読切小説
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学校の七不思議
『あー、みんな集まった? じゃあ戸を閉めて。
 皆ちゃんと調べてこれたのか? 七不思議。

 俺はぜんぜん話が見つからなくて、5年前に卒業した兄貴に話を聞いてみたんだよ。
 そしたら兄貴もほとんど知らないって言ってさ。まあ、一つだけ聞けたんだけど。

 俺がトップバッターでいいか? 一つしか知らないから他のヤツとダブるかもしれないし。
 じゃあ話すぞ。

 第1美術室ってあるだろ? 狭いほうの美術室。いつも鍵がかかってて入れないあの部屋。
 その部屋には上に像が載っていそうな不自然な台座があるんだとよ。
 兄貴が一年生だったころ、台座の上に載っていた像と一緒に3年生が一人失踪したんだとさ』


夕方の美術室。一人の男子生徒が絵を描いている。
別に賞を取るためのものではなく、ただ自分を表現するための手段としての絵画。

「あ、久しぶりっす先輩」
めったに来ない幽霊部員が、扉を開けて顔を入れた。
この幽霊部員はろくに活動せず、実質帰宅部としてさっさと帰り、ナンパやら合コンやらに積極的に参加するような生徒だ。

「先輩、今日はその絵描くの終わりにしないすっかね?」
何故かと聞くと、合コンの仲間が一人急用でこれなくなったので、代わりに参加しないかとの誘いだった。
そんなものに興味は無いと答えると、ある程度予想していたのか、幽霊部員は粘らずにすぐ帰っていった。

合コン、ナンパ。
女に興味がないわけではないが、どんちゃん騒ぎをしてまで女を釣って、性欲を満たそうとする奴らの考えは理解できない。
そんなことをする暇があるなら静かに絵を描いている方がよっぽど良い。

いいかげん暗くなってきたころ、鍵を管理している美術部顧問がやってきた。
「おーい。お前まだ描くのか?」
一段落つくまで続けたいというと、きちんと閉めてから帰れと言われ鍵を渡された。
信用しているのか、無責任なのか。まあいい、描くのを続けられるのなら幸いだ。


『こんな感じの根暗な生徒だったわけよ。まあ、美術部なんて女にモテる部活でもないし、こんな奴には相応しいのかもしれないけどさ。
 んで、この生徒は描くことに熱中して、一段落を過ぎても止めないで夜遅くまで残って描いてたわけだ』


ふう、今日はずいぶん進んだ。もう日付も変わるし、いいかげん帰ろう。
生徒は机の上にあるカギを掴もうとしたが見当たらない。
「おまえが探してるのはこれか?」
突然かけられる女の声。しかし人影などどこにも見当たらない。
「どこを見ている。すぐ目の前だよ」


『喋っていたのは、美術室にあった女の像だったんだよ。女っていっても、羽根やら角やら生えてる化け物みたいなやつなんだけど』


石像は手にしていた鍵を放り捨てると、にやりと笑い台座から足を離して木の床に下りる。
「おまえ、こんな遅くまで残るなんてずいぶん熱心なんだな」
生徒はもうパニックを一周してしまい呆然として、はいと答える。
「はい、か。くくく…素直で可愛いねえ。学校に遅くまで残っちゃいけないって、小学生の時に教わらなかったのか?」
そういえば昔そんなことを教わったなと生徒は思いだす。
「まあいい。変に騒がないだけましだな。じゃあいただくか」
いただくとは何かと思った瞬間、石像が生徒を押し倒した。

「おっと、暴れるなよ。別に痛いことなんてしやしない。お前の精を頂きたいのさ」
石像は片手で生徒の両腕を押さえ、もう片方でチャックを下ろしパンツの中身を引きずり出す。
「さてご開帳、と。童貞のくせになかなか立派なものを持ってるじゃないか」
石像に童貞だということを見抜かれ、顔が熱くなる生徒。
「その赤くなる顔がまた可愛い。じゃあ、わたしの中に入れてやろう」
もとから裸の石像は、溝が彫られているだけのはずの女性器を指で開く。
開いた穴から見えるのは、肌と同じ灰色の肉。その奥から暖かくぬめった液がしたたり落ちる。
「よぅく見ろよ。お前が童貞じゃなくなる瞬間だ」
そして石像は生徒の男性器を咥えこむ。

