけももっと長く…♥


んむ♪ れる…♥ んん〜♥ はぁ♥♥   …ちゅ♪

私の胸が男の胸板に押しつぶされて形を変えるとその分男の体温がいっぱい感じられて暖かい♪
邪魔な衣服はこの間に脱がせちゃえ。直に触れたほうが暖かいし♪


ちゅ…♪ ちゅ〜♥       もぞもぞ。        ぷはぁ♥♥

もっと欲しくなっちゃう♥
男の股間に手を伸ばす。胸で感じる体温よりもっと熱いのが手先に触れた♪
男の顔を見るとばつの悪そうな顔をしちゃってる。可愛いとこもあるじゃない♪


なによ、もう準備万端じゃない♥ 恥ずかしがっちゃって♥

男のチンポが膨らんでるのをまじかに見るため姿勢を変えて互い違いの形になって、一気に下着ごと男の衣類をはぎ取った。

すんすん。

途端にあの匂いが私を狂わせる。
あの時の毛皮なんかの比じゃない♥もっと匂いが濃くなった…♥♥


あぁ♥ ダメ♥ …匂いぃ…♥  だけでぇ…♥♥♥
もう我慢できない♥♥♥いただきまふぅ♪

ぱく。

おもぉ♥このむせ返るような精の味♪
とっても濃厚でおいひ♪まだ出してもいないのにこんな濃いなんて、出しちゃったらどうなるのかしら♥♥


じゅる♪ じゅ、じゅ〜♥ じゅるん♪

「う…ぬぅ…」

ふふ♪ 気持ちいのね、びくびくしてる♪ 我慢してるの?いつまでもつかしらね♪

「はやく…離せ」

む、生意気な!いいもん♪一気に出させちゃうから♥

じゅぽじゅぽじゅぽ!! じゅ、じゅるる〜、じゅろろ!! ず、ずじゅぅぅ♪

「う、が…ぁああ!!」

どくん! どくどく!
ひゃ♥♥♥一気に出てきたぁ♥♥すっごぉく濃いぃ♪♪♪
こんなの飲んでるだけでいっちゃうわよ♥♥♥♥〜


なんとか意識を飛ばさずにすんだけど、こんなのそう何度も耐えられるものじゃないわ♥
口に溜まった精液を見せてみようと再び男と向き合って口をあけてみせた♪


みふぇみふぇ〜♥ こんなだしひゃったよ♪

「見せんでいいから早く飲み込め」

むぅぅ、やっぱりぶっきらぼうな返事。
でも、息が上がって顔が赤くなってる♪
そんな顔を見ちゃったらまたしたくなっちゃって下半身の毛皮も脱いで見せちゃう♪


ねぇ、しちゃってもいいわよね♪

「…好きにしろ」

男のおちんちんは完全に天を向いている。
既に私のアソコも十分に濡れちゃってるし…♥
私は男に跨ると私のアソコにチンポをあてて、ゆっくり腰を下ろしていく。
そのままゆっくり私の秘肉を進んでいく。


ぅん…♪

お、思ったより大きいわねぇ♥
ちょ、ちょっと休憩…


「ぬぅ…やられっぱなしじゃ終われん…!」

そういうと男が跨っている私の足を手で払らわれて、それと同時に両手で私の腰を掴んで支えられた。

ふぇ? っ〜〜〜〜〜♥♥ぁああああああああ♪♪♪♪♪
ひょ、ひょんな、いっきにつゅっこまにゃいれよぉ♥♥♥♥♥♥
おきゅ、奥ぅ♥ ごりゅってぇ♪♪ ひゅ♥ぅん♪♪♪ 

たまらず男の胸元でうずくまる。暖かい♪けど私の中にあるチンポのほうがもっと暖かぁいい♥♥

ひゃ♥♥も、もうちょっとうごきゃないれ♥ いっちゃうからぁ♪♪

「すまん。出る」

ま、待って待って待って待っ…―――――z_________ッッッッッッッ!!!!!!!!!!