「んっ…! 久しぶりの男のちんぽっ…! はぁっ……」
石像の中は熱くぬめり手では味わえない快感を生徒に与える。
「童貞卒業した気分はどうだ? オナニーなんかよりずっと良いだろ。
 これから動いてヒイヒイ言わせてやるから楽しみにしろよ」
そして宣言通り石像が腰を上下に動かしはじめる。
「じゃあ回数を数えてやろう。どこまで我慢できるかな? いーち、にーい、さーん……」
石像がカウントするが生徒は3回と半分で決壊する。
「よー……んん!? お前っ、もう出したのか…! 童貞新卒でも早すぎだ…っ!」
罵倒されても射精は止まらない。生徒は最近出していなかった分すべてを石像の中に注ぎこむ。
「くっ、多いっ……! お前溜めこみすぎだぞ! 腐りかけの精液をわたしの中に出しやがって…!」
そう言いながらも長く多く射精されて嬉しいのか、石像は笑みを浮かべる。
「はぁ…やっと止まったか…。んっ……」
石像は生徒を抑えていた手を離して立ち上がり、指で穴を広げる。
「ほれ、お前が出したモノだ。こんな黄色くて粘っこくて、まんこの奥に張り付いてなかなか落ちてこないぞ。
 こうやって指でかき出さないとな……」
石像は指を入れクチャクチャとかき回す。すると指先に生徒の出した精液がこびりついてきた。
「ずいぶん臭い精液だな。だが腐りかけというのは訂正してやる。熟していて旨そうだ」
指を舐め取る石像。舌の上で味わってからコクリと飲み込む。
「うむ…っ。やはり若い男の精はいい……」
生徒は初体験の衝撃で動けない。そして寝たままの生徒に石像が屈みこんで言う。
「お前まだ溜めこんでるな? 明日には新鮮な精液が出るぐらい搾ってやる」


『そんなわけでその生徒は一晩中その石像に搾り取られたわよ。
 そんでそのうち気絶して、気がついたら早朝の美術室の中で目が覚めた。
 自分の体を見ても服が汚れたり乱れたりしてなくて、そん時は結局夢だったと思うことにしたんだ』


放課後。
男子生徒が絵を描いている。
昨日は一晩中描いたあげく寝てしまい、教師に注意されてしまった。
きょうは早く帰ろう。…しかしあの石像が気になる。
生徒は椅子から立ち上がり、石像へ近寄り観察する。
本当にあれは夢だったのかと、確かめるように、胸へと手を伸ばす。
硬くて冷たい石の感触。やはりあれは夢だった。
欲求不満が変なふうに暴発したのだろうと生徒は考える。

それにしても妙に艶めかしい石像だ。
……ここにはほとんど人は来ない。だったら――。


『まあ、その生徒は夢が忘れられなくてつい石像の前でマスかいちまったわけよ。
 俺だったら情けなくて泣きたくなるけど。そして我に返ってまた絵を描く作業に戻ったんだ』


さっきの自らの痴態を忘れるかのように生徒は絵を描くことに没入する。
やがて時間が過ぎ、また夜になるが、なぜか顧問の教師はやってこない。
そしてまた日付が変わるころ。

「ふん、今日も残ってお絵かきか。なにが楽しいのかわたしにはさっぱりわからんな」
絵を描く生徒の背後から昨日と同じ声がかけられた。
それを予想していたのか、期待していたのか生徒はあまり驚かずに振り返る。

「こんばんは。流石は童貞新卒、たった一日でわたしの体が恋しくなったのか?
 たっぷり可愛がってやってもいいんだが、アレはいただけんな」
アレとはなにかと考える生徒。
「お前、まだ日が出てる間に、わたしの目の前でオナニーしただろ。もったいないことしやがって。
 夜まで待ってればわたしがたっぷり搾り取ってやったっていうのに」
石像は生徒が無駄に射精してしまったことが気に入らないらしい。
「まあすぎたことは仕方ない。今日は最初に口でしてやろう。
 もうお前が精液を無駄にしようになんて思わなくなるぐらい良くしてやるからな」
石像は椅子に座る生徒の前にしゃがみ、男性器を取り出す。
「ああ、新鮮な精液の香りが……。やっぱり腹が立つな。残ってる分全部吸い取ってやる」
そう言って石像は勃起している生徒のモノを口に含む。
「んむっ…ん……」
生徒は女性器とはまた違う体内の感触に身を震わせる。
石像の人間より長い舌が男性器に巻きつき、ぬるぬるゴシゴシとしごき続ける。
「はむっ…はふはふ…はふっ……んむっ!」
あまりに気持ち良いのか生徒は石像の頭を掴んで深く押し込もうとする。
「ご、ごほっ……! おぶっ……んっ! ゲボッ!」
喉の奥で射精されて石像はせき込む。
「ゲホっ、ゲホっ……! お前! あんな奥まで入れるなら一言断ってからやれっ!」
むせながら怒る石像を生徒は可愛いと感じた。


『絵描きってのは変わり者だからか、それとも単にヤリたい盛りだからか、
 生徒は女の石像にすっかりのめり込んじまったんだ』


深夜の学校。
すっかり爛れた関係になった生徒と石像が交わり合う。
「わたしが床に寝るのか? 翼があるから好きじゃないんだがな。まあ、お前が積極的になってきたのは嬉しいことだ」
騎乗位を好む石像に頼み込んで、仰向けに寝かせた生徒。
足を掴んで、大きく股を開く。
「お前のちんぽもだんだん大きくなってきたな。これなら子宮まで入るかもな。試してみるか? くくく……」
挑発するように笑う石像相手にやってやろうと、ひそかに対抗心を生徒は燃やす。
「じゃあ、入れてくれ。ほら、わたしの汁でよく濡らして……んっ…!」
生徒は初めて石像の上から挿入した。
「く……っ。やっぱり、上と下じゃ感覚が違うな……こら、勝手に胸をいじるな」
灰色をした大きい胸に触れる生徒。
「そんなに胸が好きなのかお前? いつも出すときはわたしの胸を握りしめているし」
話しているうちにコツンと子宮口に当たって止まる男性器。
「…奥まで来たな。じゃあ腰を引いて……っておい! なにする気だ!」
生徒はさらに力を込めて押し込もうとする。
「ま、待て! 本気で子宮まで入れる気か!? 少しはわたしにも心の準備を―――ぐっ!」
膣腔よりもさらに狭い子宮口をこじ開けて中まで入れる。
「うぐぐっ…! ここには誰も入れたことないのに…っ! ってまだ入れるのか!?」
生徒はより深く押し込もうとするが、流石に子宮の底までは入らずに止まる。
「はぁ、こんな奥まで入れるなんて、案外熱くなりやすいんだなお前……。抜くときはそっとしろよ。そっとだぞ」
あまりに敏感な器官なので石像は弱々しい声で頼む。
「そう、ゆっくり……ぐあっ! キサマっ…!」
いつも強気な石像が縮こまる姿に嗜虐心がそそられたのか、逆に早く乱暴に動く生徒。
「やっ、やめ…! ひぃっ! 子宮口でちんぽがゴリゴリしてっ……!」
子宮口の名の通り、膣内で咥えられているような感触に生徒は耐えられなくなり子宮内で直接射精する。
「ひっ! あ、あ、かかってるっ…! 一番奥にビチャビチャっ……て……!」
子宮内で精液が弾ける感覚に石像は脱力し、手足を投げ出した。


『そんで生徒はもう毎日遅くまで残って、イチャついてたんだが』


放課後の美術室。
また人数が足りなくなったのか幽霊部員が合コンの誘いに来る。
当然断る生徒。そして帰ろうとする幽霊部員。
ここまではいつものことだが。

「あれ、先輩? この石像、腹の辺りが前より大きくなってません?」
その言葉に生徒はピクリと反応する。

まあ、理科室の人体模型あたりといちゃついてデキちゃったんですかねー、ははは。
気のせいだと思い、笑いながら部屋を出ていく幽霊部員。しかし生徒は笑わない。
薄々感づいてはいたが、あえて無視して訊ねもしなかったこと。

その夜、石像が動き出して。
「なんだ? お前わたしが妊娠しないと思ってたのか?」
無機物が妊娠という言葉を発したことに、生徒はめまいを覚える。
「わたしに遺伝子や卵子があるのかは知らんが、やることやってれば子供はできるぞ。確率は低いが」
石像は少し膨らんだ腹を撫でて言う。
「この中にはもうわたしたちの子供がいるんだ。お前も撫でてやったらどうだ?」
生徒の手を取って腹に当てる石像。その体は柔らかくて温かい。
自分が父親になったという実感などないのか、生徒が感じたのは愛情ではなく欲情だった。
「お、その気になったのか。正直子供を気にして遠慮されるんじゃないかと心配したんだ。
 いいぞ、ちょっとやそっとで流れたりするやわな子供じゃないから今日もたっぷりと……な」


『妊婦相手とか俺もヒクけど、よっぽど具合が良かったのかそういう趣味なのか、夏休みに入ってもやり続けた。
 もちろん腹はどんどん大きくなって、どう見ても気のせいじゃ済まないぐらいになったんだけど、
 詳しく調べようなんて奴はいなかった。逆に気味が悪いってんで、なにがあっても無視するようなったそうだ』


陽が落ちるのも早くなり、もうそろそろ寒くなってきたころ。
美術室で今日も二人はまぐわっていた。

すっかり腹が膨らみ臨月になった石像が壁に手をつき、立ったまま尻を突きだす。
そして生徒が後ろから挿入。
胎児も成長し、その重さで下がった子宮は、生徒の男性器を容易く受け入れる。