どっく、どくん。どくどく、どぷどぷ…
んっ♥♥ んぉ♥♥ ぉおお♥♥ おおぉ♥♥♥♥きもひぃ♥♥♥♥♥

「っはぁ!!、はぁ、はぁ…溜まってたもの全部出た…。うお、大丈夫か、腹がふくれてるぞ」

むり♥…ぜんぜん、らいじょうぶじゃ、にゃぃぃ♥♥ まら、いってる♥♥♥
も、だめ♥ おやすみぃ♪

「お、おいおい!?」

むにゃぁ…♥

「ったく、幸せそうな顔だ」


・・・・・


むにゃむにゃ…

「起きろ」

むぅ…もうちょっと寝るぅ…♪えへへぇ…♪

「おい、早く起きろ」

むにゃあ!? な、なんふぇあんたがここにいるのよ!
たたき起こされたら目の前にあの男がいました。もう見慣れた熊の毛皮に片手には赤塗の銛。
熊の頭はかぶってはいなかったから今は十分表情が見て取れる。


「昨日あんなことしたんだ、勝手に帰るわけにもいかんだろう」

そ、それはそうだけど…

「で、あの後俺も寝て、お前より先に起きたのはいいが、食いものがなかったんで外からとってきたところだ」

そういって右手に持っていたのであろう骨付き生肉をみせられた。

何の肉よそれ、第一まだ缶詰残ってるじゃない。それもテーブルの上に置いてあるわよ!

「缶詰?あの固い箱の事をいうのか?あれは固くて食えんぞ?
 あとこれはシャチの肉だ、昨日狩ってきて表にまだある。切り分けるか?」

シャチって…そんなものどう食べるのよ!!馬鹿じゃないの!?
あと缶詰は開けて食べるものよ!そのまま噛り付いたら食べれるわけないじゃない!!
えぇ…っと、名前、聞いてたっけ?

「名?集落の仲間からはフレカムイシチと呼ばれている。我らの言葉で赤いシャチを意味する。
 それより早く身支度しろ。飯を食べたら行くぞ」

赤…シャチ…ねぇ。いや、私は缶詰でいいわ。
それより行くってどこへ?

「我らの集落では一度交わったものはそのまま夫婦として生活する掟がある。魔物と結ばれるとは思わなかったがな。
 しかし、あそこで跳ね除けれなかったのも己の弱さ所以。お前には迷惑かと思うがついて来てはくれまいか?」

ふぇぇえ!?な、なんでこんなタイミングで
なに、いきなりプロポーズ!?
そ、そんなこと急に言われったって…


「戸惑うのも分かる。だが、集落の仲間も魔物に寛容な輩も多い。それに迫害されるようなら俺は集落と戦う腹積もりだ」

いや、待ちなさいよ!
その時は私とアンタがいなくなれば話は済むじゃない

「魔物とはいえ己が嫁を侮辱されて怒らぬ夫がどこにあるというか」

そんな当たり前のように言わなくてもいいじゃない…♪
じゃなくて、うぅぅぅ…
あー!もう付いていくわよ!
どっちにしろあんたが拒んでも嫌でもついていくつもりだったわよ!!

「では、これから末永く頼むぞ。ところで有耶無耶になっていたがお前の名はなんというのだ?」

あー、結局名前いってなかったわね…
私はルーシー。よ。よろしくねフレカ!

「るぅしーか改めて頼むぞ」

なによその発音。ちゃんと言いなさいよ。

「すまんな、我らは外の文化と接することが多くはないのだ。村同士の交流はあるが、海むこうの者とはまず会わんのだ。
 で、フレカとは?」

あー言いにくいし長いのよあんたの名前。
だから頭の文字をとってフレカ。言いやすいでしょ?
あと、さっきから魔物魔物ってそれも間違い。私達は魔物娘。よ♪旦那様♥
さ、ご飯にしちゃいましょ。で、その肉どう食べるのよ?

「魔物娘であったか。互いの文化や間違いは以後正しあっていこうではないか。
 肉?焼いて食おうと思っているが」

えぇ、そうね。きっと楽しい生活になるわね♪
じゃあ、これをかけるときっとおいしくなるわよ。南の海の友達から貰った香料

「ほう、香料とな?…ふむ、旨い。ピリリと辛くなったぞ」

でしょ?それじゃお腹もいっぱいだし行きましょうか?
ふふ、あなたの毛皮に入れてちょうだいね?
一緒だと暖かいわよ♪

「うむ、そうするか!」

こうして、私はフレカの村に嫁ぐことになった。
長年の住処には家具などが残っているし、きっとそのうち誰かが住むでしょう。

それが私と同じセルキーだったら今までの事たくさん話したいなぁ。
アザラシに間違われて捕まったのは伏せて…だけどね♪
14/01/29 13:20更新 / 猿ヶ島紋吉

■作者メッセージ
本来ならこれが一作目になる予定だった作品。
で、どうして匂いで発情しちゃうセルキーちゃんになった?

本来ならツンデレなセルキーちゃんと一緒に猟で生計を立てていく男の話になるはずだったんだ

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