「あっ…お前のちんぽが…っ、子供に、当たってる……!」
開いた子宮口から羊水が少しばかりこぼれ落ちてくるが、子宮姦に慣れ切ってしまった二人は気にせずにセックスに励む。
「もっと、かき回せっ……! そのほうが喜ぶっ…!」
生徒は手を回して、石像の胸を掴む。するとその先端から液体がにじみ出る。
「あ、もったいない。くそ、わたしが上ならお前に飲ませるのに……」
人外の存在でも母乳の色は変わらないのか、白い液体は滴り落ちて美術室の床を汚した。
「…ん、そろそろ出すのか? いいぞ、わたしたちの子供にっ……たっぷりかけてやれっ…!」
その言葉と共に生徒は石像の胎内に射精する。
妊娠初期のような子宮で弾ける快感はないが、子供が喜んで身を動かす感覚に石像は幸福感を憶える。

「ふう……どうも調子がおかしいな。いつもならもっとやる気になるんだが」
普段のような次から次へと快楽を求める欲求があまり起きない。
一体どうしたのかと悩んでいた石像が突然顔色を変える。
「あっ! これ……! おい、お前早くちんぽ抜け!」
まだ繋がったままの生徒が腰を離すと、精液に混ざって普段より多い量の羊水が落ちてきた。
「破水してるっ…! もうすぐ産まれるぞ!」
前兆もなくいきなり産まれると聞かされあたふたする生徒に、石像は落ち着けと言う。
「お前はそこで見てろ」
石像自身も初めての出産で緊張しているようだが、子供を産むところを見てもらいたいのか、座っていろと言う。
そして壁にツメを喰い込ませて息み始めた。

「ぐっ! 子宮口が開いて……るっ! これ、ちんぽの比じゃないぞ…!」
大きいとはいえ男性器と胎児の頭部では、サイズが違いすぎる。
「こ、腰が……。くぅっ……立ってられないっ…」
壁に手をついて息んでいた石像が床に膝をつく。
しかし苦痛を感じている様子はなく、あまりの快感に力が入らないかのようだ。
「すっ、進んでる…! まんこの中、子供が通ってるっ! あ、あっ……すごい広がって……」
生命が産まれる姿は美しい。
そう思いながら眺める生徒の目に、かってないほど広がった穴の奥から、抜け出そうとする子供の頭頂部が映る。
「あ、あたま! 頭が出るっ! も、もうすぐ全部っ……! ひぅっ!」
頭が抜けてしまえばあとは早いもの。翼が引っ掛かることもなくするりと胴体は抜けてしまった。

「はっ……はっ…」
膝をついたまま壁に寄り掛かる石像。
その股下には、石像を縮小したかのような子供が寝ている。
人間とはあまりに違うせいか臍の緒や胎盤もなく、オギャーオギャーとも泣き喚かず静かに呼吸をしている。

「……んっ。これがわたしの子供か……」
出産の快感から脱した石像が子供を抱き上げ、眺める。
「ほら、お前も抱いてみろ」
生徒は戸惑いながらも、差し出された子供を手に取る。
言葉は分からなくても父親だということは理解できるのか、子供は小さい手で生徒の肌に触れようとする。
それを見て少しは父性本能が刺激されたのか、生徒はそっと子供を抱きしめた。

「さて、体力も回復したし、そろそろ行くか」
静かにしていた石像が声をかける。
行く? どこへ? 疑問に思う生徒。
「おいおい、まさかこんな場所で子供を育てる気か? わたしみたいなのが住むのにいい場所があるんだよ。
 もちろんお前も来るだろう? まあ、いまさら嫌だといっても無理やり連れていくけどな」


『こんな感じでその生徒は石像に連れられてどこかへ去ってしまったんだ。
 そして次の日に生徒が登校していないことに気付いた担任が、顧問と一緒に美術室を覗いてみた。
 鍵の掛かっていない部屋で二人が見たのは、像の消えた台座に、床に撒き散らされた生臭い液体。
 それと失踪した生徒が最後に描いていた禍々しい絵。この絵にはタイトルがついていて「魔界」って書かれていたらしい。
 
 それで何か事件があったことはすぐに分かって学校は警察に通報したんだけど、
 結局は家出だろうってことでうやむやにされた。
 そしてこの奇妙な事件のおかげで第1美術室は封印されることになったってわけ。

 これで俺の話はおしまい。じゃあ次はおまえ―――え? 誰も他の話知らないの!?』
11/10/22 11:41更新 / 古い目覚まし

■作者メッセージ
学校の七不思議。
一.七不思議なのに一つしか話がない。


ここまで読んでくださってありがとうございました。

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